ゼネコン業界のM&A動向 昨今の事業買収・売却の事情やM&A事例を紹介

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ゼネコン業界では、人材不足や高齢化といった課題を背景に、M&Aによる業界再編が活発化しています。建設投資額の回復と共に市場は好調を維持している一方で、事業継続や成長のための戦略的なM&Aが注目されている状況です。

本記事では、ゼネコン業界のM&A動向や、M&A活用のメリット、具体的な事例まで詳しく解説します。

ゼネコン業界の概要

ゼネコン業界は、建設業界の中核を担う総合建設業として、日本の社会基盤整備を支えています。高速道路や鉄道、空港など、大規模インフラから地域の公共施設まで幅広く手がけるのが特徴です。ここでは、ゼネコン業界の定義や特色について解説します。

ゼネコン業界の定義

ゼネコンとは、土木および建築工事において本来独立したプロセスである「設計・施工・研究」を総合的に請け負う「総合建設業」です。発注者からの土木・建築工事の依頼を受け、業者に各業務を割り振り、工事全体をマネジメントする役割を担います。

ゼネコン業界の特色

ゼネコンは、「設計」や「施工」など単独の機能を持つ建築会社や工務店と比べると、事業規模が大きい点が特徴です。国や自治体からの案件を受注し、鉄道や道路などの社会基盤の構築、ダム建設などのインフラ整備や復興支援に携わるなど、工事規模の大きさと社会貢献度の高さもゼネコンならではといえます。

ゼネコンは、以下の4種に分類されます。

区分 基準
スーパーゼネコン 売上1兆円以上
準大手ゼネコン 1兆円未満3000億円以上
中堅ゼネコン 3000億円未満1000億円以上
地場ゼネコン 地域密着型

ゼネコン業界のM&A動向・市場規模

建設投資額(名目値)の推移
画像出典:建設投資見通し(2024年度)|概要

日本国内の建設投資額は1992年度に83兆9708億円とピークを迎え、以降減少傾向にあったものの、2012年度には42兆4493億円と増加傾向に転じました。その背景には、都市圏における再開発や、頻発する災害への復旧工事などがあります。2024年度の建設投資は73兆2000億円で、前年度より2.7%増加する見込みです。

ゼネコン市場は好調に向かっていますが、一方で人材不足や高齢化などの多くの課題を抱えており、M&Aによる再編が進んでいる状況です。国土交通省の調査によると、建設業の子会社数が急増しており、特にM&Aがその要因となっています。

ゼネコン業界でM&Aを活用するメリット

ゼネコン業界でM&Aを活用する主なメリットとして、以下の3点を紹介します。

建設業界へ参入しやすくなる

建設業界への新規参入を図る企業にとって、M&Aは有力な選択肢の一つといえます。

建設業界への新規参入には、事業に必要な許認可の取得や、専門資格や技術を持つ従業員の確保、工事用の設備の獲得など、さまざまな経営資源の準備が必要です。これらを一から集めるには、多くの時間とコストを要します。
しかし、M&Aによって既存のゼネコンを買収すれば、事業運営に必要な経営資源を、まとめて獲得できます。これにより、建設業界への円滑かつ迅速な参入が実現できるのです。

事業規模の拡大が期待できる

M&Aを実施することで、事業規模の拡大を図れます。特に、同業者同士でM&Aを実施する場合は、優秀な人材や設備を確保でき、効率的な事業拡大が可能です。

また、地域密着型の「地場ゼネコン」を買収すれば、相手企業が持つ顧客や地域シェアをそのまま獲得でき、他地域への参入も容易になります。新たな取引先を獲得する時間を短縮できるほか、公共事業の獲得もめざしやすいでしょう。

重機や資材入手につながる

既存のゼネコンを買収すれば、売り手企業が所有する重機や、木材・鉄骨・コンクリート資材などの資源も受け継げます。

特にクレーンやショベルカーといった大型重機は1台あたりの価格が高額なため、M&Aによって獲得できれば大きなコスト削減となります。

これらは、初期投資を抑えつつ事業を拡大したい企業や、急ぎの案件に対応したい企業にとって、非常に大きなメリットとなるでしょう。

ゼネコン業界のM&A事例

ゼネコン業界では、事業継続や成長戦略の一環として、さまざまな規模・目的のM&Aが実施されています。

メイホーホールディングス株式会社と株式会社三川土建

2022年12月、メイホーホールディングス株式会社は、関連会社の株式会社メイホーエクステックを通じて、株式会社三川土建の株式を取得し、孫会社化しています。地元、新潟県内で事業を展開し、県から「優良工事」評価を何度も得ていた三川土建は、メイホーホールディングス株式会社という大きなグループの傘下に入ることで事業の継続と成長を目指し、株式譲渡に踏み切りました。

その後2024年、メイホーホールディングス株式会社はメイホーエステックを含む子会社3社との吸収合併を実施しました。このグループ内再編に伴い、株式会社三川土建はメイホーホールディングス株式会社の子会社となっています。これにより、地域密着型の事業展開や技術力の向上、受注拡大に向けた体制整備が進められました。

OCHIホールディングス株式会社と芳賀屋建設株式会社

2022年10月、OCHIホールディングス株式会社は、芳賀屋建設株式会社の発行済み株式を取得し、連結子会社としました。

OCHIホールディングス株式会社は福岡県内を中心に建材、住宅設備機器の卸売業を展開しており、一方の芳賀屋建設株式会社は宇都宮市で建築・土木業を営む会社です。OCHIホールディングス株式会社は、芳賀屋建設株式会社の持つ関東圏での事業基盤を取り込むことで、事業エリアの拡大と共にグループ全体のシナジー効果を図りました。

清水建設株式会社と日本道路株式会社

2022年3月、清水建設株式会社は、日本道路株式会社の株式を公開買付け(TOB)で取得し、連結子会社化しました。これにより、グループの一員として経営資源や技術を共有し、協業体制の強化を図っています。

その後、清水建設は完全子会社化を目指して再びTOBを実施し、2025年5月15日〜6月25日の期間で買い付けを行い、6月25日に成立しました。さらに、同年7月には日本道路株式会社が東証プライムから上場廃止となり、完全子会社化されています。

完全子会社化によって、経営の一体化、親子上場の解消、ガバナンス強化、資金・技術・人材面でのシナジー創出が期待されています。

株式会社ミライト・ホールディングスと西武建設株式会社

2022年3月、株式会社ミライト・ホールディングスは、株式会社西武ホールディングスの連結子会社である株式会社西武建設の株式の95%を取得し、子会社化しました。株式会社ミライト・ホールディングスは、この子会社化により両社の経営資源を融合・補完しあうことで、自社が掲げる「みらいドメイン」の実現化を目指すとしています。

戸田建設株式会社と昭和建設株式会社

2021年9月、戸田建設株式会社は、昭和建設株式の57%を取得し、その後株式交換を行うことで同社を完全子会社化しました。戸田建設は、昭和建設が持つ茨城エリアでの経営基盤を活かしつつ、両社のノウハウと経営リソースを融合することで、さらなるシェア拡大を目指します。

オリエンタル白石株式会社と山木工業ホールディングス株式会社

2021年2月、OSJBホールディングス株式会社の連結子会社であるオリエンタル白石株式会社は、山木工業ホールディングス株式会社の株式を取得し、子会社化しました。この企業買収は株式譲渡の手法によって実行され、取得価額は37億3,000万円でした。

このM&Aの目的は、オリエンタル白石株式会社が山木工業ホールディングス株式会社の福島県いわき市における事業基盤を活かし、得意とする橋梁工事の受注拡大を図ることです。同時に、OSJBホールディングス株式会社のネットワークを活用し、山木工業ホールディングス株式会社が手がける港湾土木工事の受注機会を増やすことも狙いでした。

こうした相互補完によって、両社の競争力と事業領域の拡大が期待されています。

ゼネコン業界におけるM&A成功のポイント・注意点

ゼネコン業界のM&Aを成功させるためには、業界特有の要素を十分に理解し、適切な対策を講じることが重要です。ここでは、3つの注意点について解説します。

それぞれ見ていきましょう。

事前に資格取得者の有無を確認する

ゼネコン業界では、有資格者の数が受注できる工事の規模に影響します。そのため、売上を伸ばすには有資格者の確保が必要です。しかし、社内で人材を育成し、資格取得に漕ぎ着けるまでには時間や労力、資金がかかります。加えて、せっかく育成した人材が業界を離れることも珍しくありません。

M&Aによって有資格者を獲得することができれば、人材育成にかかるコストを削減できるでしょう。買い手側はM&A後に得られる権利や資格、なかでも建築施工管理技士や土木施工管理技士などの国家資格を持つ人材の在籍数に注目して候補企業の調査を行うことがポイントです。

地域特性・業界慣習に配慮してデューデリジェンスを行う

建設業界は地域密着型で、同業者や協力会社との結びつきが強く、地域ごとの商習慣やネットワークも重視される傾向があります。そのため、売り手企業の財務状況や契約関係に加え、地域社会との関係性や慣習も含めて実態を確認することが重要です。

特に、帳簿や契約書には現れにくい「グレーな取引」や「口頭での合意事項」などは、将来的な紛争や信用失墜につながる可能性があります。こうした潜在的リスクは、事前のデューデリジェンス(DD)を通じて丁寧に洗い出し、必要に応じて改善策を講じることが必要です。

地域特性や業界慣習に十分配慮したDDを実施することで、M&A後の想定外トラブルを防ぐことができるでしょう。

ステークホルダーとの関係を丁寧に維持する

M&A実施後は、従業員や取引先などの関係者に与える影響を最小限に抑え、信頼関係を維持・強化することが成功の鍵となります。特に建設業界では、協力会社との取引継続が事業の安定性に直結するため、買収による組織変更が与える不安に丁寧に向き合うことが不可欠です。

中核人材の離脱や協力会社からの取引停止といったリスクを回避し、統合プロセス(PMI)を円滑に進めるには、情報共有や対話の場を設け、相互理解を深めることが重要です。さらに、地域密着型の事業を展開する場合は、地元自治体や地域団体との信頼関係を損なわないよう配慮することも欠かせません。

ゼネコン業界における今後のM&Aの課題と展望

ゼネコン業界は、現時点では好調を維持しているものの、労働者不足や高齢化といった課題も抱えています。

特に高齢化は深刻で、60歳以上の技能者が全体の約25.7%を占め、10年後には多くが引退する見込みです。若手人材が不足し、技術やノウハウの継承も順調とはいえません。

また、2024年4月より時間外労働に上限が設定されたことで、これまで長時間労働が常態化していた企業は、労働環境の改善や労働力の確保、収益性の改善といった課題にも追われている状況です。

そういった状況下において、M&Aを用いた業界再編は今後も進んでいく見込みです。ハウスメーカーや設備工事会社、不動産会社との異業種M&Aが活発化しており、事業の多角化やシナジー効果が期待されています。さらに、国内市場の縮小を背景に、ゼネコンなどが海外市場に参入するクロスボーダーM&Aも増加しており、今後も活発化していくでしょう。

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よくある質問

  • ゼネコン業界とはどのような業界ですか?
  • ゼネコン業界は、土木・建築工事の設計・施工・研究を総合的に請け負う「総合建設業」であり、高速道路や鉄道などの社会基盤構築に重要な役割を担っています。売上規模によってスーパーゼネコンから地場ゼネコンまで分類されます。
  • ゼネコン業界がM&Aを活用するメリットは何ですか?
  • M&Aを活用することで、建設業界への参入が容易になり、事業規模の拡大や重機・資材などの設備の獲得によるコスト削減が期待できます。特に有資格者や地域シェアの獲得が重要なメリットです。
  • ゼネコン業界のM&Aで注意すべきポイントは何ですか?
  • M&A成功のためには、事前に資格取得者の有無を確認し、地域特性や業界慣習を考慮したデューデリジェンスを実施すること、そして従業員や取引先などステークホルダーとの良好な関係を維持することが重要です。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 課長高橋 祐基
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 課長
高橋 祐基

生命保険会社を経て、独立系ブティックでアドバイザリー業務に従事。
当社参画後は、建設業界の大型M&Aや上場企業からのカーブアウト等、数々の成約実績を有する。



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