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事業承継特別保証制度について
後継者が中小企業を引き継ぐ際、個人保証や資金面の不安が大きな壁となることがあります。そうした課題を解消するために設けられたのが「事業承継特別保証制度」です。
本記事では、2025年5月26日時点での制度の仕組みや利用要件、後継者にとってのメリット、活用時の注意点について、わかりやすく解説します。
このページのポイント
~事業承継特別保証制度とは?~
事業承継特別保証制度は、後継者が事業を引き継ぐ際に個人保証なしで融資を受けられる制度です。この制度は、後継者の経済的・心理的負担を軽減するための重要な支援策ですが、利用には厳格な要件が設けられています。
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事業承継特別保証制度とは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資対象 |
①保証の申し込み日から3年以内に事業承継を予定している中小企業 ②令和2年1月1日から令和7年3月31日までに事業承継を完了した中小企業で、承継日から3年以内の企業 上記のいずれかに該当し、以下の要件をすべて満たす中小企業
|
| 資金用途 | 事業資金 |
| 融資限度額 | 2億8,000万円(組合などは4億8,000万円) |
| 融資期間 | 10年以内(据置期間1年以内を含む) |
参考:事業承継をお考えの方|一般社団法人 全国信用保証協会連合会
中小企業の事業承継では、後継者が金融機関から借入を行う際に個人保証を求められるケースが多く、心理的・経済的な負担が障壁となってきました。「事業承継特別保証制度」は、こうした課題を解消するために創設された信用保証制度で、一定の要件を満たす中小企業に対して、経営者保証を不要とする形で保証を行います。令和2年4月より運用が開始されており、事業承継の円滑化を目的としています。
申し込み要件
事業承継特別保証制度を利用するためには、以下いずれかの条件に該当する必要があります。
- 保証申込受付日から3年以内に事業承継を予定し、事業承継計画を有する法人
- 令和2年1月1日から令和7年3月31日までに事業承継を実施し、事業承継日から3年を経過していない法人
そのうえで、以下の4つの要件をすべて満たしていなければなりません。
- 資産超過
- 直近期の決算において純資産がプラスであること(=資産ー負債がプラス)
- EBITDA有利子負債倍率が10倍以内
- (借入金・社債-現預金)÷(営業利益+減価償却費)で算出
- 法人と個人の分離
- 法人と個人の経理・資産が明確に分けられていること
- 返済緩和している借入金が無いこと
- 金融機関との返済条件緩和等のリスケ実績が無いこと
これらの要件は、後継者の負担軽減と制度の健全な運用を両立させるために設けられています。
保証金額・期間
事業承継特別保証制度では、最大2億8,000万円、組合等の場合は4億8,000万円までの保証が受けられます。
対象資金は、運転資金や設備資金などの事業資金全般であり、既存の個人保証付きプロパー融資の借り換えも可能です。保証期間は、一括返済の場合は1年以内、分割返済の場合は10年以内とされ、据置期間も最長で1年設けられています。
申し込み方法
事業承継特別保証制度の申し込みは、与信取引のある金融機関を通じて行います。自社単独で信用保証協会へ申請することはできないため、まずは日頃から取引のある金融機関へ相談することからはじめましょう。制度を利用するには、以下のような所定の書類を整えて提出する必要があります。
- 事業承継計画書
- 財務要件等確認書
- 借換債務等確認書
- ガバナンス体制チェックシート
経営者保証コーディネーターなどの専門家と連携しながら進めることで、審査通過の精度やスムーズな手続きが期待できます。書類準備や事前相談には一定の時間を要するため、早めの着手が望ましいでしょう。
事業承継特別保証制度における後継者のメリット
事業承継特別保証制度における、後継者の主なメリットとしては、以下が挙げられます。
一つずつ解説します。
個人保証が無いため安心して事業を引き継げる
中小企業が、金融機関からの借入する場合、多くの場合「経営者保証(個人保証)」が必要です。しかし、事業承継特別保証制度では、一定の要件を満たすことで、後継者が個人保証を負うことがなくなります。
これにより、後継者は万一の場合でも自宅などの個人資産を失うリスクから解放され、精神的ハードルを大きく下げられるでしょう。「保証リスクがあるから継がない」といった意思決定を回避できる点は、後継者の不在や後継者との合意形成に悩む企業にとっても大きな意義があります。
保証料率軽減により資金調達コストを抑えられる
事業承継特別保証制度を利用した際、所定の4要件(資産超過、EBITDA倍率、法人個人分離、リスケなし)を満たし、経営者保証コーディネーターの確認を受けた場合、信用保証料率が通常より大きく引き下げられます。
- 通常料率:0.45%〜1.90%
- 軽減後:0.20%〜1.15%
この差は、例えば1億円の借入時に最大70万円程度の差が出ることもあります。承継後の資金繰りに不安がある場合でも、保証料の負担軽減は大きな安心材料です。
柔軟な経営判断がしやすくなる
個人保証が不要であることや、資金調達コストを低減し得る事実は、後継者自身が負うリスクを大きく低減することにつながります。これにより、新規事業への投資や設備拡大、雇用増加といった、積極的な経営判断をしやすくなるでしょう。
特に、家族を養う立場にある後継者にとっては「もし失敗したら家計が破綻する」という恐怖から解放されることは、モチベーション面でもメリットです。将来的な企業成長にむけた攻めの経営スタイルに転換しやすくなり、事業継続・維持にとどまらず、中長期的な企業価値創出も期待できます。
後継者が事業承継特別保証制度を活用する際の注意点
後継者が事業承継特別保証制度を活用するには、厳格な要件や審査をクリアする必要があります。また、既存借入のすべてが対象となるわけではありません。
制度要件・審査をクリアしなければ利用できない
大前提として、制度は簡単に利用できるものではなく、定められた要件を満たさなければ利用できません。具体的には「資産超過」「EBITDA有利子負債倍率が10倍以内」「法人と個人の分離」「返済緩和している借入金が無いこと」といった4つの財務・ガバナンス要件をすべて満たす必要があります。
また、事業承継計画書をはじめとする複数の書類を整備し、金融機関および信用保証協会の審査が必要です。審査では、経営計画の実現可能性や後継者の適格性、ガバナンス体制の明確性なども確認されます。そのため、要件を満たしていても審査が通らないケースもあります。
このように、制度利用のハードルは低くないため、専門家のサポートのもとしっかりと準備のうえ、手続きを進めるのが望ましいでしょう。
すべての借入の保証を解除できるわけではない
事業承継特別保証制度では、既存の借入金を新たな保証付き融資に借り換えることが可能です。ただし、すべての借入が対象ではありません。対象となるのは事業資金に限られ、借り換えの合計額も保証限度額(2億8,000万円/組合等は4億8,000万円)までとされています。
例えば、事業以外の目的で借りた資金や、保証対象外の金融商品などは、制度を通じた借り換えや保証解除の対象にはなりません。
制度を利用する前に、既存の債務内容を金融機関と一緒に精査することが大切です。
まとめ
事業承継特別保証制度は、後継者の個人保証を不要とし、資金調達コストを軽減することで、心理的・経済的負担の大きい事業承継を後押しする制度です。ただし、制度の活用には厳格な要件をすべて満たす必要があり、事前準備や審査対応には専門家の支援が求められます。正しい理解と入念な準備をもって制度を活用すれば、企業の持続的成長と後継者の積極的な経営を実現できる可能性が広がります。
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よくある質問
- 事業承継特別保証制度の主なメリットは何ですか?
- この制度の主なメリットは、後継者が個人保証を不要とし、資金調達コストが軽減されることです。これにより、事業承継がスムーズに進みやすくなります。
- 事業承継特別保証制度を利用するための要件は何ですか?
- 制度利用には、資産超過、EBITDA有利子負債倍率10倍以内、法人と個人の分離、返済緩和の無い借入金など、4つの財務・ガバナンス要件を満たす必要があります。
- 制度利用時に必要な書類は何ですか?
- 必要な書類には、事業承継計画書、財務要件確認書、借換債務確認書、ガバナンス体制チェックシートなどがあり、これらを金融機関を通じて提出します。
- 事業承継特別保証制度で既存借入のすべてが対象となるわけではないのはなぜですか?
- 事業資金に関する借入のみが対象で、事業以外の目的で借りた資金や保証対象外の金融商品は対象になりません。
- 後継者にとって、個人保証が不要となることの重要性は何ですか?
- 個人保証が不要であれば、後継者は自宅などの個人資産を守ることができ、経済的・心理的負担を大きく軽減できます。これにより、後継者が安心して事業を引き継ぐことができます。






