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スマートフォンやインターネット、動画配信、クラウドサービスの普及により、電気通信業界は社会基盤としての役割をますます強めています。一方で、5GやIoT、AIといった新技術の登場により、通信事業者には迅速な対応と高い柔軟性が求められています。
こうした背景のもと、経営資源の補完や市場拡大、技術獲得を目的としたM&Aが重要な成長手段として注目されています。本記事では、電気通信業界の構造やM&Aの活用メリット、成功のカギとなるポイントを解説します。
本記事では、電気通信業界のM&A動向や、M&A活用のメリット、具体的な事例、成功のポイントなどについて、詳しく解説します。
電気通信業界の概要
電気通信業界は、現代社会の情報インフラを担う重要な産業です。ここでは、業界の基本的な定義と特色について見ていきましょう。
電気通信業界の定義
電気通信業者とは、通信機器の通信をつなぐための回線や機器本体を提供し、社会の情報インフラを支える事業者です。電気通信事業法では、電気通信設備を用いて他人の通信を媒介、または他人の通信の用に供することを業とする事業者と定義されています。その主な役割は以下の3つです。
- 移動通信:携帯電話やスマートフォンなどのサービス
- 固定通信:光回線などのサービス
- ISP(インターネットサービスプロバイダー):インターネット接続サービス
このように、「音声を運ぶ」「データを運ぶ」といった性質を持つことから、通信キャリアや通信回線事業者と呼ばれることもあります。
なお、電気通信業を行うには、総務省への届出や登録が必須です。国民生活や経済活動を下支えし、公共の福祉確保が法的にも目的として定められている、重要な業界といえるでしょう。
電気通信業界の特色
電気通信業界の特色として、新規参入の難しさが挙げられます。電波の利用に国の認可や免許料が必要となることに加え、通信網の構築には莫大な初期投資が欠かせないためです。
一方、MVNOなどの登場により、近年は競争の活発化も見られます。また、スマートフォンやインターネット、動画配信、クラウド、IoTなどを複合的に提供するサービス形態が主流になりつつあります。
さらに、5Gや6Gといった次世代通信の登場に代表される技術革新の速さも、この業界ならではです。企業には柔軟な対応が求められるでしょう。
電気通信業界のM&A動向・市場規模
日本の電気通信業界は、2023年度の売上高が約15.2兆円と、大きな市場規模を持っています。
サービス別の売上構成を見ると、データ伝送(固定・移動)が約55.8%(8.5兆円)、音声伝送(固定・移動)が約27%(4兆円)、その他サービス・IDCが15.8%(2.4兆円)を占めています。
インフラ面では、光ファイバ整備率99.84%、5G人口カバー率98.1%と国内ほぼ全域で高速通信環境が整備されており、都市部だけでなく地方にも普及が進んでいる状況です。ブロードバンド契約数は、2024年末時点で固定系が4,699万件、5G携帯電話が1億709万件に達し、特に5G契約数は前年比23.8%増と著しく成長しています。
また、事業者数は26,642者(2024年度末時点)と増加傾向にあり、業界全体が拡大していることがわかります。市場成長の主な要因は、5G拡大、IoT・AI・クラウド需要の高まり、ストリーミングやモバイルデータ流通量の増加といった技術革新です。
このように電気通信業界全体で、デジタル化と高速化、サービス多様化、競争増と社会基盤の強靱化が進展しています。通信自由化に伴い、参入のハードルが下がったことで、新規プレイヤーが増加し、競争が激化しています。
また、災害対応やセキュリティといった社会的課題への高い対応力も、今後さらに求められるでしょう。
電気通信業界でM&Aを活用するメリット
電気通信業界におけるM&Aの活用は、業界独自のメリットを数多く生み出します。代表的なメリットは、以下のとおりです。
- 技術革新とインフラ強化による競争力向上が期待できる
- 政策規制からの負担分散が可能になる
- 買い手企業のブランド・顧客基盤を活用できる
一つずつ見ていきましょう。
技術革新とインフラ強化による競争力向上が期待できる
電気通信業界では、5G、IoT、クラウドなど、新たなテクノロジーが次々と登場しており、技術革新のスピードが非常に速いです。M&Aを通じて最新技術やノウハウを獲得すれば、市場での競争力を大きく高められます。
また、地域インフラの統合や通信網の拡充によって、サービス品質やコスト削減を同時に実現できるのも、本業界特有のメリットです。
政策規制からの負担分散が可能になる
電気通信事業は、政府の規制や政策転換によって大きく影響を受ける業界です。新たな規制に対応する際には、システム改修や設備投資など多額のコストが伴います。
M&Aによって事業規模を拡大すれば、スケールメリットによって、規制に対応するためのコストを抑えられます。加えて、複数のサービス領域や地域に展開することでリスクを分散することも可能です。
買い手企業のブランド・顧客基盤を活用できる
M&Aによる事業承継を実施すれば、売り手企業は買い手企業のブランドや顧客基盤を活用でき、安定した経営が望めるようになります。また、単独では難しい投資や市場開拓への挑戦も可能です。
電気通信業界のM&A事例
電気通信業界では、技術力強化や事業領域拡大を目的としたM&Aが数多く実施されています。ここでは、代表的な事例を通じて、業界の再編動向と各社の戦略を確認していきましょう。
SBペイメントサービス株式会社とITリアライズ株式会社
2025年4月、ソフトバンクグループのSBペイメントサービス株式会社は、金融アプリ・IT支援を手がけるアイ・ティ・リアライズ株式会社の全株式を取得し、完全子会社化しました。
このM&Aの狙いは、両社の技術やサービスを融合することで、決済・金融両面からキャッシュレス化やDX推進を加速させることです。特に、個人事業主や中小企業のデジタル化や金融機関支援に焦点を当て、導入コストや人材不足といった課題解決を目指します。
株式会社セキュアと株式会社ジェイ・ティー・エヌ
2024年1月、株式会社セキュアは、株式会社ジェイ・ティー・エヌの全株式を取得し、子会社化しました。
売り手となった株式会社ジェイ・ティー・エヌは、神奈川県横浜市の電気通信工事会社です。監視カメラを含む電気通信・電気設備工事を手がけ、数多くの専門資格者と施工ノウハウを保有しています。一方、買い手となった株式会社セキュアは、事業拡大に積極的な営業人材の採用や育成を進めています。
このM&Aにおけるセキュアの狙いは、施工分野の慢性的な人手不足リスクを解消し、ノウハウや専門性を獲得することです。株式会社ジェイ・ティー・エヌも上場企業グループの傘下に入ることで、採用強化や新規顧客獲得で事業拡大を図ります。
エクシオグループ株式会社と北日本通信株式会社
2023年11月、エクシオグループ株式会社は、北日本通信株式会社の全株式を取得し、連結子会社化しました。
北日本通信は岩手県盛岡市を拠点に、公共工事・通信・電気・土木分野で実績を持つ企業です。エクシオグループ株式会社はこのM&Aを通じて、北日本通信株式会社の公共工事のノウハウと自社のICT技術を融合し、東北地方におけるインフラ事業の強化をめざします。
住友電設株式会社と株式会社インフォテック
2025年5月、住友電設株式会社は、調査設計工事会社の株式会社インフォテックの全株式を取得し、子会社化を決定しました。
株式会社インフォテックは、大阪府を拠点に再生可能エネルギー発電所の自営線調査設計や電力会社の管路土木工事調査設計などを展開している企業です。
このM&Aは、住友電設株式会社が株式会社インフォテックの経営を支援するとともに連携強化を進め、急成長する再生可能エネルギー関連プロジェクトにワンストップで対応できる体制を整えることを狙いとしています。これにより、労働力確保や品質向上、社会貢献の実現を目指す方針です。
株式会社北弘電社と株式会社きんでん
2025年3月3日、株式会社きんでんは、三菱電機株式会社が保有していた株式会社北弘電社の全株式を譲り受けることで合意しました。
株式会社北弘電社は、北海道を中心に電気設備・電力関連工事などを手がける企業です。1951年に設立され、確固たる顧客基盤と豊富な技術人員を有しています。
今回の譲渡により、株式会社きんでんは北海道での事業基盤を強化し、受注の拡大を目指します。一方、三菱電機株式会社は重点成長事業に資源を集中する戦略の一環として譲渡を決定しました。
M&A成功のポイント・注意点
電気通信業界でのM&Aを成功させるためには、以下のポイントを押さえましょう。
- 相手選びからPMIに至るまで綿密なシナジー設計を行う
- 許認可の継続性や法令遵守体制を確認する
一つずつ解説します。
相手選びからPMIに至るまで綿密なシナジー設計を行う
電気通信業界のM&Aは、5Gやクラウドをはじめとした最先端技術や通信インフラの統合が、競争力強化の大きな鍵を握ります。M&Aでは、相手企業が持つ独自の技術やノウハウが、自社の事業とどのような相乗効果を生むのかを見極めることが重要です。
また、通信サービスは災害時や緊急時にも社会を支えるインフラとしての役割を担っています。万が一、M&Aを機にサービスの質が低下したり、提供が一時的にでも途絶えたりすれば、ユーザーや社会へ甚大な影響が及ぶ可能性があります。
そのため、事前のシナジー設計だけでなく、M&A後のPMI(統合プロセス)を丁寧に進めることが不可欠です。計画的かつ実行力のあるPMIは、M&Aの成果を最大限に高めてくれるでしょう。
許認可の継続性や法令遵守体制を確認する
電気通信業界は、その公共性の高さから、電波政策やサービス提供義務、個人情報保護、通信の秘密といった幅広い行政規制の対象となっています。そのためM&Aにおいては、許認可の継続性や法令遵守体制の確認が欠かせません。
まずはデューデリジェンスを通じて、許認可や法令遵守の状況、情報管理体制などを丁寧に確認しましょう。それに加えて、引継ぎ後の体制整備や運用計画も視野に入れる必要があります。
技術資産や契約、規制対応状況を精査し、想定されるリスクを可視化したうえで、引継ぎ後の運用方針まで見通すことがM&A成功のポイントです。
課題とM&A活用の展望
電気通信業界では、5Gやクラウドの普及によりM&Aの重要性が一段と高まっています。技術獲得やエリア拡大を目的とした再編が進む一方で、サービスの安定提供や法令対応といった課題にも目を向けなければなりません。
特に、通信は社会インフラであるため、M&Aにあたっては許認可や情報管理体制の引継ぎを慎重に行う必要があります。成長と責任のバランスをどう保ち、持続可能な産業構造を築いていくかが、今後のM&Aで問われていくでしょう。
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よくある質問
- 電気通信業界でM&Aが増えている背景は?
- 5Gやクラウドなどの技術革新や、競争激化に対応するため、M&Aが事業成長や再編の手段として注目されています。
- 電気通信業界のM&Aで期待されるメリットは?
- 技術力の獲得、インフラの統合、規模の経済の実現、サービス提供力の強化などが挙げられます。
- 電気通信業界のM&Aで注意すべき点は?
- 許認可の継承、法令遵守体制の確認、PMIの設計と実行が重要です。
- どのような企業が電気通信M&Aの対象となりやすいですか?
- 地域密着型の通信事業者、専門技術を有する設備工事会社、ITインフラ関連事業者などが対象となりやすいです。
- 電気通信業界のM&Aを成功させるポイントは?
- シナジー設計とPMI、法令対応、顧客・従業員への影響配慮などをバランスよく設計することが重要です。

