証券業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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業界の定義

証券会社とは、株式や債券(国債や社債など)の売買、投資信託(投資家から集めた資金を専門家が運用する金融商品)、不動産投資信託(投資家から集めた資金で不動産に投資して得られた賃貸料や売却益を投資家に配当する金融商品)の売買を手がける会社のことを指す。
つまり、企業や国が発行する株式や債券を投資家が購入し、その購入資金が企業や国に直接供給される仕組みの中で、証券会社はその取引の仲介をする役割を担う。
これらの取引を実行するために、都市銀行業界・保険業界(生命保険・損害保険)・不動産業界と密接につながっているのが証券業界である。

業界の特色

証券業界のイメージ画像

証券会社は、新規に株式を発行する際の「発行市場」においては、株式発行体である株式会社の代理人として投資家から投資を募り、投資金と株式を交換することによる手数料で収益を確保している。すでに発行されている株式の取引を行う「流通市場」においては、投資家と証券取引所の間に入り、株式売買の委託業務を行って手数料を確保している。
証券業界には金融商品取引法という規制があるが、1998年から1999年に実施された「金融ビッグバン」により証券業界への参入自由化が進んだことと、同時期にインターネットが急速に普及し、オンラインで完結する株式取引が新しい商流として台頭した。
証券会社は大きく「総合証券会社」と「インターネット証券会社」に分けられる。「総合証券会社」は、一等地に店舗を構えて賃料を支払いながら、多くの証券マンと事務スタッフに人件費を支払い、マンツーマンで顧客の対応をする。これに対して「インターネット証券会社」は、集客から顧客対応まですべてをインターネットでやることにより、劇的にコストを削減して手数料を極限まで安くしている。
フィンテックと呼ばれる金融業界におけるITの技術革新のスピードは速く、インターネット取引のシェアは拡大し続けている。証券マンの日々の業務は5年後には消滅する仕事のトップ5にランクインしており、証券業界の構造は大きく変化することが予測されている。

市場の規模

業界動向サーチによると、2018年-2019年の証券業界の市場規模は、3兆9,093億円である。

証券業界は、大手証券会社(5大証券会社)・準大手証券会社・中堅証券会社に分類されている。また、5大証券会社は証券系グループ2社(野村証券・大和証券)と銀行系グループ3社に分けられる。

1925年大阪野村銀行の証券部を分離独立させて創業した野村証券は、業界最大手企業であり銀行資本を持たない独立系証券会社である。常に業界トップに君臨しており営業力が強みになっている。野村不動産やジャフコを傘下に持つ野村ホールディングスが親会社である。野村ホールディングスの売上は約2兆円で絶対王者となっており、野村証券単体でも7,000億円と2位の大和証券単体の3,600億円に対して3,400億円もの差をつけている。

大和証券グループ本社(7,126億円)傘下の大和証券は、1902年に設立の藤本証券を起源とする100年以上の歴史のある老舗証券会社で売上高は3,588億円である。

銀行系グループのSMBC日興證券が3,974億円、みずほ証券が3,815億円、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が3,769億円と続き5大証券会社を形成している。

インターネット証券では、SBI証券が1,225億円(※)で突出しており、楽天証券が594億円(※)、マネックス証券が290億円(※)、松井証券が273億円、GMOクリック証券が267億円と続いている。(※連結売上高)


課題と展望

証券業界の課題は「日本人は預金を好み、投資をしたがらない傾向が強いこと」があげられる。「日本人が預金を好むのは、農耕民族だから」や「終戦後に国家が貯蓄を徹底的に国民に奨励したから」など諸説あるが、投資を好まないのはバブル崩壊の記憶が生々しく刻まれていることが大きな要因になっているかもしれない。山一証券・三洋証券といった大手証券会社が倒産して、株券が紙切れになった事実が当時の世間の人々の感覚に大きく影響を及ぼしたかもしれない。

投資一任のラップ口座は、300万円から始められるようになり2016年には口座残高6兆円と高い伸び率になっている。バブル崩壊を知らない若者を中心にFXや仮想通貨が身近な存在で、投資は若いサラリーマンのサイドビジネスというポジションになりつつある。今後は世代交代とともに預金から投資にシフトしていくことが予測されている。


証券業界のM&A動向

証券業界では、競争激化や規制緩和・景気変動などを背景に多くのM&Aが実行されており、今後もM&Aが進むと見られる。証券業界のM&Aは、規模の拡大を追求するものや、譲渡側・譲受側それぞれの強みやインフラを共有するケースが多い。

2017年4月、東海東京フィナンシャルホールディングスは、髙木証券の株式公開買い付けを158億円で行い子会社化によるM&Aした。東海東京フィナンシャルホールディングスは、横浜銀行や西日本フィナンシャルホールディングスなど地方銀行と合弁で5社の証券会社を設立している。髙木証券は、1876年に両替商として創業。国内都市圏の14店舗で対面対話型の地域密着営業を継続していたが、オンライン証券会社の台頭により手数料の安さや、ディーラー業務でも高速取引で苦戦して業績は悪化していた。

2018年1月、SMBC日興證券はSMBCフレンド証券を吸収合併してM&Aした。ともに三井住友フィナンシャルグループで、預かり資産は58兆円となり業界2位の大和証券と並ぶ規模となった。

2019年6月、KDDIが株式公開買い付けによりカブドットコム証券の株式49%を取得した。MUFGが持つ3,400万人の個人顧客・130万社の法人顧客基盤とKDDIの4,000万決済口座およびIT技術を相互利用し、カブドットコム証券の企業価値を高めていく。


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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


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