ガソリンスタンド・石油業界のM&A動向 昨今の事業買収・売却の事情やM&A事例を紹介

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ガソリンスタンド・石油業界では、EV普及や脱炭素化、競争の激化などを背景に、事業承継や経営効率化を目的としたM&Aが活発化しています。

本記事では、ガソリンスタンド・石油業界におけるM&Aの動向やメリット、成功のポイントを具体的に解説します。

ガソリンスタンド・石油業界の概要

ガソリンスタンド・石油業界は、エネルギーインフラの中核を担う業種です。原油採掘から販売までさまざまなプロセスがあります。M&Aを成功に導くためには、各段階における事業内容や特徴への理解が欠かせません。
ここでは、ガソリンスタンド・石油業界の定義と特色について見ていきましょう。

ガソリンスタンド・石油業界の定義

ガソリンスタンド・石油業界は、次の3つのプロセスが中心となって構成されています。

原油の採掘(上流)
産油国で採掘された原油を超大型タンカーで輸入し、国内の貯蔵タンクや製油所に供給する
精製(中流)
蒸留、改質、分解などの工程で原油をガソリン・軽油・灯油などに分離する
流通・販売(下流)
精製された石油製品を油槽所やガソリンスタンドに配送し、一般消費者や法人向けに販売する

これらに加え、消費者に直接サービスを提供するガソリンスタンド事業まで含めた幅広い事業者群によって、業界が成り立っています。

日本国内の事業者が担うのは主に下流部門(流通・販売)です。中東などから輸入した原油を国内で精製し、全国のガソリンスタンド網を通じて消費者や法人に供給しています。

ガソリンスタンド・石油業界の特色

石油元売会社
精製所を所有し、原油を精製してガソリン・灯油・軽油・重油などを製造・貯蔵・配送する
販売事業者
元売会社と専属契約を結び、地域ごとに特約店や直営ガソリンスタンドを運営する

日本の業界における大きな特徴は、多くの元売会社が精製設備と全国規模のガソリンスタンド網を一体的に運営する垂直統合型モデルを採用していることです。これにより、原油の調達から最終消費者への販売までを一貫して管理でき、安定供給とブランド力の強化を図っています。

さらに近年は、セルフ式スタンドの増加、環境対応燃料の導入、EV充電設備併設など、サービス拡充の動きも活発化しています。

ガソリンスタンド・石油業界のM&A動向・市場規模

2025年現在、日本のガソリンスタンド・石油業界は事業規模の縮小が進行しています。

ガソリンスタンド・石油業界のM&A動向・市場規模のグラフイメージ
参考:経済産業省・資源エネルギー庁

ピーク時には全国約60,000店舗あったガソリンスタンドも、年々減少傾向にあります。これは、環境規制や車両燃費向上、EV・ハイブリッド車の普及、設備投資負担の増加など複数要因によるものです。

2025~2029年度石油製品需要見通のグラフイメージ
参考:2025~2029年度石油製品需要見通し 燃料油編

経済産業省の最新「燃料油需要見通し」によれば、2025年度の国内燃料油全体の需要は前年比1.5%減の見通しです。今後も2029年まで年平均2.2%の減少が続くと予測されています。

すべての主要燃料油において、2023年度から2029年度にかけての需要が減少傾向です。各燃料油とも、EV・ハイブリッド車普及・省エネ化・脱炭素政策の影響を強く受ける年度予測となっています。

ガソリンスタンド・石油でM&Aを活用するメリット

ガソリンスタンド・石油業界でM&Aを活用する主なメリットは、以下のとおりです。

短期間で事業規模を拡大できる

買い手企業がM&Aでガソリンスタンドを取得するメリットは、短期間で事業基盤とエリアシェアを拡大できることです。既存ネットワークや顧客を取り込むことで、販売拠点の増加・仕入コストの低減・運営効率化を実現できます。

また、併設の非燃料事業(コンビニ・カフェ・EV充電など)や独自ノウハウを獲得できるため、収益機会の多角化と新サービス展開にもつながるでしょう。

安定した地域インフラを獲得できる

ガソリンスタンドは地域社会のインフラとして長期的な安定集客が見込める業種です。買収することで、地域密着型店舗の運営ノウハウや人材も継承できます。

また、地元コミュニティへの貢献度向上・ESG(環境・社会・ガバナンス)施策への対応促進も期待できるでしょう。さらに、EVや再生可能エネルギー対応の拠点拡充を図ることも容易となります。

ガソリンスタンド・石油のM&A事例

近年のガソリンスタンド・石油業界では、業界再編や新エネルギー対応を目的とした大型M&Aが相次いで実施されています。代表的な事例として、以下の7つを紹介します。

ENEOS株式会社とジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社

2022年1月、ENEOSホールディングス株式会社の子会社であるENEOS株式会社(以下、ENEOS)は、ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社(以下、JRE)の全株式を取得し、子会社化しました。

この買収は、ENEOSがこれまで培ってきたエネルギー事業者としての知見と、JREの事業開発能力を結集し、日本を代表する再生可能エネルギー事業者になることを目指したものです。

この戦略的なM&Aにより、ENEOSは従来の石油事業に加えて、成長が期待される再生可能エネルギー分野での競争力強化を図っています。

出光興産株式会社と富士石油株式会社

2024年4月、出光興産株式会社と富士石油株式会社は資本業務提携を締結しました。

この提携の主な目的は、既存燃料油事業でのシナジー創出と、両社が協働して京葉地区での将来的な燃料油供給、およびカーボンニュートラル燃料の受入れ、製造、供給拠点の構築を行うことです。

この提携は、石油需要の減少に対応しつつ、環境に配慮した新たな事業展開を目指す両社の戦略を反映しています。

株式会社レゾナックホールディングスとクラサスケミカル株式会社

2024年8月、株式会社レゾナックホールディングスは、同社子会社の株式会社レゾナックが100%出資する子会社として、クラサスケミカル株式会社を設立しました。

この新会社設立の目的は、上場会社として石油化学のグリーン・トランスフォーメーション実現のための取り組みを加速させ、さらなる利益成長と競争力強化を目指すことです。

この動きは、石油化学業界における環境対応の重要性と、それに伴う事業構造の変革を示しています。

株式会社INPEXと株式会社INPEX JAPAN

2024年6月、株式会社INPEXは、自社の石油・天然ガス事業などを会社分割の手法で子会社である株式会社INPEX JAPANに譲渡することを決議しました。この会社分割の目的は、グループの経営体制の合理化、意思決定の迅速化、本事業の機動的かつ効率的な推進などを行うことです。

この再編は、変化の激しい石油・天然ガス業界において、より柔軟で効率的な事業運営を実現するための戦略的な動きといえます。

ウェルビングループ株式会社と綿仁株式会社

2022年11月、ウェルビングループ株式会社は綿仁株式会社の株式を取得し、子会社化を実施しました。

この買収の狙いは、ウェルビングループ株式会社の自動車販売・整備の専門知識と綿仁社の顧客基盤を結びつけ、相乗効果を発揮することにあります。

この事例は、石油関連事業者が自動車関連事業との連携を強化することで、変化する市場環境に適応しようとする動きを示すものです。

株式会社サンオータスと若葉石油株式会社

2024年2月、株式会社サンオータス(以下、サンオータス)は、若葉石油株式会社の全株式を約8,500万円で取得し、子会社化しました。若葉石油は、神奈川県横浜市のガソリンスタンド運営会社です。2店舗のガソリンスタンドのほか、飲食店事業も展開していました。

このM&Aにおけるサンオータスの主な目的は、神奈川県内での営業拠点拡大とグループ事業のシナジー強化を図ることです。あわせて事業基盤の拡大やモビリティサービスの成長戦略推進にもつながる取り組みとされています。

ENEOS株式会社とEMGルブリカンツ合同会社

ENEOS株式会社(以下、ENEOS)は、2026年1月1日付で100%子会社のEMGルブリカンツ合同会社を吸収合併することを決定しました。これにより、潤滑油事業のさらなる効率化および競争力強化を目指しています。

合併後は2028年3月を目途に、横浜製造所から一部製造・物流機能を鶴見潤滑油工場へ移管し、同工場を東日本の主力拠点とする計画です。ENEOSは今後も安定したエネルギー・素材の供給とカーボンニュートラル社会の両立を推進し、より高品質なサービスを提供し続ける方針を掲げています。

M&Aのポイント・注意点

ガソリンスタンド・石油業界でM&Aを成功させるポイントとして、以下の3点を紹介します。

それぞれ見ていきましょう。

地域ニーズの把握を怠らない

ガソリンスタンドは地域住民にとって生活インフラの役割を担っており、M&A後も安定的な燃料供給やサービス拠点の継続が欠かせません。買い手企業は、店舗統合やリブランドを進める際に地域ニーズの把握や行政との調整を怠らないことが重要です。

特に地方や過疎地域では、拠点存続そのものが地域経済や住民生活を支える社会的意義を持つケースもあります。この社会的意義を軽視すると、企業評価の低下や顧客離れにつながりかねないため、慎重に進めましょう。

人材・ノウハウを丁寧に引き継ぐ

ガソリンスタンド・石油業界では、熟練スタッフの接客力や設備管理の技術、地域に根差した営業ノウハウが収益に影響します。したがって、買い手企業はM&A後に従業員をつなぎとめ、これらの強みを確実に取り込むことが重要です。

そのためには、教育プログラムや業務マニュアルを整備し、早期からPMIの一環としてノウハウを仕組みに落とし込むプロセス設計が欠かせません。また、評価制度や組織文化の調整を通じて、従業員のモチベーション維持と統合後の一体感を高めましょう。こういった取り組みが、サービス品質の低下防止と自社業種と連携を深めていくことにつながります。

市場変化を踏まえた多角的な戦略を視野に入れる

近年はEV充電設備や再生可能エネルギー、カーケア事業などの複合化が業界の成長要因となっています。買い手企業にとっては、M&Aを通じてこれら新規事業や設備投資を迅速に展開し、市場変化に適応できる体制を構築することが重要です。

その際には、買収先の設備投資計画や収益モデルをデューデリジェンスで事前に精査し、自社の成長戦略に整合するかを確認しておきましょう。従来型燃料ビジネスからの転換やESG対応を加速させ、地域社会の未来を見据え、総合エネルギーサービス拠点への進化を目指す姿勢が重要です。

今後のM&Aの課題と展望

ガソリンスタンド・石油業界は、人口減少やEV普及によって燃料需要の減少を受け、縮小傾向にあります。一方で、EV充電や再生可能エネルギー、カーケア事業など多角化の動きは拡大しており、M&Aはそれに対応する手段といえます。

今後は単なる規模拡大にとどまらず、地域社会の信頼を守りつつ、総合エネルギーサービス拠点へと進化する視点が求められるでしょう。

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よくある質問

  • ガソリンスタンド業界でM&Aが進んでいる背景は?
  • 燃料需要の減少、EV普及、人材不足といった課題に対応し、経営基盤の強化を図る目的でM&Aが活用されています。
  • ガソリンスタンドM&Aで得られる主なメリットは?
  • 地域インフラの承継、販路拡大、事業多角化、安定集客基盤の確保などが挙げられます。
  • M&A後に重要となる対応ポイントは何ですか?
  • 地域ニーズへの配慮、従業員の定着、人材・ノウハウの継承、EVや新エネルギー対応体制の構築が求められます。
  • ガソリンスタンドのM&Aではどのような企業が対象になりますか?
  • 地域密着型で実績のある販売事業者や、再エネ・EV設備を導入した多機能型拠点が注目されます。
  • M&Aを通じた石油業界での今後の成長戦略は?
  • 従来型燃料販売に加え、EV充電・カーケア・再エネなどを組み合わせた総合エネルギーサービス拠点への進化が求められます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

2007年、立教大学経済学部経営学科卒業後、国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。
2021年M&Aキャピタルパートナーズ入社後は、広報責任者として、TV番組・CMなどのメディア戦略をはじめ広報業務全体を管掌、2024年より現職。

一般社団法人金融財政事情研究会認定M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者



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