段ボール業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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段ボール業界では、技術獲得のほか、日本国内における地域展開および海外市場への展開の強化等を目的としたM&Aが積極的に行われており、大手企業が中堅の老舗企業を買収する、事業承継型のM&Aも散見されます。

本記事では、段ボール業界の最新動向と近年行われたM&Aの実例を確認しながら、M&Aを活用するメリットや、M&Aを成功裏に実現させるポイントを解説します。段ボール業界におけるM&Aを検討されている方はぜひ、最後までご参照ください。

M&Aの前に押さえておきたい段ボール業界の情報

段ボール業界のM&Aについて見ていく前に、段ボール業界の定義・特色、沿革、市場規模を確認しておきましょう。大手企業と中小企業の業務形態の棲み分けがあり、国内市場が着実に成長してきた点が特徴的です。

段ボール業界の定義・特色

段ボール業界とは、塗工紙、段ボール、壁紙・ふすま紙等の加工紙製造業や、重包装紙袋・角底紙袋・段ボール箱・紙器等の紙製容器製造業を主力とする事業を展開する会社を指します。

段ボール業界では、大手企業と中小企業で業務形態が異なる点が特徴的です。大手企業は、原紙の製造から加工・販売までのサプライチェーンを垂直統合している一方、中小企業は、板紙や段ボールの製造、販売等の各専門分野に特化していることが一般的です。

製造から流通までを垂直統合すると、設備投資の額が大きくなり、一定の資本力が必要になるためと考えられています。

段ボール業界の沿革

日本における段ボールの始まりは、1909年に井上貞治郎氏が綿繰り機をヒントに製造したことに遡ります。従前、物を運ぶ際には主に木箱が使用されていましたが、第1次世界大戦中に軍需優先で木箱の材料が不足し、段ボールの需要が急増。第2次世界大戦後に製造設備が失われたものの、1951年以降の政府主導の切り替え運動で需要がさらに拡大しました。

1997年には容器包装リサイクル法が施行され、環境を意識した省包装やリサイクルの促進が社会全体で課題に。2000年代に入ると、CSR活動の活発化もあり、企業の社会的責任意識は一層強くなっています。そのなかで、リサイクル率90%以上を誇る段ボールは環境面からも見直され、環境問題への関心が高まっている現在の社会において、存在意義を高めています。

また、自然災害時にも段ボールは有効です。段ボールベッドや段ボール家具として、多くの被災者が一時的な生活を送る避難所の環境改善に役立ち、過酷な避難生活を少しでも和らげる一助になっています。雑魚寝が多い日本の避難所では、段ボールベッドの導入推進が望まれており、さまざまな場面で段ボールの一層の活用が望まれています。

段ボール業界の市場規模

日本国内における段ボール生産量は2002年以降、緩やかな増加傾向にあります。

リーマンショックによる景気後退(2009年)や、新型コロナウイルス感染症の拡大(2020年)に伴って、生産量が減少した局面はあったものの、その後は着実に回復しています。2002年に約133億平方メートルあった生産量は、2022年には約146億平方メートルに達し、約10%の増加です。

一方、日本国内における段ボール消費量は、2002年の約86億平方メートルに対して、2022年には約26%増の約109億平方メートルに達しており、国内市場における段ボール需要の高まりを反映しているものと考えられます。

段ボールの生産量・消費量

参照:2022年版 段ボール統計年報|全国段ボール工業組合連合会

また、中国や東南アジアにおける経済発展に伴うEC取引の活発化や、食品・飲料・電子機器の消費拡大等に牽引され、国外でも段ボール需要は着実に成長中です。日本企業による現地生産の実施や、現地での販売拠点新設・増設等の海外進出が活発化しています。

段ボール業界のM&A事例

段ボール業界では、事業環境の変化に対応すべく、技術獲得のほか、日本国内における地域展開および海外展開の強化等を目的としたM&Aが積極的に行われています。近年行われた代表的なM&Aの実例を、順に見ていきましょう。

レンゴー株式会社によるM&A

レンゴーは、1909年に井上貞治郎氏が創業した、国内最大手の段ボールメーカーです。国外に32拠点(2023年12月末時点)を有し、海外展開にも積極的な企業です。レンゴーが実施したM&Aの事例を2件、紹介します。

レンゴー株式会社と日藤ダンボール株式会社

日本国内の地域展開強化を目的としたM&A事例です。2023年2月、レンゴーは日藤ダンボールの発行済株式の70%を取得し、子会社化しました。

日藤ダンボールは埼玉県桶川市を拠点とし、埼玉県に根強い顧客基盤を有する、1966年創業の老舗の段ボールメーカーです。レンゴーは日藤ダンボールを子会社化して、既存のグループ会社との連携を図り、埼玉県における地域展開を強化することを狙っています。

レンゴー株式会社とヴェルヴィン・コンテナーズ

海外展開強化を目的としたM&A事例です。2023年11月、レンゴーはヴェルヴィン・コンテナーズの発行済株式の30%を取得し、関連会社化しました。

ヴェルヴィン・コンテナーズは、インドの段ボールメーカーであるヴェルヴィングループが、インド南部への進出拠点として設立した会社です。レンゴーは、2024年7月に稼働予定の段ボール工場を共同で運営し、インド市場へ本格的な参入を図ることを本件の狙いとしています。

カミ商事株式会社と日本紙器株式会社

ティシューペーパーの「エルモア」ブランドで有名な、総合製紙メーカーのカミ商事は2023年6月、日本紙器を子会社化しました。

日本紙器は兵庫県に所在する老舗で、多彩で精度の高い段ボールケースを製造する熟練の技術を有しています。段ボール貼合から製函まで、優れたメカニズムを駆使し、一貫生産を手掛けている段ボールメーカーです。

カミ商事は、日本紙器の技術力に自社の営業力をかけ合わせて創出する、シナジー効果を目的としています。

株式会社トーモクとコスモス工業株式会社

2023年4月、総合包装メーカーのトーモクは、コスモス工業の全株式を取得し、子会社化しました。

コスモス工業は新設会社です。長野県を地盤に、段ボール製造・加工・販売および梱包請負業を展開していた老舗の旧コスモス工業から、事業を承継する形式で設立されました。

トーモクはコスモス工業を子会社化して、既存グループ会社との連携を図り、長野県における地域展開を強化することを目指しています。

大王パッケージ株式会社と吉沢工業株式会社

2022年5月、大王製紙グループの大王パッケージは、吉沢工業の全株式を取得し、完全子会社化しました。

新潟県を地盤とする吉沢工業は、米菓・食品向けを中心に、北陸地区に有力な顧客基盤を築いている老舗段ボールメーカーです。

大王パッケージは、吉沢工業をグループ化することで、手薄であった北陸地区に生産拠点を確保しました。生産および配送体制の拡充により、同地区における地域展開を強化することを狙います。

段ボール業界でM&Aを活用するメリット

段ボール業界でM&Aを活用する主なメリットは、次のとおりです。

  • ・技術・知見の獲得による自社の体制強化
  • ・短期間で特定の地域における事業展開を強化できる

技術・知見の獲得により自社の体制を強化できる

段ボール事業は、製造・加工・販売等の多くのプロセスを内包しています。したがって、自社が強化したい機能をピンポイントに獲得するうえで、M&Aは有効な選択肢の一つです。

M&Aによって、相手方が保有する製造技術・製造プロセス・品質管理に関するノウハウを一括して、自社に素早く取り込むことが可能となります。自社製品に関しても、品質・生産効率の向上に加え、サプライチェーンにおいて不足していた機能の確保を通じ、自社の体制を強化できます。

短期間で特定の地域における事業展開を強化できる

段ボール業界は、伝統的に近隣地域の需要者との結びつきが強い「地域産業」という性格があり、なるべく需要者の近くで生産することが重視されます。そのため、自社独自で新たにエリアを開拓するには、時間とコストの観点からも難易度が高いといえるでしょう。

M&Aを実施することで、相手方が有する顧客基盤・ブランド・知名度・信用を一気に獲得できます。自前で取り組む場合と比べて短期間でスムーズに、特定地域における事業展開を強化することが可能です。

段ボール業界におけるM&A成功のポイント

段ボール業界においてM&Aを成功させるためには、対象企業の選定および、そのデューデリジェンスを徹底することが重要です。M&A戦略を検討する際には、海外市場への進出可能性も考慮に入れると良いでしょう。

対象企業の選定とデューデリジェンスを徹底する

M&Aは、自社が必要とする機能・技術・知見を迅速に取り込むうえで有効な選択肢の一つですが、対象企業の選定やその後のデューデリジェンスが不十分だとミスマッチが起こり、期待した成果を得られない可能性が生じます。

そのため、M&A対象の選定や、選定された対象企業に対するデューデリジェンスを慎重に行い、自社にとってメリットがあるM&Aのみを見極めて推進することが不可欠です。

海外にも目を向ける

国内の段ボール市場は緩やかに拡大しているものの、将来的には人口減少により、市場が縮小する可能性があります。一方、海外に目を向けると、東南アジアやインドを中心に市場の拡大が期待されます。このような海外の成長市場へ進出を加速することが一層重要です。

今後注力したい国や地域における事業展開を強化するうえで、どのようにM&Aを活用していくべきかについて、早い段階から検討しておくと良いでしょう。

段ボール業界における今後のM&Aの課題と展望

日本国内における地域展開の強化や技術獲得を目的とするM&Aは、継続的に実施されるものと思われます。特に、大手企業が老舗オーナー企業を買収する形式のM&Aは、事業承継ニーズの高まりを受け、増加が見込まれるでしょう。

次に、経営効率化や経営基盤の集約・強化を目的とする、業界再編型のM&Aも想定の一つです。足元では円安、原燃料価格の高止まりのほか、人手不足に起因する人件費の上昇、物流費の増加といった製造・売上原価のコストアップ要因が複数存在し、当面継続することが懸念されます。

そのため、一層の業務効率化によるコストシナジー創出を目指した、同業同士のM&Aが起こりやすい環境下にあるといえます。また、伸びしろがある海外市場における取組の加速や新規参入を目的に、日本企業が海外企業を買収するM&Aも増加するかもしれません。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


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