家電製造業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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家電製造業界は、技術の進化や消費者ニーズの多様化により、激しい競争にさらされています。製品ライフサイクルの短縮や新たな技術への対応が求められる中、企業は迅速に市場の変化に対応しなければなりません。

このような状況において、M&Aは企業にとって技術力や製品ラインを強化し、競争優位を維持するための有効な手段です。特に、スマート家電やIoT技術の導入により、既存のリソースを迅速に補完し、他社との差別化を図るための戦略として、M&Aの重要性はますます高まっています。

そこで本記事では、家電業界の基礎知識を押さえたうえで、家電業界のM&A動向や事例、メリット、成功のポイントなどを解説します。

M&Aの前に押さえておきたい家電製造業界の情報

M&Aについて触れる前に、家電製造業界の定義や、代表的な企業、業界ならではの特徴といった基礎知識を押さえておきましょう。

家電製造業界の定義

家電製造業とは、家電を製造する事業を指します。家電を販売する家電量販店業界とは別の業種です。家電とは、家庭や個人で利用する電気機器のことを指し、大きく分けて「白物家電」と「黒物家電」があります。

「白物家電」には、電気や熱エネルギーを利用した製品が分類され、代表的なものとしては厨房機器(冷蔵庫等)や空調・住宅関連機器(エアコン等)、衣料衛生関連機器(洗濯機等)などです。「黒物家電」とは、テレビやパソコン、オーディオが分類されます。今回は、主として「白物家電」について説明していきます。

代表的な企業

家電製造業界を代表する企業として、以下のような企業が挙げられます。

  • ・ソニーグループ株式会社
  • ・株式会社日立製作所
  • ・パナソニック ホールディングス株式会社
  • ・三菱電機株式会社

これらの企業が中心となり、業界全体を牽引しています。

家電製造業界の特色

日本において家電は、高度経済成長期から急激に普及しました。特に当時「三種の神器」と呼ばれた、テレビ・洗濯機・冷蔵庫は、家庭の家事作業を劇的に軽減させ、多くの家庭で生活に欠かせない存在でした。

高度経済成長が終焉した1970年代後半以降、「三種の神器」を始めとする家電は多機能化することで、他社との差別化をはかり、成長を遂げていきます。その結果、日本メーカーの家電製品は機能性が高く、耐久性もあり安心して使用できることから「メイド・イン・ジャパン」とも呼ばれるようになりました。

しかし、家電製品の機能競争はもちろんのこと、それ以上に価格競争が激しく、近年においては低価格が強みの韓国、台湾、中国など海外勢の存在感が強くなっています。加えて2000年代以降は、日本でも大手メーカーの一世代前の技術を活用して生産し、安く販売する家電メーカーの台頭が著しく、長く続いたデフレ経済とリーマンショック、さらにインターネット通販の普及などにより家電の販売価格は下落の傾向にあります。

家電製造業界のM&A動向・市場規模

家電製造業界は、高度経済成長期に重工業化とそれに伴う需要拡大によって急成長しました。2000年代には、新興国でのインフラ整備が進み、さらに市場が拡大しましたが、2008年の金融危機では海外需要の減少により大きな打撃を受けました。それでも、その後の経済復調と共に業界は回復し、再び成長を続けています。

コロナウイルスの流行が始まった2019年度には、電気機器の生産額が53,173億円から2020年度には50,427億円に減少しましたが、2021年度には回復の兆しが見られました。2024年度には、電気機器の総生産額が57,190億円に達すると予想されており、そのうち重家電機器は36,351億円、白物家電機器は29,839億円と見込まれています。

国内市場に目を向けると、温室効果ガス削減目標や再生可能エネルギーの導入が進むことで、今後は需要が増加すると予想されています。一方、エネルギー需要が増加する海外市場への積極的な展開も、今後の家電製造業界の成長にとって重要な要素となっています。

電気機器の生産額推移

家電製造業界のM&A事例

家電製造業界で成功したM&A事例を紹介します。これらの事例から、企業が競争力を強化し、成長を目指すためのヒントにしてください。

デンキョーグループHDとシー・シー・ピー

2024年7月、株式会社デンキョーグループHDは、株式会社シー・シー・ピーの全株式を取得し、子会社化することを決定しました。

デンキョーグループHDは、家電や雑貨製品の企画・開発・製造・販売を行うシー・シー・ピーを傘下に加えることで、生活家電販売事業における商品開発力や収益性の向上を図り、メーカー機能の強化を目指します。

Jグロースファンドと金澤工業

2022年12月、株式会社常陽銀行と株式会社常陽キャピタルパートナーズが共同出資するJグロースファンドは、金澤工業株式会社への投資を実行しました。

この投資により、金澤工業はものづくり技術を活用した営業体制の強化を図り、新たな分野である電解水事業の展開にも取り組む予定です。これにより、企業として競争力を一層強化することが期待されています。今回の投資は、持続的な成長を支える重要なステップとなるでしょう。

エスライングループとエムアンドエスコーポレーション

2023年10月、株式会社エスライングループは、株式会社エムアンドエスコーポレーションの全株式を取得し、子会社化を実施しました。

売り手となったエムアンドエスコーポレーションは、物流業務や家電製品の設置業務を行う会社です。

買い手となったエスライングループは、グループ内での経営資源の連携を強化し、情報システムの共有や協業化を進めることが可能となります。さらに、生産性の向上と業務の効率化を図ることで、グループ全体の価値を一層高めることを目指します。

ソニーとALTAIR SEMICONDUCTOR社

2016年2月、ソニー株式会社は、イスラエルのALTAIR SEMICONDUCTOR社を約250億円で買収しました。

ALTAIR SEMICONDUCTORは、高性能かつ低消費電力、低コストの通信用半導体を開発・販売する企業です。

この買収は、IoT機器やウェアラブル端末等のデバイス分野でのシナジー効果を期待して行われました。通信技術とセンサー技術を組み合わせた新たなデバイスの開発を目的としたものです。

加賀電子と富士通エレクトロニクス

2019年1月、加賀電子株式会社は、富士通エレクトロニクス株式会社の全株式を取得し、子会社化しました。

株式の取得は段階的に実施され、まず2019年1月に株式の70%を取得し、2021年には残りの30%も取得しています。買収総額は約205億円でした。

売り手となった富士通エレクトロニクス(現:加賀FEI)は、自動車や通信機器向けの電子デバイス製品の設計・開発を行う企業です。このM&Aによって、買い手となった加賀電子は、売上高5000億円規模の企業グループを形成し、世界市場での競争力と存在感をさらに高めました。

製造業業界のM&A成約事例・それぞれの選択

家電製造業界でM&Aを活用するメリット

家電製造業界でM&Aを活用する主なメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

  • ・市場での存在感を発揮できる
  • ・自社の製品ラインを効率的に拡充できる

それぞれ見ていきましょう。

市場での存在感を発揮できる

M&Aを活用することで、買い手側は売り手側の取引先や顧客基盤を取り込み、事業規模を拡大することが可能です。さらに、M&Aによって得られた技術やリソースを既存の事業に統合することで、シナジー効果を生み出し、持続的な成長を促進することも見込めます。これにより、市場での存在感を高められるでしょう。

特に成熟市場では差別化が困難であるため、M&Aによる戦略的な拡大は競争優位を築くための重要な手段となります。

また、新興市場においても、M&Aを活用することで市場シェアの迅速な拡大と影響力の強化が期待されます。早期に市場へ進出し、現地企業を買収することで、競争力を高めながら市場での地位を確立することができるでしょう。

自社の製品ラインを効率的に拡充できる

家電製造業界において競争力を高めるためには、多様な製品の提供が重要な要素の一つです。M&Aを活用して関連事業を買収することで、自社の製品ラインを効率的に拡充することが可能になります。例えば、オフィス機器メーカーを買収すれば、オフィスに必要な製品を一括して提供できるようになり、顧客に対する提案力が強化されます。

さらに、異業種の企業を買収することで、新たな事業領域に進出し、製品ラインを多様化させることも可能です。こうした製品ラインの拡充は、顧客の多様なニーズに対応する能力を高めるだけでなく、収益基盤の安定化にもつながり、企業全体の競争力を強化するでしょう。

家電製造業界におけるM&A成功のポイント

家電製造業界でM&Aを成功させるためには、自社製品と相乗効果のある顧客基盤を持つ企業を買収することが重要です。この業界では、顧客基盤の拡大が成長戦略の柱となっており、M&Aによって買収企業の顧客基盤を取り込むことで、新たな販売機会を得ることができます。

例えば、自社製品と関連性の高い事業を展開する企業を買収すれば、自社だけでは取り込めなかった顧客層を獲得でき、クロスセリングやアップセリングの可能性が広がります。さらに、買収企業の顧客データを活用することで、マーケティング戦略の精度を高め、ターゲットに合わせた効果的な施策を展開することが可能です。

また、家電製品にAIやIoTといった最新技術を搭載し、利便性を向上させる動きが加速しています。例えば、スマートフォンを通じて遠隔操作できる空調機能や、冷蔵庫の中身を把握できる機能などが普及しており、こうした技術革新に対応するためには、同業種だけでなく異業種とのM&Aも検討する必要があります。

デジタルテクノロジーやITに強みを持つ異業種の企業との連携を視野に入れ、自社の企業価値を高めるための最適な相手を見極めることが、今後の市場競争で勝ち残るための鍵といえるでしょう。市場のニーズに応える柔軟な戦略と、相手企業の選定において適切な判断を下すことが、家電製造業界でのM&A成功のポイントとなります。

家電製造業界における今後のM&Aの課題と展望

家電製造業界では、成熟した市場環境により売上が頭打ちとなっている企業も少なくありません。加えて、近年の物価高騰や、コロナ禍以降に露見した半導体などの部品不足により、経営が困難になっている企業も見られます。

このような状況に対応するため、新規顧客の獲得や従業員のノウハウ向上を目指した事業・経営基盤強化を目的としたM&Aが増加傾向です。

さらに、人手不足の解消を目的としたM&Aの動向も注目されています。家電製造業界では、高齢化と若い労働者不足に伴う後継者問題が深刻化しており、特にAIやIoTといった第4次産業革命に対応できる若い技術者の不足が課題となっています。国内外で優秀な技術者や労働力が不足する中、人手不足を解決するためのM&Aが今後ますます重要な手段となるでしょう。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


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