設備工事(建築工事 )業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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近年、建築設計業界ではM&Aを通じた事業拡大や人材確保、事業承継などの動きが活発化しています。少子高齢化や建設市場の縮小により、厳しい経営環境が続くなか、M&Aは成長戦略における有力な選択肢の一つとなっています。

建築設計業界のM&Aについて、最新の動向や具体的な事例を詳しく解説しているのが本記事です。M&Aを実施するメリットや成功のポイントなどにも触れていますので、M&Aを検討している経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

M&Aの前に押さえておきたい建築設計業界の情報

建築設計業界は、建築物の設計や工事管理を行う専門的なサービスを提供する業界です。M&Aを検討する際は、業界の定義や特色、代表的な企業を把握しておくと良いでしょう。

建築設計業界の定義

建築設計業界とは、日本標準産業分類における、建築設計業を事業としている業界です。

総務省の定義によれば「建築設計、設計監理などの土木・建築に関する専門的なサービスを提供する事業所」が、建築設計業に該当します。

設計事務所は、建設プロジェクトの計画立案や設計図面の作成、工事の管理などを担当するのが一般的です。建築設計事務所は、各自の専門分野により、意匠設計・構造設計・設備設計・組織設計の4つに分類されます。

それぞれの業務範囲は、下表のとおりです。

建設設計事務所の分類概要
意匠設計事務所 外観や間取りなどのデザインに関する設計を行う
構造設計事務所 意匠設計事務所による設定をもとに、骨組みや土台の設計、柱や梁などの設置等を行う
設備設計事務所 給排水や空調、電気等のインフラ設備に関する設計を行う
組織設計事務所 先に挙げた3つの設計を総合的に取り扱う

代表的な企業

建築設計業界における中心的な企業は、以下のとおりです。

  • ・株式会社日建設計
  • ・株式会社三菱地所設計
  • ・株式会社久米設計
  • ・株式会社日本設計

これらの企業は、大規模な建築プロジェクトを多数手がけ、高い技術力と豊富な実績を有しています。

建築設計業界の特色

設計事務所は通常、土地の調査や基本設計、建物の設計、施工管理などの業務を担います。しかしながら、実際の施工はハウスメーカーや工務店が行うケースが多いことが、建築設計業界の特色です。

建築設計を行う際、資格は必須ではありませんが、大規模な設計を請け負うためには、建築士の資格が求められます。特に、一級建築士や二級建築士の国家資格を取得していれば、大規模プロジェクトに携わる機会が広がります。

建築設計業界のM&A動向・市場規模

建築設計業界におけるM&Aの動向と、市場規模について見ていきましょう。

国内の建設業に関する売上高の総額は、2年連続で減少傾向にあり、2021年度は約14兆7,243億円(前年比2.0%減)となりました。一方、海外における契約金額は、前年の減少から再び増加に転じ、約2兆3,537億円(前年比47.2%増)を記録しています。

他方で、人手の少なさも問題になっています。上記の調査によると、建設業全体の常時従業者数は約18万人(前年比0.4%増)です。

民間企業による経営動向調査では、79%※の企業が設備設計者の不足を、65%※が意匠設計者の不足をそれぞれ感じており、マンパワー不足が深刻化していることが伺えます。また、こうした人材不足の影響により「受注機会の逸失」を懸念していると、83%※の企業が回答しています。※いずれも複数回答

加えて、建設業就労者の高齢化も著しく、担い手の確保と共に、次世代への技術・ノウハウの承継が大きな課題となっています。こうした状況を踏まえ、建築設計業界では、M&Aを通じた人材の確保や事業承継が注目されています。

建設業就業者の高齢化の進行

引用:最近の建設業を巡る状況について│国土交通省

建築設計業界のM&A事例

近年、建築設計業界では、M&Aを活用した事業拡大や専門性の強化、グループ力の向上などを目的とした企業再編の動きが活発化しています。ここでは、代表的な事例をいくつか紹介します。

BDPとPattern Design Limited

日本工営株式会社の完全子会社である、建築設計会社BDPは、英国のPattern Design Limitedの株式を100%取得しました。

Pattern社は、スポーツセクターに特化した建築設計を手がけてきた会社です。BDP社は、自社のネットワークとPattern社の専門ノウハウ・経験を共有することで、事業拡大を目指しています。

ERIホールディングスと北洋設備設計事務所

ERIホールディングスは、北洋設備設計事務所の全株式を取得し、子会社化しました。

ERIホールディングスは「住宅・建築物に関する第三者検査機関として、安全・安心な街づくりに貢献する」という使命のもと、建築分野の事業を展開してきました。一方、北洋設備設計事務所は、公共事業に特化した建築設計事務所です。

両社が協働して事業を推進することで、北海道地域のインフラ整備と、グループ全体の企業価値向上を目指しています。

NJSと冨洋設計

株式会社NJSは、冨洋設計株式会社の一部株式を取得し、同社をNJSグループに迎え入れました。

この協業により、両社は事業領域の拡大を図ります。今後も現在の経営体制を維持しつつ、双方における経営効果の最大化を進めていく方針です。

サンキとアークテクノ

株式会社サンキは、株式会社アークテクノの株式を100%取得し、子会社化しました。

その結果として、これまで社外に委託していた設計業務を内製化することが可能になります。サンキが有する技術力と、アークテクノの設備設計業界におけるノウハウを融合させ、企業価値のさらなる向上を目指します。

パルマと令和エンジニアリング

株式会社パルマは、令和エンジニアリング株式会社の第三者割当増資を引き受け、同社を子会社化しました。

パルマは、セルフストレージ事業向けのビジネスソリューションサービスなどを展開するプロバイダーです。令和エンジニアリングは、建築・設計・不動産全般にまつわるコンサルティング業務を行っています。

今回の子会社化により、グループ力全体の向上と、付加価値の高いソリューションの提供を目指しています。

建築設計業界でM&Aを活用するメリット

建築設計業界においてM&Aを活用することには、人材確保や事業拡大、シナジー効果の創出など、さまざまなメリットがあります。

ここでは、M&Aが建築設計会社にもたらす主なメリットについて説明します。

人手不足を解消できる

建設業界では人材不足が深刻化しており、事業拡大を進めようにも、人員が足りなければ実現が困難となります。また、人手不足が原因で工期が延び、案件を確保できず、収益性を高められない企業も多いのが現状です。

M&Aを活用して譲渡企業と提携することで、専門的なスキルを持った人材を確保できます。特に有資格者を獲得できれば、費用をかけずに即戦力を得られ、規模の大きな案件への着手も可能となるでしょう。

事業を立ち上げる際のコストや時間を短縮できる

新規事業を立ち上げる場合、優秀な人材や機械設備の確保が必要不可欠です。M&Aでこれらを獲得できれば、事業の立ち上げにかかる時間やコストを大幅に短縮できます。

ゼロから新規事業を始めるのではなく、既存の事業を買収・提携することで、参入リスクを低減できるというメリットもあります。

シナジー効果がある

M&Aを実施すれば、両社の強みを融合させることにより、シナジー効果が期待できます。例えば、優秀な人材を確保することで自社の弱みを補完したり、優れた部分をさらに強化したりすることが可能です。

また、AIやデータ分析に強い他業種とM&Aを行えば、独自性の高い設計技術の創出や、プロセスを横断した一気通貫のサービス提供も可能となります。

これにより、他社との差別化を図り、市場における競争力の向上も期待できるでしょう。

建築設計業界におけるM&A成功のポイント

建築設計業界でM&Aを成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。

まず、M&A後にトラブルが発生した場合の対応を、事前に決めておくことが必要です。例えば、元のオーナーが責任を追う条項を契約書に含めるケースが考えられますが、オーナーが亡くなったあとも「相続者が責任を負う」という規定を設けることが重要です。

特に、建設業界では経営者の高齢化が進行しているため、こうした内容を契約書に盛り込んでおくことが賢明でしょう。

また、有資格者の在籍数が、設計事務所の評価において大切なポイントとなります。M&Aの相手先を選定する際は、必ず「資格者の有無」もチェックしてください。

M&Aに関する書類の作成や候補企業の調査などの手続きには、専門的な知識が必要とされます。正確かつスムーズにM&Aを進めるためには、建設業界への深い理解とともに、M&Aの専門知識を持つ仲介業者等への相談をおすすめします。

M&Aは、企業の将来を左右する重要な意思決定の一つです。上記のポイントを押さえつつ、慎重かつ戦略的に取り組むことが成功への鍵です。

建築設計業界における今後のM&Aの課題と展望

日本経済の低迷と人口減少に伴い、建築設計業界全体も停滞する可能性が高いと予測されています。加えて、円安などの影響により資材価格も高騰中です。建築市場の縮小とともに、収益確保が難しくなり、経営難に陥る設計事務所も出てくるでしょう。

建築設計業界では近年、経営者の高齢化が進んでいます。設計やデザインなどの分野は、個人の感性に大きく依拠するという特性から、後継者不足が顕在化しつつあるのが現状です。

こうした状況のなかで、自社のみでは事業拡大が難しくなっており、M&Aの必要性がますます高まっていくと考えられます。単に、経営基盤や人材確保のために同業種同士でM&Aを行うだけでなく、異業種との連携を目指したM&Aが、今後一層活発化していくことが見込まれます。

建築設計業界が直面する課題を乗り越え、持続的な成長を実現するためには、戦略的なM&Aが不可欠となるでしょう。同時に、M&Aを成功に導くためには、綿密な事前準備と的確な実行力が求められます。建築設計業界におけるM&Aの動向から、目が離せません。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 課長高橋 祐基
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 課長
高橋 祐基

生命保険会社を経て、独立系ブティックでアドバイザリー業務に従事。
当社参画後は、建設業界の大型M&Aや上場企業からのカーブアウト等、数々の成約実績を有する。


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