製薬会社・医薬品製造業界のM&A動向 昨今の事業買収・売却の事情やM&A事例を紹介

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製薬会社・医薬品製造業界は、新薬開発の長期化・高コスト化を背景に、研究開発力強化や事業拡大が活発化している業界です。

大手製薬メーカーによる海外企業の買収や、技術力獲得を狙った専門企業への投資が増加しており、業界再編が進んでいます。

本記事では、製薬業界の市場規模やM&A動向、成功事例について詳しく解説します。M&Aを行うべきか悩んでいる経営者の方は、ぜひご覧になり、今後の経営戦略に活かしてください。

製薬会社・医薬品製造業界の概要

製薬会社・医薬品製造業界のM&Aを検討する前に、まずは業界の基本情報を理解しておくことが必要です。

ここでは、製薬・医薬品製造業界の定義や特色について解説します。

製薬会社・医薬品製造業界の定義

医薬品業とは、新薬の開発から効果・効能の検証、薬の品質管理や販売まで、医薬品に幅広く関わる事業のことです。

医薬品は大きく「医療用医薬品」と「一般用医薬品(OTC:Over The Counter)」の2つに分類されます。医療用医薬品は、病院で直接、もしくは医師の処方箋を薬局に持参して購入する医薬品です。

一方、一般用医薬品(OTC)は、ドラッグストアなどで選んで購入できる医薬品を指します。主に「市販薬」と呼ばれており、個別ブランドとしての宣伝が可能になっています。

製薬会社・医薬品製造業界の特色

製薬・医薬品製造会社は、新たに開発した医薬品を特許権で保護し、医薬品の製造・販売を独占しています。これによって、保護された医薬品を販売し、収益を上げるというビジネスモデルを採っているのが一般的です。

医療用医薬品は「新薬(先発医薬品)」と「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」に分けられます。

新薬の開発は、9~16年程度の研究期間と、1,000億円規模の巨額な開発費がかかる、大規模なプロジェクトです。特許期間は原則20年で、申請によって最大5年の延長が認められますが、開発期間の長さを鑑みると、独占できる期間は限定的といえるでしょう。

こうした高コスト・長期化という構造的課題に対応する手段として、近年注目を集めているのが創薬プロセスのDX(デジタルトランスフォーメーション)です。AIを活用して膨大な候補化合物を短時間でスクリーニングしたり、スーパーコンピュータによる分子構造解析を自動化したりすることで、探索期間の大幅な短縮や成功確率の向上が期待されています。加えて、電子カルテやウェアラブル機器から収集されるリアルワールドデータ(RWD)を活用し、治験の効率化や個別化医療の実現を目指す動きも活発化しています。

ジェネリック医薬品とは、新薬の独占販売期間が過ぎたあとに発売される、同じ有効成分をもつ医薬品のことです。

これまでは、長らく新薬が市場の多くを占めてきましたが、医療費抑制のため、政府主導でジェネリック医薬品の使用促進に取り組んでいます。ジェネリック医薬品は、新薬に比べて研究開発費が少なく、安価に設定されるのが特長です。

製薬会社・医薬品製造業界のM&A動向・市場規模

日本の医薬品市場 売上金額推移
参考:トップライン市場データ|IQVIAジャパン

製薬会社・医薬品製造業界が属する医薬品業界のM&Aは、時期によって増減はあるものの、全体としては2009年以降、増加傾向にあります。国内企業の買収だけでなく、海外企業の買収が多いのも特徴です。

IQVIAジャパンの調査によると、日本の医薬品市場の売上高は2015年に10兆円を超えてから横ばいで推移していましたが、新型コロナウイルス感染症の発生後、再び増加傾向となっています。そのなかで、2024年度は11兆4,874億となっています。

薬効首位が「L01 抗腫瘍剤」ですが、2兆円台を目前にしてわずかに増えている状況です。一方、最も大きく成長したのが、「J07 ワクチン類(含トキソイド)」で42.9%増となっています。

製薬会社・医薬品製造業界でM&Aを活用するメリット

優秀な研究員を獲得できる

製薬・医薬品製造業界では研究が非常に大切と考えられており、研究を成功させる目的で優秀な研究員を増やすことが、製薬業界で生き残っていくために必要です。

したがって、買収を進めることにより、対象会社が抱える優秀な研究員を獲得できる可能性があり、当該メリットを理由に盛んに実施されています。

買収後は、自社の研究施設を活用してもらうことによって、新たな研究成果が得られる見込みも生じてくるため、買収は有効な手段といえます。

技術力や研究開発ノウハウを獲得できる

製薬業界において、技術力や研究開発のノウハウは重要な要素となっています。そのため、ノウハウをどのように獲得するか、また、蓄積していくかは、企業にとって検討すべき課題でもあります。

買収を進めることで、対象会社が保有している技術力や研究開発ノウハウを獲得することが可能です。製薬業界は、新たな薬を作れるかという可能性の世界といわれています。見込みのある研究などがあれば、買収によって獲得することで、その後の収益に貢献するかもしれません。

幅広い販売網を獲得できる

対象会社がECサイトなどを運営していれば、そのWebを活用した販売網を取り込むことが可能になります。仮に、対象会社が海外展開している企業であれば、その会社を買収することで、海外での販売網を獲得できるでしょう。

現在、製薬業界は業界全体として収益性が下がってきているので、各会社の販売網などを獲得して収益性を上げていく必要があります。その観点でも、買収が積極的に行われていると考えられます。

製薬会社・医薬品製造業界のM&A事例

ここでは、実際に製薬会社・医薬品製造業界で実施されたM&A事例を6つ紹介します。それぞれ、どのような背景や戦略的意図があったのかを確認していきましょう。

武田薬品工業株式会社とシャイアー

2018年5月に武田薬品工業株式会社がシャイアー社の株式取得を申し出て、2019年1月に買収が完了しました。総額約7兆円という大型取引です。

譲受企業である武田薬品工業は、大阪市中央区に本社を置く大手製薬会社で、対象会社としてアイルランドの製薬大手シャイアーを買収した案件となっています。

  • ガン領域やワクチンにおける、それぞれの会社の強みの補完
  • 各社の販路を活用した新興国への事業拡大
  • リーディング企業としての地位確立

などを達成できるとして、本件が実行されました。

株式会社メディパルHDと日医工株式会社

2021年8月、株式会社メディパルホールディングスと日医工株式会社は、資本業務提携を実施しました。

メディパルホールディングスが、日医工の第三者割当増資を引き受ける流れになっています。日医工の普通株式622万株を第三者割当増資により取得し、メディパルホールディングスの持株比率は9.9%となりました。

本件は、安全な後発医薬品を国民に届ける体制の確立および安定的かつ効率的な、後発医薬品の供給体制の構築を目的に、実行されました。

シオノギヘルスケア株式会社と宝ヘルスケア株式会社・タカラバイオ株式会社

シオノギヘルスケアは2018年9月、宝ヘルスケアの株式を取得すると共に、吸収合併することを公表しました。合わせて、タカラバイオの健康食品事業の事業承継を発表しています。これらはいずれも、2019年に実施されました。

譲受企業であるシオノギヘルスケアは塩野義製薬の子会社で、一般用医薬品などの開発・製造販売を展開しています。また、対象となっていた宝ヘルスケアは、宝ホールディングスの子会社で、健康食品の通信販売や原料販売を行っていました。

本件は、これからの超高齢化社会に向けて、シニア層の健康増進に貢献できる事業の強化を目指して実行されました。

大塚製薬株式会社とVisterra社

2018年7月に、大塚製薬によるVisterra(ビステラ)社の買収が公表され、同年8月末で買収が完了した案件です。大塚製薬の子会社である、大塚アメリカインクの傘下に特別目的会社を設立し、ビステラ社を存続会社とする形で同社に合併されました。

譲受側は、医薬品・臨床検査・医療機器等の製造販売などを展開している大塚製薬です。一方の譲渡側は、医薬品の研究開発を行っている、米国バイオベンチャー企業のビステラ社となっています。

本件は、従来の低分子創薬に加えて、新たに抗体創薬基盤を獲得することで、さらなる医薬品開発を目的に実施されました。

株式会社ファーマフーズと明治薬品株式会社

2021年8月、ファーマフーズが明治薬品の株式を取得することで子会社化を遂行しました。

対象会社である明治薬品は、医薬品や医薬部外品、健康食品などの製造および販売を展開していました。譲受会社であるファーマフーズは、機能性食品・化粧品・抗体創薬等の研究開発および販売を行う企業です。

ファーマフーズはM&Aを重要な成長戦略と位置付け、明治薬品が有する生産網などの製造、越境ECなどの販路等の経営資源を融合させ、収益拡大を目指して本件が実行されました。

ロート製薬株式会社とモノ社

2024年6月、ロート製薬株式会社は、オーストリア・ウィーンに本社を置く製薬会社・Mono chem‑pharm Produkte GmbH(モノ社)の株式51%を、約30百万ユーロ(約51億円)で取得すると発表しました。

モノ社は医薬品・医療機器の製造・販売を担い、子会社のSigmapharmと共に欧州市場向けアイケア製品に強みを持っています。

ロート製薬は今回の買収を通じて、欧州に製造基地を確保すると同時に、自社の研究開発技術と融合させることで、アイケア事業の迅速な拡大を目指しています。

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製薬会社・医薬品製造業界におけるM&A成功のポイント・注意点

製薬会社・医薬品製造業界のM&Aを成功に導くためには、業界特有の課題やポイントを十分に理解することが重要です。ここでは、特に押さえておきたいポイントを3つ紹介します。

長期的な視点で研究開発・技術力を評価する

製薬・医薬品製造業界では、買収対象の研究テーマが将来的にどれだけの市場価値を持つかを見極める必要があります。

具体的には、対象疾患の患者数、承認見込み時期、競合環境などを踏まえ、多角的な視点から分析を行いましょう。これにより、どの程度の期間で収益化が可能か、そして中長期的にどのような利益貢献が期待できるかを明確にすることが可能です。

将来の収益化まで時間がかかることを前提に、収益化までの期間やリスクを踏まえたうえで、数値に基づくシミュレーションやシナリオ分析を行うことが、適正な企業価値判断につながります。

規制対応・薬事承認の状況を確認する

医薬品は、人の生命や健康に関わる製品であるため、安全性・有効性の証明が欠かせません。そのため、開発には厳しい規制が設けられており、薬事承認の取得状況や見通しは、M&A後の収益化に直結するといえます。

例えば、現在の臨床試験のフェーズ、過去の承認申請履歴、当局とのやり取り内容、製造販売承認や販売提携の有無などを、デューデリジェンスで詳細に精査することが重要です。

また、グローバル市場を視野に入れる場合は、各国における規制の差異を把握する必要があります。どの市場でどの時期に上市できるのか、どれだけのコストと時間がかかるのかといったシナリオを想定し、慎重に検討を進めましょう。

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ステークホルダーとの関係性を丁寧に引き継ぐ

製薬・医薬品製造業界では、企業価値の多くが人材や対外ネットワークといった無形資産に依存しています。そのため、研究開発の中核を担う人材が離脱した場合、技術継承の断絶やパイプラインの停滞を招くおそれがあります。また、共同研究先やライセンスパートナーとの関係も、事業継続に欠かせません。

そのため、M&Aを実行する際には、キーパーソンの在籍状況・待遇や、提携契約の継続可能性、独占・解除条項などを確認しましょう。

さらにPMIでは、人的資源と外部関係を円滑に承継し、研究開発の生産性や連携体制を維持・強化する体制整備が求められます。

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製薬会社・医薬品製造業界における
今後のM&Aの課題と展望

製薬・医薬品製造業界では、新薬開発の長期化・高コスト化、政府による薬価抑制、グローバル競争の激化を背景に、M&Aの重要性が一層高まっています。

特に近年は、技術力や研究人材の獲得、グローバル市場への販路拡大を目的とした戦略的買収が増加しています。一方で、買収後に企業価値を最大化するには、研究テーマの将来性評価や薬事承認の進捗確認に加え、人的資源や提携関係など無形資産の引き継ぎが不可欠です。

今後は、より精緻なデューデリジェンスと実効性あるPMIが、M&A成功の鍵を握るでしょう。

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よくある質問

  • 製薬会社・医薬品製造業界とは何ですか?
  • 新薬の開発から製造・販売までを担い、医療用医薬品と一般用医薬品を提供する産業です。
  • 製薬会社・医薬品製造業界でM&Aが活発化する背景は?
  • 開発期間の長期化・費用増大への対応や技術力・研究人材確保、海外販路拡大を目的に再編が進んでいるためです。
  • M&A活用の主なメリットは?
  • 優秀な研究員・技術ノウハウの獲得、幅広い販売網の取り込みにより研究開発力と収益基盤を強化できます。
  • 成功のポイントは?
  • 研究テーマの将来性評価、薬事承認状況の精査、キーパーソン・提携先の関係性を丁寧に承継することです。
  • 規制対応で確認すべき事項は?
  • 現在の臨床試験フェーズ、承認申請履歴、各国の薬事規制差異を把握し、上市時期とコストを見極めることが重要です。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

2007年、立教大学経済学部経営学科卒業後、国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。
2021年M&Aキャピタルパートナーズ入社後は、広報責任者として、TV番組・CMなどのメディア戦略をはじめ広報業務全体を管掌、2024年より現職。

一般社団法人金融財政事情研究会認定M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者



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