カー用品業界のM&A動向 市場規模や買収・売却事例について解説

カー用品業界市場規模や買収・売却事例について解説のメインビジュアルイメージ

更新日

  • #業種別M&A動向
  • #カー用品業界 M&A

カー用品は、自動車の快適性や安全性を高めるために欠かせないアイテムです。アクセサリー類やメンテナンス用品など、さまざまなカテゴリの商品があり、価格帯も手頃なものから高級品まで多岐にわたります。

近年、カー用品市場は消費者のニーズや社会情勢の変化に大きく影響を受けており、カー用品店も同様に改革が必要な段階となっています。当記事では、カー用品の市場規模や主要な動向、業界の課題について解説し、今後の展望を考察します。

カー用品とは?

カー用品とは、自動車に関連する製品全般を指す言葉です。たとえば、車内外に取り付けるアクセサリー類や、メンテナンス用の消耗品が含まれます。いずれも、自動車の機能向上や快適性の向上、安全性の確保を目的として使用されるアイテムです。

カー用品をメインに扱う店舗をカー用品店と呼びます。カー用品は幅広い種類がありますが、以下のような商品が代表的です。

  • 車内で使用するエアフレッシュナーやカーナビゲーション
  • 車外に取り付けるエアロパーツやタイヤ
  • 車両の劣化を防ぐコーティング剤や保護フィルム
  • 安全性を向上させるドライブレコーダーやチャイルドシート

また、同系統の商品であっても、一般ユーザー向けの手頃な価格帯のものからこだわりたい方の高額な商品まで、幅広くあります。

カー用品店で提供しているサービス

カー用品店では、商品の販売だけでなく、さまざまなサービスも提供されています。店舗によっても取り扱うサービスは異なりますが、以下の7種類が代表的です。

  • タイヤ交換
    タイヤの交換やローテーション、ホイールバランス調整などを行います。窒素ガスの充填や補充、パンク修理にも対応している店もあり、店舗によってはタイヤ・ホイールの持ち込みも可能です。
  • 車検
    車両が安全基準を満たしているかを確認するための点検・整備を行います。自家用車で公道を走る場合は新車登録時は3年、以後2年ごとの実施が義務付けられています。
  • ボディコーティング
    車体にガラスコーティングなどを施すことで、外装の光沢を保ち、劣化を防ぐサービスです。紫外線からの保護や雨天時の汚れ軽減効果もあります。
  • オイル交換
    エンジンオイルやフィルターの交換を行います。エンジン内部の摩耗を防ぎ、車両の性能を最大限に引き出すため、定期的なオイル交換は欠かせません。
  • 塗装・修理
    車体の擦り傷やへこみを修理し、元の状態に復元するサービスです。車両の外観を保つだけでなく、錆や劣化を防ぐ効果もあります。
  • メンテナンス
    バッテリーやエアフィルター、ワイパーなどの消耗部品の交換を行うことで、トラブルを未然に防ぎつつ車両の寿命を延ばします。
  • カーエレクトロニクス
    カーナビ・ドライブレコーダー・スピーカーなどの取り付けや設定を行うサービスです。取り付けに専門性の高い知識を要するアイテムもあるため、カー用品店でのサービスが重宝されています。

これらのサービスを通じて、ユーザーの車両を安全かつ快適な状態に保つ役割を担うのがカー用品店です。一部の店舗では、特殊なカスタマイズやパーツの取り付けにも対応するなど、顧客の多様なニーズに応えています。

カー用品の市場規模

自動車部品出荷動向調査結果によると、2023年における自動車部品全体の出荷額は約19兆5,366億円と、前年に比べ9.2%増加しました。しかし、カー用品に限ると出荷額は約2,500億円で前年比96.7%と減少傾向です。

一般社団法人 日本自動車部品工業会「自動車部品出荷動向調査結果2022年度」

※出典:一般社団法人 日本自動車部品工業会「自動車部品出荷動向調査結果2022年度」

また、ここ5年間のカー用品出荷額も減少傾向です。

2018年2019年2020年2021年2022年
出荷額約3802億円約4125億円約3636億円約2665億円約2577億円

※出典:一般社団法人 日本自動車部品工業会「自動車部品出荷動向調査結果」

一方で、2023年の新車販売台数は、前年比118.4%と増加傾向が見られます。特にバスが前年比153.5%、普通乗用車が130.6%と大きな伸びを見せました。こうした市場動向は、カー用品市場にも今後の成長の可能性を示唆しており、市場の動向を引き続き注視する必要があります。

一般社団法人 日本自動車販売協会連合会「新車車種別登録台数(年計)」

※出典:一般社団法人 日本自動車販売協会連合会「新車車種別登録台数(年計)」

大手カー用品店の売上動向

カー用品販売大手企業として代表的な、オートバックスとイエローハットの売上動向を見てみましょう。

オートバックスの事業別資料によると、2024年3月期の総売上高が約1,721億円と前年同期比で微減しました。しかし、自動車整備業関連や車検、オイル・バッテリーの販売推移は堅調です。近年では、中古車買取・販売を中心とした事業拡大に注力しており、新車価格の高騰を背景に中古車需要を取り込みつつあります。

一方、イエローハットでは2024年3月期の売上高が約1,466億円とわずかに減少しました。2024年3月期の決算資料によると、ドライブ需要の回復によりタイヤや消耗品の販売は堅調でしたが、暖冬や天候不順の影響で冬季用品の販売が振るわず、全体の売上を押し下げる要因となりました。同社は、経営資源の効率化を目的として、店舗の移転や集約を進めています。

両社ともに、コロナ禍明けのドライブ需要の回復を追い風としつつ、天候や季節の影響を最小限に抑える施策に取り組んでいます。今後も消費者のニーズを踏まえた柔軟な戦略が求められるでしょう。

近年のカー用品業界の市場動向

カー用品業界はこれまで、車に関連するさまざまな商品やサービスを提供し、成長を遂げてきました。しかし近年、消費者のニーズや社会的な変化に応じて、新たな製品やサービスの提供が求められるようになっています。競争の激化する業界で生き残るには、技術革新や市場の多様化によるビジネスチャンスを敏感に察知し、対応しなければなりません。

以下では、近年のカー用品業界の市場動向を解説します。

自動車に対する意識の変化

近年、若者を中心とした車離れが進んでいます。高額な購入費用や維持費、駐車場の確保が難しいことなどが主な原因とされ、特に都市部で顕著です。

若者の価値観の変化も影響しています。所有よりも経験や体験に価値を置き、自動車に対する関心が薄れている傾向にあります。また、環境意識の高まりや持続可能な社会への関心から、自家用車の所有を控える動きも進みました。

車離れは、カー用品全体の売上へ直接影響する課題です。たとえば、新車の購入が減少することで、カーナビやアクセサリなどの需要も低下しています。地方では依然として車が主要な移動手段ではあるものの、若者層の車への興味が薄れれば、将来的な市場規模の縮小は避けられないでしょう。

カーAVC機器の低迷

カーオーディオやナビゲーションシステムなどのカーAVC機器は、スマートフォンの普及に伴い需要が減少しています。特に市販カーナビは、スマホアプリやメーカー純正品に押されているのが現状です。また、2022年から2023年にかけては、半導体不足の影響もあり、供給が滞る場面も見られました。

現在、カーAVC機器メーカーは新たな価値提供に向けた取り組みを進めています。たとえば、エンターテインメント性を重視した大画面ディスプレイや、スマートフォンとの連携強化などです。また、高音質化や後部座席向けの製品開発も進行中であり、市場の回復が期待されています。

ドライブレコーダーが好調

カーAVC機器の低迷とは裏腹に、ドライブレコーダーの需要は引き続き好調です。ドライブレコーダーは、交通事故の証拠映像やあおり運転の抑止力としての役割が評価されており、市場拡大が見込まれています。

近年は、製品の多様化が進んでいます。たとえば、駐車中の監視機能を備えたモデルや、AI技術を活用して運転状況を解析するタイプなど、より高度なニーズに応える製品が登場しました。これにより、ドライブレコーダー設置の義務化が進む業務用市場だけでなく、一般消費者にも需要が高まっています。

特に人気を集めているのは、360度カメラがついていたり、高画質で記録できたりするモデルです。また、前後を同時に撮影できる2カメラモデルや、運転支援機能付きの商品なども注目されています。

ECサイトの増加

物販系分野の中ではEC化率が低く発展途上ではあるものの、カー用品のEC市場は着実に拡大しています。カー用品は大型商品や専門的な知識が必要な商品が多いため、これまでは実店舗で購入しそのまま自動車整備士などに取り付けてもらうのが主流でした。

しかし、商品の詳細情報を提供することでオンラインでの購入ハードルが下がり、EC化率が徐々に向上しています。特に、コロナ禍以降はオンラインショッピングの需要が増加したこともあり、ECサイトを活用するユーザーが増えました。

また、EC専用商品の開発や、購入後のアフターサービスを強化する動きも見られます。このように、カー用品とECの融合は今後さらに進展する見込みです。

海外展開の増加

国内市場の縮小を受けて、多くの企業が海外展開を強化し始めました。たとえば、オートバックスは複数の国や地域に進出し、現地のニーズに合わせた製品やサービスを提供しています。また、海外の洗車市場やカー用品市場への進出も活発です。日本製の高品質なカー用品は海外市場で評価が高く、越境ECを活用してグローバル市場を開拓する動きも見られます。

特に自動車の普及率が向上しているアジアや中南米は、新たな成長市場として注目されているエリアです。パートナー企業との連携や現地の文化・使用環境に適応した戦略を通じて、企業は新たな市場での競争力を確立しつつあります。

カーシェアリングの広まり

車離れが進む一方で、カーシェアリングの需要は拡大傾向です。カーシェアリングは必要なときだけ車を利用できるサービスで、特に都市部での利用が増えています。15分単位で利用できるサービスや、アプリで簡単に予約・解錠ができる仕組みが好評です。

カーシェアリングは、車の購入や維持にかかるコストを削減したい人々に支持されています。また、環境意識の高まりも人気を後押しする要因の1つです。近年は、個人としての利用だけでなく、社用車のコストを抑えたい法人の利用も増加傾向にあります。カーシェアリングの普及に伴い、車両共有をサポートする専用のカー用品やシステムの需要が生まれており、新たなビジネスチャンスの創出が期待されます。

カー用品業界のM&Aの特徴

一般的なM&Aでは、異業種からの参入を目的に行われるケースも多くありますが、カー用品業界の場合は同業者同士で行われるのが一般的です。以下では、M&Aによるメリットとデメリットを解説します。

M&Aのメリット

同業者間でのM&Aには、以下のような利点があります。

  • 事業承継がしやすい
    後継者不足が深刻な問題となっている中小企業は少なくありません。買収先の企業が事業を引き継ぐM&Aを利用すれば、経営者の交代がスムーズに行えます。同時に、専門的な知識とスキルを持った整備士資格者の雇用も維持できるのもメリットです。
  • スケールメリットが得られる
    M&Aにより規模が拡大すると、仕入れコストの削減や販路の拡大が期待できます。特に、カー用品のような低価格帯の商品を扱う業界では、規模の拡大が利益率の向上につながるケースが少なくありません。取引先との交渉力が強化され、商品のラインナップや品質の向上も実現しやすくなる点もメリットです。
  • 金銭的収入を得られる
    売却側の企業は、資産の現金化により経営の安定を図ることが可能です。この収入は、借入金の返済や新たな事業への投資、引退後の生活資金などにも活用できます。企業価値が高く評価された場合、想定よりも売却益が大きくなることも期待できます。

M&Aのデメリット

M&Aにはメリットがある一方で、以下の点に注意が必要です。

  • 理念などが買い手側のものに変更される可能性がある
    企業が買収された場合、経営方針や社風が買い手側のものに統一されるケースがあります。売却側とのギャップがありすぎると、残った従業員や顧客が不満を募らせかねません。地域に密着したサービスを重視してきた企業では、顧客離れが加速する場合があります。
  • 取引先との関係が悪化する可能性がある
    契約条件の変更や取引方針の転換によって、取引先が離れたり競合他社に流れたりする可能性も考慮しなければなりません。特に長年の信頼関係がある取引先に対しては、丁寧な説明と調整が必要です。

カー用品業界のM&A事例

カー用品業界では、各企業が競争力を強化し、業界再編の波に乗るための重要な手段としてM&Aが積極的に行われています。今後、M&Aを視野に入れているのであれば、過去の事例を把握しておくとよいでしょう。

以下では、代表的な事例の概要を3つ解説します。

ロイヤルホームセンターによるワールドツールのM&A

2019年、大和ハウスグループのロイヤルホームセンターは、ワールドツールを完全子会社化しました。ワールドツールは自動車整備用工具の専門店「アストロプロダクツ」を展開し、全国189店舗と国外に6店舗を構えていた企業です。

M&Aの目的は、ワールドツールが持つ高品質・高付加価値の工具ブランドを活用し、ロイヤルホームセンターのプライベートブランドを強化することでした。また、ワールドツールの既存顧客層の取り込みにより、ホームセンター業界での競争力の向上も視野に入れています。

オートバックスセブンによる近藤自動車工業のM&A

2024年、京都府の近藤自動車工業は、オートバックスセブンの完全子会社となりました。近藤自動車工業は自動車の修理・整備や、関連製品の販売を手掛けた企業です。オートバックスセブンは、オートバックスグループのフランチャイズ本部です。カー用品の卸売・小売・車検・整備・板金・塗装・中古車売買などを提供しています。

このM&Aは、オートバックスが掲げる「次世代技術対応の整備ネットワーク構築」の一環として行われました。近藤自動車工業の買収により、オートバックスは顧客接点を増やして自動車整備事業の収益性を向上させるのが狙いです。

イエローハットによる複数の同業他社のM&A

イエローハットは2010年代以降、複数の同業他社をM&Aで傘下に収めています。たとえば、2011年に業績不振に陥っていた「モンテカルロ」を子会社化し、店舗運営を再建しています。2012年には「ドライバースタンド」を買収、2輪用品市場への展開を強化しました。

また、「ジュンテンドー」に対するM&Aのように、企業そのものではなく一部事業のみの買取にも積極的なのが特徴です。これらのM&Aにより、イエローハットは事業規模を拡大するだけでなく、カー用品市場の縮小を補う新たな収益源となる、新たな市場セグメントへの進出を実現しています。

カー用品業界がM&Aを行う際の注意点

カー用品業界でのM&Aは成長戦略として有効ですが、成功には慎重な計画と実行が必要です。

事業売却側・買収側の双方に共通する注意点として、企業文化や業務スタイルの違いを理解し、統合計画を明確にすることが挙げられます。文化の相違を軽視すると、従業員の対立や業務効率の低下が生じかねません。また、M&Aの目的を具体化し、期待されるシナジー効果を十分に分析するのも不可欠です。

売却側にとっては、事業承継先候補の企業の慎重な見極めが欠かせません。買収後に自社の事業や従業員がどのように扱われるかを考慮し、企業価値が最大化される相手を選ぶのが成功ポイントです。また、雇用条件や役割を明確にして従業員の不安を軽減し、優秀な人材の流出やモチベーションの低下を防ぐ努力が求められます。

買収側は簿外債務や想定外のリスクを回避するため、デューデリジェンスの徹底が重要です。また、期待した成果が得られないリスクに備え、投資回収計画を綿密に立てる必要があります。

まとめ

カー用品業界は、自動車の快適性や安全性を向上させる商品やサービスを提供していますが、車離れや市場の変化により、従来の製品やサービスだけでは対応が難しい状況も生まれています。

市場規模の縮小や競争の激化が課題となる中で、M&Aや海外展開などを活用し、多様化する消費者ニーズに応える戦略が必要です。業界の成長のためにも、柔軟な対応力と持続的な価値提供を行いましょう。

M&Aキャピタルパートナーズは、豊富な経験と実績を持つM&Aアドバイザーとして、お客様の期待する解決・利益の実現のために日々取り組んでおります。
着手金・月額報酬・企業評価レポート作成がすべて無料、秘密厳守にてご対応しております。
以下より、お気軽にお問い合わせください。


よくある質問

  • カー用品業界の市場規模はどれくらいですか?
  • 2023年のカー用品出荷額は約2,500億円です。
  • カー用品業界の主要な課題は何ですか?
  • 車離れ、カーAVC機器の低迷、競争の激化などが課題です。
  • カー用品業界の市場動向は?
  • ドライブレコーダーの需要増加、ECサイトの増加、海外展開の増加、カーシェアリングの広まりなどが見られます。

ご納得いただくまで費用はいただきません。
まずはお気軽にご相談ください。

監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


M&A関連記事

M&Aへの疑問

M&Aへの疑問のイメージ

M&Aに関する疑問に市場統計や弊社実績情報から、分かりやすくお答えします。

業種別M&A動向

業種別M&A動向のイメージ

日本国内におけるM&Aの件数は近年増加傾向にあります。その背景には、企業を取り巻く環境の変化があります。

M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由

創業以来、報酬体系の算出に「株価レーマン方式」を採用しております。
また、譲渡企業・譲受企業のお客さまそれぞれから頂戴する報酬率(手数料率)は
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」となっております。