映画館業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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  • #業種別M&A動向
  • #映画館業界 M&A

業界の定義

映画館業界を定義するため、まずは映画業界について定義したい。映画業界は、主に映画の企画と製作を行う製作会社、映画館へ映画を配給する配給会社、映画館を運営する興行会社で構成される。ここでは、興行会社である映画館に焦点を当てて説明をする。

映画館は、大きなスクリーンを観客席の正面に配置し、映写機によって作品を投影する仕組みとなっている。映画館の設立に関しては、興行場法により都道府県知事の許可が必要である。国内の映画館には、全国展開する大手映画館と、地域単館系と呼ばれる小規模映画館が存在する。




業界の特色

映画館業界イメージ画像

かつては、製作・配給・興行を一貫して行っていたが、映画市場の縮小で製作と配給、興行を分けて実施するようになっていった。一般的に映画館は興行収入の約半分を取り分とし、10-30%を配給会社、20-40%を製作会社に分配される。

その他売店での飲食物の販売、映画グッズの販売が映画館の収益となる。大手映画館では、大衆向けの人気映画が放映されることに対して、小規模映画館では、大衆性に欠ける映画や作家性の強い映画が放映されることが多い。




市場の規模

一般社団法人日本映画製作者連盟によると、2019年の映画興行収入は2,611億円であり、映画館の年間入場人員は1億9,491万人であった。




映画館業界グラフ
出典:http://www.eiren.org/toukei/img/eiren_kosyu/data_2019.pdf





映画産業は「戦後黄金期」ともいわれた1950年代に1つのピークを迎え、1958年には約11億2,700万人の観客動員を記録した。その後は1960年代に普及した家庭用テレビ、1980年代に普及した新メディアのビデオテープやケーブルテレビの台頭により、映画館需要が減退。興行収入は減少の一途を辿っていたが、1990年代になると複数のスクリーンと商業施設等を同一施設内に共有するシネマコンプレックス(シネコン)普及による地方や郊外在住者の需要の取り込みにより、市場は再拡大に転じた。その後、2001年に興行収入2,000億円に達し、以降は横ばいで推移していたが2019年には、2,611億円と過去最高となった。2020年は新型コロナウィルスの影響で映画館の入場者数が減少し、興行収入も減少に転じることが予想されている。

映画館におけるスクリーン数を比較すると、国内最大のスクリーン数を誇るのは、775スクリーンのイオンエンターテイメント株式会社となっている。続いて東宝グループのTOHOシネマズ株式会社が679スクリーン、ローソングループのユナイテッド・シネマ株式会社が331スクリーン、株式会社松竹マルチプレックスシアターズが258スクリーン、東映グループの株式会社ティ・ジョイは218スクリーンとなっている。




課題と展望

映画館業界では、映画のレンタルソフト、CS放送、映画のブロードバンド配信サービス等の普及でどこでも簡単に映画を見ることができるようになったため、「映画館での」映画鑑賞に新たな付加価値をつけることが今後、非常に重要となってくる。近年の映画館ではIMAX、ドルビー、4D、MX4Dのような映画に高い臨場感を与える設備や、映画館で音楽ライブの生中継を放送する等の特別な体験ができる場となってきている。各映画館の工夫がみられており、今後も、新しいサービスの提供が期待される。




映画館業界のM&A動向

映画館業界では、ショッピングモールや、イベント興行といった他業種でも集客に関して関連のある企業とのM&Aが活発に行われている。その他、劇場数や地域拡大のためにM&Aが行われることがある。

2013年、イオン株式会社は、米ワーナー・ブラザーズ・エンターテインメント(ワーナー社)と折半出資するシネマコンプレックス2位の株式会社ワーナー・マイカルの全株式を取得してM&Aを行った。株式会社ワーナー・マイカルは、全国に60劇場で496スクリーンを所有し、イオン株式会社は独自ブランドのイオンシネマを運営していた。株式会社ワーナー・マイカルを加えると73劇場約600スクリーン(当時)となり、業界大手のTOHOシネマズ株式会社と並ぶ規模となる。イオンのショッピングセンターにおいて、映画館が集客に重要な役割を担っていると考えており、映画によって集客をしてショッピングセンターも立ち寄ってもらうといった相乗効果を狙ったM&Aだった。

2013年、ユナイテッド・エンターテインメント・ホールディングス株式会社は、株式会社角川グループホールディングスと戦略的業務提携契約を締結して、角川シネプレックス株式会社の全株式を取得してM&Aを行った。角川シネプレックス株式会社は、13劇場を所有しており、ユナイテッド・エンターテインメント・ホールディングス株式会社と合わせて全国34劇場を運営することとなる。

2014年、株式会社ローソンは、シネマコンプレックスで国内3位のユナイテッド・エンターテインメント・ホールディングス株式会社を投資会社である株式会社アドアンテッジパートナーズなどから買収した。ユナイテッド・エンターテインメント・ホールディングス株式会社は36劇場で映画館を運営し、売上高は約200億円。株式会社ローソンは2010年、音楽・映画ソフト販売のHMVジャパン株式会社をM&Aしており、チケット販売やイベント企画運営も手掛けている。今回のM&Aによりエンターテイメント事業の強化と各事業の相乗効果が図られた。




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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


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