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鉄骨工事業界では市場環境の変化を背景に、M&Aが活発化しています。
本記事では、鉄骨工事業界におけるM&Aの市場規模や具体的な事例を紹介すると共に、M&Aを活用するメリットや、成功のポイントについて解説します。業界の課題を踏まえ、今後のM&Aの展望についても考察してみましょう。
M&Aの前に押さえておきたい鉄骨工事業界の情報
M&Aについて解説する前に、鉄骨工事業界の定義や特色、代表的な企業といった基本情報を押さえておきましょう。
鉄骨工事業界の定義
鉄骨工事業とは、建築物に必要な鉄製の骨組みを製作・施工する事業を指します。
鉄骨工事の流れを分解すると、「工場」と「現場」の2つに分けることが可能です。工場では、設計図に基づいて鉄骨を加工・製作し、品質検査を行います。現場では、工場で製作された鉄骨をクレーンなどの重機を用いて吊り上げ、溶接やボルト締めにより組み立てていきます。
鉄鋼工事は、総合建設会社から下請けとして受注するケースが一般的です。なかには自社に鉄骨工事部門を持ち、一貫して建設を行う企業もあります。
代表的な企業
鉄骨工事業界における代表的な企業としては、以下のような企業があります。
- ・株式会社横河ブリッジホールディングス
- ・株式会社アイ・テック
- ・株式会社駒井ハルテック
これらの企業は、高い技術力と豊富な実績を有しており、大規模な建築プロジェクトにも数多く携わっています。また、自社工場を保有し、設計から製作、施工までを一貫して行うことで、高品質な鉄骨構造物を提供しています。
鉄骨工事業界の特色
鉄骨工事は建物の骨組みを形成する重要な工程であるため、高度な技術力が必要です。したがって、優れた技術を持つ企業は競争力を持ち、他社よりも優位に立つことができます。
また、鉄骨工事は地域密着型の事業であることが多く、地域特有のニーズや課題を理解している企業が成功しやすい傾向にあります。鉄骨工事の対象は、一般住宅だけでなく、商業施設や公共施設など多岐にわたるため、幅広い経験と知識が必要です。
鉄骨工事業界のM&A動向・市場規模
2023年の鉄骨需要量は、前年比11.6%減の391万2150トンとなり、1967年以来56年ぶりに400万トンを下回る見通しです。特に、大規模建築物における鉄骨需要が17.2%減少したことが、全体の需要量を大きく押し下げる要因となりました。今後、大規模建築物の需要が継続的に減少するようであれば、鉄骨工事業界は厳しい状況に直面すると予測されます。このような市場環境の変化を背景に、業界内でのM&Aは引き続き活発化することが予想されます。
参考:経済産業省ヒアリング 2024年度第一四半期の折半需要動向│全国厚板シヤリング工業組合
鉄骨工事業界のM&A事例
近年、鉄骨工事業界ではM&Aが頻繁に実施されています。ここでは、鉄骨工事業界におけるM&Aの具体的な事例をいくつか紹介します。各事例の背景や目的、期待される効果などを詳しく見ていきましょう。
瀧上工業株式会社と東京フラッグ株式会社
2023年3月、瀧上工業株式会社は、東京フラッグ株式会社の全株式を取得し、子会社化しました。瀧上工業は橋梁事業を中核とする企業で、東京フラッグは鋼構造物工事における現場溶接を専門としている企業です。瀧上工業は鉄鋼事業の体制構築を図っており、今回の子会社化は、鋼構造物製造事業の発展を目的としています。東京フラッグの技術力を取り込むことで、瀧上工業の鉄鋼事業のさらなる強化が期待されます。
小野建株式会社と三豊鋼業株式会社
2024年2月、小野建株式会社は、子会社である森田鋼材株式会社を通じて、三豊鋼業株式会社の株式を譲り受けました。小野建はグループとして鉄鋼卸売事業を展開しており、三豊鋼業は鉄筋の加工や販売を行っています。小野建は販売エリアの拡大と販売シェアの向上を目指しており、兵庫県を拠点とする三豊鋼業を子会社化することで、関西地区の鉄筋需要への対応の強化を図ります。
旭化成ホームズ株式会社と中央ビルト工業株式会社
2024年2月、旭化成ホームズ株式会社は、公開買い付けにより、2024年2月に中央ビルト工業株式会社を完全子会社化しました。旭化成ホームズは旭化成の完全子会社で、住宅事業を展開しています。中央ビルト工業は仮設機材事業と住宅鉄鋼事業を行っている会社です。両社は2017年に業務および資本提携の契約を締結していましたが、今回の子会社化により、さらに一体化した経営を目指します。シナジー効果の発揮により、両社の企業価値向上が期待されます。
丸藤シートパイル株式会社とディ・ケイ・コム株式会社
2017年9月、丸藤シートパイル株式会社は、ディ・ケイ・コムの完全子会社化を実施しました。丸藤シートパイルは建設仮設材の販売や賃貸を行っている会社で、ディ・ケイ・コムはソイル柱列連続壁および地中障害撤去を専門に行っている会社です。ディ・ケイ・コムの高い技術力と施工能力を取り込むことで、シナジー効果が生まれ、企業価値の向上が見込まれるとして、子会社化に踏み切りました。
阪和興業株式会社とブリヂストン化工品ジャパン株式会社
2018年7月、阪和興業株式会社は、ブリヂストン化工品ジャパン株式会社の冷蔵倉庫向け防熱工事事業を承継しました。阪和興業は鉄鋼、食品、石油などの分野で事業を展開する商社です。この事業承継により、鉄骨工事や屋根壁工事における相乗効果の発揮と、さらなる付加価値の提供を図るとしています。防熱工事事業を新たな収益源として育成し、事業規模の拡大を目指します。
鉄骨工事業界でM&Aを活用するメリット
鉄骨工事業界でM&Aを活用する主なメリットとして、以下の2点を紹介します。
- ・人手不足の解消につながる
- ・事業規模の拡大が期待できる
それぞれ見ていきましょう。
人手不足の解決につながる
鉄骨工事業界では、高齢化の進行に伴う人手不足が深刻化しています。優れた技術を持つ人材を確保するために採用活動を行っても、なかなか適任者を見つけることができないのが現状です。新たに採用した人材を育成する場合は、一定の時間がかかってしまいます。
そこで考えられるのが、M&Aによる解決です。相手企業が有する人材を自社に取り込むことができます。これにより、人材不足の解決につながります。経験を積んだ既存の技術者を引き継ぐことで、育成や採用活動にかかる費用を抑えられるだけでなく、即戦力としての活躍が期待できるでしょう。
事業規模の拡大が期待できる
M&Aを通じて、事業規模の拡大を図ることができます。買収先企業の持つ市場シェアを獲得すれば、スピーディな事業展開が可能になるでしょう。さらに、双方の経営資源や技術、ノウハウを融合させることでシナジー効果が生まれ、事業の質の向上につながります。
事業規模が大きくなれば、スケールメリットの享受も狙えます。具体的には、仕入れや生産にかかるコストの削減、経営の効率化などです。上記の理由から、M&Aは、鉄骨工事業界における事業拡大の有効な手段といえます。
鉄骨工事業界におけるM&A成功のポイント
ここでは、鉄骨工事業界でM&Aを成功させるためのポイントとして、2点紹介します。
進行中の案件を抱えていないか確認する
鉄骨工事業界でM&Aを実施する際には、売り手企業が抱える案件の進捗状況を確認することが大切です。もし、M&Aを開始する段階で売り手企業の案件が進行中だった場合、買い手企業もしくは別の会社が工事を引き継がなくてはなりません。その際、後のトラブルを避けるためにも、作業分担や費用負担などをはっきりと取り決めておくことが重要です。
相手企業の経営資源の状況を確認する
M&Aを行う際には、相手企業の保有する経営資源の状況を確認することも重要なポイントです。鉄骨工事業界において特に大切な経営資源の一つが、資格を持った技術者の存在です。建設業界では、資格の有無によって施工できる工事の規模が異なります。施工する技術者の資格の有無は会社の信頼性にも直結するため、確認しておくべき事項といえるでしょう。
工場設備や重機の保有状況も確認しておきましょう。設備や重機は高額であるため、M&Aによって引き継ぐことができれば、自社にとって大きなコストカットとなります。しかし、保管や手入れの状況が悪い場合、引き継いだのは良いものの、結局買い替えが必要となり、無駄な支出が生じるリスクもあります。M&Aを実施する前に、適切な状態で保管・管理されているか確認しておきましょう。
鉄骨工事業界における今後のM&Aの課題と展望
鉄骨工事業界では、大規模案件の減少に伴う市場の縮小により、受注競争が激化しています。さらに、資材価格の高騰や国内景気の鈍化の影響もあり、M&Aで事業基盤を強化する企業は今後も増えるでしょう。
また、高い技術力を必要とする鉄骨工事業界では、一人前の技術者となるまでに時間を要するため、人材育成も課題です。高齢化に伴う技術者の引退と労働力の確保に向け、同業種同士のM&Aや、新たな技術を用いた生産性向上を目的とした異業種とのM&Aが今後活発になっていくことが見込まれます。
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