農林業業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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  • #業種別M&A動向
  • #農林業業界 M&A

業界の定義

農林業とは、営利目的で農作物の栽培、家畜の飼育、森林の管理や木材の生産を行う産業のことを指す。農林業には畜産業、園芸業、林産業なども含まれる。農業は主に「耕種農業」「畜産農業」「混合農業」に分かれ、日本では「耕種農業」が主流である。農林業は、米や野菜、果物などの日常的な食料を供給し、日本の食生活を支える。また、森林は木材の供給だけでなく、環境保護や生態系の維持にも貢献している。

業界の特色

農林業業界イメージ画像

農業業界は、政府が「農業競争力強化支援法」を施行し、農業が発展し続けるための農業の構造改革や、良質で低廉な農業資材の供給、農産物流通等の合理化の実現が図られた。またこの強化支援法では、農業生産関連事業者に対して、事業の再編等により経営体質の強化が重要とされている。

農林中金総合研究所の調査によると、2015年の農業経営体数は約138万であった。そのうち家族で農家を経営している家族経営体が134万と農業経営体の大部分を占めており、組織経営体は3.3万と大きな差が開いている。しかし、家族経営体は2010年から2015年の5年間で約30万減少しているのに対し、組織経営体は年々増加傾向にある。


林業の路網には、一般車両も安全に通行できるように作られた林道、林業用車両が利用するために作られた林業専用道、林業機械が利用するために作られた森林作業道などがある。これらの林業路網と高性能林業機械を組み合わせた作業システムを構築することにより、高い生産性を実現している。林業業界はICTの導入にも積極的な姿勢がみられており、森林GISと呼ばれる森林情報管理システムには、航空レーザ計測による森林資源調査の結果や出材量データなど、森林の基本情報がデジタル処理された状態で管理されている。



市場の規模

農林水産省の調査によると、2017年の農業総産出額は前年比2.6%減の8兆4,887億円であった。内訳では、米、野菜、果実が減少し、畜産が増加した。農業総産出額の減少は、農産物の価格の低下が要因になっている。前年と比較すると、米や野菜、果実は収穫量が増加したが、農業産出額において、これらの品目が減少していることから、価格低下が農業総産出額の減少の要因といえる。



農業総産出額の推移とその増減における品目別寄与度
出典:https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h18_h/trend/1/t1_2_1_01.html





農業といえば自然災害が大敵だが、2017年は日照不足や台風等により1,947億円の農作物被害が発生した。さらなる低価格資材の利用や作業の効率化により、生産コストを縮小し、自然災害から受ける経営への被害を抑えられるよう対応していく必要がある。

林野庁の調査によると、2018年の林業業界の総産出額は、5,020億円であった。内訳は、木材生産額が2,648億円で栽培きのこ類生産額が2,257億円となっている。樹種別国産材生産量は、スギが58%、ヒノキが13%、カラマツが10%である。林業業界は、9割の林家が保有面積10ha未満という小規模・零細業界である。林業従事者は減少傾向にあるが、全産業の若年者率が低下する中で、若年層の林業従事者はほぼ横ばいであり、平均年齢は若返り傾向にあるといえる。




課題と展望

農業従事者は年々減少傾向にあり、今後15年は高齢者に偏った状況になると推測されている。また、大幅な国内生産量の増加や、生産額の増加は見込まれていない。また農地の拡大に関しても、耕地の増加は見込まれないため、農地中間管理機構による遊休農地の活用に期待がかかっている。2019年末の新型コロナウイルス感染症の影響から、家庭菜園人口や市民農園・貸農園利用者が増加するなど、農業従事者以外から農業への関心も高まっており、今後も動向が注目される。

林業業界は、生産性は向上しつつも、さらなる生産性向上のために、意欲ある林業事業者への施業集約化や、より効率的な作業システムの普及・定着が課題となっている。また労働環境の改善も大きな問題である。林家の所得や林業従事者の賃金は、全産業の中でも低位であり、林業従事者の減少を抑えるためにも、労働環境の改善は早急に対応すべき問題となっている。




農林業業界のM&A動向

農業業界では、農業競争力強化支援法により、事業の再編や事業参入に対する支援が行われているため、今後もM&Aが活発に行われることが予想される。以前は、農業用機械製造を行わないソフトウェア開発事業者は、事業参入促進対象事業として許可されなかったが、農業競争力強化支援法では農業用ソフトウェア作成事業も加わり、スマート農業の推進が図られている。事業再編又は事業参入を促進するための支援措置として、税制の特例や、金融支援、手続き特例などを活用できるため、他業界からM&Aを利用し、参入してくるケースもみられる。また後継者不足のためのM&Aも今後増えてくると予想されている。林業業界でも同様に、後継者問題解決のためのM&Aや事業参入のためのM&Aが行われている。

2020年7月、ベーシック・キャピタル・マネジメント株式会社は、運営するファンド(みのり3号投資事業有限責任組合)が、積水化学工業株式会社の連結子会社である積水ヒノマル株式会社のアグリ事業を承継する新会社(ヒノマル株式会社)の株式譲渡契約を締結した。この取り組みは、大企業グループからのカーブアウト(子会社独立)を支援するものであった。

2019年12月、NECキャピタルソリューション株式会社は、小平株式会社と業務提携契約を締結した。また小平株式会社の保有するオリザ鹿児島ファーム株式会社の発行済株式の一部を譲受し、連結子会社化した。このM&Aにより、同社の農業事業領域における事業機会の創出や協業推進が図られた。

2019年2月、エア・ウォーター株式会社は、グループ会社である株式会社トミイチが農産物の卸販売およびコントラクター事業を手掛ける株式会社北栄農産と合併することを発表した。この合併により、効率的な事業運営の推進と契約産地の拡大による質の高い青果物の安定供給が図られた。






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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


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