旅行業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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  • #業種別M&A動向
  • #旅行業界 M&A

業界の定義

旅行会社は、旅行者のために交通機関や宿泊施設の手配を行ったり、パッケージ旅行の商品開発や販売などを行ったりする会社のことを指す。

旅行会社は法律で、「旅行業」と「旅行代理店業」に分けられており、旅行業者は、国内・海外の旅行を企画できる「第一種」、国内旅行のみを企画できる「第二種」、一定の条件下で国内旅行を企画できる「第三種」にさらに分類されている。旅行代理店業は、旅行業者と代理店契約を締結してツアーなどの旅行商品を代理販売する。



業界の特色

旅行業界イメージ画像

旅行業者は、ホテルや航空会社などから部屋や座席を仕入れてツアーという形にまとめる。そして自社の店舗やインターネットサイトあるいは旅行代理店業を経由してその商品を販売するビジネスモデルが一般的である。商品開発の工程で、テーマパーク・レジャー施設・温浴施設・商店街・土産物店・各種エンターテインメントや、各地域の特産物を製造するメーカーや地方自治体などとも連携をすることが多く、幅広いネットワークで綿密な連携を求められることが多いのが特色である。

旅行業界でもインターネット専業の旅行会社が業績を拡大している。既存型である店舗を持った旅行会社と比較して、店舗の維持費や人件費を削減した分を魅力的な価格で旅行商品を提供している。既存型旅行会社もインターネット販売では価格訴求型商品を開発しながら、店舗販売では付加価値の高い差別化された商品を提供することによりインターネット時代に対応する取り組みがみられる。

アウトバウンド(日本人出国者数)とインバウンド(訪日外国人数)それぞれの旅行者数が2014年に逆転しており、旅行業界は市場拡大するインバウンド需要の対応に経営資源を集中させている傾向にある。ただしインバウンド需要については、旅行者の出国元からの日本の旅行業界への参入が相次いでおり、今後法的整備が求められる可能性がある。

市場の規模

株式会社JTBの調査によると、2019年の旅行総消費額は14兆9,200億円であり、国内旅行消費額が10兆4,400億円で海外旅行消費額が4兆4,800億円であった。


2020年の旅行市場規模推計
出典:https://press.jtbcorp.jp/jp/2019/12/2020-2.html


2011年の東日本大震災後、政府は観光立国を成長戦略の柱に掲げ、ビザの発給条件を緩和するなどの対策をした。それに加え、中国をはじめアジア諸国の経済成長により所得水準が上昇し、以前は訪日旅行ができなかった中間層や富裕層の増加により市場規模は拡大に転じている。訪日外国人数は2016年には2,400万人を突破。2020年には4,000万人を突破するかに見えたが、新型コロナウイルスの感染増加により東京オリンピックが延期されるなど、2008年の新型インフルエンザを遥かに上回る業界への影響が懸念されている。

大手旅行業者は次の4社となっている。株式会社JTBは、国内外の旅行取り扱い額でトップの国内最大手旅行会社。旅行取扱額全体で1兆円以上の利益を計上している。楽天株式会社は、国内最大級の旅行に関するインターネットサイトを展開しており、国内旅行を中心とした旅行商品を取り扱っている。KNT-CTホールディングス株式会社は、近畿日本ツーリストとクラブツーリズムの統合により設立された旅行会社であり、地方のネットワークを活用して地場のツアーを企画している。株式会社エイチ・アイ・エスは、海外旅行に特化した旅行事業を手がけている。





課題と展望

旅行業界は、アメリカ合衆国で発生した同時多発テロなどの破壊行為や、自然災害・度重なる新型の感染病など国内外を問はず、予期せぬ事象に大きく影響を受ける業界といえる。また業界内では、格安航空会社(LCC)の登場により、旅行代金の低下が中間所得層に与える影響は大きく、シェアを拡大している。これによりフルサービスキャリア(FSC)のエコノミークラス市場にも影響が及んでおり、今後の動向に注目が集まる。

空港はLCCのために専用ターミナルを建設するなどして対応しているが、その影響はフルサービスの航空会社だけではなく鉄道各社にも及んでいる。新幹線を利用するよりもLCCを利用したほうが費用が低いため、今まで新幹線を利用していた層がLCCに流れているケースが増えてきた。鉄道会社は現在、高級寝台列車を運行したり不動産業に参入したりして事業拡大を模索している。規制緩和で高速バスが普及するなど旅行業界を取り巻く環境はめまぐるしく変化しているように見受けられる。




旅行業界のM&A動向

インターネットのみで取引をする旅行会社をOTA(Online Travel Agent)といい、国内大手では、一休・じゃらん(リクルート)・楽天トラベルなどがあり、海外からは、Booking.com、Hotels.com、Expediaなどが日本に進出している。店舗を持つ旅行会社がオンラインサービスを展開してもOTAとは呼ばない。従来型の旅行会社や旅行代理店は、独自でシステム開発してOTAに参入するノウハウや技術を有してないことが多く、その場合はM&Aにてその技術を得ているケースが多い。

2015年、株式会社JTBは、レジャーや体験などの日本最大級予約サイト「asoview!」を運営するアソビュー株式会社と資本業務提携した。「asoview!」は、パラグライダー・ボルダリング・陶芸教室・遊覧船クルーズなど多種多様なアクティビティを検索・予約できるプラットフォームである。株式会社JTBは、「るるぶトラベル」と「asoview!」との連携・相互商品提供によりオンライン販売を強化している。

2016年、株式会社エイチ・アイ・エスは、株式会社インデックスから新設分割で設立した新会社の株式会社アクティビティジャパンを子会社化した。このM&Aにより、新会社が運営する国内アクティビティ専門の予約サイト「アクティビティジャパン」をプラットフォームとした着地型観光がより一層強化された。

2015年異業種からの旅行業界参入M&Aとしては、株式会社ディー・エヌ・エーが旅行情報サイトを運営する株式会社FindTravelのM&Aがあげられる。株式会社FindTravelは、国内外の観光スポットや人気の宿泊施設を紹介するプラットフォームで、運営開始後半年でM&Aが成立した。




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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


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