専門サービス業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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シンクタンクをはじめとする研究所や、弁護士や行政書士などの「士業」、コンサルタント業などを総称して「専門サービス業」といいます。業務内容は多岐にわたりますが、高度な知識や技術を駆使し、個人や企業にサービスを提供するのが専門サービス業の特徴です。本記事では、この多様な業界の特徴と主要な業種について解説します。

専門サービス業界の特徴

専門サービス業とは、高度な知識や技術を活用して個人や企業に専門的なサービスを提供する事業者のことです。日本標準産業分類の「学術研究、専門・技術サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」「宿泊業、飲食サービス業」「サービス業(他に分類されないもの)」が該当します。

業種が多岐にわたるのが特徴で、技術研究や法律、財務・会計、コンサルティングなどの専門性の高い分野から、家事代行やクリーニング、警備といった日常生活に密着したサービスまで含まれます。

2022年のサービス産業全体の各月の売上高の平均は約31兆9,351億円で、前年比5.2%増を記録しました。そのうち専門サービス業各分野の各月の売上高の平均は、下記のようになっています。

  • 学術研究、専門・技術サービス業:2兆8,562億円
  • 生活関連サービス業、娯楽業:3兆6,568億円
  • 宿泊業、飲食サービス業:2兆698億円
  • サービス業(他に分類されないもの):3兆6,012億円

専門サービス関連業種一覧

専門サービス業界は多様な分野で構成されています。研究開発から日常生活に密着したサービスまで、幅広い業種が含まれており、それぞれが独自の専門性を持っています。ここからは、以下の業種の特徴を見ていきましょう。

  • 研究所
  • 専門サービス業
  • コンサルタント
  • 技術サービス業
  • 人材(派遣・人材紹介会社)
  • 旅行会社
  • 家事代行
  • クリーニング業
  • リネンサプライ業
  • 警備業
  • 複合サービス事業

研究所関連の業種の特徴

研究所は、社会政策、政治戦略、軍事、技術、自然科学、人文科学、社会科学など幅広い分野における研究、開発、試験、鑑定を行う機関です。

特に、社会政策や経済、技術などの分野で調査・提言を主な業務とする機関は「シンクタンク」と呼ばれることがあります。シンクタンクは、民間企業が運営する「民間シンクタンク」と、国や省庁が運営する「政府系シンクタンク」に分類されます。

これらの機関は、社会のさまざまな課題に対し、科学的な分析や独自の視点に基づく解決策を提供してきました。しかし、近年のIT技術の進歩や社会の急速な変化に伴い、求められる成果の質と専門性は年々高度化しています。

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専門サービス業の特徴

専門サービス業は、主に国家資格に基づいた高度な専門知識や法律の理解を活かし、法人や個人に対して相談業務、業務指導、事務代行などのサービスを提供します。この分野は「士業」とも呼ばれています。

代表的な専門サービス業は、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、行政書士などです。専門サービス業に該当する職業の多くは業務独占資格に分類され、それぞれの分野で高い公正性と信頼性が求められています。

社会や経済システムが複雑化し、個人や企業はさまざまな法的・専門的課題に直面しています。そうしたなか専門サービス業は、適切なアドバイスや解決策をもって個人や企業の課題を解決に導く、大切な役割を果たしているのです。

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コンサルタントの特徴

コンサルタント業は、特定の業務や業種に関する深い専門知識をもとに、主に企業に対して包括的なアドバイスを提供する産業です。「業務の認識」「問題点の指摘」「原因分析」「対策案の提示」のプロセスを通じて、企業の成長と発展を支援します。

2022年度の国内コンサルタント業界の市場規模は、1兆8,281億円に達すると推定されます。高度なIT技術を活用したコンサルティングサービスは、経営の意思決定において今後ますます不可欠な存在となるでしょう。

多様化するニーズに対応したサービスの拡充と品質向上が、業界の重要課題となっています。

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技術サービス業の特徴

技術サービス業は、幅広い専門的技術を提供する業種群を指します。具体的には、獣医学的サービス、土木建築関連の設計や相談サービス、商品検査、計量証明、写真制作などが含まれます。

総務省統計局の「サービス産業動向調査」によると、2022年の「学術研究、専門・技術サービス業」の市場規模は49兆983億円で、前年比0.4%増となりました。2021年は48兆8,910億円、2020年は45兆9,780億円であり、この分野は着実な成長傾向を示しています。

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人材関連の業種の特徴

人材業は、企業の採用関連業務の代行から人材育成のための研修事業まで、幅広いサービスを展開しています。主な事業分野は、求人広告事業、職業紹介事業、派遣事業、請負事業に大別されます。

株式会社矢野経済研究所の調査によると、2022年度の人材関連ビジネス主要3業界(人材派遣業・人材紹介業・再就職支援業)の市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比7.8%増の9兆2,355億円に達しました。

少子高齢化による労働力不足を背景に、人材需要は高まり続けています。そのため、人材関連業界は全体として安定した需要を維持しており、今後も成長が期待されています。

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旅行会社の特徴

旅行業は、旅行者のための交通機関や宿泊施設の手配、パッケージ旅行の商品開発や販売などを行う業界です。法律上、旅行業は「旅行業」と「旅行業者代理業」に分類されます。さらに旅行業者は、国内外の旅行を企画できる「第一種」、国内旅行のみを企画できる「第二種」、一定条件下で国内旅行を企画できる「第三種」に細分化されています。

新型コロナウイルスの世界的流行期には、国内外の景気停滞により市場が縮小傾向にありました。しかし、現在では特にインバウンド需要の回復に向けて、各社が経営資源を集中させる傾向が見られます。この動きは、観光立国を目指す日本の政策とも合致しており、今後の業界の成長が期待されています。

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家事代行の特徴

家事代行業は、一般的な家事経験を持つスタッフが、利用者に代わって日常的な家事全般を行うサービス業です。掃除、炊事、洗濯といった基本的な家事をサポートします。

近年、共働き世帯の増加や高齢化社会の進展に伴い、家事代行サービスの需要は増大傾向です。しかし、働き手の確保や育成が需要の伸びに追いつかず、供給不足の状態が続いています。

ITやAI技術をスタッフと効果的に連携させ、供給不足の解消やサービス品質の向上を図ることが、業界の重要な課題となっています。

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クリーニング業の特徴

クリーニング業は、衣服や布製品、皮革製品などの洗濯サービスを提供する業種群を指します。クリーニング事業所は一般的に「営業部門」「集配部門」「取次店」「洗濯工場」で構成されており、多工程で大量の作業を行う洗濯工場では特に、機械設備の導入による自動化が進んでいます。

近年、業界は厳しい価格競争に直面しており、個人経営のクリーニング店舗は減少傾向です。また、需要の低下も相まって、省力化・合理化・生産性向上などの取り組みがますます重要になっています。

こうした課題に対応するため、クリーニング業界は業界全体で技術革新や効率化を推進しており、サービスの質を維持しながらコスト削減を図る努力が続けられています。

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リネンサプライ業の特徴

リネンサプライ業は、各種繊維製品(リネン製品)の在庫を保有し、契約先企業のニーズに応じてそれらを貸し出すサービスを提供する産業です。宿泊施設やレストラン、医療機関などが主要な顧客となっています。

株式会社矢野経済研究所の調査によると、2023年度の国内リネンサプライ市場規模は前年度比108.5%の4,551億円で、3年連続の増加でした。これは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐための行動規制が緩和されたこと、訪日外国人観光客が増加したことが大きく寄与しています。

このようにリネンサプライ業は観光業やホテル・旅館業と密接な関係にあり、これらの産業の動向に大きく影響を受ける特徴があります。今後もインバウンド需要の回復と共に成長が期待できるでしょう。

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警備業の特徴

警備業法によると、警備業は「生命や身体、財産への侵害を警戒・防止する業務を、他人の需要に応じて行うもの」と定義されています。具体的には、施設巡回警備(1号警備業務)、交通・雑踏警備(2号警備業務)、貴重品警備(3号警備業務)、身辺警備(4号警備業務)の四つに分類されます。

警視庁発行の「令和5年における警備業の概況」によると、2023年12月末時点で日本には1万674の警備業者が存在し、前年比1.4%増でした。そのうち、警備業者の90.4%は警備員数100人未満の中小企業となっています。

中小企業がほとんどを占めるという業界の構造は、地域に密着したきめ細かいサービス提供を可能にする一方で、大規模な警備需要への対応や技術革新の導入において課題となる可能性もあります。

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複合サービス事業の特徴

複合サービス事業とは、信用事業、保険事業または共済事業と併せて、複数の大分類をまたいだサービスを提供する事業者を指します。代表的な例として郵便局や総合保険会社が挙げられますが、それ以外にも医療、不動産、機械メンテナンス、ホビーなど、多岐にわたる分野で事業を展開する企業も含まれます。

複合サービス事業の事業者のなかには、創業時から複数の事業を手がける企業もあれば、シナジー効果やノウハウの応用を期待して異分野の事業を買収することで複合化する企業も珍しくありません。

複数の事業を手がける手法は、顧客に対してワンストップでの多様なサービス提供を可能にすると共に、事業リスクの分散や新たな成長機会の創出につながりやすいというメリットがあります。

まとめ

専門サービス業界にはさまざまな業種や業態がありますが、人材不足や需要の変動といった共通の課題を抱えています。これらの課題に対して各事業所は、IT技術の活用や効率化の推進などをもって解決を図っています。今後は、技術革新と人的サービスの融合が業界発展の鍵となるでしょう。

いずれにしても、多様な産業を包括するこの業界は、社会のニーズに柔軟に対応しながらさらなる成長が期待できる分野といえます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


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