ロックド・ボックス方式とは? メリット・デメリットや活用されるシーンについて解説

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ロックド・ボックス方式について

M&A取引におけるロックド・ボックス方式とは、価格調整を原則行わず、契約時点で売買価格を確定できる手法です。価格の予見性や手続きの迅速化が期待できる一方、財務諸表の正確性やリーケージリスクなど、検討すべきポイントも存在します。

ここでは、ロックド・ボックス方式の仕組みやメリット・デメリット、実務での活用シーン、採用時の注意点をわかりやすく解説します。


ロックド・ボックス方式とは?

ロックド・ボックス方式 コンプリーション・アカウント方式
価格決定タイミング 契約締結時 クロージング時
価格調整の有無 原則なし クロージング後に実施
特徴
  • 価格の予見性が高い
  • 手続きが早い
  • 実態に即した価格に調整可能

価格の決定方法です。特定の基準日(ロックド・ボックス・デート)における財務諸表をもとに企業価値を算出し、その金額を取引価格として固定します。

この方式の特徴は、契約後の価格調整は原則として行わず、早い段階で価格が確定する点です。契約からクロージングまでの間に生じる価格交渉や手続きを省略できるため、スムーズな進行が期待できます。

ロックド・ボックス方式以外の売買価格の決定方式としては、コンプリーション・アカウント方式(クロージング・アカウント方式)があります。こちらはクロージング時点の財務状況をもとに価格を調整する方式であり、より実態に近い価格設定が可能です。

売買価格の決定方法の選択は、取引の内容や関係者の意向に応じて判断されます。

ロックド・ボックス方式を採用するメリット

ロックド・ボックス方式を選択する主なメリットとしては、以下が挙げられます。

それぞれ見ていきましょう。

交渉からクロージングまで迅速に進められる

ロックド・ボックス方式では、取引価格をあらかじめ固定するため、クロージング時点での運転資本や純有利子負債の変動による価格調整が不要です。これにより、価格に関する追加交渉を省略でき、契約からクロージングまでの手続きが簡素化されます。

さらに、価格が契約時点で確定することで、後から価格を下げられる不安がなくなる点も、売り手側のメリットとして挙げられます。調整に関する意見の食い違いによる紛争リスクを低減できる点も魅力です。

買い手から見れば、契約締結日(基準日)の時点で取引価格が確定するため、クロージングまで対価の支払いや所有権の移転は留保され、その間に発生する「買収対価に対する利息」ともいえるコスト(リスク)は買い手が肩代わりしている、と考えることができます。

価格調整にかかるコストが削減できる

ロックド・ボックス方式は、契約締結日からクロージング日までの期間に生じる事業価値の変動リスクを、事前に価格へ織り込んだうえで取引を行います。そのため、この方式を用いる場合、契約書に詳細な価格調整条項を設ける必要はありません。「売買価格を金〇〇円とする」といった簡潔な記載で足ります。

上記のような手法は、取引価格の変動という不確実性を排除し、最終的な決済を円滑に進めることを可能にします。結果として、価格調整にかかるコストの削減効果をメリットとして享受できます。

ロックド・ボックス方式を採用するデメリット

ロックド・ボックス方式は価格の予見性や手続きの迅速さが魅力ですが、以下のようなデメリットも存在します。

一つずつ見ていきましょう。

財務諸表の正確性が前提となる

ロックド・ボックス方式では、特定の基準日時点の純有利子負債や運転資本の額によって買収価格が最終決定され、その後の価格調整は行われません。合意した価格のもとで想定外の問題が発覚しても、原則として価格は変更されないため、算定基礎となる財務諸表が正確であることが前提となります。

本方式を採用する場合、買い手は潜在的リスクを見落とさないよう、通常以上に広範かつ精密な財務デューデリジェンスを実施しなければなりません。

価格と実態のギャップが買い手に不利となる場合もある

M&Aのプロセスでは、契約締結日と実際に事業や株式を引き渡すクロージング日との間にタイムラグが発生しがちです。契約を締結すると、株主総会の承認や債権者保護手続き、従業員への説明など多様な手続きが必要となるためです。これらを完了させるにあたり、2ヶ月から半年程度かかる場合もあります。

上記の準備期間中も対象会社の事業は継続して運営されるため、クロージング時点の財務状況は契約時点と比べて変動することがあります。財務状況の変動はマイナスに作用することがあり、この場合にロックド・ボックス条項を設けていると、契約締結日からクロージング日までの間に生じた潜在的な財務悪化リスクを買い手が負担することになります。

ロックド・ボックス方式が活用されるシーン

ロックド・ボックス方式は、取引のスピードや透明性を重視する場面で特に活用されています。ここでは代表的なケースを紹介します。

スピード重視で取引を進めたい場合

ロックド・ボックス方式は、価格が契約締結日時点で確定するため、手続きを迅速に進めたい場面で重宝されます。

典型的なのは、短期間での売却を目指すプライベート・エクイティ・ファンドが売り手となる場合です。入札方式による競争案件では、交渉の簡素さや見通しの良さを理由に採用されるケースも見られます。

欧州を中心としたクロスボーダーM&Aを行う場合

既に述べたように、ロックド・ボックス方式は欧州のM&A市場で広く採用されています。背景にあるのは、契約からクロージングまでの期間が比較的短く、迅速な価格確定が求められる取引慣行です。

一方、日本では株主総会や債権者保護手続きなどの関係で時間を要することが多く、実務上はコンプリーション・アカウント方式が一般的です。

ただし、欧州企業を相手とするクロスボーダーM&Aでは、ロックド・ボックス方式が前提となるケースも多く見られます。表明保証やリーケージ条項の内容を十分に理解したうえで契約対応することが重要です。

ロックド・ボックス方式を採用する際のポイント

ロックド・ボックス方式が導入されるケースでは、M&A契約に先立ち「ロックド・ボックス・デート」と呼ばれる特定の日を設定し、その日の財務諸表に基づいて売買価格を確定します。

注意したいのは、クロージングまでの期間中に対象企業から資産が流出するリスクです。株主への配当や役員貸付など、買い手の事前承認が無いまま資金が流出する行為は「リーケージ」と呼ばれます。

これを防ぐため、違反があった場合に売り手が補償するリーケージ条項を契約に盛り込む対応も考えられます。リーゲージ条項では、リーケージの定義や例外条件については解釈の違いからトラブルに発展する可能性を想定しなければなりません。必要なのは、慎重な契約設計と十分な事前確認です。

まとめ

ロックド・ボックス方式は、契約締結時点で特定基準日の財務諸表をもとに売買価格を固定する手法です。価格予見性と手続きの迅速化が図れる一方で、財務諸表の正確性担保やリーケージリスク対策が不可欠です。M&Aの専門家と連携し、精緻な条項設計を行うことが重要です。

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よくある質問

  • ロックド・ボックス方式とはどんな価格決定方法ですか?
  • 基準日(ロックド・ボックス・デート)の財務諸表を基に取引価格を固定し、クロージング後は原則価格調整を行わない方式です。
  • この方式を採用する主なメリットは?
  • 価格確定が早いため交渉からクロージングまでを短縮でき、価格調整に伴う追加コストや紛争リスクを低減できます。
  • デメリットやリスクには何がありますか?
  • 基準日財務諸表の正確性が前提となり、クロージングまでの財務悪化や資金流出(リーケージ)は買い手負担になる恐れがあります。
  • どのような場面で利用されることが多いですか?
  • 迅速な売却を求める案件や欧州を中心としたクロスボーダー取引で採用例が多く、入札競争下でも重宝されます。

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