製薬 業界 市場規模や買収・売却事例について解説

製薬 業界市場規模や買収・売却事例について解説のメインビジュアルイメージ

更新日

  • #業種別M&A動向
  • #製薬 業界 M&A

近年、製薬業界では巨額のM&Aが実施されており、海外も含めると、売上規模が大きい企業同士が行う事例も見られます。日本企業も国内だけにとどまらず、国外企業を対象にM&Aを試みるケースが増えているのが現状です。高額の資金を投じる案件も成立しており、M&Aが活発な業界といえます。

本記事では、製薬業界の定義や特色、M&Aの動向について詳しく解説します。事例やメリット、成功のポイントなども紹介しますので、今後の経営戦略に活かしたい経営者様は、最後までご参照ください。

M&Aの前に押さえておきたい製薬業界の情報

製薬会社・医薬品製造業界のM&Aを検討する前に、まずは業界の基本情報を理解しておくことが必要です。

ここでは、製薬業界の定義や特色について解説します。

製薬会社・医薬品製造業界の定義

医薬品業とは、新薬の開発から効果・効能の検証、薬の品質管理や販売まで、医薬品に幅広く関わる事業のことです。

医薬品は大きく「医療用医薬品」と「一般用医薬品(OTC:Over The Counter)」の2つに分類されます。医療用医薬品は、病院で直接、もしくは医師の処方箋を薬局に持参して購入する医薬品です。

一方、一般用医薬品(OTC)は、ドラッグストアなどで選んで購入できる医薬品を指します。主に「市販薬」と呼ばれており、個別ブランドとしての宣伝が可能になっています。

代表的な企業

企業情報プラットフォームの「バフェット・コード」によると、製薬会社・医薬品製造業界における売上高上位の企業は、以下のとおりです。

  • ・1位:武田薬品工業株式会社
  • ・2位:大塚ホールディングス株式会社
  • ・3位:アステラス製薬株式会社
  • ・4位:第一三共株式会社
  • ・5位:中外製薬株式会社

会社名は、誰しも見聞きしたことがあるような有名企業となっています。

製薬会社・医薬品製造業界の特色

製薬会社は、新たに開発した医薬品を特許権で保護し、医薬品の製造・販売を独占しています。これによって、保護された医薬品を販売し、収益を上げるというビジネスモデルを採っているのが一般的です。

市場では、90%以上を医療用医薬品が占めており、医療用医薬品は「新薬(先発医薬品)」と「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」に分けられます。ジェネリック医薬品とは、新薬の独占販売期間が過ぎたあとに発売される、同じ有効成分をもつ医薬品のことです。

これまでは、長らく新薬が市場の多くを占めてきましたが、医療費抑制のため、政府主導でジェネリック医薬品の使用促進に取り組んでいます。ジェネリック医薬品は、新薬に比べて研究開発費が少なく、安価に設定されるのが特長です。

新薬を発売するためには、9〜17年にも及ぶ研究開発期間と、数百億円から、場合によっては1,000億円を超える莫大な費用が必要になります。

さらに、約2万5,000個の化合物から一つの新薬が生まれるといわれており、開発のハードルは非常に高いです。そのため、武田薬品工業やアステラス製薬、第一三共のような、体力のある大手製薬メーカーでないと開発は困難とされています。

医薬品開発業務受託機関や医薬品卸、病院や診療所などの各業界とも、密接に結び付きの強い業界です。

製薬会社・医薬品製造業界のM&A動向・市場規模

製薬会社・医薬品製造業界が属する医薬品業界のM&Aは、時期によって増減はあるものの、全体としては2009年以降、増加傾向にあります。国内企業の買収だけでなく、海外企業の買収が多いのも特徴です。

上記の期間中(のちほど詳細は触れますが)、2019年の武田薬品工業によるシャイアー買収は、代表的な案件となっています。

医薬品業界(製造・卸含む)国内企業同士のM&A件数

IQVIAジャパンの医薬品市場統計によると、日本の医薬品市場の売上高は2015年に10兆円を超えてから横ばいで推移していましたが、新型コロナウイルス感染症の発生後、再び増加傾向となっています。そのなかで、2023年には売上高が初めて11兆円を突破しました。

上記の市場の拡大は、抗腫瘍剤市場の伸びが全体的に大きいです。コロナ禍では受診の見送りなどにより、一桁台の成長で推移していましたが、足元ではふた桁成長となっています。

その他、病院、開業医、調剤薬局の3市場共に成長を遂げています。

日本医薬品市場 売上金額推移

参考:トップライン市場データ|IQVIA

製薬会社・医薬品製造業界のM&A事例

積極的にM&Aが行われている、製薬会社・医薬品製造業界における事例について解説します。

武田薬品工業とシャイアー

2018年5月に武田薬品工業がシャイアー社の株式取得を申し出て、2019年1月に買収が完了しました。総額約7兆円という大型取引です。

譲受企業である武田薬品工業は、大阪市中央区に本社を置く大手製薬会社で、対象会社としてアイルランドの製薬大手シャイアーを買収した案件となっています。

  • ・ガン領域やワクチンにおける、それぞれの会社の強みの補完
  • ・各社の販路を活用した新興国への事業拡大
  • ・リーディング企業としての地位確立

などを達成できるとして、本件が実行されました。

メディパルホールディングスと日医工

2021年8月、メディパルホールディングスと日医工は、資本業務提携を実施しました。

メディパルホールディングスが、日医工の第三者割当増資を引き受ける流れになっています。日医工の普通株式622万株を第三者割当増資により取得し、メディパルホールディングスの持株比率は9.9%となりました。

本件は、両社が提携することで、

  • ・安全な後発医薬品を国民に届ける体制の確立
  • ・安定的かつ効率的な、後発医薬品の供給体制の構築

を目的に、業務提携を締結しています。

シオノギヘルスケアと宝ヘルスケア、宝バイオの健康食品事業

シオノギヘルスケアは2018年9月、宝ヘルスケアの株式を取得すると共に、吸収合併することを公表しました。合わせて、タカラバイオの健康食品事業の事業承継を発表しています。これらはいずれも、2019年に実施されました。

譲受企業であるシオノギヘルスケアは塩野義製薬の子会社で、一般用医薬品などの開発・製造販売を展開しています。また、対象となっていた宝ヘルスケアは、宝ホールディングスの子会社で、健康食品の通信販売や原料販売を行っていました。

本件は、これからの超高齢化社会に向けて、シニア層の健康増進に貢献できる事業の強化を目指して実行されました。

大塚製薬とVisterra

2018年7月に、大塚製薬によるVisterra(ビステラ)社の買収が公表され、同年8月末で買収が完了した案件です。大塚製薬の子会社である、大塚アメリカインクの傘下に特別目的会社を設立し、ビステラ社を存続会社とする形で同社に合併されました。

譲受側は、医薬品・臨床検査・医療機器等の製造販売などを展開している大塚製薬です。一方の譲渡側は、医薬品の研究開発を行っている、米国バイオベンチャー企業のビステラ社となっています。

本件は、従来の低分子創薬に加えて、新たに抗体創薬基盤を獲得することで、さらなる医薬品開発を目的に実施されました。

ファーマフーズと明治薬品

2021年8月、ファーマフーズが明治薬品の株式を取得することで子会社化を遂行しました。なお、本件は明治薬品を子会社化することを目的に実施され、議決権比率が3分の2以上になるように行われています。

対象会社である明治薬品は、医薬品や医薬部外品、健康食品などの製造および販売を展開していました。譲受会社であるファーマフーズは、機能性食品・化粧品・抗体創薬等の研究開発および販売を行う企業です。

ファーマフーズはM&Aを重要な成長戦略と位置付け、明治薬品が有する生産網などの製造、越境ECなどの販路等の経営資源を融合させ、収益拡大を目指して本件が実行されました。

製薬会社・医薬品製造業界でM&Aを活用するメリット

製薬会社・医薬品製造業界においてM&Aを活用することで、さまざまなメリットがあります。そのメリットについて解説していきますので、順番に見ていきましょう。

優秀な研究員を獲得できる

製薬業界では研究が非常に大切と考えられており、研究を成功させる目的で優秀な研究員を増やすことが、製薬業界で生き残っていくために必要です。

したがって、買収を進めることにより、対象会社が抱える優秀な研究員を獲得できる可能性があり、当該メリットを理由に盛んに実施されています。

買収後は、自社の研究施設を活用してもらうことによって、新たな研究成果が得られる見込みも生じてくるため、買収は有効な手段といえます。

技術力や研究開発ノウハウを獲得できる

製薬業界において、技術力や研究開発のノウハウは重要な要素となっています。そのため、ノウハウをどのように獲得するか、また、蓄積していくかは、企業にとって検討すべき課題でもあります。

買収を進めることで、対象会社が保有している技術力や研究開発ノウハウを獲得することが可能です。製薬業界は、新たな薬を作れるかという可能性の世界といわれています。見込みのある研究などがあれば、買収によって獲得することで、その後の収益に貢献するかもしれません。

幅広い販売網を獲得できる

対象会社がECサイトなどを運営していれば、そのWebを活用した販売網を取り込むことが可能になります。仮に、対象会社が海外展開している企業であれば、その会社を買収することで、海外での販売網を獲得できるでしょう。

現在、製薬業界は業界全体として収益性が下がってきているので、各会社の販売網などを獲得して収益性を上げていく必要があります。その観点でも、買収が積極的に行われていると考えられます。

製薬会社・医薬品製造業界におけるM&A成功のポイント

製薬会社・医薬品製造業界において、M&Aが実施される目的は多岐にわたります。特に、研究開発が重要視されているため、研究開発を目的に実行されることもしばしばです。

販売経路なども多様で、EC販売網の獲得や、自社が保有しない海外の販売網の獲得を目的に行われることもよくあります。

M&Aの目的を明確にしなければ、途中で頓挫してしまう可能性も生じます。目的を明確にしたうえで、交渉なども妥協せずに進めることが重要です。

製薬会社・医薬品製造業界における今後のM&Aの課題と展望

製薬会社・医薬品製造業界は、事業再編などにより市場環境が大きく変化しています。

また、薬価引き下げなどで取り巻く環境は激変しており、市場規模予測の確実性も低下しているのが現状です。その他、少子高齢化や医療費の抑制に伴う薬価引き下げにより、収益の低下や市場の縮小が懸念されています。

今後は、市場におけるシェアの確立、新薬開発の効率化のためにも、AI や loT技術の導入が注目されています。 製薬会社・医薬品製造業界だけでなく、他業種とのM&Aも活発化していくと想定されているのが、この業界の特徴です。

M&Aキャピタルパートナーズは、豊富な経験と実績を持つM&Aアドバイザーとして、お客様の期待する解決・利益の実現のために日々取り組んでおります。
着手金・月額報酬・企業評価レポート作成がすべて無料、秘密厳守にてご対応しております。
以下より、お気軽にお問い合わせください。


ご納得いただくまで費用はいただきません。
まずはお気軽にご相談ください。

監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


M&A関連記事

M&Aへの疑問

M&Aへの疑問のイメージ

M&Aに関する疑問に市場統計や弊社実績情報から、分かりやすくお答えします。

業種別M&A動向

業種別M&A動向のイメージ

日本国内におけるM&Aの件数は近年増加傾向にあります。その背景には、企業を取り巻く環境の変化があります。

M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由

創業以来、報酬体系の算出に「株価レーマン方式」を採用しております。
また、譲渡企業・譲受企業のお客さまそれぞれから頂戴する報酬率(手数料率)は
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」となっております。