空運業界 市場規模や買収・売却事例について解説

空運業界市場規模や買収・売却事例について解説のメインビジュアルイメージ

更新日

  • #業種別M&A動向
  • #空運業界 M&A

空運業界は、国内外の人と物資の移動を支える重要な産業ですが、近年の経済変動や新型コロナウイルスの影響により、大きな転換期を迎えています。

本記事では、空運業界のM&A動向について、市場規模や注目すべき事例を紹介すると共に、M&Aを成功させるためのポイントや今後の展望について解説します。

M&Aの前に押さえておきたい空運業界の情報

M&Aについて解説する前に、まずは空運業界の定義や特色、主要企業といった基礎知識を紹介していきます。

空運業界の定義

空運業とは、航空法に従い他人の需要に応じて航空機を使用して、有償で旅客・貨物・郵便物を運送する事業のことです。

空運業社のなかには、航空測量やGIS(地理情報システム)のような情報システムを取り扱っている会社もあります。空運業には定期航空・不定期航空の種別があり、国外へ飛ぶか否かによって国際航空・国内航空に分けられます。

なお、ここでの空運業の定義としては、他人の依頼に応じて輸送する航空運送事業を指すものとして、軍用航空や産業航空は含みません。

代表的な企業

空運業界で代表的な企業は以下のとおりです。

  • ・ANAホールディングス株式会社
  • ・日本航空株式会社
  • ・スカイマーク株式会社
  • ・株式会社スターフライヤー

これらの企業は、国内外の航空ネットワークを支える重要な役割を果たしています。

空運業界の特色

空運業界は、メガキャリアと呼ばれる大規模空運事業者と、LCC(ローコストキャリア)と呼ばれる格安空運事業者に分類されます。

メガキャリアの大きな特徴は、世界各都市や国内における豊富な運航路線を持ち、顧客に充実したサービスを提供していることです。国内でも大きなシェアを誇っており、FSC(フルサービスキャリア)やFSA(フルサービスエアライン)と呼ばれることもあります。国内では、全日本空輸株式会社(ANA)と日本航空株式会社(JAL)がメガキャリアと呼ばれる大規模空運事業者にあたる会社です。

一方の、LCC(ローコストキャリア)の大きな特徴は、航空券の安さです。サービスの簡略化や深夜便などの活用、オンライン予約の利用などにより航空券の安さを実現しています。国内で利用できる代表的な格安空運事業者は、Peach Aviation株式会社(ピーチ)やオーストラリアに本社をおくジェットスター航空(ジェットスター)などが挙げられます。

空運業界のM&A動向・市場規模

空運業界の市場規模は、近年大きな変動を経験しています。

旅客輸送は国内線・国際線共に、リーマンショックなどによる世界的景気後退、東日本大震災の発生による国内景気の縮小により減少傾向にありました。その後、LCCの参入や訪日外国人旅行者の増加等により増大傾向に転じ、平成30年度には1億人を突破しています。

しかし、2020年の世界的な新型コロナウイルス流行の影響で大幅に減少し、国内線は4,674万人で対前年比56.2%減、国際線は436万人で対前年比81.4%減と、特に国際線の下げ幅が大きくなりました。2022年に入ると、国内線、国際線共に回復傾向に転じ、2023年には国内線は10,397万人で対前年比30.7%増、国際線は1,625万人で対前年比139.2%増となっています。

国内航空貨物輸送については、新型コロナウイルスの影響を受けたものの、現在は回復傾向です。一方、国際航空貨物輸送の市場も回復しましたが、現在は中国経済の停滞の影響で再び減少傾向にあります。

このような市場環境の変化を背景に、空運業界ではM&Aの動きも活発化しており、今後の業界再編に注目が集まっています。

航空旅客輸送量推移

空運業界のM&A事例

空運業界では、経営基盤の強化や競争力向上を目指し、国内外でさまざまなM&Aが行われています。ここでは、注目すべき5つの事例を紹介します。

北日本航空とFGP

2019年、株式会社FGPは北日本航空株式会社の全株式を取得し、完全子会社化しました。北日本航空は主に離島にある病院へのチャーターフライト事業を展開する企業です。

FGPは中長期的な経営戦略として企業価値の向上を掲げており、北日本航空を子会社とすることで社会貢献の実現、そして富裕層顧客に向けたプライベートジェット事業展開も視野に入れた事業拡大を目指すとしています。

アシアナ航空と大韓航空

2020年、大韓航空はアシアナ航空を買収しました。この買収はアシアナ航空の経営状況の悪化で、韓国政府が既に公的資金を投入していることが背景にあります。そのため政府主導で1社にまとめることで、効率的に支援をしていくことが求められました。

買収により「規模の経済」が働きやすくなり、コスト削減につながることが期待されています。

エールフランスとKLMオランダ航空

2003年、エールフランスとKLMは、共同持株方式による経営統合を実施しました。KLMは欧州における航空会社のパートナーを模索しており、強力なパートナーとしてエールフランスを選びました。このとき、エールフランスは業績が好調で、さらにKLMをわずか800億ユーロで買収できる状況です。

統合により、両社の強みを活かした相乗効果が期待されています。

デルタ航空とノースウェスト航空

2008年、アメリカのデルタ航空とノースウエスト航空は合併し、世界最大規模の航空会社が誕生しました。

豊富な路線網とサービスを提供することで、世界中の都市へのアクセス向上を目指すとしています。この合併効果は、年間で20億ドル以上とされており、大規模な収益性を見込んで実施に踏み切りました。

ユナイテッド航空とコンチネンタル航空

2010年、ユナイテッド航空とコンチネンタル航空が合併し、こちらも世界最大規模の航空会社となりました。

両社は、経済不況とジェット燃料の高騰をうけ、いずれも過去に破産を経験しています。会社更生法の適用から脱して業績が持ち直してきた後、今後の競争力強化を目指しての合併となりました。この合併により、より強固な経営基盤と幅広いサービス提供が可能になると期待されています。

空運業界でM&Aを活用するメリット

空運業界におけるM&Aの大きなメリットは、まずコストの削減が挙げられます。規模が拡大することで、大量仕入れが可能になり、燃料や部品等の調達コストの引き下げが可能となります。

加えて、相手企業の経営資源を活用しながら大規模な設備投資が可能となるため、自社の経営基盤の確立および生産能力の増強を図ることが可能です。また、自社と異なるエリアで就航を行っている企業を取り込めば、エリア拡大により利用者数の獲得が期待できます。

そして、一方の航空会社のグループに入ることで、マイルやポイント等のサービスを共有できることから、利用者へのメリットも大きくなり、顧客満足度の向上にもつながります。

空運業界におけるM&A成功のポイント

空運業界のM&Aにおいては、相手企業の経営分析を徹底して行うことが大切です。航空機や設備、燃料にまで大きな金額が動くことが常である空運業界では、相手企業が債務を抱えているケースも少なくありません。

また、騒音などによる地域住民とのトラブルに発展している可能性もあるため、見えないリスクについてあらかじめしっかりと調査する必要があります。さらに、パイロットやメカニックなどの所属人数や彼らの持つスキル、設備や航空機の寿命や傷みなど、相手企業が有する経営資源についても確認しておきたいポイントです。

特に、相手企業の有する航空機を引き継ぐことを期待してM&Aに踏み切った結果、管理がずさんで修理や買い替えが必要となってしまった場合、M&A後に予期せぬコストが発生するリスクがあります。

空運業界における今後のM&Aの課題と展望

コロナを経て、リモート中心の働き方になった今、飛行機の利用者数は以前の水準にまでは戻らないと言われており、空運業界は事業形態の転換を迫られている状況です。さらに高騰が続く燃料費確保のために人件費や経費を抑えながらも、人手不足を解決するために、新たな人材を確保しなければならないという課題を抱えています。

これらの状況を踏まえると、今後の空運業界において、人材難を乗り越えるためのDX化やIT技術の導入、空運業以外の市場開拓といった変化が生じる予想です。M&Aは大きな転換期を迎えた空運業界における有効な解決策になると見込まれます。

企業間の統合や提携を通じて、新たな技術やサービスの導入、効率化の推進、そして新規市場への参入が可能となり、これらの課題に対応していくことが期待されます。

M&Aキャピタルパートナーズは、豊富な経験と実績を持つM&Aアドバイザーとして、お客様の期待する解決・利益の実現のために日々取り組んでおります。
着手金・月額報酬・企業評価レポート作成がすべて無料、秘密厳守にてご対応しております。
以下より、お気軽にお問い合わせください。


ご納得いただくまで費用はいただきません。
まずはお気軽にご相談ください。

監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 部長菊池 尚人
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 部長
菊池 尚人

大手証券会社にて未上場企業(大手・中堅)の資産運用や富裕層の資産運用コンサルティングに従事。
当社入社後、M&A案件開発、M&Aアドバイザリー業務に従事。主に、物流・運送業界、飲食・ケータリング業界、建設コンサルタント業界を手掛ける。

詳細プロフィールはこちら

M&A関連記事

M&Aへの疑問

M&Aへの疑問のイメージ

M&Aに関する疑問に市場統計や弊社実績情報から、分かりやすくお答えします。

業種別M&A動向

業種別M&A動向のイメージ

日本国内におけるM&Aの件数は近年増加傾向にあります。その背景には、企業を取り巻く環境の変化があります。

M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由

創業以来、報酬体系の算出に「株価レーマン方式」を採用しております。
また、譲渡企業・譲受企業のお客さまそれぞれから頂戴する報酬率(手数料率)は
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」となっております。