焼肉業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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焼肉店業界では、異業種からの参入や大手の新規出店で競争が激化しています。加えて、円高やエネルギー資源の高騰による輸入牛肉の価格高騰や運営コストの増加が経営を圧迫した結果、業界再編に向けたM&Aが活発に行われています。

そこで本記事では、焼肉店業界の市場規模やM&A動向などを整理したうえで、M&A事例や、M&Aを活用するメリット、成功させるためのポイントなどについて解説します。

M&Aの前に押さえておきたい焼肉店業界の情報

はじめに、焼肉店業界の定義を明確にしたうえで、代表的な企業や焼肉店業界ならではの特色などについて解説します。

焼肉店業界の定義

日本標準産業分類によると、焼肉店とは「おもに焼肉(厨房で調理されたものでなく、客が自ら網で焼くもの)をその場所で飲食させる事業所」と定義されています。

焼肉店は飲食店のなかでもいわゆる「素材提供型」の業種であり、肉というメインの商品が明確であるため、一見他店との差別化が難しそうに見えます。しかし、安さや取り扱う部位の多様さ、希少部位の提供や有名産地等の訴求など、各焼肉店がバラエティに富んだ戦略をそれぞれ打ち出しています。

代表的な企業

次は、焼肉店業界で代表的な企業を紹介します。

  • ・株式会社物語コーポレーション
  • ・株式会社コロワイド
  • ・株式会社安楽亭
  • ・株式会社あみやき亭

いずれも全国的にチェーン店展開をしており、店舗数も多い代表的な企業となっています。

焼肉店業界の特色

焼肉店は、かつては客単価が5,000円を超える高額飲食店業態でした。しかし、「安楽亭」や「焼肉屋さかい」「牛角」などが客単価2,000円前後の低料金でチェーン展開をし、その結果として市場を急拡大させています。

特に、郊外のロードサイドにファミリーレストラン形式の焼肉店を展開することで、家族客や若者などを呼び込むことに成功しました。

近年では、1人用ロースターを各席に設置し、定食型焼肉をメインに提供する「ソロ向け焼肉タイプ」や、テーブルに設置したアルコールサーバーでアルコール飲料等の飲み放題が楽しめる「酒場焼肉タイプ」、また希少部位を提供する「高級嗜好向け焼肉タイプ」などの形態が注目を集めています。

焼肉店業界のM&A動向・市場規模

次に、焼肉店業界の市場規模やM&Aの動向について紹介します。

焼肉店業界では、2023年に入り倒産が急増しています。帝国データバンク「2023年 8月報」によると、2023年1月から8月までの間に16件が倒産し、これは前年同期間の約3倍に達しているとのことです。

コロナ禍では「一人焼肉」などの人気と「換気が良い」というイメージがつき、飲食業のなかでは勝ち組とされていました。ところが、異業種からの参入や大手の新規出店などにより競争が激化した結果、過当競争が起きている状況です。

さらに、円安やエネルギー資源の高騰により輸入牛肉の価格が上昇した結果、運営コストが増加し、消費者の値上げ疲れも重なって、価格競争に耐えきれない中小焼肉店が増えています。

また、相次ぐ物価高騰により外食でなく自宅での食事を選択する人が増え、厳しい経営環境が続いています。

焼肉店の倒産数(各年1月~8月 累計)

焼肉店業界のM&A事例

次に、焼肉店業界でのM&A事例を以下に5例紹介します。

ホットランドとエムファクトリーおよびい志井

2021年10月、株式会社ホットランドは、株式会社エムファクトリーおよび株式会社い志井の「もつやき・ホルモン・焼肉」事業を承継する分割会社の発行する株式をすべて取得し、完全子会社とすることを発表しました。

買い手となったホットランドは「築地銀だこ」などを運営する会社です。ホットランドはこのM&Aにより、コロナ禍でも成長が見込まれる「もつやき・ホルモン・焼肉」事業を、自社の他ブランドと融合させ、自社のノウハウや経営リソースを活かしながら、更なる事業拡大を目指すとしています。

あみやき亭とニュールック

2023年3月、株式会社あみやき亭は、株式会社ニュールックの株式を取得し、子会社化したことを発表しました。

あみやき亭は、焼肉業態や焼鳥業態、レストラン業態の店舗を経営しています。一方ニュールックは、横浜にある「野毛ホルモンセンター」を中心に、焼肉、ホルモン事業を展開している会社です。

あみやき亭は今回のM&Aにより、横浜市周辺での営業基盤の強化を目指すとしています。さらに、同社の特色ある商品の他業態へ投入し、シナジー効果に伴うグループ商品開発力の強化を図り、グループ全体の一層の成長を狙います。

GYRO HOLDINGSとOYA

2023年10月、GYRO HOLDINGS株式会社は、2023年10月OYAの株式を取得し、子会社化を実施したことを発表しました。

GYRO HOLDINGSは、飲食店経営やFC店舗支援を行なっています。一方のOYAは黒毛和牛を中心とした焼肉店であるビーフキッチンを展開する会社です。

GYRO HOLDINGSはこのM&Aにより、OYAの食材の安定供給や品質の維持安定を支えると共に、グループ全体の事業基盤の強化を目指します。

兼松と物語コーポレーション

2023年2月、兼松株式会社は、株式会社物語コーポレーションの株式を取得し、子会社化したことを発表しました。

物語コーポレーションは、「焼肉きんぐ」や「焼肉かるび」などの焼肉業態をはじめ、ラーメン、お好み焼き、しゃぶしゃぶなどさまざまな業態の店舗を経営する外食業界の大手企業です。

兼松株式会社と物語コーポレーションは創業期より良好な関係にあり、今回のM&Aにより、今後は更なる関係強化と両社の発展を目指します。

JMホールディングスと柳田商店

2023年1月、株式会社JMホールディングスは、株式会社柳田商店の株式を取得し、連結子会社としたことを発表しました。

JIMホールディングスは、「ジャパンミート生鮮館」や「肉のハナマサ」などの食材小売店や、「焼肉や漫遊亭」などの外食チェーンを展開する会社です。一方の柳田商店は、茨城県で米穀の小売業を営んでおり、JMホールディングス経営の店舗にもこれまで食材の供給を行っていました。

今回のM&Aにより、JMホールディングスが取り扱う商品の品質や価格、品揃え強化を目指します。

焼肉店業界でM&Aを活用するメリット

次に、焼肉店業界でM&Aを活用するメリットについて解説します。浮き沈みの激しい焼肉店業界でM&Aを活用するメリットにはさまざまなものがありますが、そのなかでも特に重要なのが、以下の2つです。

  • ・設備や専門設備をそのまま活用できる
  • ・仕入れルートを引き継げる

一つずつ見ていきましょう。

設備や専門設備をそのまま活用できる

焼肉店業界でM&Aを行うと、焼肉屋ならではの専門設備を引き継ぐことができます。

焼肉店の設備投資は他の業態の飲食店の設備と比べ独特で、汎用性がありません。特に、焼肉店には必須のダクトは初期設備投資の大きな部分を占めるため、排煙機能の優秀さやメンテナンスの容易さ、汚れにくさなどを満たしている企業をM&Aで買収できれば、初期投資の削減につながります。

さらに、ロースターや炭場なども完備されていれば、初期投資を抑えたい買い手にとって大きなポイントとなるでしょう。

仕入れルートを引き継げる

2つ目のメリットは、売り手の持つ仕入れルートをそのまま引き継ぐことができることです。

仕入れ先ルートの確保は、買い手が新たに焼肉店を経営する場合に必要な要素となります。特に、個人で焼肉店を開業する場合は、卸肉屋では個人での購入を受け付けていないことも珍しくなく、こうしたケースでは仕入先探しが難航する可能性も考えられます。

ですが、M&Aを実施すれば、売り手企業が持っている、卸肉屋や食肉センター、生産者などからの直接仕入れなどのルートを活用することが可能です。

また、自社の店舗などと仕入れを共通化して大量仕入れを行うことで、コストメリットを活かした仕入れコストの削減にもつながります。

焼肉店業界におけるM&A成功のポイント

次に、焼肉店業界でM&Aを成功させるためのポイントについて解説します。焼肉店業界でM&Aを実施し、無事成功させるためにはいくつかの点に注意しなければなりません。

そのなかでも特に重要なのが、以下の2点です。

事前に設備を入念に確認しておく

焼肉店を買収する際には、ダクトの整備をはじめ専門設備の状態などを事前に確認しておくことが重要です。

特にダクトに関しては、排煙がスムーズに行われるか、またダクト内部に汚れが付着しにくいかなどを確認したうえで、手入れしやすいかどうかを十分に確認しておかなければなりません。

また、ロースターや七輪などの専門設備に関しては、ロースターであれば火の通り方や煙の抑制機能を中心に、七輪であれば炭場と網洗いの状態などを中心にチェックしておくことが重要です。

それ以外にも、店舗の清潔さを左右する壁や天井、床に関しても、清掃しやすい環境や素材であるかを確認しておいたほうが良いでしょう。

このような焼肉店ならではの設備が十分に整備されているかどうかは、買収後のコスト発生の有無にも影響するため、入念に確認しておきましょう。

仕入先との契約状況を確認する

M&Aのメリットである優良な仕入先との取引の継続を実現するためにも、相手企業と仕入先との間でどのような契約がなされているかを確認する必要があります。

例えば、仕入先と交わした契約書にチェンジオブコントロール条項が盛り込まれていた場合は、M&Aによるオーナーの変更に伴い、契約解除を言い渡されてしまうかもしれません。
また、仕入先に十分な説明をしないままにM&Aを実施すれば、仕入先の信頼を失い、最悪の場合取引が停止してしまう可能性があります。

焼肉店を経営するためには、優良な仕入先の確保は必要不可欠であるため、売り手企業と仕入先との契約状況を確認すると共に、売り手と買い手の双方がそろって仕入先へ説明に赴くなどの対応も必要となるでしょう。

焼肉店業界における今後のM&Aの課題と展望

最後に、焼肉店業界でM&Aを実施する場合の今後の課題と展望について解説します。

市場の変化により他飲食店との差別化が必要に

焼肉店は、日本人にとって親しみのある食文化として定着しているものの、業界としては大きな変化を迎えています。

単身者やカップルの利用が増えたことで、内装やメニューが洗練され、個室などを設置する焼肉店も増えています。また、焼肉店同士の激化する競争を生き残るためには、他店との差別化のために、独自のコンセプトやメニューの開発、サービスをはじめとする品質の向上も重要です。

その一方、アルバイトの時給の高騰や労働力不足、食材価格の高騰も課題となっており、焼肉店業界はこれからも新たな取り組みを模索し続ける必要があります。

大手占有化が加速し、M&Aは日常化する見込み

焼肉店業界をはじめとする飲食店業界全体で、M&Aが日常化しています。大手外食企業が市場占有率を上げて利益を独占するビジネスモデルが浸透した結果、M&Aを活用した業界再編が進行してている状況です。

その結果、個人経営の焼肉店は減少し、大手資本の飲食店がさまざまな業態で増え続けています。

したがって、飲食店業の経営者は市場トレンドやM&A動向に注目し、戦略的な判断が求められています。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 部長桑原 正樹
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 部長
桑原 正樹

大手証券会社入社後、未上場企業・オーナー経営者の資産運用コンサルティングに従事。
2015年に当社入社後はM&Aアドバイザリーとして事業承継に関わる数多くの仲介実績を有する。

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