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産業用・業務用機械製造業界のM&Aは、企業の成長と競争力強化において重要な役割を果たします。
本記事では、産業用・業務用機械製造業界におけるM&Aの定義や代表的な事例、成功するためのポイントについて詳しく解説します。
M&Aの前に押さえておきたい産業用・業務用機械製造業界 の情報
M&Aについて触れる前に、産業用・業務用機械製造業界の定義や、代表的な企業、業界ならではの特色といった、基本的な情報を押さえておきましょう。
産業用・業務用機械製造業界の定義
産業用・業務用機械製造業界とは、事業に用いられる機器・機械の製造事業を営む業界です。
日本産業機械工業会によれば、産業用・業務用機械製造業界とは「人の作業を補助・代行し、困難な作業や環境を克服するための機械」であるとされています。産業機器は多様な業界や工場で使用され、人々の生活を支える重要な機器です。
代表的な企業
産業用・業務用機械製造業界の代表的な企業としては、以下の4社が挙げられます。
- ・三菱重工業株式会社
- ・ダイキン工業株式会社
- ・株式会社 小松製作所
- ・株式会社クボタ
産業用・業務用機械製造業界の特色
産業用・業務用機械には、さまざまな種類があります。主要なものとしては、下表のとおりです。
産業用機械 | 業務用機械 | |
---|---|---|
種類の例 |
|
|
産業用・業務用機械はクライアントのニーズに特化した製品製造が求められるため、受注生産型であることが一般的です。クライアントの属する業界の動向に応じて、需要が変動しやすいことも特徴です。
産業用・業務用機械製造業界のM&A動向・市場規模
産業用・業務用機械製造業界は、2003年度から2004年度の海外経済成長の影響を受けており、成長率を伸ばしました。
その後、2008年度に発生したリーマンショックでは、業務用機械製造業への影響は少なかった一方、生産用機械器具製造業界の2009年度の昨年度対比50.1%にまで大きく減少しました。
2010年代には多少の増減はありましたが、両業界とも概ね増加傾向でした。
2019年に発生したコロナウイルスの流行禍では両業界とも影響を受け売上高が減少したものの、2021年度に入り回復しました。2022年度の売上高は生産用機械器具製造業で29兆8023億円、業務用機械器具製造業は14億3422万円です。

産業用・業務用機械製造業界のM&A事例
産業用・業務用機械製造業界では、企業の成長と競争力強化を目的としたM&Aが活発に行われています。以下に、代表的な事例を紹介します。
ナ・デックスとトガシ技研
2023年4月 、株式会社ナ・デックスは、株式会社トガシ技研の主力事業である設備・機械加工事業を譲り受けると共に、譲り受けた事業の受け皿となる出資子会社の設立を決定しました。
買い手となったナ・デックスは、主力事業の譲受による販路拡大・技術力強化を図ると共に、新会社を含むグループ各社との更なる連携およびノウハウの相互活用を通じた多面的なソリューションの展開を目指しています。
リックステクノとCEM
2022年6月、 リックステクノ株式会社は、株式会社CEMの全株式を取得し、子会社化を実施しました。
売り手となったCEMは、産業用機械の制御盤や搬送機械の製作を行う企業です。リックステクノは、産業機械の製造において、電装部分の大部分を外注していることに課題を感じており、内製化を検討していました。CEMをグループに迎えることにより、念願であった「グループ内での機電一体」を実現しました。
レンゴー株式会社とFCL株式会社
2022年6月、レンゴー株式会社はFCL株式会社に対して第三者割当増資による20%の資本参加を実施しました。
レンゴーは、今回の資本参加により、FCL株式会社の経営基盤の強化支援を行うと共に技術面でのパートナーシップを深め、レンゴーグループにおける生産技術を支える設備開発力のさらなる向上を図るとしています。
株式会社南陽と株式会社AQUAPASS
2024年2月、株式会社南陽は、株式会社AQUAPASSの全発行済株式を取得し、子会社化することを決定しました。
買い手となった南陽グループの営業力と、売り手となったAQUAPASSの技術力を融合させることで、より幅広い分野におけるシナジー創出を目指しています。
株式会社マサルファシリティーズと空気設備工業株式会社
2024年3月、株式会社マサルファシリティーズは、空気設備工業株式会社の株式を取得し、完全子会社化することを決議しました。
両社事業の協業化の強化および、関東圏におけるマーケティング展開と、グループの関西圏進出への拠点としての活用などが、このM&Aの目的です。
産業用・業務用機械製造業界でM&Aを活用するメリット
産業用・業務用機械製造業界で、M&Aを活用する主なメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
- ・事業を内製化できる
- ・技術と人材を獲得できる
それぞれ見ていきましょう。
事業を内製化できる
業務の効率化やコストの削減を目的とした内製化を実現するには、多くの場合、自社が保有していない技術やノウハウ、人材が必要です。
現状外注している分野については、M&Aで委託先を買収すれば、外注工程を内製化できます。サプライチェーンの内製化により業務効率や生産性の向上、安定供給が実現するほか、一括仕入れや大量生産などによりコスト削減といったスケールメリットがあります。
技術と人材を獲得できる
産業用・業務用機械製造業界が属する製造業界では、団塊世代の退職に伴う人材の確保や育成、技術継承が課題です。しかし、新たな人材の確保、育成のためには多くの時間とコストがかかります。
そこで、M&Aを実施すれば、買い手企業は売り手企業の技術と人材の両方を確保可能です。時間とコストの削減に加え、両社が有する技術力やノウハウの融合によりシナジー効果が生まれ、これまでに無い革新的な技術の獲得も期待できます。
産業用・業務用機械製造業界におけるM&A成功のポイント
ここでは、産業用・業務用機械製造業界でM&Aを成功させるための、2つのポイントを紹介します。
デューディリジェンス を十分に実施する
産業用・業務用機械製造業界を含む製造業ならではの特徴には、サプライチェーンやDX化に伴う設備投資などが挙げられます。そこで欠かせない工程が、デューデリジェンスです。
デューデリジェンスが不十分だと、M&A後に赤字販売の発覚や、想定外の設備投資が必要などリスクがあります。また、近隣住民との騒音トラブルや、廃棄物や有害物質に関する法令・規制の違反による公共機関との訴訟リスクなど、目に見えない問題が潜んでいる可能性も否定できません。
M&Aの実施にあたっては、デューデリジェンスを厳密に行い、留意点などを事前にしっかり把握しておくことが重要です。
クライアントの属する業界動向をチェックする
産業用・業務用機械製造業界の売上高は販売先の属する業界動向に大きく依存します。そのため、M&Aの取引相手を選ぶ際には、売り手企業の業績だけでなく、クライアントが属する業界動向の分析も重要です。
たとえ、M&Aの実施時点では売り手企業のクライアントが成長傾向にあっても、その好調が長く続くとは限りません。数年後に売り手企業のクライアントが縮小してしまえば、機会の需要や、売り手企業の収益も、大きく減少する可能性があります。
そのため、産業用・業務用機械製造業界でM&Aを実施し、長期的な企業成長を実現するためには、相手企業のクライアントが将来どのように変化するのか、予測することが大切です。万が一、市場のニーズが変わった際に、新たな製品やサービスを開発できる技術力やノウハウがある企業であるのかを見極め、慎重に判断することが求められます。
産業用・業務用機械製造業界における今後のM&Aの課題と展望
産業用・業務用機械製造業界では、新興国を中心に、インフラ建設で使用する業務用・産業用機械の需要が増加傾向です。一方、日本の産業用・業務用機械製造業界は数値的には成長傾向にあるものの、全体としてみればほぼ横ばいになっており、市場の成熟化が伺えます。今後も事業の継続および成長を目指す場合には、海外への進出は避けられないでしょう。
また、近年の技術進化に伴い自社でIT人材の教育を進める企業がある一方、IT人材の教育については不足感が量・質共に高まっている企業も少なくありません。人材不足解消と事業のスピーディなDX化を実現するため、同業種だけでなく、AIやIoTの開発技術を持つ異業種とのM&Aも活発化していくことが見込まれます。
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