更新日
- #業種別M&A動向
- #PR業界 M&A
販促・PR業界は、デジタル化の進展とともに、大きな変化と変革を遂げている業界です。
本記事では、販促・PR業界の基本情報についてまとめたうえで、M&Aの動向や、近年の事例、M&Aを実施するメリット、成功させるためのポイントなどを解説していきます。
M&Aの前に押さえておきたい販促・PR業界の情報
M&Aについて触れる前に、販促・PR業界の定義や、代表的な企業、業界ならではの特徴といった、基本情報からおさえていきましょう。
販促・PR業界の定義
販促会社とは、企業が提供する製品やサービスの認知拡大サポートを行い、顧客の購買につなげる事業を行う会社のことです。これらの会社は、製品やサービスの魅力を最大限に引き出し、消費者に伝える役割を果たします。
一方、PR・販促業界の事業は多岐にわたります。各種メディア広告媒体の提案・取次から、セールスプロモーションやコンベンションを目的としたイベント等の企画・運営、展示の企画から施工までの一括請負、さらには各種PR支援等が含まれます。これらの目的は、企業のブランド価値を高め、製品やサービスの販売を促進することです。
代表的な企業
販促・PR業界の代表は、広告代理店が該当します。なかでも、以下の3社がよく知られている企業です。
- ・株式会社電通グループ
- ・株式会社博報堂DYホールディングス
- ・株式会社ADKホールディングス
販促・PR業界の特色
販促・PR業界は、その特性により「大手総合PR会社」と「専門PR会社」の2つに大別できます
【大手総合PR会社】
大手総合PR会社は、多種多様な職種・業種を対象に、大規模なPR・販促活動を展開しています。これらの企業は、単なる販促活動だけでなく、ブランディングから各メディアに対するマーケティング戦略、リスクマネジメントなど、PR・販促に関わる全体的なサポートを提供し、全方位的なPR・販促サポートが必要な場合に選択されます。
【専門PR会社】
専門PR会社は、美容・コスメ・健康・金融など、特定の業種やサービスに特化したプロモーションを行うことが特色です。これらの企業は、特定の領域における専門的な知識や実績が豊富で、プレスリリース配信や海外へのPRを得意とする企業も存在します。
総合PR会社と専門PR会社のどちらを選択するかは、企業のニーズによります。特定の業界や手法に特化した販促活動を行いたい場合、専門PR会社が選ばれることが多いでしょう。これらの企業は、その領域に深い知識と経験を持ち、効果的なPR・販促活動を提供できます。
販促・PR業界のM&A動向・市場規模
公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会が行った「2023年 PR業実態調査」によると、2022年度のPR業市場の売上規模は約1,479億円となっています。これは前回より33.1%の増加となっており、2013年以降、年によって増減はあるものの、市場全体としては成長傾向にあるといえるでしょう。一方で、2022年度のPR業市場の就業人数は6,622人で、前回より3.1%の減少です。

販促業界では、インターネットやSNS等のデジタル技術の普及に伴い、新たな販促マーケティングスタイルが求められるようになっています。PR・販促業界は競争が激化しており、新技術の導入に伴う大きなコストは、小規模事業者の多くが抱える課題といえるでしょう。
販促・PR会社業界におけるM&Aでは、「大手傘下に入り、資金力を上げるためのM&A」や「デジタル化やAI等の新技術導入のためのM&A」のほか、「人材確保・後継者問題解消のためのM&A」等が多く見られています。
販促・PR業界のM&A事例
PR業界では、企業の成長や競争力強化を目指し、多くのM&Aが行われています。具体的な事例をいくつか紹介します。
ネットマーケティングとMacbee Planet
2023年1月、株式会社Macbee Planetは、株式会社ネットマーケティングの自己株式を除く発行済全株式を株式会社withより取得し、完全子会社化を行うと発表しました。
Macbee Planetは、アナリティクスコンサルティング事業、マーケティングテクノロジー事業等を行っています。一方、ネットマーケティングは、ソーシャル広告やアフィリエイト広告等を利用したプロモーションの戦略立案から、運用支援までのコンサルティングサービスを提供する企業です。
Macbee Planetは、組織の拡大や市場シェアの拡大、顧客のポートフォリオ化を図るため、M&Aを行いました。
コンフィとアジャイルメディア・ネットワーク
2023年1月、株式会社アジャイルメディア・ネットワークは、株式会社コンフィの全株式を取得し、子会社化を行いました。
アジャイルメディア・ネットワークは、インターネットを利用した広告配信代理業や情報提供サービス業、インターネット関連のシステム開発等を行う会社です。一方のコンフィは、TikTokのチャンネル運用事業を行っています。
このM&Aにおけるアジャイルメディア・ネットワークの狙いは、コンフィのTikTok チャンネル運用事業や「Z世代」とのコミュニケーションのノウハウを獲得し、事業領域や顧客を拡大することです。
Gehl Architects Holding社と博報堂DYホールディングス
2022年2月、株式会社博報堂DYホールディングスの戦略事業組織kyuは、Gehl Architects Holding社(デンマーク・コペンハーゲン)の株式を取得しました。
kyuは、博報堂DYグループの中核事業会社と並列の、独立した戦略事業組織です。一方のGehl Architects Holdingは、デンマークのコペンハーゲンを拠点に、公共スペースや都市開発に関わる企画開発、建築設計、デザイン等を行う、都市設計・デザインコンサルティング会社です。
博報堂は、博報堂DYグループ全体の価値提供力の向上と同時に、kyuを中心とした『"専門性"と"先進性"の継続的な取り込み』を行い、海外事業の成長を図るために、このM&Aを行いました。
ニューラルポケットとフォーカスチャネル
2021年11月、ニューラルポケット株式会社は、株式会社フォーカスチャネルの全株式を取得し、子会社化を行いました。
ニューラルポケットは、エッジ端末へのAI実装技術、幅広い物体·人物認識技術、高度な独自AIライブラリ等、最先端画像解析技術を活用した事業を展開する会社です。一方、フォーカスチャネルは、広告業・広告代理店事業等を営んでいます。
このM&Aにおけるニューラルポケットの狙いは、フォーカスチャネルの持つノウハウや営業力を取り込み、より効果的な広告配信を可能にすることで、事業価値向上、事業拡大を実現することです。
ローカルフォリオとリードプラス
2021年9月、株式会社ローカルフォリオは、リードプラス株式会社の吸収合併を行いました。
ローカルフォリオは、新規問い合わせや顧客獲得を目指す企業向けに、少額予算から利用できるWeb広告運用サービスの提供等を行う企業です。一方のリードプラスは、大企業を中心に、デジタルマーケティングの企画から実行・測定・改善までのサービスを提供してきました。
ローカルフォリオの狙いは、企業のデジタルマーケティングを包括的に支援する体制を整え、サービス提供の加速、デジタルマーケティング活用の領域拡大を実現することです。
販促・PR業界でM&Aを活用するメリット
販促・PR業界においてM&Aを実施する主なメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- ・幅広い広告領域を扱える
- ・販促やPR活動を内製化することでコスト削減につながる
- ・インターネットメディアへの新規参入を図れる
それぞれ見ていきましょう。
幅広い広告領域を扱える
M&Aによって、他の広告代理店を買収することで、進出していなかった広告領域への事業展開が可能となります。
PR・販促事業は、紙媒体や看板、テレビCMなど、多くの媒体を対象とします。また、扱う事業範囲も、特定の広告媒体に特化した「専門PR会社」や幅広い領域のPR・販促を行う「総合PR会社」までさまざまです。自社と異なる分野を取り扱う会社を取り込めば、自社の広告手法・取り扱う業種の幅が広がり、多くのニーズに対応できる事業体制を構築できます。
販促やPR活動を内製化することでコスト削減につながる
M&AによってPR・販促活動を内製化すれば、コストの削減が期待できるでしょう。
自社で販促・PR活動を行う仕組みが構築されておらず、外部の業者へ委託していた場合、依頼料や運用手数料等の費用が発生することになります。しかし、M&AによってPR・販促会社を取り込み社内で運用できるようになれば、外注費用を削減でき、大幅なコストカットが期待できるでしょう。また、広告活動のノウハウを自社内に蓄積する仕組みも構築でき、販促・PR活動の持続的な運用も見込めます。
インターネットメディアへの新規参入を図れる
インターネットメディアへの新規参入を図れる点もPR・販促業界におけるM&A実施のメリットの一つです。
PR・販促業界ではデジタル技術の進化に伴い新たなプロモーションスタイルが求められています。しかし、もともと自社が紙媒体やテレビなどのメディアを中心とした販促活動を運営していた場合、急速に市場が拡大している新たにインターネット業界に参入することは容易ではありません。
そこで、M&AによってインターネットコンテンツやIT技術に強みをもつ企業を取り込めば、必要な技術を取得するために掛かる時間やコストを削減できます。そのため、新たにインターネット業界へ参入する際の敷居は低くなり、収益の早期化も期待できるでしょう。
販促・PR業界におけるM&A成功のポイント
PR業界におけるM&A成功のポイントは、いくつかあります。
まず、従来のマスコミ4媒体(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ)等への対応力だけでなく、今後さらにデジタル化が進み高い利益を生むであろうWeb広告等における知識や技術を持つ企業であるかどうかを確認することが重要です。
相手企業がWeb関連に精通しているかどうかは、「新たな技術に対応できる担当者がいるか」、「営業担当者のマーケティングスキルや、開発者のソフト開発力や作業スピードは十分か」、「情報セキュリティや無形資産への対応力は万全か」等の点を確認し、判断するとよいでしょう。
また、広告業界ではグローバル化も進んでいるため、海外企業とのやり取りも見据えて、交渉や事業拡大時の対応等を準備しておくことも必要です。これらのポイントを押さえ、戦略的にM&Aを進めることで、企業はさらなる成長が望めます。
販促・PR業界における今後のM&Aの課題と展望
従来の販促・PR業界では、展示会出展やイベント開催、店頭サンプリング等、オフラインの施策が主流でした。しかし、コロナウイルスの流行等により、販促・PR業界ではオンライン化へシフトする動きが速まりつつあります。
コロナ禍以前からも、オフライン施策は、費用対効果が計測しづらい点、一時的な売り上げ増の期待しか見込めない点等が課題とされていました。
現在では、オンラインメディアやバーチャルイベント等が主流になっており、オンライン事業にマーケティング費用を投じることによる効果も大きくなっています。今後は、オンライン施策とオフライン施策両者の長所を組み合わせたプロモーションが主流になるでしょう。
そのため、同業種間でのM&Aだけでなく、インターネットコンテンツやデジタル技術の分野で事業展開している異業種とのM&Aや、データ分析を本業とするコンサルティングファームのPR・販促業界への参入も注目されています。
インターネットは消費者の生活と切り離せないものとなってきており、販促・PR業界におけるM&Aは今後も活発になっていくと見込まれます。これらの動向を理解し、適切な戦略を立てることで、企業はさらなる成長が期待できます。
M&Aキャピタルパートナーズは、豊富な経験と実績を持つM&Aアドバイザーとして、お客様の期待する解決・利益の実現のために日々取り組んでおります。
着手金・月額報酬・企業評価レポート作成がすべて無料、秘密厳守にてご対応しております。
以下より、お気軽にお問い合わせください。