デイサービス業界のM&A動向 昨今の事業買収・売却の事情やM&A事例を紹介

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デイサービス業界では、高齢化社会の進行を背景に、事業再編や新規参入を目的としたM&Aが活発に実施されています。

本記事では、デイサービス業界のM&A動向や、M&Aを活用するメリット、代表的な事例、成功に向けたポイントなどを紹介します。

デイサービス業界の概要

デイサービス業界は、高齢者や障がい者に対して、日帰り型の通所介護サービスを提供しています。一方、需要拡大による人材不足も課題となっています。ここでは、デイサービス業界の定義や特色についてみていきましょう。

デイサービス業界の定義

デイサービスとは、介護が必要な高齢者や障がい者などに、日帰り型の通所介護サービスを提供する事業です。

サービス内容としては、入浴、排泄、食事などの日常生活の支援や生活機能向上のためのリハビリテーション、健康維持のサポートや他の利用者とのコミュニケーションによる社会参加の場の提供などがあげられます。

また、デイサービスを提供する施設では自宅までの送迎を行っているため、利用者は親族などの手を煩わすことなく、安心して利用できる点も特徴です。

ただし、通所介護を利用できるのは、要介護1〜5までの認定を受けた人に限られます。要支援1・2の人は対象としていません。

このように、利用者の日常生活を支援し、自立を促すと共に、家族の介護負担を軽減するサービスを提供する業界を、デイサービス業界と定義します

デイサービス業界の特色

高齢化が進むにつれ、高齢者や障がい者が日中を過ごす場所としての、デイサービスの需要は年々高まりを見せています。しかしながら、デイサービスのスタッフは常時人手不足であり現状では供給が追いついていません。一部の地域では待機者も多い状況です。

高齢化社会では、サービスの質だけでなく利用者に合わせたサービスの多様化なども求められているため、今後はニーズの変化に対して敏感に対応したうえで、サービス供給の拡充やサービス内容の改善などが必要とされています。

デイサービス業界のM&A動向・市場規模

介護サービス 費用額累計 年度別推移
参考:令和5年度 介護給付費等実態統計の概況

次に、デイサービス業界の市場規模と業界のM&A動向について解説します。

日本のデイサービス市場は、高齢者人口の増加に伴い拡大傾向です。厚生労働省の統計によると、令和5年度の介護サービス業界全体の市場規模は11兆2,146億円であり、前年の10兆9,080億円からさらに増加しています。高齢化社会が今後も続くことから、こうした増加傾向は今後も続くでしょう。

また、デイサービス業界の市場規模をサービス別に見てみると、介護福祉施設が最も大きく2兆712億円、次いで介護保健施設が1兆3,530億円、通所介護(デイサービス)が1兆3,170億円、訪問介護が1兆1,547億円と、サービス別にみても全体的に需要が高いといえます。

こうした業界全体の市場規模の高まりや利用者のニーズの増加を背景に、多くの企業がデイサービス業界に参入しています。こうした新規参入企業の多くは、スタッフや利用者、設備などをそのまま取り込めることなどから、積極的にM&Aを活用しています。

こうしたM&Aを活用した新規参入は、今後はさらに行われるものと考えられます。

デイサービスでM&Aを活用するメリット

デイサービス業界でM&Aを活用するメリットとしては、以下が挙げられます。

新規参入や事業拡大のスピードアップが期待できる

M&Aを利用すれば、売り手企業の許認可や施設・設備をそのまま引き継げるため、これらを一から準備する場合に比べて、低コストかつ短期間で事業を開始できます。同業同士でのM&Aでは、未進出エリアへの展開や多店舗展開も効率的に進めることが可能です。

従業員と利用者をそのまま引き継げる

M&Aを活用する2つ目のメリットは、介護スタッフをはじめとする従業員や、施設の利用者を、そのまま引き継げることです。

M&Aによる事業承継では労働契約も売り手から買い手へ移動するため、施設の従業員も引き継ぐことができます。デイサービス業界は常に深刻な人材不足にあるため、こうした人材確保は非常に大きなメリットです。

また、施設の利用者もそのまま引き継ぐことができるため、新規開拓の手間が省け、運営開始時から一定の売り上げを見込むことができます。

福祉サービスの拡充を図れる

デイサービス事業者が、隣接する介護事業者を買収すれば、自社で一から立ち上げるよりも短期間で、福祉サービスの幅を短期間で広げられます。具体的な売り手候補としては、訪問介護や居宅介護支援などが挙げられるでしょう。さらに、各サービスを相互に連携させれば、利用者の満足度やサービスの継続率が向上しやすくなり、地域社会における信頼の獲得にもつながります。このように多角的な福祉体制を整えることは、福祉需要が高まる時代において、競争力強化だけでなく社会的な意義も大きい動きです。

デイサービスのM&A事例

デイサービス業界では、地域密着型施設の運営強化やサービス品質向上を目指してM&Aが行われ、事業エリア拡大とサービス充実が進んでいます。ここでは、代表的な事例をいくつか紹介します。

株式会社夢眠ホームと株式会社シダー

2023年6月、株式会社夢眠ホームは、株式会社シダーが運営していた「ラ・ナシカやまなし」の介護事業を、事業譲渡により取得しました。「ラ・ナシカやまなし」は山梨県山梨市でリハビリテーション等の介護サービスを提供していた施設です。全国に介護施設を展開する株式会社夢眠ホームは、このM&Aを通じて山梨県で有料老人ホームの新規展開に成功。事業エリアのさらなる拡大とサービス内容の一層の充実を目指します。

株式会社ソラストと株式会社日本エルダリーケアサービス

2020年8月、株式会社ソラストは、株式会社日本エルダリーケアサービスの株式を取得し、子会社化したと発表しました。

株式会社ソラストは、介護や医療領域で事業を展開しています。このM&Aは、株式会社日本エルダリーケアサービスと連携することで、身体機能の維持向上を重視したサービスを、スピーディかつ広範囲に拡充させていくことが狙いです。

株式会社アイドマ・ホールディングスと株式会社Gotoschool

2022年12月、株式会社アイドマ・ホールディングスは、株式会社Gotoschoolが実施する第三者割当増資の引き受けを通じた資本・業務の両面における提携を決定しました。

このM&Aにおける株式会社アイドマ・ホールディングスの狙いは、自社の就労支援領域と株式会社Gotoschoolの放課後等デイサービス、児童発達支援施設運営領域で培ってきたノウハウとを連携させることで、働き手の可能性を高め、企業にとっての人材不足解消策となるソリューションの提供を図ることにあります。

株式会社LITALICOと株式会社ウェルモ

2023年4月、株式会社LITALICOは、株式会社ウェルモが提供している児童発達支援・放課後等デイサービス「unico(ユニコ)」を買収しました。

株式会社LITALICOとunicoが持つ知見やノウハウを融合させることで、利用者の多様なニーズに答えられる高品質なサービスの提供と、エリアの拡大が狙いです。

株式会社アルトと株式会社サンライフケア

2022年1月、株式会社メイホーホールディングスの子会社である株式会社アルトは、愛知県常滑市で「リハビリデイ えみふる」を運営する株式会社サンライフケアの事業を、事業譲渡方式で取得しました。今回のM&Aは、地域密着型施設の運営強化やサービス品質の均一化により、地域内での競争力と業務効率の向上を図るものです。

エフビー介護サービス株式会社とスマートケアタウン株式会社

2023年7月、エフビー介護サービス株式会社は、スマートケアタウン株式会社の全株式を取得し、子会社化しました。エフビー介護サービス株式会社は信越・関東エリアで在宅介護サービスを展開しています。スマートケアタウン株式会社は長野県で居宅介護や通所介護事業所を運営し、両社は介護方針や理念に親和性を見出して本M&Aを実施しました。スマートケアタウン株式会社の債務超過を解消し、ノウハウを共有することで、介護サービス拡充と収益性向上を目指します。

デイサービスにおけるM&A成功のポイント・注意点

デイサービスのM&Aでは、丁寧なコミュニケーションで利用者やスタッフとの信頼を守ることが成功の土台です。さらに、許認可や人員配置といった事項の確認も欠かせません。

利用者・スタッフとの信頼関係を維持する

M&Aを実施する際には、利用者やスタッフに十分な説明を行い、理解を得る必要があります。説明が十分でない場合、「サービス内容が変わるのではないか」「職場環境が悪化するのではないか」といった不安を招き、退所や退職につながりかねません。

特に福祉業界では高齢者ニーズの多様化や人手不足が深刻な課題となっているため、顧客やスタッフを一度失うと、埋め合わせることが困難です。できる限り丁寧な対話を心がけ、信頼関係の維持に努めましょう。

また、M&A後の統合プロセスにおいても、既存の職場文化やケアの質を大切にしたマネジメントを意識することで、スムーズな引き継ぎと安定した運営につなげられます。

許認可の承継手続きを適切に行う

介護サービスの運営には、各事業所ごとに都道府県や市区町村からの指定が必要です。許認可の引き継ぎ方法はM&Aの手法によって異なります。

株式譲渡の場合は法人格が変わらないため許認可はそのまま引き継がれるものの、事業譲渡の場合は自動的に承継されず、別途手続きが必要です。特に複数の拠点を運営しているケースでは、各事業所ごとに個別での手続きが必要なため、M&Aの実行スケジュールにも影響を及ぼします。

事前に行政としっかり相談し、移行期間中のサービス提供体制も見据えて計画を立てることが、成功のポイントです。

人員配置・加算要件の適合状況を確認する

M&Aを進める際は、売り手企業のデイサービスが介護保険制度で定められた人員配置基準や加算要件を確実に満たしているか、事前に確認することが重要です。

要件を満たしていないことがM&A後に発覚すると、過去の介護報酬の返還を求められるリスクがあります。具体的には、「生活相談員や介護職員、機能訓練指導員などの人員数が、書類上は充足しているが、実際には常勤ではなかったり、他施設との兼務で不在が多かったりする」といったケースが見られます。また、個別機能訓練加算や入浴介助加算などを算定していた場合も、必要な条件を満たしていないケースが散見される状況です。

そのため、デューデリジェンスの段階で「人員配置の実態」や「加算要件の根拠資料」までしっかりと精査することが不可欠です。事前に問題点を把握できれば、価格交渉やPMI計画にも反映が可能となり、M&Aの失敗を未然に防ぐことにつながります。

デイサービスにおける今後のM&Aの課題と展望

高齢化の進行により、デイサービスの需要は今後ますます拡大していくと見込まれます。それに伴い、M&Aを活用した新規参入や事業再編もさらに加速していくでしょう。

一方で、利用者やスタッフとの信頼関係の維持、許認可の承継手続き、人員配置や加算要件の適合確認など、デイサービス業界ならではの課題に対しては、より丁寧な対応が求められるでしょう。そこで重要になるのが、丁寧な事前準備と専門家によるサポート体制です。

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よくある質問

  • デイサービス業界でM&Aが活発化している理由は何ですか?
  • 高齢化による市場拡大と人材不足、後継者問題、経営効率化の必要性が背景にあり、事業再編や新規参入を目的としてM&Aが活発に行われています。許認可の引き継ぎや従業員・利用者の引き継ぎが可能なため、短期間での事業展開が可能になることも理由です。
  • デイサービス業界のM&Aで特に注意すべきポイントは何ですか?
  • 利用者やスタッフとの信頼関係の維持、許認可の承継手続きの適正な実施、人員配置や加算要件の適合状況の確認が重要です。不適切な引き継ぎはサービス低下や介護報酬返還リスクにつながるため、専門家によるデューデリジェンスと丁寧なコミュニケーションが必要です。
  • M&Aを活用するデイサービス事業者にとってのメリットは何ですか?
  • 新規参入や事業拡大のスピードアップ、従業員と利用者をそのまま引き継げること、人材確保やサービスの多角化による福祉サービスの拡充が期待できます。また、隣接事業者の買収によりサービス連携も可能となり、競争力強化につながります。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 部長本山 拓哉
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 部長
本山 拓哉

大手証券会社にて、上場・未上場企業オーナーの資産運用及び事業承継・M&A支援に従事。
2016年から当社に参画し、現在ヘルスケア業界を中心に多数のM&A成約実績を有する。

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