合同会社はM&Aできる? 困難な理由や具体的な手法・手続きについて解説

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合同会社のM&Aについて

合同会社はM&Aが難しいとされがちですが、法律上は株式会社と同様、さまざまな手法が利用可能です。

本記事では、合同会社のM&Aが困難とされる理由と共に、持分譲渡・吸収合併・組織変更・事業譲渡といった具体的な手法とその流れ、注意点について詳しく解説します。

このページのポイント

~合同会社はM&Aできる?~

合同会社のM&Aは法律上可能ですが、社員全員同意が必要な持分譲渡や議決権平等制が合意形成を難化させます。出口戦略の乏しさから買い手が慎重になりやすいため、吸収合併・組織変更後の株式譲渡・事業譲渡など代替スキームを比較検討し、社員承認要件、登記・契約再締結、負債承継範囲を整理して実務負担と統合リスクを抑制することが重要です。

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~その他 M&Aについて~

合同会社でもM&Aは可能

合同会社は、2006年の会社法改正によって新たに認められた法人格の一つです。合資会社や合名会社と同様に、持分会社に分類されます。帝国データバンクによれば、近年では合同会社の設立数が増加していると報告されています。

2024年「新設法人」動向調査|株式会社 帝国データバンク

結論として、合同会社であってもM&Aを実施することは可能です。会社形態によってM&Aが制限されるような法律上の規定は無く、株式会社と同様に事業譲渡持分譲渡吸収合併といったスキームが適用できます。

ただし、M&Aの実務においては、合同会社と株式会社では組織構造に違いがある点に留意しなければなりません。合同会社では、出資者(会社法上は「社員」とも呼ばれ、株式会社における株主を指すが、従業員の意味ではない)が経営を担うため、株主と経営者が分離している株式会社とは意思決定の構造が異なります。この違いにより、M&Aプロセスがより複雑になる場合があります。

合同会社のM&Aが困難な理由

合同会社における議決権の扱いのイメージ

合同会社は、出資者全員が経営に関与し、議決権も平等であるため、出資者が複数の場合にはM&Aにおける合意形成が難航しやすい法人形態です。さらに、株式を発行できないことや、上場できない点も、買収を難しくしている要素といえるでしょう。ここでは、合同会社のM&Aが複雑化しやすい理由について解説していきます。

議決権が平等なため合意形成のハードルが高い

合同会社では、出資者(社員)が同時に経営者でもあるため、全員が経営判断に関与します。特徴は出資比率に関わらず、原則として「一人一票」の議決権が与えられていることです。例えば社員が10人いる場合、一人分の持分を取得したとしても、意思決定において関与できるのは10分の1にすぎません。

このような仕組みは経営権の集中を難しくするため、M&Aを検討している合同会社の社員や買い手にとって、大きな障壁となる可能性があります。

買い手が将来的なメリットを感じづらい

合同会社は株式を発行できないため、資金調達の手段が限られています。さらに、上場(IPO)も認められておらず、買い手にとっては出口戦略を描きにくい点が課題です。買収先を選ぶ際、同業種の株式会社が選択肢にあるのであれば、あえて合同会社を選ぶ理由は少ないといえます。

また、合同会社では社員全員が意思決定に関与するため、M&A後の経営統合が円滑に進まない可能性があります。株式会社と比べて組織統治のルールが柔軟すぎる点も、統合後の一体運営において不安材料となり得るでしょう。さらに、合同会社という法人形態自体に馴染みがない企業も多く、買収に対して慎重な姿勢を取る傾向が見られます。

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合同会社で活用可能なM&A手法

合同会社で活用できるM&A手法は以下のとおりです。

それぞれの手法の特徴や、適したケースについて解説します。

持分譲渡

合同会社をそのままの形でM&Aする場合には、買い手が譲渡人から社員持分、すなわち出資の権利を取得することで、経営権を掌握することが可能です。持分の譲渡については、すべてを譲り受ける場合だけでなく、一部のみを取得する形でも実施できます。

手続きの流れ

主な手続きの流れは以下のとおりです。

手続き 詳細
持分譲渡契約書を作成する

主な記載項目は以下のとおり

  • 譲渡の対象となる持分の具体的な数または割合
  • 譲渡の対価として支払われる金額
  • 譲渡の効力発生日
合同会社の社員からの承認を得る 必ず全社員からの承認を得なければならない
登記手続きを履行する 業務執行社員や代表社員に関する会社情報の変更事項を法的に公示するために必要

注意点・ポイント

合同会社では、出資者である社員全員が経営に関与するため、持分を譲渡する際には全員の同意が必要です。一部の持分であっても例外ではなく、たった一人でも反対すればM&A自体が成立しません。

このルールは、家族経営や小規模なスタートアップのように、密接な信頼関係を前提とした経営形態に由来しています。そもそも、第三者への持分譲渡は制度上あまり想定されておらず、外部への売却に対しては高いハードルが課されています。

一方で、株式会社であれば株式の譲渡は原則として自由に行うことができ、仮に制限があっても株主総会の特別決議により譲渡が可能です。
こうした制度的および構造的な違いから、合同会社におけるM&A、特に持分譲渡は難易度が高いことを十分に理解しておく必要があります。

合同会社で持分譲渡がおすすめのケース

持分譲渡は、社員数が少ない合同会社において特に効果的なM&A手法とされています。社員が1名だけである場合や、全員の同意が確実に得られる関係性である場合には、他の手法に比べてよりスムーズに進められる可能性があります。

持分譲渡は、株式会社における株式譲渡と同様の仕組みであり、手続きも比較的シンプルです。契約書の作成、全社員からの同意取得、登記変更といった基本的なフローを順に踏むことで、コストや当事者の負担を抑えた売却が可能です。
社員構成や合意形成の見通し次第では、最も現実的かつ効率的な選択肢となることもあります。そのため、合同会社のM&Aを検討する際には、まず持分譲渡が実行可能かどうか確認することが重要です。

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吸収合併

合同会社同士のM&Aにおいて、「吸収合併」は法的に認められている手法の一つです。

吸収合併とは、複数の会社を一つに統合する方法です。一方の会社が「存続会社」として法人格を維持し、もう一方は「消滅会社」となり、すべての権利義務が承継されます。

合併後は単一の法人格に統合されるため、法的には完全な経営統合が実現します。これにより、業務の一本化やコストの削減が図られると共に、経営資源を集中させることでシナジー効果も期待できます。

手続きの流れ

主な手続きの流れは以下のとおりです。

手続き 詳細
合併契約書を締結する

主な記載項目は以下のとおり

  • 合併の効力発生日
  • 対価の内容
  • 承継する権利義務の範囲など
社員から同意を得る 合同会社における合併は原則として全社員の同意が必要
消滅会社だけでなく、存続会社側も承継内容によっては同意取得が必要なケースがある
登記・届出 合併効力発生日以降、消滅会社は解散登記を行い、存続会社が新たに承継事項の登記を行う
法務局への登記に加え、税務署などへの各種届出も必要

注意点・ポイント

合併によって消滅する合同会社のすべての資産・負債・契約関係は、存続会社に包括的に承継されるため、契約相手との事前調整や債務引き受けに関する整理が不可欠です。合同会社では、社員がそのまま経営者であるため、合併に関する同意を得るには、実質的に経営者全員の納得が求められます。

特に少人数で構成され、強い信頼関係に基づいて運営されている組織では、意見調整が難航するケースも少なくありません。また、株式会社同士の合併と比較すると、買い手側にも合同会社という法人形態に対する十分な理解と、一定の柔軟な対応が求められます。

合同会社で吸収合併がおすすめのケース

グループ内の再編やスタートアップ同士の統合など、合同会社同士の統合を検討している場合には、吸収合併が有効な手法です。持分譲渡では全員の同意が必要であり、手続きが煩雑すぎると感じる場合や、法人格を一つにまとめて組織をシンプルにしたいときにも適しています。

また、買い手企業が合同会社を将来的に株式会社へと転換することを前提に吸収するケースもあります。合併によって契約関係や事業体制を一本化できるため、運営効率を重視する場面においては、非常に有効な選択肢です。

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株式会社への変更後に株式譲渡

合同会社形態のままでの売却が難航する場合には、事前に株式会社へ組織変更を行い、そのうえでM&Aを実施する選択肢も考えられます。

株式会社は、社会的な信用力や制度の整備状況、資本政策における柔軟性などの面で買い手にとって魅力があり、買い手が見つかりやすくなるほか、高値での売却を期待できる点もメリットです。

一方で、合同会社では社員が経営に直接関与するため株式会社への組織変更には、社員全員の同意が必要です。合意形成が難航しやすい点には注意しましょう。

手続きの流れ

主な手続きの流れは以下のとおりです。

手続き 詳細
社員全員の同意を取得する 組織変更には、合同会社の全社員(出資者)の同意が必要
定款の変更とあわせて、法務局への登記申請を行う
株式会社設立登記と資本金設定を行う 株式会社としての定款を整備し、新しい株主構成や資本金額を設定
株式の割当や役員構成も見直す
M&A(株式譲渡)実行へ進む 組織変更後は、株式会社の株式を譲渡する形で経営権を移転可能

注意点・ポイント

組織変更を行うには全社員の同意が不可欠であるため、社員間での利害調整が難航する可能性があります。また、株式会社へ移行した後は、株主と経営者が分離される仕組みとなるため、これまでとは異なる経営体制とのギャップに戸惑いを感じることもあるでしょう。
組織変更によって取引先や金融機関などの外部関係者に影響が及ぶケースもあるため、こうした関係先には事前の丁寧な説明や慎重な段取りが求められます。

合同会社で株式会社化して売却するのがおすすめのケース

業種的に上場企業や外資系企業が買い手候補となる場合には、合同会社のままでは買い手が見つかりにくいことがあります。将来的に売却額の最大化を図りたい場合や、より多くの買い手候補を視野に入れたいと考えるのであれば、株式会社への移行も検討すると良いでしょう。

また、ベンチャーキャピタル(VC)や外部株主の参入を検討しているケースでは、株式会社の制度を前提とする場面が多いため、早めに株式会社へ移行しておくことが得策といえるでしょう。

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事業譲渡

事業譲渡とは、会社が保有する事業の一部または全部を第三者に譲渡、すなわち売却する方法です。会社そのものを売却する「持分譲渡」とは異なり、譲渡する範囲を柔軟に選べる点が特徴です。

この手法では、法人格を維持したまま一部の事業だけを切り出せるため、買い手との条件調整がしやすく、従業員や取引先への影響も比較的抑えやすいメリットがあります。

手続きの流れ

主な手続きの流れは以下のとおりです。

手続き 詳細
譲渡対象事業の範囲を確定する 資産・負債・契約・従業員など、譲渡対象となる項目を明確にする
事業譲渡契約書の締結 譲渡対象や対価、譲渡日などを明記する
買い手と合意し契約締結
社員の過半数の同意を得る 合同会社では、会社法第590条により業務執行に関する決定には社員の過半数の同意が必要
資産・契約・許認可等の個別移転手続きを行う 株式譲渡と異なり、不動産・売掛金・契約等は個別に名義変更が必要
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注意点・ポイント

事業譲渡を行う場合、他の手法とは異なり社員全員の同意は不要ですが、過半数の同意が必要です。社員数が少ない場合には比較的調整しやすいですが、多人数の場合には手続きや調整の負担が大きくなります。

また、事業譲渡では権利や資産が一括で移転されるのではなく、不動産、契約、債権、知的財産など、それぞれ個別に移転手続きを行わなくてはなりません。契約書の再締結や、相手先からの承諾を求められる場面もあり、実務上の手間がかかります。

こうした理由から、事業譲渡では買い手が負債を引き継がないことが一般的です。その結果、売り手側には債務や未処理リスクが残るため、慎重な資産・負債の精算が求められます。

合同会社で事業譲渡が向いているケース

持分譲渡のように全社員の同意を得ることは難しいものの、過半数の社員とは信頼関係が築けている場合には、事業譲渡が有効な選択肢です。また、売り手が会社全体ではなく、一部の事業だけを売却したいと考えているケースや、買い手が会社全体ではなく特定の事業にだけ関心を持っているケースにも適しています。

さらに、売り手側が契約の整理や資産の切り出しに対応可能であり、個別の調整に応じられる体制が整っている場合には、事業譲渡を選ぶことで柔軟かつ円滑なM&Aを実現できる可能性があります。

まとめ

合同会社でもM&Aは可能ですが、全社員の同意が必要な持分譲渡など、株式会社に比べて実務上のハードルの高い内容が多く存在します。組織変更や事業譲渡、吸収合併といった代替手法を理解し、自社の状況や目的に合った選択をすることが重要です。信頼関係や組織構造、契約内容に応じて、最適なM&Aの形を見極めましょう。

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よくある質問

  • 合同会社でもM&Aは実施できますか?
  • 可能です。法律上は株式会社と同様に持分譲渡・吸収合併・事業譲渡・組織変更後の株式譲渡など多様な手法が利用できます。
  • 合同会社のM&Aが難しいといわれる主な理由は何ですか?
  • 社員全員が経営に関与し議決権が平等なため合意形成が困難であることと、株式発行や上場ができず買い手の出口戦略が描きにくいことが挙げられます。
  • 持分譲渡には社員全員の同意が必要ですか?
  • はい。合同会社では出資者=経営者であるため、一部持分でも第三者へ譲渡する場合は全社員の同意が不可欠です。
  • 株式会社へ組織変更してから売却するメリットは?
  • 社会的信用力や資金調達面で魅力が高まり買い手が見つかりやすく、高値売却を期待できます。ただし変更には全社員の同意が必要です。
  • 吸収合併を行う際の注意点はありますか?
  • 消滅会社の全権利義務を存続会社が包括承継するため、債務引受や契約調整を事前に整理する必要があります。また両社とも社員全員の同意が求められます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社執行役員 コーポレートアドバイザリー部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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