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- #業種別M&A動向
- #幼稚園業界 M&A
業界の定義
幼稚園とは、満3歳から小学校入学までの幼児の教育を行う教育機関のことをいう。学校教育法77条によれば、「幼児を保育し、適当な環境を与え、その心身の発達を助長することを目的とする」となっている。幼稚園での幼児教育は、健康・社会・自然・言語・音楽・絵画の6領域に分類され、これらを通じて集団生活を経験し、家庭教育では実現しえない教育が行われる。日本では1876年東京女子師範学校付属幼稚園が創設されたのに始まる。
業界の特色

児童の幼稚園への入園は、保護者と幼稚園が個別に契約する形式になっている。幼稚園の開設日数は年間39週以上と決められており、春・夏・冬の休みを設定しなければならない。幼児教育の時間は1日4時間を標準としており、教諭は1学級35児童以下で1人配置する必要がある。幼児教育料に関しては、私立幼稚園は各幼稚園ごとに決めることができ、公立幼稚園は市町村が設定する。私立は年間平均48万円であることに対して、公立は年間平均24万円と約2分の1の費用になっている。
幼稚園は、学校教育法に基づき文部科学省が所管しており、保育室・遊戯室・保健室・運動場・便所・飲料水用設備・職員室を設置しなければならない。私立幼稚園の設置主体は民設であり、経営主体は、学校法人・宗教法人・公益法人・農協・社会福祉法人・個人など多岐にわたる。私立幼稚園は、建学の精神を活かしながらそれぞれ特徴のある教育目標や方針を持って教育するため、保護者は各幼稚園の教育目標や方針を基準に入園する幼稚園を選定していることが多い。
市場の規模
総務省統計局が発表した「令和元年度学校基本調査調査結果」によると、令和元年度の国内の幼稚園数は10,070であり、幼稚園に通う児童数は、1,145,576人であった。

出典:https://www.mext.go.jp/content/20191220-mxt_chousa01-000003400_1.pdf
幼稚園に限定した市場規模数値は文部科学省に確認したが存在しなかったため、令和元年度、『幼稚園・保育所・認定こども園・地域型保育事業所(小規模保育・家庭的保育・事業所内保育・居宅訪問型保育)の経営実態調査集計結果』という経済財政諮問会議が調査した結果の幼稚園の部分の数値を抽出して市場規模を算出する。
収益として「教育活動収入」が、学制生徒納付金1,922万円,経常費等補助金6,491万円、付随事業収入584万円、その他収入318万円となり、1幼稚園当たりの年間収入は9,315万円となっている。これに前述の10,070幼稚園数をかけると、令和元年度の幼稚園業界の収益は年間9,380億円となる。支出に関しては教育活動支出として、人件費5,750万円、教育研究費2,091万円、管理費230万円、その他21万円となっており年間経費は8,092万円である。最大経費の人件費の内訳は、園長1人、副園長・教頭0.5人、主幹教諭・指導教諭1人、教諭・助教諭・講師6人、事務職員・バス運転手・調理員2人となっている。
なおこの集計結果は357の幼稚園からの回答結果平均値であり、属性は平均利用定員数108人に対して、平均児童数106人の幼稚園からの回答に基づくものである。
課題と展望
幼稚園児数は、1978年度まではデータが残る1948年度から一貫して急激に増加しており、1978年度の2,497,895人をピークになだらかに2019年の1,145,576人まで減少を続けている。第二次ベビーブームが影響している1980年前後が人口要因でピークになるが、その後は保育所や幼保連携型認定こども園が制度化され需要者の選択肢が増えたことによるものが大きい。
小学校は義務教育なので就学率100%とすると、幼稚園の就園率は1980年前後の64%をピークに、近年は42%まで下落している。これは、母親の兼業化増加に加え就業時間の長期化にともない、母親のパート・アルバイトが終わるまで預けてもらえる保育所や幼保連携型認定こども園を選択する世帯が増えているからである。
少子化に対応しながら、需要世帯のニーズ(ライフスタイル)にも対応したサービスを提供していかなければ幼稚園の市場は今後も縮小を続ける可能性がある。
幼稚園業界のM&A動向
幼稚園の開設には、文部科学省と都道府県の認可が必要であるが、時間と資金とノウハウがなければ事実上開設が困難なことが多い。そこで、幼稚園を経営するには既存幼稚園のM&Aという手法をとるケースが多くなっている。3歳児以上を受け入れる幼稚園は定員割れになっている一方、2歳児以下も受け入れ厚生労働省管轄で児童福祉法に基づき食事の提供も義務化され、10時間預けられる保育所や幼保連携型認定こども園は待機児童が発生しているという受給ギャップをM&Aによって解消できる場合がある。
受け入れる年齢層が高い幼稚園は、園児に付きっきりになる時間が短いので、人件費効率もよく、幼稚園は譲渡側としてのターゲットとなっていることが多い。ただし、規模のメリットは出せないのと自園の経営で精一杯のところがほとんどなので、再編型のM&Aは多くは見られない。
2019年、株式会社リクルートのグループ企業である株式会社リクルートマーケティングパートナーズが運営する、保育園と保護者をつなぐコミュニケーションサービス「キッズリー」及び幼稚園・保育園向けICTシステム「コモシル」は、2019年4月1日に株式会社フレーベル館へ譲渡されることが決定した。このM&Aにより、株式会社フレーベル館の事業拡大が図られた。
2017年進学塾を経営する株式会社城南進学研究社が保育事業を展開するJBSナーサリー株式会社の発行済株式全株を取得し、子会社化した。このM&Aにより、株式会社城南進学研究社の将来性のある社会貢献事業での事業の拡大が図られた。
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