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業界の定義
広告業界には大きく分けて2種類の企業が存在する。広告代理店と広告制作会社である。さらに広告代理店には、総合広告代理店、専門広告代理店、インターネット広告代理店の3つにわけられる。
広告代理店とは、メーカーなどの広告を出したい企業と、テレビや新聞、雑誌などの広告を掲載するメディアの間に立ち、企画から制作までを総合的に手掛ける会社のことを指す。総合広告代理店は原則としてすべての広告媒体を取扱い、専門広告代理店は鉄道や新聞社、テレビ局、出版社などの特定のメディアを運営する会社の広告を取扱う。インターネット広告代理店は、インターネット上の広告を取り扱う。
広告制作会社とは、紙かウェブかを問わず、各媒体に使用する広告クリエイティブを制作する会社のことを指す。
業界の特色

広告業界は大手企業が非常に強い力を持っている。特に3大広告会社である電通、博報堂、アサツーディ・ケイは大きな売上を誇っており、幅広いノウハウや豊富な広告ジャンルを持っているため、様々な広告を依頼できることが、広告主にとって大きなメリットになっている。
中小代理店でも低予算で利用できることや担当と密に連絡をとれることなどメリットがあるため、そこを重視する広告主にとっては有効な選択肢になる。
広告代理店は、メディアから広告枠を買い取り、メーカーなどの広告主の企業に販売する際の手数料収入や、広告主と共にイベントなどを企画・運営することで得られる広告制作費の収入が主な収入源となっている。
数年前までは、テレビや雑誌などのメディアを利用し、不特定多数に向けて広告を出すマスマーケティングが主流だったが、近年ではインターネット広告が主流になってきた。株式会社電通の調査によると、2019年の日本の広告費においてインターネット広告費は、テレビメディア広告費を超えたことがわかった。これはアドテクノロジーといわれる技術が発展したことやインターネットの利用者が大幅に増加したことが大きな要因となっている。
アドテクノロジーは端的に表現すると、「広告効果の最大化を目指し、最適な人や場所に広告を打つこと」であり、この技術が自社商品が購買層に直接結び付くことを重視するようになったメーカーにとって有効な広告展開になった。
市場の規模
株式会社電通が発表した「2019年 日本の広告費」によると、2019年の日本の総広告費は前年比101.9%の6兆9,381億円であり、8年連続のプラス成長であることがわかった。インターネット広告費がテレビメディア広告費を超え、初めて2兆円を超えた事実はニュースでも話題になった。

出典:https://www.dentsu.co.jp/news/release/2020/0311-010027.html
媒体別にみると、新聞広告費が4,547億円(前年比95.0%)、雑誌広告費が1,675億円(前年比91.0%)、ラジオ広告費が1,260億円(前年比98.6%)、テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連)が1兆8,612億円(前年比97.3%)、インターネット広告媒体費が1兆6,630億円(前年比114.8%)、デジタルサイネージなど屋外広告が3,219億円(前年比100.6%)、鉄道の中吊りなど交通広告が2,062億円(前年比101.8%)となっている。

出典:https://www.dentsu.co.jp/news/release/2020/0311-010027.html
広告代理店別にみると、売上1位は電通で1兆5,399億円。続いて、博報堂の9,470億円、サイバーエージェントの4,195億円、アサツーディ・ケイ(ADK)の3,528億円となっている。
課題と展望
広告業界は、今後全ての広告媒体にインターネットが関わってくることが予想されている。そのため、各社はさらにインターネット領域において結果を出すことが課題である。
また大きなトピックとして、コンサルティングファームの広告代理店業界への参入があげられる。本業が企業の経営戦略を立案することから、様々なデータを分析することは得意であり、これがインターネット広告領域に活かせると考えられている。欧米ではすでにいくつかのコンサルティングファームが広告業界に参入している実績がある。
技術面からみると、通信規格「5G」の普及が広告業界にも大きなインパクトを与えることになるだろう。5Gの導入によって、通信速度が今までの10倍になるといわれており、消費者がインターネット広告に接する機会は、大幅に増えるだろう。
広告業界のM&A動向
広告業界ではインターネット広告代理店のM&Aが進んでいる。これはブランディングを目的とした案件が増えるなど、ダイレクトレスポンスだけでないインターネット広告へのニーズが要因になっている。また、マスメディアとインターネット広告の組み合わせや、CRM(Customer Relationship Management)などのデータ活用、屋外デジタル広告、実店舗の来店解析など、様々な分野でのサービスが要求されており、それぞれの分野を強みにしている企業同士がM&Aにより、事業拡大を図っている状況である。
2017年、GMOアドパートナーズは、静止画像を組み合わせて動画コンテンツを制作するモーションコミックを提供するベンチャー企業の株式会社シフトワンの全株式の取得し、子会社化した。このM&Aにより、動画広告分野におけるクリエイティブ制作の強化が図られた。
2018年、株式会社電通はAIを活用したマーケティングソリューションを提供しているデータアーティスト株式会社をM&Aした。このM&Aにより、マーケティング領域におけるAI活用強化が図られた。
2018年、株式会社大広はインド・デリーのクリエイティブ・エージェンシーであるFrom Here On Communications Pvt. Ltd.の株式を取得し連結子会社化した。このM&Aにより、中国・台湾・ベトナム・インド・シンガポール・インドネシアに海外拠点を保有し、アジアへの事業拡大が図られた。
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