医療機器 業界 市場規模や買収・売却事例について解説

医療機器 業界市場規模や買収・売却事例について解説のメインビジュアルイメージ

更新日

  • #業種別M&A動向
  • #医療機器 業界 M&A

医療機器の需要は、高齢化社会を背景に増加傾向です。一方で、医療費の抑制や健康保険制度の抜本的な見直し論などの影響を受け、医療機器業界は大きな変革期を迎えています。
こうした難局を乗り切るための手段として、医療機器業界では、M&Aを活用した業界再編が加速しています。

そこで本記事では、医療機器業界の市場規模や近年のM&A動向を整理したうえで、実際のM&A事例や活用するメリットなどを紹介し、最後にM&Aを成功させるためのポイントについて解説します。

M&Aの前に押さえておきたい医療機器業界の情報

医療機器業界のM&Aについて解説する前に、医療機器業界の定義や代表的な企業、そして医療機器業界ならではの特色について整理しておきましょう。

医療機器業界の定義

医療機器業界では、国内外の医療機関にさまざまな医療機器を製造・販売しています。医療機器の具体例としては、内視鏡やCTなどの診療機器、カテーテルやレーザー治療機器などの治療機器、ペースメーカーや人工骨などの生体機能補助・代行機器、検査用機器、そして眼科用品や家庭用医療機器などが挙げられます。

日本の医療機器メーカーの特に大きな強みが、診療機器の分野です。キヤノンやオリンパス、富士フイルムなどが、既存のカメラ技術を応用し、新たに進出した医療機器市場で活躍しています。

これらの企業は独自の映像技術や画像処理技術を駆使し、高品質で解像度の高い医療機器を提供しています。

代表的な企業

医療機器業界で活躍している代表的な日本企業は、以下の4社です。

  • ・オリンパスマーケティング株式会社
  • ・キヤノン株式会社
  • ・富士フイルム株式会社
  • ・ニプロ株式会社

医療機器業界の特色

医療機器市場では、高齢化による需要増加が見込まれます。一方で、国内では医療費抑制政策によって経営が悪化している医療機関が増えており、国内市場だけをターゲットにした大幅な成長は難しいでしょう。

医療機器業界の主な市場は、これまでアメリカやEU、日本などの先進国に偏っていましたが、今後は先進国だけでなく、急成長する中国やインド、新興国への輸出が事業拡大の鍵となる見込みです。

また、コロナ禍の影響で人工呼吸器やECMOの需要が増加した一方で、外来や入院患者数は減少し、手術延期などの影響で医療機関の経営は厳しくなっており、新しい医療機器への投資が控えられる傾向も見られています。

こうした状況を踏まえ、医療機器業界ではオンライン診療の普及に向け、オンライン診療用の機器やシステム、アプリなどの開発にも取り組んでいます。

医療機器業界のM&A動向・市場規模

日本の医療機器市場は、全体の傾向としては成長しているものの、年度によっては成長率に大きな変動があります。

特に、2018年に1兆9489億6100万円だった生産金額が2019年には2兆4941億6400万円(前年比28%増)と大きく増加しました。2020年にはやや減少したものの、2021年にはコロナウイルス流行の影響もあり、前年比8.4%増となっています。

こうした医療機器生産金額の内訳を見てみると、2022年の医療機器生産金額2兆5828億6900円のうち、一番多いのが全身用X線CT診断装置(1033億9400万円)、次いで歯科鋳造用金銀パラジウム合金(935億6700万円)、ビデオ軟性胃十二指腸鏡(751億960万円)と続いています。

医療機器生産金額の推移

参考:薬事工業生産動態統計調査 令和4年(概要)

医療機器のM&A事例

次に、医療機器業界で実際に行われたM&A実例を、以下に5例紹介します。

AMIと日清紡HD

2022年2月、AMI株式会社は、日清紡ホールディングス株式会社と資本業務提携を締結し、1.5億円の資金調達を行ったことを発表しました。AMIは、心疾患診断アシスト機能が付き、遠隔医療にも対応している聴診器「超聴診器」や、遠隔医療サービスの社会実装によって劇的な医療革新の実現を目指す会社です。一方の日清紡ホールディングスは、無線通信技術を使った医療機器などの開発を行っています。

このM&Aの狙いは、医療機器のDX化や遠隔医療サービスの実現、地域ごとの医師の偏在や医療格差を解消するためのソリューションの開発を目指すことにあります。

Ghoonutsと京都市スタートアップ支援2号投資事業有限責任組合ほか

2022年12月、Ghoonuts株式会社は、京都市スタートアップ支援2号投資事業有限責任組合、株式会社グローカリンク、HOXIN株式会社、瀬戸内Startups 1号投資事業有限責任組合からの資金調達を実施したことを発表しました。Ghoonutsは、脳機能の促進を通して、人々の生活を豊かにすることを目指す会社です。

このM&Aにより、Ghoonuts社は経頭蓋電気刺激を搭載したデバイス開発を実現し、失語症回復領域における研究開発を進めていくとしています。

ヤマシタヘルスケアHDとオルソ・メディカル

2023年12月、ヤマシタヘルスケアホールディングス株式会社は、有限会社鹿児島オルソ・メディカルの全株式を取得し、子会社化したことを発表しました。ヤマシタヘルスケアHDは、ヘルスケア領域における成長戦略の1つとしてM&A戦略を実施しています。鹿児島オルソ・メディカルは、地域医療に密着した営業を展開している会社です。

このM&Aにおけるヤマシタヘルスケアの狙いは、鹿児島オルソ・メディカルの保有する経営資源やノウハウを活用しながら、両社の事業領域拡大を図ることにあります。

メディアスHDとアクティブメディカル・ノアインターナショナル

2022年3月、医療用機械器具卸売業大手のメディアスホールディングス株式会社は、連結子会社である株式会社アクティブメディカルが、ノアインターナショナル株式会社の発行する全株式を取得し、子会社化することを決議しました。

このM&Aは、取り扱う商材の領域が近いアクティブメディカルとノアインターナショナルの両社が、保有するノウハウや情報などをお互い共有し、営業を展開することでシナジー効果の創出を目指すことを狙ったものです。

カネカと日本医療機器技研

2023年11月、株式会社カネカは、株式会社日本医療機器技研の全株式を取得し、完全子会社化したことを発表しました。カネカは化成品や機能性樹脂から医療機器まで多角的な経営を行なっている会社で、日本医療機器技研は医療機器の開発メーカーです。

カネカはこのM&Aにより、日本医療機器技研の有するノウハウを活かして、スピーディな研究開発を目指します。

医療機器でM&Aを活用するメリット

次に、医療業界でM&Aを活用した場合に得られる主なメリットとして、以下の5つを紹介します。

  • ・技術や製品を獲得できる
  • ・市場シェアを拡大できる
  • ・他地域に参入しやすくなる
  • ・事業推進にかかる時間を短縮できる
  • ・医療機関とのつながりがそのまま使える

順番に見ていきましょう。

技術や製品を獲得できる

M&Aを実施すると、相手企業の有する独自のノウハウや技術などを自社に取り込むことができます。

ゼロから新製品を開発するためには多くの時間や労力、コストなどが必要ですが、相手企業の技術力を取り込めば、これらのコストの削減が可能です。さらに、自社の持つノウハウなどとの融合により、革新的な製品開発が実現する可能性も高まります。

また、相手企業が特定の分野で強みを持っていた場合は、それらを自社のラインナップに加えることで市場のシェアや収益性が向上でき、新規のビジネスチャンス創出にもつながるでしょう。

市場シェアを拡大できる

M&Aを活用して相手企業や事業を自社に取り込むことで、市場シェアの拡大が期待できます。

中小規模の医療機器卸売業では競争が激化しています。M&Aを実施すれば、取り込んだ相手企業や事業の分だけシェアが拡大でき、市場における優位性が確立できるでしょう。

また、原材料の仕入や製品の運送などを共通化すればスケールメリットが生じ、バックオフィスなどを統廃合できれば、コストの削減が見込めます。

他地域に参入しやすくなる

自社が事業展開していないエリアにある医療機器卸事業を買収すれば、新たな地域への進出が可能になります。

医療機器卸業界は、限られた地域内で密着型のビジネスを展開している中小企業が多く、新規エリアへの参入には苦戦しがちです。しかし、M&Aを効果的に活用できれば、こうした課題も簡単に解決できます。

また、新興国の医療機器卸売会社を買収すれば、新たな収益源が確保できるだけでなく、国内事業とのリスク分散も図れます。

事業推進にかかる時間を短縮できる

M&Aでは基本的に、売り手企業の持つ経営資源はすべて自社グループ内に取り込めます。そのため、新規事業への参入や既存事業の拡大を自社単独で行うよりも圧倒的に早く、低リスクで達成することが可能です。

他業種から医療機器卸事業に参入する場合は、ノウハウもブランド力も無いため、事業が軌道に乗るまで時間がかかり、失敗するリスクも高くなります。そこで、既にある程度の業績を持つ企業を買収できれば、時間を短縮しつつ、失敗リスクを大幅に軽減できるでしょう。

医療機関とのつながりがそのまま使える

医療機関と新たに取り引きを開始するのは容易ではありません。院長や事務長といったキーパーソンとの面談時間を確保するのも困難です。

しかし、M&Aを活用すれば買収した会社を通じてスムーズに面談が可能となるため、迅速に商談まで進むことができます。

このようなスピーディな事業展開は同業他社との差別化を生み、競争力の強化にもつながります。

医療機器におけるM&A成功のポイント

医療機器業界でM&Aを成功させるためには、注意しておかなければならないいくつかのポイントがあります。そのなかでも特に重要なのが、以下の2つです。

病院との関係性や強みを事前に把握する

病院との良好かつ強固な関係を持つ医療機器メーカーや、医療機器の独占販売権などを持つ医療機器卸売会社を買収すれば、「売上の安定化と増加」「長期的な優位性の確立」「スピーディな事業展開」などのメリットが見込めます。

こうした強みを持つ企業が買収できれば、経営の安定と事業の成長が確保できるため、買収を検討する際はこれらの要素を入念にチェックし、経営戦略における重要な判断材料としなければなりません。

シナジー効果を見込める企業を選定する

シナジー効果とは、M&Aによる企業買収により、自社と相手企業がそれぞれ別々に事業を行なっている場合の単なる合計よりも大きな効果を生み出すことをいいます。

M&Aの相手選びの際には、シナジー効果を見込める相手であるかもチェックしておくことが大切です。自社の弱みを補完できる要素を持っているかどうかを多角的に検討したうえで、よりシナジー効果が期待できる相手を探すと良いでしょう。

シナジー効果を最大限に引き出すためには、以下のポイントを考慮することが重要となります。

  • ・経営のシナジー効果…経営戦略を組み合わせて企業全体の成果が上げられるか
  • ・投資のシナジー効果…買収額以上のリターンが得られるか
  • ・生産のシナジー効果…生産コストの削減や生産性の向上が見込めるか
  • ・販売のシナジー効果…販路や物流の共通化によってコスト削減や新たな収益が得られるか

医療機器における今後のM&Aの課題と展望

最後に、医療機器業界M&Aにおける、今後の課題と展望について解説します。

今後も合併などは増えると予測されている

大手医療機器卸売業者は積極的なM&Aにより事業を拡大し、スケールメリットを活かして競争力を強化しています。その一方で、中小の医療機器事業者の経営環境は厳しい状況です。

その結果、大手医療機器卸売業者に買収されて100%子会社となるケースや、子会社の合併などにより競争力を強化する会社が増加しています。

また、競争力や開発力の強化を目的とした大手企業同士のM&Aも活発化しており、今後も医療機器卸売業界の再編が進行する可能性は高いでしょう。

M&Aニーズは高まる見通し

日本では、人口減少と高齢化が進行しており、2025年には人口の5人に1人が75歳以上となる「2025年問題」が迫っています。

この超高齢化社会において、医療施設や調剤薬局、介護業界などの需要は増加傾向にあるものの、社会保障費の増大や人材不足、採用難などの課題が業界に大きな影響を及ぼしています。

さらに、2024年度における医療・介護・福祉のトリプル報酬改定や、コロナ禍で急速に進展したICTへの対応、物価高による施設維持費の高騰など、医療施設や調剤薬局、介護事業者などの経営環境は厳しさを増しています。

そのため、ヘルスケア業界における課題解決や事業継続、永続的な成長戦略の切り札として、M&Aのニーズは年々高まっています。

M&Aキャピタルパートナーズはプライム市場に上場するM&Aの仲介会社であり、多くの専門家が医療機器業界のM&Aを万全の体制でサポートしています。

医療機器業界のM&Aを検討している方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

M&Aキャピタルパートナーズは、豊富な経験と実績を持つM&Aアドバイザーとして、お客様の期待する解決・利益の実現のために日々取り組んでおります。
着手金・月額報酬・企業評価レポート作成がすべて無料、秘密厳守にてご対応しております。
以下より、お気軽にお問い合わせください。


ご納得いただくまで費用はいただきません。
まずはお気軽にご相談ください。

監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


M&A関連記事

M&Aへの疑問

M&Aへの疑問のイメージ

M&Aに関する疑問に市場統計や弊社実績情報から、分かりやすくお答えします。

業種別M&A動向

業種別M&A動向のイメージ

日本国内におけるM&Aの件数は近年増加傾向にあります。その背景には、企業を取り巻く環境の変化があります。

M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由

創業以来、報酬体系の算出に「株価レーマン方式」を採用しております。
また、譲渡企業・譲受企業のお客さまそれぞれから頂戴する報酬率(手数料率)は
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」となっております。