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建材卸売業界では、近年M&Aが活発化しています。市場が成熟化するなかで、事業拡大や競争力強化を目指す企業が増えているためです。
本記事では、建材卸売業界のM&A動向や主要事例を紹介したうえで、M&A実施のメリット、成功のポイントについても解説します。建材卸売業でM&Aを検討中であれば、今後のヒントとなるはずです。
M&Aの前に押さえておきたい建材卸売業界の情報
建材卸売業界は多層的な構造を持ち、地域密着型の企業が多いのが特徴です。M&Aについて解説する前に、業界の構造や特色を理解しておきましょう。
建材卸売業界の定義
建材卸売業とは、建設に使用する建材を仕入れて、ハウスメーカーや工務店などに販売する事業を指します。建設会社へ直接建材を販売する建材店だけでなく、建材を仕入れる商社のような企業や、建材店への物流を担う運送会社なども含まれます。複数の企業が連携して建材を販売しているため、業界構造は多層的です。
業界の主な契約形態としては、購入側の仕様に沿った製品を売買する製造委託契約、規格品を売買する購買契約、建材の手配から施工までを一括で請け負う材工一式契約の3つがあります。
代表的な企業
建材卸売業界の代表的な企業としては、以下のような会社が挙げられます。
- ・JKホールディングス株式会社
- ・三谷商事株式会社
- ・すてきナイスグループ株式会社
これらの大手企業は、全国規模での事業展開や幅広い商材の取扱いが特徴です。
建材卸売業界の特色
建材卸売業界では、多種多様な建材を扱うため、在庫管理や仕入管理に多くの工数がかかるのが特徴です。そのため、経費における人件費の占める割合が比較的高い傾向にあります。
また、地域密着型のビジネスを展開している企業が多いことも特色の一つです。新築住宅着工数やリフォーム需要などは地域によって大きく異なるため、各社は地域の市場動向を見極めながら経営する必要があります。地域の建設需要が高まれば建材の注文も増えますが、需要が落ち込めば売上も減少するリスクがあります。
卸売という業態において、建材に対して加工等の付加価値をつけにくいのも、この業界の特徴です。差別化が難しいため価格競争に陥りやすく、売上総利益率は総じて低い水準にとどまっています。
建材卸売業界のM&A動向・市場規模
住宅設備・建材の国内市場は、新型コロナウイルスの影響で一時的に落ち込んだものの、その後回復し、2025年度には4兆7,508億円まで拡大する見込みです。
建材市場に限定すると、2020年度から2025年度にかけての成長率は7.7%と微増にとどまる見通しです。一方で、住宅リフォーム市場は今後も着実に伸びていくと予想されており、建材卸売業界にとって追い風となることが期待されています。
また、近年の省エネ商材の発展や社会の環境意識の高まりを背景に、環境に配慮した建築物への注目が集まっています。これに伴い、環境に優しい建材の需要も今後さらに高まっていくでしょう。

参考:商業動態統計調査【業種別商業販売額及び前年(度、同期、同月)比】
建材卸売業界のM&A事例
近年、建材卸売業界では、事業拡大や競争力強化を目的としたM&Aが活発化しています。ここでは、建材卸売業界で行われた主要なM&A事例をいくつか紹介します。
ブルケン東日本と東洋住建
2022年2月、株式会社ブルケン東日本は、株式会社東洋住建より建築資材販売事業および建築工事業を譲受しました。ブルケン東日本は住宅関連資材販売事業などを手がける会社であり、東洋住建は建築資材販売と建築工事を行う会社です。ブルケン東日本は、東北エリアにおける事業基盤の拡充と提供サービスの向上を目指し、今回の事業譲受に至ったとしています。
JKホールディングスと坂田建材
2021年3月、JKホールディングス株式会社は、株式会社坂田建材の完全子会社化を実施しました。坂田建材は岩手県で建材、鋼材、住宅機器の販売、家電製品やOA機器の販売を手がける会社です。岩手県内での拠点拡充と東北地区での経営基盤強化を図るJKホールディングスは、グループ全体のシナジー効果創出を期待し、子会社化に踏み切ったとのことです。なお、坂田建材は自社運営の板金成形・加工事業を株式会社協和に譲渡する契約も締結しています。
フクヤ建設と成商
2021年12月、フクヤ建設株式会社は、株式会社成商の全株式を取得し、子会社化しました。フクヤ建設は、住宅建築やリノベーションなどを手がけており、成商は鉄鋼建材の卸売などを行う会社です。フクヤ建設は、住宅の耐震化などで鋼材需要が高まる中、加工技術を持つ成商を傘下に収めることで、受注拡大を見込んでいます。
ダイキアクシスとアルミ工房萩尾
2021年10月、株式会社ダイキアクシスは、株式会社アルミ工房萩尾の全株式を取得し、子会社化する契約を締結しました。ダイキアクシスは環境関連事業や住宅機器関連事業などを展開する会社であり、アルミ工房萩尾は住宅サッシやエクステリア建材の施工・販売を行う会社です。ダイキアクシスは、この子会社化によって建材サービスのラインナップを増強し、より幅広い顧客層へのサービス提供を目指すとしています。
OCHIホールディングスと寺田
2021年9月、OCHIホールディングス株式会社は、寺田株式会社の自己株式を除く発行済み株式を取得し、連結子会社化しました。OCHIホールディングスは建材・住宅設備機器の卸売を主力事業としており、寺田は寝具などの繊維商品卸売業を手がける会社です。OCHIホールディングスはこの子会社化によって、東日本での事業拡大と環境アメニティ事業における仕入・販売を通じたグループ事業の持続的成長を目指すとコメントしています。
コンドーテックと栗山アルミ
2021年9月、コンドーテック株式会社は、栗山アルミ株式会社の普通株式を取得し、子会社化しました。コンドーテックは金物小売業を中心に、社会インフラ向け資材の仕入・販売を行っており、栗山アルミはアルミ押出型材等の製造開発事業を手がける会社です。コンドーテックは、今後需要拡大が見込まれるアルミ商材を自社グループ内で取り扱えるようになることで、企業価値の向上につなげる考えです。
建材卸売業界でM&Aを活用するメリット
ここでは、建材卸売業界でM&Aを活用する主なメリットとして、以下の3点を紹介します。
- ・取引先を短期間で拡大できる
- ・知識や技術を得られる
- ・自社内でプロセスの統合が可能となる
それぞれ見ていきましょう。
取引先を短期間で拡大できる
M&Aを実施することで、売り手企業が持つ取引先を短期間で取り込むことができ、販路の拡大が可能となります。建材卸売業は地域密着型の経営形態が多いため、新たな地域に進出する際、自社だけで顧客基盤を築くには多くの時間と労力が必要です。そこで、既に地域での信頼関係や取引ネットワークを確立している企業とM&Aを行えば、営業拠点の拡充と顧客基盤の早期確保が実現できます。
知識や技術を得られる
建材卸売業界では、高度な専門知識や技術が求められます。既に建材卸売事業を展開している企業とM&Aを行うことで、業界で必要とされるノウハウや技術をスピーディに獲得することが可能です。獲得した知識や技術を活かし、製品ラインナップの拡充や、製品・サービス提供までのリードタイム短縮などが可能となり、競合他社との差別化を図ることができます。
自社内でプロセスの統合が可能となる
施工業者や関連商材の卸売業など、隣接する業種との間でM&Aを行うことで、各工程を自社内に取り込み、プロセスの統合が可能となります。経営資源を融合させることでスケールメリットも享受でき、生産性の向上やコスト削減につなげられるでしょう。建材卸売業界では価格競争も激しいため、他社との差別化を図り、市場における優位性を確立することも期待できます。
建材卸売業界におけるM&A成功のポイント
建材卸売業界でM&Aを成功させるためには、相手企業選びが重要なポイントです。建材には木材、金属、コンクリート、石など、さまざまな種類があり、各社で得意とする分野が異なります。M&Aを通じて得意分野の異なる企業と統合することで、新たな商材の取扱いが可能となり、事業機会の創出につながるでしょう。
また、建材卸売業界は売上総利益率が低い傾向にあるため、財務状況の調査も欠かせません。在庫投資額に対する利益貢献率や、倉庫面積あたりの売上総利益の状況などを詳細に調べ、経営状況の健全性を確認する必要があります。
相手企業の選定や財務デューデリジェンスには専門的な知識が求められるため、不安がある場合にはM&Aの専門家に依頼することが効果的です。専門家の知見を活用することで、スムーズなM&Aプロセスの進行と、より高い成功確率を期待できるでしょう。
建材卸売業界における今後のM&Aの課題と展望
建材卸売業界の市場は、単独では微増にとどまると予想されています。加えて、国内景気の鈍化や建材価格の高騰が継続する中、国内で使用する木材の自給率は40.7%と、約60%以上を輸入に頼っている状況です。為替の影響による価格変動や、世界情勢の変化による輸送の混乱なども懸念されます。
一方で、リフォーム業界の拡大や、環境に配慮した新たな建材への注目も集まっています。こうした状況のなか、建材卸売業界では、提案商材の拡充や経営基盤の拡大、非建築分野の強化、生産性向上などを目的としたM&Aが、今後一層活発化していく見込みです。
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