BPS(1株当たり純資産)とは? 意味・計算方法・PBRとの関係・活用法などを解説

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BPS(1株当たり純資産)について

BPS(1株当たり純資産)とは、企業の純資産を発行済株式数で割って算出する財務指標です。株主にとって1株当たりどれだけの純資産があるかを示し、財務健全性の確認やPBR算出の基礎として用いられます。ただし、帳簿上の純資産を基礎とするため、実際の企業価値や清算価値とは区別して理解する必要があります。

株式投資やM&Aの場面で企業の財務健全性を評価する際、「この会社の純資産は1株あたりどのくらいあるのか」を把握することは、買収価格や投資判断の妥当性を検討するうえで重要な視点です。その際に活用されるのがBPS(1株当たり純資産)という指標です。

BPSは計算方法がシンプルな一方で、PBR(株価純資産倍率)との関係や業種ごとの傾向を正しく理解しておかないと、誤った判断につながるリスクもあります。BPSを正しく理解することで、純資産を基礎にした企業評価やPBRの見方を整理しやすくなります。

本記事では、BPSの基本的な意味・計算方法・PBRとの関係・活用方法などをくわしく解説します。

また、M&Aの意味と基本知識について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

監修者情報

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長 公認会計士 梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。 これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。


BPS(1株当たり純資産)とは

BPSについて、まずは概要と活用シーンから説明していきます。

BPSの概要と活用シーン

BPS(1株当たり純資産)とは「Book-value Per Share」の略称で、企業の純資産(総資産から負債を差し引いた金額)を発行済株式数で割って算出される指標のことです。株主にとって1株当たりの持分を示しており、帳簿上の純資産を基礎にした理論的な目安を表しています。ただし、実際の清算価値は資産の時価評価や売却条件によって帳簿価額と異なることが多い点には留意が必要です。

BPS(1株当たり純資産)のイメージ

BPSは、株価と比較することで割安・割高の判断材料となることから、財務分析やバリュエーション(企業価値評価)の基本として広く用いられています。不動産業や製造業など、貸借対照表上の資産価値が企業評価に影響しやすい業種では、BPSが比較的参考になりやすい指標です。
また、BPSが活用される主なシーンは以下のとおりです。

活用シーン 活用内容
投資判断 株価とBPSを比較するPBR(株価純資産倍率)の算出を通じ、企業の割安・割高を判断する
M&Aの初期調査 複数の評価法を適用し、一定の幅をもって算出されたそれぞれの評価結果の重複等を考慮しながら、評価結果を導く方法
事業承継における株価算定 純資産を基礎とした株式価値の評価(純資産法)の参考指標として活用する

BPSの考え方

一般的にBPSの数値が高い企業ほど、自己資本が厚く、経営基盤が安定しているとみなされる傾向にあります。ただし、BPSの高さだけで財政面の安定性を断定することはできません。資産の質・収益性・含み損益・回収可能性なども安定性の評価に影響するため、他の指標とあわせて総合的に判断することが大切です。一方で、BPSが低めの場合は純資産が十分でない可能性があり、財務の安定性に不安が残ることもあります。

この指標は、企業の純資産額や発行済株式数の変化によって推移します。例えば、利益の蓄積や自社株買いによってBPSは上昇しやすく、反対に赤字計上・配当の支払い・新株発行などがあると、BPSは下がることがあります。

BPSの変動は企業の資本政策や業績の影響を映し出すため、単なる数値の高低だけを追うのではなく、背景にある要因にも注意を払うようにしなければなりません

BPSを確認する方法

BPSは、企業の純資産を発行済株式数で割って算出します。この純資産額は、貸借対照表の「純資産の部」に記載されているため、決算書や試算表などの資料があれば確認することが可能です。

BPSは、企業によっては「1株当たり純資産」や「1株当たり株主資本」に近い趣旨で説明されることがあります。なお、「親会社株主帰属持分」はBPSの分子の基礎となる概念ですが、1株当たり指標そのものではないため、区別して理解することが重要です。

なお、BPSを見る際には、単年の数値だけでなく過去の推移を追うことが重要です。これにより、企業がどのように利益を蓄積し財務体質を強化してきたかを把握するための手がかりを得られるでしょう。また、同業他社との比較を行えば相対的な財務の健全性を評価することも可能です。

BPSの計算方法

BPSは企業の純資産を発行済株式数で割ることで算出されます。実際の計算式は以下のとおりです。

BPS=純資産 ÷ 発行済株式数

なお、ここでいう純資産とは、総資産から総負債を差し引いた金額であり、株主に帰属する資産の合計金額のことです(ただし、純資産の中に新株予約権や非支配株主持分が含まれる場合にはこれらを除きます)。
BPSの計算では、普通株式の発行済株式数から自己株式数を控除した株式数を用います。

計算例

では実際に、以下の例をもとに、BPSを算出してみましょう。

【計算式(再掲)】 BPS=純資産 ÷ 発行済株式数

A社の場合

自己株式保有なしの場合のケース、以下の前提で計算します。

純資産 30億円
発行済株式数 1,000万株(自己株式保有なし)
BPS
30億円 ÷ 1,000万株 = 300円

自己株式保有なしの場合は、純資産を発行済株式総数で割って算出します。

B社の場合

次は、自己株式を保有するB社のケース、以下の前提で計算します。

純資産 60億円
発行済株式数 1,200万株(うち自己株式200万株)
BPS
60億円 ÷ 1,000万株 = 600円

自己株式は発行済株式数に含めないため、BPSを算出する際の発行済株式総数は1,000万株となります。両者を比べた場合、B社の方が1株当たり純資産の厚みは大きいといえます。
もっとも、財政面の安定性を評価する際には、負債構成や収益性などもあわせて確認することが大切です

BPSの活用方法

次にBPSを活用できる場面と活用具体例を以下のとおり説明していきます。

財務的な安定性の評価

BPSは企業の財務健全性を測る重要な指標の一つです。特に長期投資を前提とする投資家は、短期的な利益よりも、BPSの水準や推移を通じて企業の安全性を重視します。
BPSが高い企業は、返済不要の自己資本が多く、財務的に安定していると評価される傾向があります。純資産が厚ければ、経済情勢の悪化や業績の悪化といった不測の事態が生じても、資金繰りに余裕を持って対応しやすくなるからです。
また、自己資本の厚みは金融機関からの信用力にも直結するため、資金調達力の高さにもつながります。ただし、BPSの高さだけで判断せず、変動の安定性や収益性など他の指標とあわせて評価することが重要です。

PBRとの関係

BPSは、企業の割安性や市場評価を測るPBR(株価純資産倍率)を算出する際にも用いられます。実際の計算式は以下のとおりです。

計算式 PBR(倍)= 株価 ÷ BPS

例えば、BPSが300円の企業の株価が450円であれば、PBRは1.5倍となります。一般にPBRが1倍を下回る場合、株価が帳簿上の純資産を下回っている状態を示します。ただし、単純に割安とは限らず、収益性の低さ、将来成長への懸念、資産の含み損リスクなどが市場に織り込まれている場合もあります。反対に1倍を大きく超える場合は、将来の成長期待や収益力が株価に織り込まれていることを示しています。

株価との関係

BPSは株価と比較することで、企業の評価水準を確認する際の参考になります。特にPBRは「株価÷BPS」で求められるため、BPSは株価分析の基礎となる財務指標の一つです。

例えば、同じ株価1,000円でも、BPSが1,000円の企業はPBR1.0倍(株価が純資産と等しい水準)であるのに対し、BPSが500円の企業はPBR2.0倍(株価が純資産の2倍で評価されている)となります。この違いから、市場がその企業の将来成長性や収益力をどう評価しているかを推測することができます。BPSの水準とその推移を確認しながら株価との関係を総合的に判断することが大切です。

BPSの推移による財務基盤の確認

BPSの推移を確認することで、企業の財務基盤がどのように変化しているかを把握できます。BPSが継続的に増加している場合、利益の蓄積によって自己資本が厚くなり、財務の安定性が高まっている可能性があります。特に、売上や利益の成長とあわせてBPSも増加している企業は、事業で獲得した利益を内部留保として積み上げていると評価できます。

ただし、BPSの増加が必ずしも本業の成長を意味するとは限りません。増資による自己資本の増加や、有価証券・土地などの評価差額によってBPSが上昇する場合もあります。そのため、BPSを見る際には、単に数値の増減だけでなく、その要因を確認することが重要です。M&Aの場面でも、BPSは財務基盤を把握する出発点として活用し、売上成長率、EPS、ROE、営業キャッシュ・フローなどとあわせて総合的に評価する必要があります。

活用具体例

例えば、株価600円・BPS500円の企業であればPBRは1.2倍(600円÷500円)となります。これは市場が純資産をやや上回る評価をしていることを意味し、成長期待や収益力が一定程度反映されていると読むことができます。

一方、M&Aの初期検討においては、純資産の厚みをBPSで把握したうえで、収益性指標(EPS・ROEなど)や含み損益の修正を加味しながら買収価格の妥当性を検討するのが実務的なアプローチです。純資産の高い企業でも収益性が低ければ評価額が下がることがあり、逆に純資産が少なくても高い収益力を持つ企業は相対的に高い評価を受けることがあります。BPSはあくまで出発点の一つとして活用することが重要です。

なお、M&A実務では、帳簿上の純資産だけでなく、土地・有価証券などの含み損益、簿外債務、退職給付債務などを確認し、時価純資産に近づけて評価することがあります。

BPSを活用する際の注意点

BPSは非常に便利な指標ではありますが、活用する際には、以下の点に注意しなければなりません。それぞれ順に説明します。

BPSだけで判断しない

BPSは、企業の資産の厚みを測るうえで有用な指標ですが、これだけで企業の価値や投資判断を行うのは適切とはいえません。なぜなら、BPSはあくまで帳簿上の純資産額を表すものであり、企業の収益力や資本効率といった側面まではとらえることができないからです。

例えば、EPS(Earnings Per Share:1株当たり利益)が高い企業は、効率的に利益を生み出していることを示しますし、ROE(Return on Equity:自己資本利益率)が高い場合は、自己資本を有効活用して高いリターンを上げている企業だと判断できます。
したがって、BPSだけに頼らず、EPSやROEなどの収益性指標もあわせて総合的に分析し、企業の実態を多面的に評価することが重要だといえるでしょう。

業種によるBPSの傾向を踏まえる

BPSは、業種ごとに傾向が異なります。

例えば、製造業や不動産業のように土地・建物・設備などの有形資産を多く保有する業種では、帳簿上の有形資産が多くなるため、BPSも高くなりやすい傾向があります。これに対し、IT企業やコンサルティング業のように、無形資産や人材を中心としたビジネスを行う企業では、有形資産が少ないためBPSは低めになることが一般的です。

こうした特性を無視して異業種間でBPSを単純比較しても、正確な評価にはつながりません。BPSを活用する際には、業種ごとの資産構造やビジネスモデルの違いを踏まえたうえで、同業他社との相対比較を行うことが重要です。

まとめ

BPSは、1株当たりの純資産価値を示すことで企業の財務基盤を客観的に測定できる指標です。長期投資やM&Aの初期調査では、BPSの水準と推移を確認することで、安全性や潜在的な成長余地を見極められます。
また、PBR算出の基礎としても機能し、株価の割安・割高を判断するうえで欠かせない数値です。ただし、資産構造は業種によって大きく異なり、収益性を示すEPSやROEなどを併せて評価しなければ真の企業価値は掴めません。BPSは単独で使うものではなく、複数の財務指標を組み合わせた総合的な分析の一つとして活用することが、正確な企業評価への近道といえます。



よくある質問

  • BPSとは何ですか?
  • BPSとは、企業の純資産を発行済株式数で割って算出する財務指標です。1株当たりの純資産額を示し、財務健全性の確認やPBR算出の基礎として活用されます。
  • BPSはどのように計算しますか?
  • BPSは「純資産 ÷ 発行済株式数」で求められます。純資産は総資産から総負債を差し引いた金額であり、自己株式がある場合は発行済株式数から控除して計算します。
  • BPSとPBRの関係は何ですか?
  • PBRは「株価 ÷ BPS」で求められる指標です。BPSはPBRを算出する際の分母となり、株価が純資産に対してどの程度の水準で評価されているかを確認する際に使われます。
  • BPSが高い企業は財務的に安定しているといえますか?
  • BPSが高い企業は、自己資本が厚く財務基盤が安定していると見られる傾向があります。ただし、資産の質や収益性、含み損益なども評価に影響するため、BPSだけで安定性を断定することはできません。
  • BPSはどこで確認できますか?
  • BPSの計算に使う純資産額は、貸借対照表の「純資産の部」で確認できます。企業によっては「1株当たり純資産」や類似する指標として決算資料などに記載されている場合もあります。
  • BPSを見る際の注意点は何ですか?
  • BPSは帳簿上の純資産を基礎とするため、企業の収益力や資本効率までは把握できません。EPSやROE、営業キャッシュ・フローなどの指標とあわせて、業種ごとの資産構造も踏まえて確認することが重要です。

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