ドラッグストア業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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高齢化社会へと移行しつつある近年、少子高齢化が進むことで、ドラッグストアは需要が増すと予想されています。一方、ドラッグストア業界においては薬剤師不足や、そこから生じる後継者問題に頭を抱える経営者も増加しています。

このような問題を解決する手法の一つがM&Aです。本記事では、ドラッグストア業界の特徴や最新のM&A事例、M&Aを活用するメリットなどについて解説します。今後の経営戦略に活かしたい方や、M&Aに踏み切るか思案中の経営者様は、最後までご参照ください。

M&Aの前に押さえておきたいドラッグストア業界の情報

M&Aを検討する前に、まずはドラッグストア業界の概要について紹介します。定義や沿革、変遷を理解し、ドラッグストア業界の基本情報を把握しましょう。

ドラッグストア業界の定義

ドラッグストアとは、医薬品・化粧品・日用雑貨(日用家庭品、文房具など)、および食品(生鮮食品を除く)を取り扱う小売店舗をいいます。

当初は「ドラッグストア」という名のとおり、医薬品を中心に扱う小売業態を指していましたが、ビジネスモデルの変化により、現在は薬以外の生活用品についても幅広く取り扱っているのが一般的です。

最近では、医療の分業が進んでいることもあり、処方箋の必要な医薬品を販売できる許可を得て営業する店舗も増加傾向にあります。

ドラッグストア業界の沿革・変遷

2009年6月以降の薬事法改正により、医薬品販売規制が緩和され、医師の処方箋を必要としない一般用医薬品がコンビニエンスストアなどでも販売されるようになりました。

さらに2013年12月の改正では、医薬品の販売ルールが大幅に緩和され、一般用医薬品のなかでも、薬剤師による対面販売が義務付けられていた第一類医薬品、第二類医薬品のインターネット販売が可能となっています。

2017年1月からは、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品、一般用医薬品のうち、ドラッグストアで一般に販売できるよう転用された医薬品)を年間の合計額で1万2,000円以上購入すると、税制の優遇が受けられる制度がスタートしました。同制度は「セルフメディケーション(自主服薬)税制」とも呼ばれ、医療費の膨張抑制が期待されています。

なお、厚生労働省が公表している、セルフメディケーション税制の対象医薬品には「パブロンS」「ベンザブロックL」「ガスター10」などが含まれています。同制度により、一般用医薬品の需要拡大が期待されますが、認知度の向上など課題も多く存在するのが現状です。

ドラッグストア業界のM&A動向・市場規模

ドラッグストア業界におけるM&Aの動向や、市場規模について解説します。

ドラッグストア業界は、多岐に渡る商品群と調剤窓口の併設が特徴です。商品が幅広いため、消費者にとっては利便性が高まる一方、店舗では在庫管理などが大変になるデメリットも生じています。また、調剤窓口が併設されているため、薬剤師が欠かせません。

ドラッグストア市場は、右肩上がりの成長を続けています。経済産業省の商業動態統計調査によると、2023年の販売額は約8兆3438億円で、2022年と比較すると108.2%の増加率となりました。特に、食品売上は前年比12.3%増の約2兆6870億円と、堅調に推移しています。

さらに、株式会社矢野経済研究所の調査によると、OTC医薬品のEC市場規模は、年間平均成長率9.5%での拡大が見込まれています。ドローンなどの技術を活用した配送の実証実験が進行中であり、これからの物流革新も、将来的に期待されることの一つです。

ドラッグストア 商品販売

参照:ドラッグストア商品別販売額等及び前年(度、同期、同月)比|経済産業省

ドラッグストア業界のM&A事例

ここからは、ドラッグストア業界で行われたM&Aの最新事例を紹介します。

マツモトキヨシグループとケイポート

株式会社マツモトキヨシグループは2024年4月1日、株式会社ケイポートの全株式を譲り受け、子会社化しました。

譲受側であるマツモトキヨシグループは、ドラッグストア事業・調剤薬局事業を核として、事業を展開しています。一方、譲渡側であるケイポートは、東京都の大田区・品川区・目黒区を中心に、地域に根差したドラッグストアおよび調剤薬局を運営していました。

本件は、都内におけるケイポートの事業基盤を活用することで、さらなる市場シェアの拡大を目的として実施されています。

クスリのアオキHDとフクヤ

2020年10月8日、株式会社クスリのアオキホールディングスは、株式会社フクヤの買収を発表し、10月21日に株式の取得を実施しました。

譲受側のアオキHDは、医薬品・化粧品・日用雑貨などの小売業を行っています。これに対し、譲渡側のフクヤは、京都の舞鶴・綾部・宮津を中心にした、京都北部地区で展開するスーパーマーケットチェーンです。

双方の強みを融合させることにより、食品・生鮮食品・ヘルス&ビューティ・日用品、処方箋といった幅広いサービスの提供を実現し、企業価値の向上を目指しています。

ツルハHDとビー・アンド・ディー

株式会社ツルハホールディングスは2023年12月8日、連結子会社である株式会社ツルハが、株式会社ビー・アンド・ディーの吸収合併を決議しました。

ツルハHDはドラッグストア事業を展開しています。その子会社であるツルハが、愛知県内においてドラッグストア・調剤薬局を運営するビー・アンド・ディーを吸収合併することで、愛知県内における経営基盤の強化を図ることが狙いです。

ひかりファーマとスギ薬局

株式会社ひかりファーマは、株式会社スギ薬局に対して2018年に薬局1店舗を事業譲渡し、2023年には株式譲渡を実施しました。

譲渡側であるひかりファーマは、富山県・石川県を中心に13店舗の調剤薬局を展開していました。一方、譲受側であるスギ薬局は、ドラッグストアなど約1,500店舗の運営を行う大手企業です。

本件は、ひかりファーマの安定的な成長と、スギ薬局の北陸エリアへの事業拡大を目的に実施されました。

ココカラファインとフタツカHD

2020年11月、株式会社ココカラファインは、株式会社フタツカホールディングスの全株式を取得しました。

譲渡側のフタツカHDは、兵庫県神戸市を拠点として、調剤薬局・介護・保育といった各種事業のほか、医療モール開発事業を運営しています。

ココカラファインの主力事業である、調剤薬局事業のさらなる強化と、地域のヘルスケアネットワークの貢献を実現することが狙いです。

ドラッグストア業界でM&Aを活用するメリット

ドラッグストア業界では、M&Aが積極的に実施されています。M&Aを活用するメリットについて紹介しますので、順番に見ていきましょう。

事業拡大やコスト削減につながる

事業拡大を目指す買い手側にとって、会社の買収による店舗数の増加などで事業を拡大させることが可能です。結果として、コスト削減や売上アップなどを見込めます。

店舗数の増加に伴い取扱医薬品の数も増え、最終的には大量仕入れが可能となり、コスト削減が望めます。また、売り手側が持つ経営ノウハウや地域社会との関係性も継承でき、売上の向上が期待できるでしょう。

薬剤師不足・後継者問題を解消できる

地方のドラッグストアは小規模に運営され、中小企業と同様に、少子高齢化から生じる後継者問題に直面しています。これらの店舗では、薬剤師不足と収益性の問題が後継者不足をさらに助長しており、社内で後継者を見つけるのも困難な状況です。

その解決策の一つとして、M&Aによる大手ドラッグストアへの売却や事業承継が考えられます。売り手の課題である後継者問題を解決できると共に、買い手の課題である人材不足を解消できる可能性があります。

ドラッグストア業界におけるM&A成功のポイント

ドラッグストア業界でM&Aを行うことには大きなメリットがあります。M&Aを成功させるためには、以下のポイントを押さえておきましょう。

地域密着型である

M&Aを進めていくうえで、相手先は重要です。ドラッグストア業界でM&Aの取引相手を選ぶ際には、地域密着型の企業であるかが要所となります。

ドラッグストアが地域にしっかり根ざしていると、近隣住民から高い評価を得ることが可能です。地域包括ケアの推進が図られるなかでは、地域との関係性は非常に大切なポイントとなってきます。

そのため、地域に密着し、適切な立地にある相手を選ぶことが成功に直結するでしょう。

店舗立地と有資格者の有無

ドラッグストアの経営は、交通アクセスの良さや立地条件に大きく左右されます。郊外に位置する場合でも、国道沿いや広い駐車場を持つ店舗は集客に有利になるので、郊外だからといって不利とは限りません。

また、薬剤師や登録販売者などの有資格者を多く抱えていることも重要です。これにより、専門性の高いサービス提供が可能になり、店舗の魅力が増します。薬剤師等が不在の場合には、販売できない商品もあるため、そうした面でも有利となります。

ドラッグストア業界における今後のM&Aの課題と展望

最後に、ドラッグストア業界における、今後のM&Aの課題と展望について解説します。少子高齢化により、後継者不足や需要の増加が期待される業界のため、慎重に検討していかなければなりません。

中小規模の企業が大手調剤薬局の傘下に入るケースが増加

ドラッグストア業界は概ね、以下のような問題に直面しています。

  • ・薬剤師不足
  • ・医療費削減政策によるドラッグストアの収益性の低下
  • ・経営者の高齢化

特に「薬剤師不足」は、収益に影響を与える重大な問題の一つです。

このような状況下では、中小規模の調剤薬局の多くが、大手の傘下に入る形でM&Aが増加しています。少子高齢化が深刻化することで、こうしたM&Aはさらに活発化していくと考えられています。

異業種からの参入・デジタル化が進む

デジタル化と異業種からの参入により、ドラッグストア業界は大規模な変革を遂げています。2021年度には、ドラッグストアの調剤額が約1兆1,738億円に達し、全体の約16%を占めるまでに成長してきました。

この成長の背景には、Amazonなどの大企業が市場に参入し、オンライン診療や服薬指導の需要が高まっていることが挙げられます。

これらの変化は、今後ますます業界動向に新たな動きをもたらすこととなり、異業種とのM&Aは進んでいくと考えられます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社上席執行役員土屋 淳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 上席執行役員
土屋 淳

大手ハウスメーカー入社後、経営者や資産家等に対し、相続対策や資産運用のための戸建・集合住宅の販売・提案営業に従事した。
当社に入社後、2008年からは主に調剤薬局業界のM&Aに従事し、専門部署を立上げ、社内最大のチームを率いて業界トップクラスの実績を残す。
2022年10月より上席執行役員に就任。

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