住宅リフォーム業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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  • #業種別M&A動向
  • #住宅リフォーム業界 M&A

業界の定義

住宅リフォームとは、老朽化した住宅を竣工時の性能に戻す作業のことをいう。
建物や設備機器の経年劣化や老朽化にともなう増改築・補修・改装・設備機器やインテリアの設置交換のほか、ライフステージやライフスタイルの変化による間取りの変更・バリアフリー化・耐震耐熱強化など性能向上を目的とするもので、小規模から大規模なものまで多岐に渡る工程があり、さまざまな工事をともなうので幅広い概念としての住宅リフォームといえる。

業界の特色

住宅リフォーム業界イメージ

ほとんどの住宅リフォーム工事は500万円未満の小規模工事であるといわれており、内装の変更や水回りの修繕などの工事が50%以上を占めている。そのため住宅リフォームは建設業法の規定に抵触しない工事が多いことから、建築に携わる事業者であれば参入可能で、参入障壁が比較的低い業界といえる。

地場の小規模工務店のほか、住宅リフォーム専門業者、ハウスメーカー、住宅設備機器メーカー、不動産業者さらには家電量販店やホームセンターなどの異業種からの参入も多く競争は激化している。よって他社との差別化をどうするかが課題といえる。
住宅リフォームの工事現場を見てみると、顧客ニーズに対応した工事内容が一品一様であることから、工法・部品・材料の標準化が進んでおらず人的技能に頼ることが多いため労働集約型ビジネスの典型といえる業界である。結果として、人件費率が高くなり、スケールメリットを出しづらい業態ともいえる。

都市部では新築住宅に適した土地が限られてきており、今後、新築需要は減少すると見られ、既存住宅の有効活用が求められる構造である。住宅ストック数は増加かつ老朽化しており、住宅リフォーム需要は潜在的には大きい。

住宅リフォームは工事内容が幅広く規模が小さい割には新築と同程度の技術が求められるため、採算性の低い業界に分類されることが多い。


市場の規模

株式会社矢野経済研究所の調査によると、2018年の住宅リフォームの市場規模は6兆2,178億円で、2000年に7兆円を突破してから減少しているが、前述のとおり新築の減少により既存の住宅リフォームは一定の需要が見込めるため今後は横ばいで推移するものと予測している。



矢野経済研究所_住宅リフォーム市場規模推移と予測
出典:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2177


国内の住宅ストック数は6,241万戸。総世帯数に対する住宅数は年々増加傾向にあるが、14%に達している空き家率が課題となっており、空き家対策が国の重要な政策課題である。住宅リフォームの適齢期は築後20年といわれており、空き家を除く居住住宅5,362万戸のうち1990年代に建てられた住宅が1,062万戸。それ以前の1980年代に建てられた住宅は895万戸あり、これらの数値が市場の底堅い状況を示している。

2009年に「長期優良住宅の普及促進に関する法律」が施行され、住宅リフォーム市場規模の拡大などの数値目標達成に向けての支援策が導入されている。住宅リフォーム工事をする箇所としては、外壁(27%)、トイレ(26%)、台所(24%)、浴室(22%)、居間(19%)、屋根(18%)などとなっている。

大手住宅リフォーム業者としては、ハウスメーカーでは積水ハウス・大和ハウス工業、不動産業界では住友不動産・三井不動産、設備メーカーではパナソニック・タカラスタンダード、家電量販店ではエディオン・ヤマダ電機などが市場参入している。



課題と展望

住宅リフォーム業界での最も大きな課題は「職人不足」である。「職人が十分足りている」という住宅リフォーム業者はほぼ存在しないと言われている。受注が取れて工事を始めても納期通りに終わらないことが散見されるようになってきた。どう職人を確保するのか、どう教育して職人として育てていくのかなど、世代間の認識の違いから、人材確保・育成に苦悩している経営者が多い業界である。

また住宅リフォーム業界はITの導入が遅れている業界でもあり、AIやVRとの活用により業務の生産性を向上させるためにも早急なITの導入が必要だと言われている。ITの導入により、不足している職人問題も少しは解決されることが期待されている。

「建物より立地が大事」というニーズの高まりとともに、そのニーズに対応した「中古住宅と住宅リフォームをセットにした住宅販売」で業績を伸ばしている会社が見受けられることから、今後はこのような事業形態がより多くなると考えられる。


住宅リフォーム業界のM&A動向

住宅リフォーム業界が抱える問題は慢性的な人材不足で、技能の専門性が高いためできる人材は限られており、若手の職人が少なく職人の高齢化が進んでいる構造である。人材不足を解決するために、人材を求めてのM&Aというケースが多くある。
また、参入障壁が低い傾向にあるため、異業種からの参入も多く、その場合には既存業者をM&Aし、専門性の高い技能を持つ人材や必要な設備を確保してからの市場参入ケースが多い。一方、スケールメリットを出せない業界のため、規模の拡大のためのM&Aはあまりない。住宅リフォーム業界は、コンプライアンスの見直しや施工工程の標準化など新たな取り組みが求められている状況になっており、中小規模の会社では対応しきれなく、大手の傘下に入るM&Aが加速されるケースが活発化する可能性がある。

2016年、ミサワホーム株式会社はオフィスビルの修繕や原状回復・内装・リニューアル工事などを全般に手がけるアルゴスペースデザイン株式会社をM&Aした。このM&Aにより事業多角化推進と事業拡大が図られた。

2018年、住生活全般にかかわる事業者へのコンサルティングを行っているハイアス・アンド・カンパニーは、アビエントホールディングスとハウス・イン・ハウスから住宅リフォーム事業をM&Aした。このM&Aにより事業の相乗効果が図られた。



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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 課長高橋 祐基
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 課長
高橋 祐基

生命保険会社を経て、独立系ブティックでアドバイザリー業務に従事。
当社参画後は、建設業界の大型M&Aや上場企業からのカーブアウト等、数々の成約実績を有する。


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