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- #業種別M&A動向
- #鉄鋼(鋼鉄メーカー)業界 M&A
業界の定義
鉄鋼会社とは、主に鉄鋼メーカーとその製品を仕入れてさまざまな業界に販売を行う金属卸事業を行っている事業者のことを指す。
鉄鋼メーカーは、「高炉メーカー」と「電炉メーカー」にわけられる。「高炉メーカー」とは、鉄鉱石やコークスなどの原材料を高炉(溶解炉)で製鉄し、製鋼、鋳造、鋼材製品まで一貫生産する事業者のことを指す。「電炉メーカー」とは、くず鉄(鉄製品作成時にできるくずや廃品の鉄製品)を電気の熱で溶かして、不純物を取り除いたうえで製鋼、鋼材製品を製造する事業者のことを指す。
「電炉メーカー」には普通鋼中心の「普通鋼メーカー」と特殊鋼専業(マンガンやニッケル、クロムなどのレアメタルを添加する)の「特殊鋼メーカー」がある。
業界の特色

鉄鋼製品は、鉄鋼メーカーから鉄鋼メーカー系列のグループ会社や商社など卸されるケースと、鉄鋼メーカーから直接、自動車メーカーや、建設会社、造船会社、産業機械メーカーなどの各種メーカーに卸されるケースがある。グループ会社や商社に卸したケースは、一次商社から加工業者を経るケースや、二次商社(特約店)を経て卸されるケースもある。
鉄鋼は、自動車製造業や造船業、建設産業、産業機械産業など幅広い産業で利用されており、特にビルや鉄道、橋など社会インフラを担うものに欠かせない材料である。そのため、他の様々な産業の基盤となっていることが多く、実際の市場規模よりも大きな影響力があるといわれている。
市場の規模
経済産業省の調査によると、2015年の日本国内における鉄鋼業の製造品出荷額は17兆8,420億円であり、2014年の19兆2,022億円から7.1%減少した。

出典:https://www.stat.go.jp/data/e-census/2016/kekka/pdf/hinsan.pdf
また世界鉄鋼協会によると、2019年の世界の銑鉄生産量は12億7,799万トンであり、世界の粗鋼生産量は18億6,991万トンであった。これに対し日本は、2019年の銑鉄生産量は7,490万トン、粗鋼生産量は9,928万トンであった。近年は、特に経済発展著しいアジア地域への輸出が増加している。
日本国内の鉄鋼関連製品の販売先は、国内販売が59%、海外輸出が41%となっている。国内販売先の業界は、建築土木(39%)と自動車(29%)が中心であり、海外輸出先は、ASEAN(31%)と韓国(18%)、中国(15%)が中心である。海外輸出の鉄鋼関連製品は、現地の日系自動車メーカー向けが大半を占める。
企業別の売上をみると、日本製鉄株式会社が5兆0,172億円、JFEスチール株式会社が2兆3,491億円、株式会社神戸製鋼所が1兆8,698億円となっている。
課題と展望
鉄鋼業界では、一般的に海外へ展開する事業のために、国内の競争だけでなく国際競争の中でも戦う必要がある。特に近年は、中国などのメーカーが生産能力を増強し、世界の粗鋼生産量の半分程度を占めるほどに成長している。
中国メーカーの安い鋼材が輸出されるにより、日本の鉄鋼メーカーは一層厳しい状況になってきている。そのため国内では2015年ごろから工場休止などの措置が相次いでいる状況があり、深刻な課題となっている。
鉄鋼業界は、業界再編により、生産拠点を統廃合、稼働率を向上、生産性向上と価格競争力強化を図ることが大変重要とされている。近年では自動車や航空機等の素材は、鉄からアルミや炭素繊維強化樹脂に移行しており、素材間での競争が激化しているため、より軽量・高張力といった顧客のニーズに沿った製鉄技術の提供が重要となる。
また、工場からの排出ガスによる環境問題に対しての技術開発も重要な責務となっている。
鉄鋼業界のM&A動向
日本の鉄鋼メーカーの再編の大きな動きとして、1970年に富士製鉄株式会社と八幡製鉄株式会社が合併して新日本製鐵株式会社が誕生した。その後約30年間、大手高炉メーカー5社を中心とした生産体制が継続したが、需要低下に伴い再編が行われている。国内のみならず海外でも大規模なM&Aが繰り返されており、世界全体で業界再編が激化している。国内の鉄鋼企業は、M&Aにより各社技術の相互活用、設備の有効活用でグローバル競争に打ち勝つ必要がある。
再編が進む高炉メーカーに対し、日本の電炉メーカーの再編は進んでいないため、小規模な会社が乱立している現状があり、今後M&Aなどによる業界再編が加速する可能性が高くなっている。
2018年、電炉メーカーで金属製品卸売・金属材料卸売をする共英製鋼株式会社は、ベトナムで鉄鋼製造・販売事業を行うVietnam Italy Steel Joint Stock CompanyをM&Aした。共英製鋼株式会社は、ベトナム市場でのシェア拡大および事業規模の拡大を目的として、このM&Aを実施している。
2012年、新日本製鐵株式会社は住友金属工業株式会社を吸収合併して新日鐵住金株式会社は発足した。日本国内での業界第トップと3位の合併は、新興国の製鋼メーカー台頭を意識した戦略的合併が主な目的となっている。規模優位が強い鉄鋼業界において合併によりグローバル競争での存続を巡る大型の吸収合併であった。
2002年、川崎製鉄株式会社と日本鋼管株式会社の経営統合によりJFEホールディングス株式会社を発足した。グローバル競争が必要となる鉄鋼業界において、事業規模拡大と両社の鉄所の立地条件を活用した製鉄所運営の効率化を図ることを目的とした。
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