SaaS業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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インターネットを介してソフトウェアのサービスを提供するSaaS業界では、新規参入や事業拡大、新技術の獲得や優秀な人材の確保などを目的とするM&Aが活発に行われています。

そこで本記事では、SaaS業界の基礎知識について解説したうえで、M&Aの動向や事例、活用するメリット、注意すべきポイントなどを紹介していきます。

M&Aの前に押さえておきたいSaaS業界の情報

まずはじめに、SaaS業界の基礎知識として、定義や代表的な企業、特色などについて解説します。

SaaS業界の定義

SaaSとは、インターネットを介してソフトウェアを提供するサービスのことです。提供するサービスのジャンル自体は問いません。

SaaS業界ではサブスクリプションモデルを採用し、継続的な利用料金収入で安定した売上の確保を目指すことが一般的です。契約者数の増加や上位プランの利用者数の増加に伴い売上も増加することから、他の業界と比べ収入が安定しており、設備投資や開発を計画的に進めやすいといえます。

代表的な企業

SaaS業界における代表的な企業としては、以下の4社が挙げられます。

  • ・Google LLC
  • ・Amazon.com, Inc.
  • ・Microsoft
  • ・サイボウズ株式会社

SaaS業界の特色

SaaS業界の特色としては、前述のとおり、サブスプリクションモデルの料金体系を採用していることです。顧客の課題解決に貢献するためのサブスクリプションサービスを提供し、いかに長く継続して自社のサービスを利用してもらえるかが収益化のカギとなります。

したがって、他の業種以上に、自社のサービスに対する顧客満足度を重視する傾向にあります。こうした理由から、企業内でのフィードバックやユーザーのレビューをもとにシステムの改修を常に繰り返しながら、サービスを発展させています。

またSaaS市場は世界的に高い成長率を維持しており、テレワークの普及や政府のデジタル化推進もあり、今後も一層の成長が見込まれるでしょう。

SaaS業界の市場規模・動向

世界のパブリッククラウドサービス市場規模(売上高)の推移及び予測

引用:令和5年 情報通信に関する現状報告の概要

世界のパブリッククラウドサービスの市場規模は順調に伸び続けており、2021年には40兆円を超えました。このような背景のもと、Saas業界も増加傾向にあり、市場全体が安定的・継続的に拡大傾向にあります。

しかし、市場シェアを見て見ると、Microsoft、Amazon、IBM、Salesforce、Googleの米国5社で市場の約半分が占められており、寡占化が進んでいる状況です。

一方、日本国内においては、パブリッククラウドサービス市場が2022年には2兆1,594億円(前年比29.8%増)にまで増加する見込みとなっており、この傾向は当分の間続くものと考えられています。

こうした背景には、新型コロナウイルス感染症の影響によるオンプレミス環境からクラウドへの移行が進んでいることがあり、今後も更なる市場の拡大が予測されています。

SaaS業界のM&A事例

冒頭で述べたように、SaaS業界では、先端技術の獲得や優秀な人材確保をはじめさまざまな目的でM&Aが活発に行われています。そのなかでも特に有名なM&A事例が、以下の5つです。

fonfunとゼロワン

2024年3月、株式会社fonfunは、株式会社ゼロワンのノーコード業務アプリ開発Saas事業を譲り受けたことを発表しました。

fonfunは、インターネット対応携帯電話向けのサービスを中心にさまざまなコンテンツサービスの提供を行う会社です。fonfunは、ゼロワン社が提供するアプリによって、顧客のDX推進におけるシステム開発の生産性を大きく向上することを期待し、譲受を実施することとなりました。

マネーフォワードとスマートキャンプ

2019年11月、株式会社マネーフォワードは、スマートキャンプ株式会社の子会社化を実施したことを発表しました。

マネーフォワードは、個人向け・法人向けにインターネットを介して金融系のWebサービスを提供しています。また、両社はいずれもSaas事業を展開し、設立年数も近い企業同士です。

マネーフォワードはこのM&Aにより、両社のノウハウや経営資源を統合することでグループ全体の企業価値向上を進めると共に、saas業界全体の活性化を目指します。

Shippioと協和海運

2022年9月、株式会社Shippioは、協和海運株式会社の全株式を取得し、完全子会社化を実施したことを発表しました。

Shippioは、国際物流領域においてデジタルフォワーディング事業を展開しています。一方の協和海運は通関事業において業歴60年を超える会社です。

Shippioは、協和海運株式会社を傘下に迎え入れることで、通関事業への参入と通関業務のデジタル化を目指します。

カケハシとPharmarket

2021年3月、株式会社カケハシは、株式会社Pharmarketの発行済み株式を取得しました。

カケハシは、調剤薬局向けに薬局体験アシスタント「Musubi」を提供しています。一方のPharmarketは、薬局の不動在庫の買い取りおよび販売による医薬品二次流通事業の運用と、薬局における対人業務サポートシステムを開発する会社です。

カケハシは、今回の株式譲渡により、薬局の課題解決と患者へのサービスの質の向上を目指します。

帝人と3Sunny

2022年10月、帝人株式会社は、株式会社3Sunnyの株式を取得し、子会社化を実施することを発表しました。

帝人はヘルスケア事業を展開する会社です。一方の3Sunnyは、入退院調整業務の支援サービス「CAREBOOK」の提供等の医療介護事業を展開する会社です。

このM&Aの狙いは、帝人が持つ医療業界におけるネットワークやノウハウと、株式会社3Sunnyの「CAREBOOK」を融合することで、新たなビジネスモデルの創出および医業・介護分野での社会貢献を実現することです。

SaaS業界でM&Aを活用するメリット

SaaS業界でM&Aを活用する代表的なメリットとして、以下の2点を紹介します。

  • ・事業成長の時間を大幅にカットできる
  • ・シナジー効果を得られる

それぞれ見ていきましょう。

事業成長の時間を大幅にカットできる

SaaS業界でM&Aを活用して得られる1つ目のメリットは、事業を立ち上げて成長させるまでの時間を大幅にカットできることです。

SaaSのノウハウや経験の無い企業が一から事業を立ち上げると、多くの時間と労力がかかるうえに、成功の保証もありません。しかし、既存のSaaS企業を買収できれば、事業を成長させるための時間を大幅に短縮し、即座に収益を確保することが望めます。

シナジー効果を得られる

SaaS業界でM&Aを活用して得られる2つ目のメリットは、M&Aによって得られるシナジー効果です。例えば、以下のような効果が期待できます。

  • ・事業統合による市場シェア拡大(販売シナジー)
  • ・人材・ノウハウの増強による生産性向上(生産シナジー)
  • ・投資・研究効果の共有(投資シナジー)
  • ・他社の経営ノウハウの取り込み(経営シナジー)

M&Aを成功させてこれらの相乗効果を実現できれば、自社のSaaSビジネスを効果的に拡大することが可能です。

特に、市場拡大が著しいSaas業界では、両社の経営資源を融合させることにより革新的なテクノロジーが生まれる可能性が大きいです。他社との差別化につなげられれば、市場における大きな強みとなることは間違いありません。

SaaS業界におけるM&A成功のポイント

SaaS業界でのM&Aを成功させるためには、業界動向を正確に把握しておくことが重要です。国内外の市場動向やニーズの変動を確実かつ正確にキャッチしたうえで、自社にとって最適なM&Aスキームや取引相手の見極めを行うことが成功のカギとなります。

また、Saas業界の拡大やIT技術の発展が進めば進むほど、セキュリティやプライバシー保護の重要性は高まります。そのため、相手企業を選定する際には、「顧客データの管理は徹底しているか」「不正アクセスのリスクは無いか」など、セキュリティ体制に関して事前にしっかりとリサーチしておくことも大切です。

SaaS業界における今後のM&Aの課題と展望

SaaS業界は急成長を続けており、今後も成長傾向は継続すると見込まれています。業界全体がスピーディに拡大するなか、スタートアップ企業の資金調達も増加しており、2019年には総額で744億円の調達額となりました。

SaaS業界ではシナジー効果や新規参入を目的としたM&Aが活発になっており、今後もますます増加していくと見込まれます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 部長山﨑 研
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 部長
山﨑 研

大手証券会社にて上場・未上場企業オーナーの資産運用およびIPO支援・M&A支援に従事。
2011年から当社に参画し、現在は社内トップクラスのM&A成約実績を重ねている。

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