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学校法人のM&Aは、経営改善や教育の質の向上を目指すうえで、重要な戦略の一つです。本記事では、学校法人におけるM&Aの事例や活用するメリット、今後の動向などについて詳しく解説します。
少子化の進行や、教育ニーズの多様化に対応するための新たな取り組みとして、学校法人のM&Aがどのように活用されているのか、その実態と可能性を探ります。
教育業界でM&Aを成功させるためのポイントを知りたい方や、M&Aを検討中の経営者様は、最後までご参照ください。
M&Aの前に押さえておきたい学校法人の基本情報
M&Aに言及する前に、まずは学校法人の基本情報について押さえておきましょう。
学校法人とは、私立学校を設置・運営する主体であり、公益法人の一つです。その詳細な定義と特性を理解することは、M&Aの前提となります。
学校法人の定義
学校法人は、私立学校(幼稚園、中学校、高校、大学など)を設置・運営する主体的な機関であり、公益法人に該当します。学校法人に関する詳細は、以下の一覧表のとおりです。
項目 | 説明 |
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設立 |
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運営体制 |
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解散 |
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準学校法人 |
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学校法人の特色
学校法人は、私立の幼稚園から大学院までの設置を目的に設立される公益法人の一つです。設立する場合は、文部科学省令に定められた手続きに従って寄附行為を行い、所轄庁の認可を受ける必要があります。
国立・公立・学校法人の主な違いは以下のとおりです。
- ・国立:国により設置される
- ・公立学校:地方自治体により設置される
- ・学校法人:民間により設置される
学校法人の特徴は「自主性」と「公共性」を兼ね備えていることです。「自主性」とは、各学校が創意工夫により良い教育を実施すること。「公共性」とは、良い教育が公共の利益に貢献することであり、学校法人はその両面を兼ね備えています。
学校法人に対する所轄庁(文部科学大臣および都道府県知事)の権限は、公立学校により限定されており、何らかの権限を行使する場合も「大学設置・学校法人審議会または私立学校審議会の意見を聴かなければならない 」とされています。
学校法人のM&A動向・市場規模
少子化問題が進行するなか、学校法人のM&Aは、私立大学を中心に活発化しています。
文部科学省の「私立学校・学校法人に関する基礎データ」によれば、令和4年(2022年)5月時点で大学・短期大学は1,116校あり、そのうち私立学校が915校と、全体の82.0%を占めています。

出典:文部科学省 私立学校・学校法人基礎データ
私立学校の数は短期大学を除き、緩やかな増加傾向です。

出典:文部科学省 私立学校・学校法人基礎データ
しかし、入学定員に対する充足率は、私立大学・短期大学の約19%が80%未満となっており、生徒の獲得競争が激化していることが予測されます。
このような状況下で、M&Aは学生不足の改善に有効な手段です。また、各学校の強みや特徴をかけ合わせることで、教育研究の強化を目指す手段としても活用されています。

出典:文部科学省 私立学校・学校法人基礎データ
学校法人のM&A事例
学校法人におけるM&Aでは、少子化対策や教育の質の向上を目指して、多くの学校法人が新たな組織体制を模索しています。下記に挙げる事例を、順番に見ていきましょう。
学校法人大阪医科大学と学校法人大阪薬科大学
学校法人大阪医科大学と学校法人大阪薬科大学は、少子化への対策として、2016年4月に、大阪薬科大学を消失法人とする吸収合併を行いました。
その結果、学校法人大阪医科薬科大学へと法人名を変更します。その後、チーム医療の推進と教育面の統合・融合を目指し、2021年4月に、大阪医科大学と大阪薬科大学が統合した大阪医科薬科大学を創設しました。
ISIグローバル株式会社と株式会社日本産業推進機構
ISIグローバル株式会社は、国内最大級の日本語学校の運営と専門学校、外国大学日本校、留学事業を展開しています。学校法人としての名称は、学校法人ISI学園です。ISIグローバル株式会社は、米国を含めた代理店のネットワークを広げ、「多国籍」というブランド力を持つ学校の位置付けを確立しています。
栄光HD株式会社と学校法人国際学園
栄光ホールディングス株式会社は2013年5月、子会社の株式会社栄光を通じて、学校法人国際学園との間で、業務提携契約と事業譲渡契約を締結しました。
教員養成専門である、日本教育大学院大学の事業を2014年4月1日付で譲渡するとともに、教育分野における各種技術革新に関する調査研究などで協業を行います。栄光ホールディングスは、このM&Aにより、教育分野でのさらなる成長と発展を目指しています。
東京工業大学と東京医科歯科大学
国立大学法人東京工業大学と国立大学法人東京医科歯科大学は2022年10月14日、統合に関する基本合意書を締結しました。
理工学や医歯学とのシナジー効果や先端研究の展開を期待しており、2024年度中の統合実施を目指しています。
学校法人天理大学と学校法人天理よろづ相談所学園
学校法人天理大学と学校法人天理よろづ相談所学園は、統合に関して、2021年4月に基本合意書を締結しました。目的は教育文化の融合、研究分野の連携、地域に貢献できる人材の育成、大学運営の財政基盤の確保などです。
その後、2023年に統合を実施し、天理大学と天理よろづ相談所学園が法人合併基本合意書を締結、天理大学と天理医療大学を統合しました。
学校法人でM&Aを活用するメリット
学校法人のM&Aでは、教育内容の充実、設備投資の効率化、ブランド力の強化など、多くのメリットが期待できます。
ブランド力強化による生徒募集力の向上などが期待できる
学校法人におけるM&Aは、相手側の学校法人が有するブランド力を活用することが可能です。そのため、生徒募集力や社会的評価の向上が期待できます。
また、他の学校法人の教育内容を取り入れることができるため、教育内容の充実や品質向上、生徒の満足度アップにも期待できるでしょう。
廃校せずに学校運営を継続できる
後継者不在や学生不足で学校運営の継続が困難な場合、M&Aを実施すれば、廃業せずに運営を継続することができます。廃校してしまうと、通っていた生徒は転校や転入を強いられ、勤務している教師や職員たちは働き口を失うことになるでしょう。
教育現場においても混乱がおよびますが、M&Aを実施すれば運営を続けることが可能となり、生徒の学びの場や、教員・職員の生活を守ることができます。
学校法人におけるM&A成功のポイント
学校法人のM&Aを成功させるポイントは、相手側の特性や経営方針を理解し、適切な準備と対策を行うことです。
学部やコース、教育環境などを確認する
M&Aを実施する相手先の学校法人がターゲットとしている学生のほか、設置している学部やコースを確認することが重要です。これらは学生数を左右する条件となり、学校法人の収益に影響を与えます。
また、教育環境や施設状況などを事前にチェックすることも必要です。教育環境が整備されていない場合、魅力的な学校に仕上げるまでに、時間とコストがかかる可能性があります。
経営方針を確認する
取引相手の管理体制や経営方針など、ガバナンスの確認が必要です。
ガバナンスに問題があると、不祥事などマイナスな事態が発生してしまう恐れがあります。教員や職員、学生の起こしたトラブルは、学校の評判に悪影響を及ぼすと認識しておかなければなりません。
学校法人における今後のM&Aの課題と展望
学校法人のM&Aは、経営基盤の強化や事業エリアの拡大、サービスの品質向上など、多くの課題と展望を有しています。
異業種間によるM&A
学校法人では、経営基盤の不安定さが課題です。新規事業開発やシナジー効果のために、異業種のM&Aを行うことが求められています。特に、教育業界以外の企業とのM&Aは、新たなビジネスモデルの創出や、教育サービスの多様化を実現する可能性があります。
しかし、異業種間のM&Aは、文化の違いや経営方針の調整など、成功にはさまざまな課題が伴うことが通常です。したがって、成功させるには事前の十分な準備と、その後の統合プロセスの管理が欠かせません。
事業エリアの拡大・サービスの品質向上
M&Aによって、事業エリアの拡大やサービスの品質向上を行うことが求められています。
少子化による競争激化やニーズの多様化、変化する学習カリキュラムへの対応手段として、M&Aを活用することが期待されています。
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