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物流・輸送業界は、製品や原材料、人の移動という重要なインフラを提供する業界です。輸送手段は陸運、海運、空運があり、これらを組み合わせることで国内外での物・人の輸送の効率化が図られています。
物流・輸送業界では、EC市場の拡大やグローバル化に伴い、物流の迅速化や効率化がますます求められています。環境への配慮や人手不足も課題です。本記事では、物流・輸送業界の概要と関連業種それぞれの特徴を解説します。
目次
物流・輸送業界の特徴
物流・輸送業界とは、商品や資材を消費者や企業に届けるために、輸送、配送、倉庫管理、倉庫の貸し出しなどを行う業界のことです。本記事では、人を運ぶ旅客輸送業界も含めています。
物流・輸送業界は運輸業界とも呼ばれます。令和2年7月の国土交通省の調査によると、運輸業界の市場規模は約38兆円となっており、就業者数は全産業の4%を占める約333万人です。
物流・輸送業界では2024年4月以降、「働き方改革関連法」の影響で労働環境の改善が進行中です。一方で、ドライバー不足による業績への影響が課題となっており、自動運転技術や物流のデジタル化により効率化を図り、持続可能な輸送体制を構築することが求められています。
また、環境負荷を軽減するために、EVトラックや再生可能エネルギーを使用した輸送の導入が注目されています。
物流・輸送関連業種一覧
物流・輸送業界には、さまざまな関連業種が存在します。そのなかでも特に重要で代表的な業種といえるのが、以下の8業種です。ここからは、それぞれの特徴を解説します。
- 物流(運送会社)
- 鉄道業
- バス会社
- タクシー会社
- 海運業
- 空運業
- 倉庫業
- 郵便業
- フードデリバリー
物流(運送会社)の特徴
物流業は、輸送や配送を行う「運送業」と、商品や資材の保管を行う「倉庫業」に大きく分かれます。運送業はさらに、トラック運送、宅配便、鉄道輸送、海運、空運など、使用する輸送機関によって細分化されています。
物流業は、製造業や流通業において「輸送・荷役・流通加工・梱包・保管・情報管理」などの役割を担っており、物流業単独では完結しません。これは物流業の大きな特徴です。また、多重下請けの構造をとり、典型的な労働集約型産業である点も特徴の一つです。
物流業は現在、自動運転技術や物流ロボティクスの導入が進んでいますが、人手不足は深刻化しており、さらなる効率化が課題となっています。
鉄道業の特徴
鉄道業は、鉄道事業法に従い、以下の車両や設備などを用いて経営を行います。
- 普通の鉄道(2本レール構造)
- モノレール
- 案内軌条式鉄道(ゴムタイヤ走行)
- トロリーバス(架線による電動バス)
- ケーブルカー
- リニアモーターカー
鉄道業の特徴としては、貨物や旅客の輸送だけでなく、駅を中心に、ホテル、不動産、小売業、レジャー事業などを展開している企業が多く存在する点が挙げられます。また、インフラ整備の経験を活かして海外展開を進める企業も多く、グローバルな活動も活発です。
近年では鉄道のエコ技術や省エネへの取り組みも注目されており、持続可能な輸送手段としての役割も重要視されています。
バス会社の特徴
バス業は、道路運送法に基づく旅客自動車運送事業の一環として、バスの運行を行う事業のことです。運行形態は主に、決められたルートと時刻で運行される「乗合バス(路線バス)」と、特定の目的地に向けて貸し切られる「貸切バス(観光バス)」の2種類があります。大型のバスを運転するには、「大型自動車第二種免許」が必要です。
バス会社では近年、若手や女性の雇用促進が積極的に進められていますが、未だ運転手の多くは男性が占めており、これが業界の特徴といえます。
また、環境への配慮から、EVバスやハイブリッドバスの導入が進んでおり、持続可能な交通手段への移行が課題となっています。
タクシー会社の特徴
タクシー業は、10人以下の旅客を自動車で輸送する事業を指します。タクシーの運行形態は、主に以下の三つに分類されます。
- 法人タクシー:法人が車両を用意し、タクシー運転手を雇用する営業形態
- 個人タクシー:個人でタクシー事業の許可を得て開業する営業形態
- 福祉タクシー:障がい者等の運送に業務の範囲を限定して許可を得る営業形態
近年では、スマートフォンアプリによる予約システムや、クレジットカードやQRコード決済の導入が進み、IT化が加速しています。また、環境配慮の観点から、ハイブリッド車やEVタクシーの導入も積極的に行われています。
海運業の特徴
海運業とは、海上を利用して旅客や貨物の輸送、または船舶の貸し渡しを行い、利益を得る事業のことです。国内の港同士を結ぶ海上輸送は「内航海運」、国外との輸送は「外航海運」と呼ばれています。
日本は四方を海に囲まれていることから、世界でも有数の海運国です。世界の海上輸送量の約1割を日本の海運業者が担っています。
内航海運市場は現在、人口減少や船舶供給規制の終了など、事業環境の変化に直面しています。海洋汚染防止条約やGHG(温室効果ガス)削減戦略といった、環境規制への対応も必要です。新しい規制や条約が次々と追加されるなか、いかに迅速かつ柔軟に対応できるかが、海運業全体の課題といえるでしょう。
また近年は、自動運航技術や省エネ型の船舶の開発が進められており、海運業界でも技術革新が期待されています。
空運業の特徴
空運業とは、航空法に基づいて航空機を使用し、他人の需要に応じて有償で旅客や貨物、郵便物などを運ぶ事業のことです。
空運業には定期航空と不定期航空があり、運航範囲によって国際航空と国内航空に分かれます。また、事業者は大手の「メガキャリア」と、格安航空会社「LCC(ローコストキャリア)」に分類されています。
旅客輸送は、リーマンショックなどをきっかけとした世界的な景気後退や、東日本大震災に起因する国内の経済縮小の影響を受け、一時的に市場規模が減少しました。しかし、LCCの参入や訪日外国人旅行者の増加により回復し、平成30年度には旅客数が1億人を突破しました。
近年は、空港のハブ化や地域間連携の強化が進められており、地方空港の利便性向上が注目されています。なお、貨物輸送はコロナ禍以前より減少傾向が続いていましたが、現在は回復傾向にあります。
倉庫業の特徴
倉庫業とは、顧客から預かった物品を倉庫で保管する受託事業のことで、運送業と並んで物流の中心的役割を担っています。
倉庫業は単なる場所の提供にとどまりません。検品、在庫管理、流通加工、ピッキング、配送、さらにはインボイス作成などの通関業務や受発注データの管理まで、物流の多くのプロセスに関与しています。
人手不足の深刻化は、倉庫業でも大きな課題です。そのためIoTによる倉庫管理の効率化や、AIを用いたピッキング作業の自動化など、DXの加速や内製化が求められています。また、短納期や柔軟な対応など、顧客ニーズにどこまで応えられるかが競争力強化のカギとなっています。
郵便業の特徴
郵便業とは、郵便物の引き受けや収集、区分や配達などを主として行う事業のことです。平成15年に施行された信書便法により、一部が信書便事業として民間事業者にも市場開放されました。
郵便業は、以下の二つの事業に分類されています。
- 一般信書便事業:一般的な郵便
- 特定信書便事業:大型、急送、高付加価値のもの
一般信書便事業は参入障壁が高いことから、日本郵政グループが独占的に運営しています。
近年はデジタル化の進展やメール便の普及により、郵便物の取扱量は減少しています。新しいサービス展開や事業の効率化が、郵便業全体の急務といえるでしょう。
フードデリバリーの特徴
フードデリバリーは、顧客が購入した飲食店の商品を指定場所まで届けるサービスです。デリバリー事業を行うには、代行サービスに加盟するか、自社でサービスを展開する方法があります。
以前は出前寿司や宅配ピザなど、飲食店自身が電話注文を受け、料理をつくり、配達をする形が主流でした。現在は、インターネットやスマートフォンの普及により、Uber EatsなどのWebサイトやアプリから注文する形が一般的になっています。コロナウイルス流行時には市場が急拡大していたものの、現在では落ち着きを見せている状態です。
まとめ
物流・輸送業界は、運送会社や鉄道業、海運業、空運業、倉庫業などが連携し、物資や人の効率的な移動を支えています。技術革新やデジタル化も積極的に行われており、各業種で業務の効率化が図られています。
しかし、人手不足や環境問題といった課題を解決するにはいたっていません。自動化技術や持続可能な物流システムの導入など、今後もさらなる改革が求められます。
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