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- #業種別M&A動向
- #商社業界 M&A
業界の定義
商社とは、海外から輸入したり、国内メーカーから仕入れたりしたものを輸出、国内小売業への販売、貿易、仲介、物流といった「トレーディング」をする企業である。「トレーディング」以外にも様々な事業に投資し利益を得る「事業投資」も商社における大きな収益基盤といえる。
商社は大きく「総合商社」と「専門商社」に分けられ、「総合商社」は多種多様な事業・製品を扱うのに対し、売上比率の50%以上が特定の製品である商社を「専門商社」と呼ぶ。
業界の特色

近年、商社は「バリューチェーン」の構築に取り組んでいる。「バリューチェーン」とは、原材料などの調達から製造、出荷物流、販売、アフターサービスまでの一連の事業活動をいう。この一連の動きを担うことは、メーカーにはできない商社としての存在価値ともいえる。
最近では、商社を通さずに、自社で調達や売買などの取引を行うメーカーが増えており、ただ単に原料や製品を買い手に横流しをするだけでは、市場において存在価値を見出せなくなってきた。そのため、自社製品を持たない商社にとって、「バリューチェーン」を構築し、付加価値をつけることが重要になってきている。
市場規模
業界動向SEARCH.COMの調査によると、2020-21年の総合商社の市場規模(主要対象企業8社の売上高の合計)は、50兆7,955億円であり、専門商社の市場規模(主要対象企業241社の売上高の合計)は50兆3,870億円であった。
企業別に比較すると、総合商社業界の売上高1位は三菱商事株式会社の12兆8,845億円。2位の伊藤忠商事株式会社は10兆3,626億円、3位の三井物産株式会社は8兆102億円、4位の丸紅株式会社は6兆3,324億円、5位の豊田通商株式会社6兆3,093億円と、他業界と比較すると高い売上実績となっている。
専門商社業界の売上高1位は、株式会社メディパルホールディングスの3兆2,111億円。2位はアルフレッサ ホールディングス株式会社で2兆6,031億円、3位は三菱食品株式会社で2兆5,776億円、4位は株式会社スズケンで2兆1,282億円、5位は日鉄物産株式会社で2兆732億円、6位は伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社で1兆9,875億円であった。専門商社業界も総合商社よりは低いが、他業界と比較すると非常に高い売上実績である。
課題と展望

ECサイトの活況により、小売業者がメーカーと直接取引することが多くなり、商社のトレーディングの需要が減少傾向にある。特に中小商社への影響が大きくなっている。そのため、M&Aによる販路拡大や経営基盤の強化が活性化してきている。 また、総合商社業界においては資源関連事業から利益を上げることが多かったが、2010年代になると中国の成長鈍化などに伴って資源価格が下落し、多くの総合商社の大幅な減益につながった。その中で、非資源関連事業に経営資源をシフトした商社の業績は、それ以外の商社よりも良好であったため、非資源分野に投資を注力するトレンドがうまれた。特に、原油や天然ガスなどの資源価格が一斉に下落した2020年は総合商社業界にとって厳しい状況だったが、非資源分野に注力していたことによりその影響は最小限に抑えられたといえる。
2021年には世界的な金融緩和や、経済再開への期待などにより資源価格が上昇し、総合商社業界にとっては追い風の状況となった。これらの経緯を踏まえ、今後、総合商社が資源関連事業と非資源関連事業のバランスをどのように構成していくのかが注目である。
他にも、DX(デジタルトランスフォーメーション)の強化や、事業投資から事業経営への移行など、注目すべき要素は多い。事業経営については、例えば伊藤忠商事はファミリーマートを運営している。今までは単なる投資先であった企業に経営者という人材を派遣し、経営やオペレーションの見直しを行う商社が増えた。伊藤忠商事ではさらに、運営するファミリーマートでの広告ビジネスに力を入れている。これは、サイネージやファミペイアプリを活用したもので、サイネージを設置することで店舗を小売りの場だけでなく、広告媒体事業の場としても活用する戦略だ。ファミペイにより集まった会員データを活用した、会員それぞれの興味や嗜好に合わせた広告配信も行われている。さらに膨大なデータを集め、活用するデジタルマーケティングの強化など、率先したビッグデータの活用も行っている。
専門商社業界も新型コロナウイルスによる影響を受けたが、他業界と異なり、ほぼすべての企業が一様に影響を受けたわけではない。例えば不要不急の外出自粛により日用品の需要は一時的に増加した。日用品による売上の多い専門商社にとってこれは追い風になったかもしれないが、食品や機械、繊維など、大部分の分野では売上減少が見られた。
商社業界のM&A動向
商社業界では、事業拡大や新規顧客の獲得、ブランド力活用のためにM&Aが活発に行われている。また、「バリューチェーン」構築のための事業投資も多く行われており、利益を最大化し、激しい競争に勝つためのM&Aが目立つ業界といえる。
―主な事例―
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-2022年4月、アルコニックス株式会社は、自社の中期経営計画ビジョンである「商社機能と製造業を融合する総合企業」の加速を目的に、金属加工分野において高い技術力と顧客評価を有する株式会社ソーデナガノの株式を取得し、連結子会社化することを決議した。ソーデナガノが今後高い成長が見込まれる電気自動車の最重要部品・リチウムイオン電池を製造していること、アルコニックスグループ内の不得手分野の補完ができることなどが、このM&Aの決め手であった。
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2019年10月、伊藤忠商事株式会社は来店型保険ショップ事業を展開するほけんの窓口グループ株式会社の発行済株式を追加取得し持分比率を57.7%とした。これにより、ほけんの窓口は伊藤忠商事株式会社の連結子会社となった。このM&Aで、ほけんの窓口グループ株式会社の新たなサービスの創出と、さらなる事業成長が図られた。
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2018年9月、加賀電子株式会社と富士通セミコンダクター株式会社は、加賀電子株式会社が富士通エレクトロニクス株式会社の株式の70%を取得することに合意した。このM&Aにより、既存の大手顧客への電子デバイスの拡販、及び海外市場を中心としたEMSビジネスの拡大が図られた。
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2018年8月、アルコニックス株式会社は中間持株会社を設立し、その中間持株会社を通じて富士カーボン製作所の全株式を取得し、子会社化すると発表した。このM&Aにより、アルコニックス株式会社はモーター市場に参入し、同社の海外製販ネットワークを利用した新たな商流開拓が図られた。
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2018年4月、伊藤忠商事株式会社は持分法適用会社のユニー・ファミリーマートホールディングス株式会社を株式公開買い付けで子会社化した。元々、筆頭株主として商品開発力の強化や物流システムなどで関係強化を推進してきたが、今回のM&Aにより、より関係を一段と強化し、グループの経営資源を相互に活用して持続的な成長が図られた。
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