M&Aにおけるプットオプションとは? 活用シーンや設定しないことによるリスクなどを解説

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M&Aにおけるプットオプションについて

M&Aや合弁契約の設計において、将来の持分変動やEXITへの備えは欠かせません。そこで注目されるのが、「プットオプション」や「コールオプション」といった、オプション条項の活用です。

これらは単なる売買権ではなく、提携解消時の出口戦略少数株主の保護、段階的買収の布石として機能します。そこで本記事では、プットオプションの概要や、M&Aでの活用シーン、設定・行使の流れなどについて解説します。


M&Aにおけるプットオプションとは

プットオプションとは、一定の条件を満たしたときに、オプション所有者があらかじめ決められた価格で株式を売却できる権利です。M&Aにおいては、売却側が将来的に株式を手放す「出口戦略(EXIT)」を保証する条項として盛り込まれるケースが多く見られます。

例えば、ベンチャーキャピタルやプライベート・エクイティファンドは、一定期間の投資後に資金回収を行います。プットオプションを設定して売却条件やタイミングをあらかじめ明確にしておけば、計画的なEXITが可能となります。

このオプションは、契約時に、売却価格の算定方法や行使条件などを詳細に定めておかなければなりません。そうすることで、将来的な解釈の相違や交渉トラブルを回避し、売り手が安心して株式を保有・運用できる環境が整えられます。

なお、プットオプションと対をなす概念として「コールオプション(あらかじめ決められた価格で株式を購入できる権利)」がありますが、両者はいずれも将来の株式移動を事前に契約でコントロールするための手段として位置づけられます。

M&Aでプットオプションを設定するメリット

プットオプションには、買い手と売り手の双方にメリットがあります。立場ごとの代表的なメリットを見ていきましょう。

売り手企業のメリット

プットオプションを設定する最大のメリットは、将来的な出口戦略をあらかじめ設計できる点です。

プットオプションを設定すれば、一定の条件を満たせば、あらかじめ定めた価格や方式で株式を買い取ってもらえることが明確になるため、資金回収の見通しが立てやすくなります。そのため、経営者やファンドは資金計画を明確にしつつ、安心して株式を保有・運用することが可能になります。

また、後継者や少数株主のように、将来的に持株の整理や換金を見据えている株主にとっては、スムーズな持分処分ができる点も大きな魅力です。さらに、M&A後の経営方針の不一致や関係性の悪化が生じた際にも、プットオプションがあれば円滑な関係解消が可能となるため、精神的な余裕を持ちながら経営に取り組むことができます。

これに対し、プットオプションを設定していない場合、株式を処分したいと思っても相手が見つからず、「経営から退きたくても退けない」というリスクが生じかねません。

このように、プットオプションは売り手にとって、将来の不確実性に備える有力な手段となります。

買い手企業のメリット

買い手企業にとっても、プットオプションの導入は、契約の透明性や将来の見通しを高めるうえで有効な手段です。あらかじめ、将来的な株式取得の条件や時期を明確に定めておけば、段階的な買収や事業承継を計画的に進めやすくなります。

また、出口の選択肢が用意されていることは心理的な安心材料となるため、M&A交渉を円滑に進めるうえでも有利に働きます。さらに、将来の株式移転に関する条件や価格が事前に定められていれば、取引後のトラブル回避や関係維持が容易になるでしょう。

このように、買収プロセス全体における信頼形成やリスクマネジメントの観点からも、プットオプションの活用は検討する価値があるといえます。

プットオプションが活用されるM&Aの具体例

プットオプションは、単なる売却権にとどまらず、さまざまなM&Aスキームで戦略的に活用されています。

ここでは、段階的買収や業績連動型契約、ファンドのEXIT設計など、実務で見られる代表的な活用例を紹介します。

敵対的買収に対する防衛策としての活用

プットオプションは、敵対的買収に備える防衛策として設計されることがあります。例えば、友好的な出資者(ホワイトナイト)に対して、将来の株式取得を前提としたプットオプションを付与することで、協力関係を強化することが可能です。

また、敵対的買収者に株式が渡った際に、他の特定株主がプットオプションを行使できるよう契約で規定しておくことで、買収コストを引き上げたり、意思決定に制約を加えたりといった牽制効果を持たせることも可能です。

このように、プットオプションは受動的な権利にとどまらず、戦略的なガバナンス設計にも活用されています。

段階的買収(ステップトランザクション)での活用

段階的買収(ステップトランザクション)とは、まず一部の株式を取得し、その後一定の条件を満たした際に残りの株式を取得する買収方法のことです。このスキームでは、売り手にプットオプションを付与することで、将来的な株式売却の条件をあらかじめ定めておくことが可能です。

例えば、後継者が数年間の業務継続を果たした場合に、残りの持分をあらかじめ設定した条件で売却できるようにする、といった活用が考えられます。買い手にとっても、一定の成果や信頼関係が確認できた段階で追加出資を行う判断がしやすくなるため、双方が柔軟性を保ちつつ、リスクを抑えた移行手段となります。

ファンドによるEXIT設計としての活用

プットオプションは、ファンドが投資回収の出口戦略を明確に設計する手段としても頻繁に活用されています。特に、ベンチャーキャピタルやプライベート・エクイティファンドでは、投資期間終了後にあらかじめ定めた条件で株式を売却できるように、契約時にプットオプションを設定するケースがあります。

売却条件や価格をあらかじめ確定しておくことで、投資資金の回収確度を高め、ファンドを運用する際の出口戦略を明確にできます。

売り手・少数株主の「出口保証」としての活用

経営に関与しない少数株主や、事業承継後も一定期間株式を保有する創業者にとっては、持株の整理や現金化のタイミングは非常に重要な課題の一つです。こうした課題の解決手段として、プットオプションを契約に盛り込んでおけば、あらかじめ定めた条件に基づき株式を売却する選択肢を確保できるため、明確な出口戦略が描けます。

また、持株比率の調整や資産の流動化が円滑に進められるため、将来に対する備えにもなります。

M&Aにおけるプットオプションの設定・行使の流れ

M&Aでプットオプションを導入する際の基本的な流れは、以下のとおりです。

  1. プットオプションの設定
  2. 行使条件の具体化
  3. 行使価格・算定方法の合意
  4. プットオプションの行使

各ステップについて詳しく解説します。

1.プットオプションの設定

プットオプションを設定するためには、株主間契約や投資契約などの契約書に、その旨を明確に規定しなければなりません。

具体的には、行使事由、売却価格の決定方法、行使期間、通知方法、買受義務者などの要素を網羅的に定めます。これらが曖昧なままだと、将来の紛争や契約解釈のトラブルを招くおそれがあるため、文言の明確化が重要です。

2.行使条件の具体化

次に、プットオプションを行使できる条件を決めておきます。例えば、以下の条件を満たしたときにプットオプションが行使できる、といったような設定が考えられます。

  • 経営者が退任・死亡した場合
  • 事業が一定水準の業績未達となった場合
  • 株主間契約に違反した場合
  • 一定期間(例:投資から5年)が経過した場合

このとき、曖昧な表現をできるだけ避け、客観的かつ確認可能な内容にしておくことがポイントです。

3.行使価格・算定方法の合意

次に、行使価格や、その算定方法について定めます。なお、売却価格の決定方法は、契約段階で合意しておくことが望ましいでしょう。具体的には以下のような方法が挙げられます。

  • 業績連動(例:EBITDAの何倍など)
  • 第三者の株式評価による算定
  • 純資産法やDCF法を用いた評価

評価基準が曖昧なままだと、双方の意見が食い違いかねません。税務上の影響も踏まえたうえで、公正な価格にすることが大切です。

4.プットオプションの行使

プットオプションを実際に行使する際には、契約で定められた行使事由や条件に従い、売却側が買受義務者に対して株式の売却を申し入れます。

行使のタイミングや価格、支払方法などを事前に契約書で明確に定めておけば、手続き上の混乱を防ぎ、スムーズな売却が可能です。その後、代金の支払いと株式の譲渡を行い、プットオプションの行使が完了します。

まとめ

プットオプションとは、将来一定条件下であらかじめ定めた価格で株式を売却できる権利です。M&Aや合弁では、出口戦略や少数株主保護、段階的買収の柔軟性を確保するために活用され、契約設計時には行使条件や価格算定方法の明確化が不可欠です。M&Aの専門家と相談することで、紛争リスクを抑えながら、安全かつ効率的に取引を進めることが可能です。

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よくある質問

  • プットオプションとはどのような権利ですか?
  • 一定条件下で株式を買い手に売却できる売り手側の権利で、EXIT保証や少数株主保護に活用されます。
  • プットオプションを設定する主なメリットは何ですか?
  • 売り手は出口戦略を確保でき、買い手も段階的買収計画を立てやすくなるため、双方のリスクを低減できます。
  • プットオプションを設定しない場合のリスクはありますか?
  • 売却機会を確保できず持株処分が困難になるほか、提携解消時の交渉が長期化し資金計画が不透明になる恐れがあります。
  • 行使価格はどのように決めるのが一般的ですか?
  • EBITDA倍率や第三者評価を用いる方法が多く、契約段階で算定方法を明記しておくと紛争防止に役立ちます。

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