設備工事(空調工事 )業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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近年、空調工事業界では、事業拡大や新たな領域への進出を目的としたM&Aが活発化しています。また、政府による環境政策の後押しもあり、各社は省エネ型設備機器の開発に力を注いでいるのが現状です。

本記事では、空調工事業界の基本情報から市場動向、M&Aの具体的な事例まで幅広く解説します。M&Aを行うメリットや成功のポイントについてもカバーしていますので、空調工事業界でM&Aをお考え中の経営者様は、最後までご参照ください。

M&Aの前に押さえておきたい空調工事業界の情報

空調工事業界のM&Aを検討するにあたり、業界の基本情報を押さえておくことが重要です。本章では、空調工事の定義や業界の特色、代表的な企業について解説します。

空調工事業界の定義

空調工事とは、室内の温度を調整して快適な状態にするために必要な、エアコンやダクトを施工する業務を行うことです。

一般の家庭だけでなく、オフィスや商業施設でも業務用エアコン(空調設備)が利用されており、標準的な空調工事業者は、空調設備の管理やメンテナンスを担っています。

空調工事は突然発生する故障や不具合など、緊急対応が求められるケースが多いです。そのため、空気やガス、水などが配管の接続部分から漏れないように注意しつつ、スピーディに対応する必要があり、技術力の高さが欠かせません。

代表的な企業

空調工事業界で代表的な企業は、以下のとおりです。

  • ・高砂熱学工業株式会社
  • ・株式会社大気社
  • ・ダイダン株式会社
  • ・三機工業株式会社

これらの企業は、長年にわたり空調工事業界をリードしてきた存在であり、その技術力と実績は業界内で高く評価されています。

空調工事業界の特色

空調工事業界は、建物や電車・バスなどの公共交通機関が存在するかぎり、堅調な業界であると言われています。その理由の一つは、建物や乗り物で快適に過ごすには空調設備が不可欠であり、定期的な買い替えが必要となる点です。

例えば、オフィスビルなどで採用される業務用エアコンの使用目安は10〜15年とされており、10年以上使用すると、中の部品が故障する可能性が高まると想定されています。

もう一つの理由は、再開発に伴う需要の増加があります。近年では駅ビルや大型施設の老朽化に伴い、ビルの建て替えや施設の新たな建設が進行中です。建物を建てる場合には、空調設備の設置が欠かせないため、再開発が増えるとともに空調工事の需要は高まります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)などのIT技術の導入により、作業効率の向上も期待されており、業界への需要が一層高まると見込まれます。

空調工事業界の動向・市場規模

空調工事業界は、近年堅調に推移しています。国土交通省が発表する、設備工事業に係る受注高の調査結果によると、2022年度の管工事の受注高は、前年度比7.9%増の約1兆6,175億円となり、2年連続の増加を記録しました。

このうち、民間工事は前年度比11.5%増の約1兆4,991億円に達しており、大きな伸びを示しています。

2020年度には、新型コロナウイルス感染症の拡大による景気の鈍化で、一時的に売上高が落ち込みましたが、2021年度には回復に転じ、2022年度も好調を維持しています。

また、政府の環境政策の後押しもあり、各社は省エネ型設備機器の開発に注力しています。世間の環境意識の高まりや、費用対効果が見込める省エネ性能への注目を背景に、省エネ型機器へのニーズが高まっていることが伺えます。

管工事 受注高推移

参考:令和6年3月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果(各工事主要20社)│国土交通省

空調工事業界のM&A事例

空調工事業界では、事業拡大や新たな領域への進出を目的としたM&Aが活発化しています。ここでは、近年の主要なM&A事例について紹介します。

ライクスと稲葉電気興業

2022年5月、総合設備業を行っている株式会社ライクスが、電気設備工事業を営む稲葉電気興業株式会社と業務提携し、稲葉電気興業はグループ会社になりました。

この提携は、ライクスの電気工事事業領域の強化を目的としたものです。

九電工と中央理化工業

株式会社九電工は、中央理化工業株式会社の株式を取得して子会社化しました。

本件は、九電工の新たな事業領域の開拓や業務拡大を意図したものです。中央理化工業は消防設備の事業を行っており、安心と安全への需要は高まっています。

子会社化することで、中央理化工業グループの得意先に対しても、さらなるサービス展開が期待できます。

BPMとジーネクスト

BPM株式会社は、顧客対応DXプラットフォームを提供する株式会社ジーネクストと、資本業務提携を行いました。

BPMは、建物・設備メンテナンス業務のDXを推進する、設備保全管理システム(クラウド型CMMS)の開発を行う企業です。両社はデータを連携させることで、管理者のマネジメント強化を目指しています。

さらに、プロダクトや営業チャネルの融合によりシナジー効果を創出し、業界全体の発展に貢献することを望んでいます。

三菱電機とAIRCALO

三菱電機株式会社は、海外の子会社を通じて、フランスの水空調事業会社として知られるAIRCALO社の全株式を取得しました。

この買収は、AIRCALO社の製品ラインナップの豊富さと、各顧客に対応するカスタマイズ力の獲得が目的です。三菱電機は、欧州市場全体への水空調事業の強化と、市場ニーズの多様化への対応を進めていきます。

大気社とNicomac

株式会社大気社は、インドのパネルメーカーであるNicomac社を子会社化しました。

大気社は「環境システム事業」と「塗装システム事業」を推進している企業です。Nicomac社は、クリーンルーム向けのパネルの製造・販売を手がけている会社です。

この子会社化により、大気社はインド市場への対応力強化を目指します。

空調工事業界でM&Aを活用するメリット

空調工事業界では、M&Aを活用することで、さまざまなメリットを得ることができます。

ここでは、2024年問題の解決や外注費の削減、専門的なノウハウや技術の獲得といった観点から、M&Aの効果について解説します。

2024年問題解決の糸口となる

2019年4月に「働き方改革関連法」が施行され、時間外労働の上限規制が適用されました。

空調工事業界を含む建設業は例外的に、適用が5年間猶予されていましたが、適用が開始された2024年4月以降も、対応が追いついていない企業が多いのが現状です。M&Aの実施は、こうした「2024年問題」の解決策として期待できます。

労働時間の上限規制に対応するためには、より多くの人手を確保する必要がありますが、人材不足が慢性化する空調工事業界では、対応が困難な状況です。さらに、月60時間超の時間外労働への割増賃金率が50%になり、企業経営に与える影響は大きくなっています。

M&Aを活用すれば、相手企業の有する人材を自社に取り込むことができ、人員の確保による時間外労働の防止、かつ受注増による業績向上も期待できます。

外注費を削減できる

設備工事業を行っている企業のなかには、空調工事のみを外注しているケースがあります。空調工事を担う企業をM&Aで取り込み、内製化すれば、外注費の削減が可能です。

自社内で一貫して作業を行えるようになることで、一括して工事を受注でき、利幅を多く取れるようになります。

専門的なノウハウや技術を獲得できる

空調工事を請け負う会社には、専業で工事を担っている中小企業が多く存在します。そのため、専門的なノウハウや高い技術を持っている従業員も多く在籍中です。

M&Aを実施すれば、専門性の高い技術を有する人材を確保することが可能であり、より質の高い事業を展開できます。

空調工事業界におけるM&A成功のポイント

空調工事業界のM&Aを成功させるためには、まず相手選びの段階で、自社の企業価値向上が叶う相手であるかを検討することが大切です。同業種内だけでなく、異業種も含めて、シナジー効果を創出できる相手を選定することがポイントとなります。

また、相手企業の有する経営資源に関しては、徹底した調査が欠かせません。特に、空調工事業界で市場競争に勝ち残っていくためには、職人の技術力が重要です。

先方の企業に属する人材の能力を調査し、自社の弱みを補完できる要素、または強みを増幅できる要素を持つ相手であるかを、しっかりと見極めることが求められます。

空調工事業界における今後のM&Aの課題と展望

空調工事業界には、労働力不足と技術承継の問題がある一方で、業界に対するニーズは高まっています。さらに、各業界ではDXやAIなどの最新技術の導入が進んでおり、空調工事業界も、新たな技術への対応が求められている点は見過ごせません。

人材確保や最新技術を取り入れた生産性の向上に向けて、同業種・異業種問わず、空調工事業界のM&Aは一層活発化していくでしょう。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 課長高橋 祐基
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 課長
高橋 祐基

生命保険会社を経て、独立系ブティックでアドバイザリー業務に従事。
当社参画後は、建設業界の大型M&Aや上場企業からのカーブアウト等、数々の成約実績を有する。


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