略式合併とは? 適用要件や必要な手続きを解説

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略式合併について

略式合併は、会社法に基づき、特定の要件を満たせば消滅会社の株主総会決議を省略できる制度です。手続きを大幅に簡略化できます。

グループ会社間の吸収合併など、煩雑な手続きが課題となる場面でも、特定の要件を満たせば消滅会社の株主総会決議を省略できるため、手続きを大幅に簡略化できます。

ここでは、略式合併の概要から適用要件、具体的な手続きの流れ、さらには適用できない場合の注意点まで、網羅的に解説します。


略式合併とは

略式合併とは、企業グループ内など、既に支配関係にある会社間で吸収合併を行うとき、手続きを簡略化できる制度です。具体的には、被支配会社(消滅会社)における株主総会の承認決議を省略できるため、迅速な組織再編が可能になります。

略式合併は承認決議を省略できる合併制度のこと

略式合併は、特別支配会社が合併を行う際、被支配会社(消滅会社)の株主総会決議を省略できる制度で、会社法第796条に定められています。ここでいう特別支配会社とは、相手企業の議決権の90%以上を保有する会社のことです。

通常、企業の合併は株主にとって重要な意思決定であるため、株主総会での特別決議が必要となり、招集通知や議案説明など煩雑な手続きを伴います。

一方、略式合併の対象となるケースでは、既に一方の会社がもう一方の会社を支配している関係が成立しています。こうした関係では、形式的な承認手続きを経なくても「株主の意思は結果に反映される」と考えることが可能です。そのため、実質的な問題が生じにくいことから手続きの省略が認められ、合併手続きの迅速化が図れるのです。

簡易合併との違い

略式合併とよく似た制度として、同じく株主総会決議を省略できる「簡易合併」があります。両者の大きな違いは、省略できる株主総会と、その適用要件です。

略式合併は、存続会社と消滅会社の間の支配関係に着目し、被支配会社である消滅会社の株主総会を省略する制度です。

一方、簡易合併は、合併が存続会社に与える財務的な影響の大きさに着目した制度であり、合併対価が存続会社の純資産額の5分の1以下である場合に、存続会社の株主総会を省略できます。

なお、この2つの制度の要件を両方満たす場合は、制度の併用が可能です。その場合、存続会社と消滅会社、双方の株主総会決議を省略でき、手続きを大幅に簡略化できます。

項目 略式合併 簡易合併
省略できる株主総会 消滅会社(被支配会社) 続会社(被支配会社) 存続会社
主な適用要件 存続会社が消滅会社の議決権90%以上を保有(特別支配関係) 消滅会社が存続会社の議決権90%以上を保有(特別支配関係) 合併対価が純資産額の5分の1以下
判断基準 支配関係の有無 支配関係の有無 財務的な影響の大きさ

略式合併のメリット

略式合併の主なメリットとしては、以下が挙げられます。

それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。

株主総会での承認が不要

略式合併を活用する大きな利点は、被支配会社である消滅会社の株主総会における承認決議が不要になることです。

通常、合併には株主総会の開催が必須であり、招集通知の発送、会場の手配、株主への説明資料作成といった煩雑な実務が伴います。株主数が多い上場企業などでは、株主からの合意形成に多大な時間と労力がかかるケースも少なくありません。

略式合併の手続きではこれらのプロセスを省略できるため、実務的な負担を大幅に削減できます。

事業再編を迅速に進められる

株主総会の承認が不要になることで、事業再編を迅速に進めることが可能になることも、略式合併のメリットです。

株主総会を開催する場合、会社法に定められた招集手続きなどに従う必要があり、意思決定から実行までに一定の期間を要します。また、多くの株主が存在する場合には、合意形成が難航するリスクも想定されます。

略式合併は、このような手続き上の負担や時間を削減できるため、経営戦略に基づいた組織再編をスピーディーに実現することが可能です。

簡易合併と併用することで両社の株主総会を省略できる

略式合併の適用要件に加え、簡易合併の要件も満たす場合、両制度を併用できます。

簡易合併とは、合併の対価が存続会社の純資産額の5分の1以下である場合に、存続会社の株主総会を省略できる制度です。

上記2種類の手続きを併用すれば、存続会社と消滅会社で双方の株主総会を省略することが可能です。これにより、グループ内の吸収合併などで発生する手続きの手間やコストを最小限に抑え、通常業務への影響を抑えながら円滑な再編が実現できます。

もっとも、両制度の適用要件を事前に正確に確認する必要がある点には注意しなければなりません。

略式合併の適用要件

略式合併の手続きでは、会社法で定められた特定の要件を満たさなくてはなりません。

基本的な要件は、当該会社間に「特別支配関係」が存在することです。この支配関係の有無や、会社の定款に特別な定めが無いかなど、事前に確認すべき点がいくつか存在します。

存続会社が消滅会社の議決権の90%以上を保有している

略式合併の最も一般的な適用要件は、存続会社が消滅会社の議決権の90%(10分の9)以上を保有していることです。

ある会社の議決権の90%以上保有する会社のことは「特別支配会社」と定義されます。特別支配会社は、実質的に経営の意思決定を支配していると見なされるため、消滅会社における株主総会の承認決議を省略できます。

なお、議決権の割合は単なる発行済株式数ではなく、議決権ベースの保有比率で判断されるため、種類株式を発行している場合などは注意が必要です。

消滅会社が存続会社の議決権の90%以上を保有している

吸収合併においては、消滅会社が存続会社の議決権の90%以上を保有している、いわゆる「逆さ合併」のケースでも略式合併の適用が可能です。

一般的に略式合併は、存続会社が消滅会社を支配する形で行われますが、会社法では略式合併の適用要件として当事者間に「特別支配会社」の関係があることを定めており、その支配関係の方向性は問われていません。そのため、消滅会社が存続会社の特別支配会社である場合も、存続会社側の株主総会決議を省略する形で略式合併の手続きが認められます。

ただし、このケースでは実質的に消滅会社のほうが支配力を持っていたと見なされ、会計処理上「逆取得」に該当する場合があります。逆取得の会計処理は通常の合併と異なるため、専門家と連携し慎重に進めることが重要です。

定款で特別支配会社に90%超の議決権を定めている

会社法では特別支配関係の基準を「議決権の90%以上」と定めていますが、会社の定款でこれを上回る割合が独自に設定されている場合は、その定款の規定が優先されます。

例えば、消滅会社の定款で「特別支配会社となるには95%以上の議決権を保有していること」と定められている場合、法定要件である90%を満たしていても略式合併は適用できません。この場合、95%以上の議決権を保有して初めて、略式合併が適用できる場合に該当し、手続きを進めることができます。

定款の内容は会社ごとに異なるため、略式合併を検討するときは、必ず事前に相手企業の定款を確認する必要があります。

略式合併を進める流れ

略式合併は、消滅会社の株主総会を省略できるため手続きが簡略化されますが、会社法に定められた手順を、以下のとおり正確に踏む必要があります。

  1. 事前準備
  2. 合併契約の締結
  3. 事前開示書類の設置
  4. 債権者保護手続き
  5. 反対株主の株式買取手続
  6. 合併の効力発生・登記
  7. 事後開示書類の設置

それぞれのステップごとに詳しく解説します。

1.事前準備

最初に、略式合併を実施する目的を明確にしたうえで、自社と相手会社の財務状況や、略式合併の適用要件を満たしているかを確認します。

グループ会社間の吸収合併であっても、潜在的なリスクを洗い出すための事前のデューデリジェンスや、合併対価の妥当性を判断するための適切な企業価値評価は不可欠です。

これらのプロセスは、M&Aに詳しい外部専門家に依頼することにより、事前調査から手続きサポートまで受けられます。

2.合併契約の締結

存続会社と消滅会社の間での合併契約を締結します。この契約には、会社法で定められた事項を記載しなくてはいけません。主な内容は次のとおりです。

  • 両社の商号・所在地
  • 合併の効力発生日
  • 合併対価(株式や金銭など)の内容と割当て
  • 債務引き継ぎなどの具体的条件

3.事前開示書類の設置

合併契約を締結したら、会社法第782条・794条に基づき、合併に関する情報を記載した事前開示書類を本店に備え置く義務があります。これは、株主や債権者が合併内容を確認し、権利を行使するかどうかを判断するための重要な手続きです。

備置きは、下記のいずれか最も早い日から開始し、合併の効力発生後6ヶ月が経過するまで継続しなければなりません。この期間中、株主や債権者は、いつでも書類の閲覧や謄本の交付を請求できます。

  • (株主総会が必要な場合の)総会の2週間前
  • 反対株主への株式買取請求に関する通知または公告日
  • 新株予約権買取請求に関する通知または公告日
  • 債権者保護手続きの公告または催告日

4.債権者保護手続き

吸収合併により存続会社は消滅会社の債務を引き継ぐため、債権者の利益を保護する手続きを行うことが会社法で義務付けられています。具体的には、合併の効力発生日の1ヶ月以上前に、官報での公告と、把握している債権者への個別の催告を行わなくてはなりません。

債権者は、上記期間内に異議を申し立てることができます。異議が出た場合、会社は弁済や担保の提供などの対応が必要です。この手続きでは、各種対応のため余裕を持った準備が推奨されます。

5.反対株主の株式買取請求手続

略式合併では株主総会が省略されますが、合併に反対する消滅会社の少数株主には、自己が保有する株式を公正な価格で買い取るよう会社に請求する権利(株式買取請求権)が保障されています。そのため、会社は合併の効力発生日の20日前までに、株主に対して合併を行う旨を通知または公告しなければなりません。

この通知を受けた株主は、定められた期間内であれば、会社に対して株式の買取を請求することが可能です。これは、投下資本の回収機会を株主に与えるための重要な制度です。

6.合併の効力発生・登記

合併の効力は、原則として合併契約書で定められた効力発生日に生じます。存続会社は、効力発生日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局で合併による変更登記を申請する必要があります。

上記の登記申請では、同時に消滅会社の解散登記も行わなければなりません。登記手続きには複数の書類が必要となるため、法務局への提出書類に漏れが無いよう、事前に確認しておくことが重要です。

7.事後開示書類の備置

合併の効力発生後、存続会社は遅滞無く合併に関する法定事項を記載した事後開示書類を作成し、本店に備え置く必要があります。この書類は、事前開示書類と同様に、効力発生日から6ヶ月間備え置かなければなりません。これにより、株主や債権者は合併が契約のとおりに実行されたかを確認できます。

また、上場企業の場合は、この事後開示書類の写しを証券取引所に提出する義務もあります。情報開示を怠ると違反に問われる可能性があるため、確実な対応が必要です。

略式合併の注意点

略式合併は手続きを簡略化できる反面、いくつかの注意点が存在します。特に会計処理が特殊になるケースや、例外的に株主総会が必要となる場合、少数株主からの差止請求リスクなど、事前に把握しておくべき重要なポイントについてみていきましょう。

逆取得時には特別な会計処理が必要になる

合併において「逆取得」に該当する場合、特別な会計処理が求められます。逆取得とは、一般的に規模の大きい会社が小さい会社を吸収するのとは反対に、会計上、規模の大きい消滅会社が存続会社を取得したと見なされるケースです。

この場合、通常のパーチェス法とは異なり、消滅会社の資産・負債を時価評価せず帳簿価額で引き継ぐなど、会計処理が複雑になります。意図せず逆取得に該当し、手続きに不備が生じるリスクを避けるためにも、事前に公認会計士などの専門家へ相談することが望ましいといえます。

特別決議・特殊が必要な場合がある

略式合併では、原則として消滅会社の株主総会は不要です。しかし、合併の対価として譲渡制限株式を交付する場合など、一定の条件下では例外的に株主総会の特別決議が必要になります。

特別支配株主が消滅する(被支配会社が存続する)場合

以下の両方を満たす場合

  • 存続する被支配会社が株式譲渡制限会社である
  • 合併の対価に譲渡制限株式が含まれる

支配株主が存続する(被支配会社が消滅する)場合

以下の両方を満たす場合

  • 消滅する被支配会社が譲渡制限の無い株式を発行している
  • 合併の対価に譲渡制限株式が含まれる

後から法的な不備を指摘されるリスクを回避するためにも、合併対価の内容や当事会社の株式の性質については、会社法に基づき必ず事前に確認することが重要です。

差止請求が認められるケースがある

略式合併の手続きは、株主総会を省略するため、少数株主の意思が直接反映されにくい側面があります。そのため、会社法では少数株主の権利を保護する目的で、特定の条件下での差止請求を認めています。

差止請求とは、合併が法令に違反する場合や、合併の対価が著しく不当である場合に、株主がその合併の差し止めを裁判所に請求できる制度です。たとえ会社法の手続きに則っていても、合併比率などが少数株主にとって著しく不利益であると判断されれば、差止請求が認められる可能性があります。合併条件の公正性には十分に配慮しましょう。

要件を満たしていても適用不可となるケースがある

特別支配関係という要件を満たしていても、略式合併ができない場合があります。最も明確な例は、新設合併や株式移転といった新設型の組織再編です。略式合併が認められているのは、吸収合併や吸収分割など、既存の会社が権利義務を承継する「吸収型」の再編に限られます。

また、前述のとおり、合併対価に譲渡制限株式が含まれる特定のケースでは、株主保護の観点から株主総会の省略が認められません。

このように、制度の対象外となる組織再編の形態や株式の状況があるため、自社のケースが略式合併の対象となるか、除外規定に該当しないかを事前に精査することが不可欠です。

まとめ

略式合併は、存続会社と消滅会社の間に特別支配関係がある場合、株主総会の承認を省略し、迅速な組織再編を可能にします。ただし、会社法上の要件や適用できない場合があるため、専門家の支援を得ながら慎重に進めることが重要です。

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よくある質問

  • 略式合併と簡易合併の違いは何ですか?
  • 略式合併は支配関係を基準に消滅会社の株主総会を省略し、簡易合併は対価が純資産の5分の1以下なら存続会社の株主総会を省略します。
  • 略式合併を適用できる要件は何ですか?
  • 存続会社または消滅会社のいずれかが相手会社の議決権90%以上を保有する特別支配関係が必要です。定款でより高い割合を定めている場合はそれに従います。
  • 略式合併の手続きフローはどうなりますか?
  • 事前準備→合併契約締結→事前開示→債権者保護→反対株主対応→効力発生と登記→事後開示の順で進めます。
  • 逆取得が発生する場合の注意点はありますか?
  • 逆取得に該当すると会計処理が通常と異なるため、公認会計士の助言を得て帳簿価額での引継ぎなど適切な処理が必要です。

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