LPガス業界のM&A動向 昨今の事業買収・売却の事情やM&A事例を紹介

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LPガス販売業界では、市場縮小と競争激化を背景に、事業承継や企業統合を目的としたM&Aが活発化しています。

契約戸数の獲得やスケールメリットの追求、未進出エリアへの参入など、今後の持続的成長を見据えた戦略的な買収・売却事例が増加しているのが現状です。

本記事では、LPガス販売業界の市場規模やM&A動向、成功事例について詳しく解説します。LPガス販売業界にてM&Aの実施を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

LPガス販売業界の概要

LPガス販売業界は、国内エネルギー供給体制の重要な役割を担い、地域密着型のサービスを提供しています。

LPガス販売業界の定義

LPガス会社とは、LPガス(Liquefied Petroleum Gas)と呼ばれる液化石油ガスを生産・販売する会社のことを指します。

LPガス会社の区分として主に、LPガスを生産したり、海外から日本に輸入したりする元売業者、元売業者から購入したLPガスを小売業者に販売する卸売業者、そして元売業者から購入したLPガスを一般家庭などに販売する小売業者が存在します。 LPガスと同様に家庭で使用されるガスとして都市ガスがありますが、これらの主な違いは、ガスの原料や供給方法です。

LPガス販売業界の特色

国内で使用されているLPガスの約75%が海外から輸入したもので、残りの約25%は、原油精製時や化学製品の生産時に発生する国内生産分です。2023年度における国別のLPガス輸入構成比は、アメリカが62.5%で最大の輸入元となっており、続いてカナダ18.1%、オーストラリア14.3%となっています。

LPガスの主な用途として挙げられるのが、家庭業務用、工業用、化学原料用、都市ガス用、自動車用、そして電力用です。家庭業務用はさらに家庭用と業務用に分けられ、家庭用はガスコンロや給湯器、カセットコンロなどで使用されます。業務用はレストラン、飲食店、学校や病院などで使用されるものです。工業用においては、金属・非鉄金属製品製造の熱処理工程、非鉄金属の溶解工程、また鉄鋼の鋼材加熱工程、熱処理工程、さらに食料品製造の殺菌工程、加熱工程、乾工程などさまざまな分野で使用されています。

LPガス販売業界のM&A動向・市場規模

日本LPガス協会によると、2022年時点の国内におけるLPガスの供給量は、年間約1,290万トンで、民生用エネルギー需要の8.7%を占めています。

2022年度における民生用エネルギー需要割合
参考:日本のLPガス統計 June 2024

国内における2022年のLPガスの需要は、家庭業務用が593万2千トン、工業用が263万9千トン、自動車用が53万8千トンで、それぞれ減少傾向にあります。

これに対して、都市ガス用が159万9千トンと上昇傾向です。

日本におけるLPガスの部門別需要推移
参考:日本のLPガス統計 June 2024

2014年4月に日本政府は「エネルギーの需給に関する施策についての基本的な方針」において、LPガスの位置づけを「平時の国民生活、産業活動を支えると共に、緊急時にも貢献できる分散型のクリーンなガス体のエネルギー源である」と定めています。

さらに、「災害時にはエネルギー供給の「最後の砦」となるため、備蓄の着実な実施や中核充填所の設備強化などの供給体制の強靭化を進める」と政策の方向性を示しています。このことから、市場規模が縮小傾向にありつつも、必要なエネルギーとして需要がなくなることはないでしょう。

LPガス販売業界でM&Aを活用するメリット

契約戸数の獲得により収益基盤を強化できる

LPガス販売業界でM&Aを実施すると、買い手企業は売り手が保有する契約戸数を一括で取得できます。これにより、買い手企業は短期間で安定した収益基盤の構築が可能です。さらに、新たな顧客に対して自社のガス機器や保安サービスなどをクロスセルすることで、売上の拡大や事業の多角化が期待できるでしょう。

スケールメリットによりリソースを最適化できる

M&Aによって事業規模を拡大すると、ガスや資材の仕入れ価格に対する交渉力が向上し、物流の最適化を容易にします。これにより、直接的なコスト削減や利益率の向上に寄与し、価格競争力を高めることが可能です。

あわせて、配送や検針といった労働集約的な業務の重複を整理したり、拠点の統廃合を進めたりすることで、オペレーション全体の効率化が図れます。これにより、人的リソースは適材適所に再配置され、現場の負担軽減や生産性向上に大きく貢献するでしょう。

未進出エリアにスピーディに参入できる

M&Aを通じて、これまで営業していなかった地域へ迅速に参入できます。既にその地域で事業を行っている企業を買収すれば、自社で一から拠点を立ち上げる場合よりも、初期投資や人材確保の手間を抑えながら商圏拡大を進められます。

この戦略は国内だけでなく、海外市場への進出においても非常に有効です。現地企業の買収は、現地の法制度や商慣習へのスムーズな対応を可能にし、市場へのソフトランディングを実現するでしょう。このように、M&Aは国際展開においても、スピードと柔軟性を兼ね備えた強力な戦略として機能します。

LPガス販売業界のM&A事例

実際にLPガス販売業界で実施されたM&A事例を通じて、業界動向や戦略的意図を具体的に理解していきましょう。

関西電力株式会社と岩谷産業株式会社

2016年12月、関西電力株式会社と岩谷産業株式会社は共同で、「関電ガス」を専門に取扱い、販売から保安まで、顧客をトータルでサポートする、関電ガスサポート株式会社を設立しました。具体的には、関電ガスサポートが岩谷産業の100%子会社であるイワタニ近畿株式会社と提携し、「関電ガス」の訪問販売や機器の修理、買替えを含めた保安業務を行います。これにより、さらなる販路拡大や、各地域のLPガス事業者との提携が図られました。

東邦ガス株式会社と株式会社ヤマサ

2018年12月、東邦ガス株式会社は株式会社ヤマサの全株式を取得し、子会社化しました。双方が同じ地域でLPガス事業を扱っており、このM&Aによって、企業のさらなる成長や、さらなる地域発展に貢献することが図られています。

静岡ガス株式会社と島田瓦斯株式会社

2018年3月、静岡ガス株式会社は島田瓦斯株式会社の株式を取得し、同社を連結子会社にしました。島田瓦斯は、島田市を中心に都市ガス事業およびLPガス販売事業を展開しており、このM&Aにより、島田地域における、さらなる天然ガスの普及が期待できるでしょう。

岩谷産業株式会社と東京ガスエネルギー株式会社

2022年4月、東京ガス株式会社は、傘下の東京ガスエネルギー株式会社、および東京ガスLPGターミナル株式会社の株式を、岩谷産業株式会社へ譲渡すると決定しました。

2022年6月には譲渡が完了し、東京ガスエネルギーは「エネライフ」として新たに再編されたほか、関連会社3社も岩谷産業グループに統合されています。

東京ガスはこのM&Aにより、LPガス販売事業から撤退し、都市ガスや再生可能エネルギーといった中核事業への集中を図るとしています。一方の岩谷産業は、関東圏の販売・配送網を一括して取得し、全国規模の供給ネットワークとの統合によって、物流や業務の効率化、スケールメリットの最大化を図りました。一方、東京ガスにとっては、都市ガスや再生可能エネルギーといった中核事業への集中を進めるための戦略的撤退の一環となったのです。

アストモスリテイリング株式会社と太陽日酸エネルギー株式会社

2024年1月、アストモスエネルギー株式会社傘下のアストモスリテイリング株式会社と、大陽日酸株式会社の100%子会社である大陽日酸エネルギーが、経営統合を実施しました。

この統合の主な目的は、両社のリソースを一体的に活用し、サプライチェーンの強靭化・効率化を図ることです。加えて、民生・産業向け需要の取り込みやカーボンニュートラル実現に向けたソリューションを拡充する狙いもあります。これにより、LPガスの供給から業務効率化、脱炭素・デジタル分野での連携強化を目指す方針です。

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LPガス販売業界におけるM&A成功のポイント・注意点

LPガス販売業界のM&Aを成功に導くためには、業界特有の要素を十分に理解することが大切です。ここでは、LPガス販売業界でのM&A成功のポイント・注意点を紹介します。

契約戸数だけでなく多角的な視点で価値評価を行う

LPガス業界では、短期間での契約戸数獲得は困難です。そのため、売り手企業の契約戸数は、企業価値を評価するうえで重要な指標となります。

しかし、実際に企業価値を評価する際には、契約戸数以外にもさまざまな要素を考慮しなくてはなりません。例えば、M&Aによる体制変更やサービス条件の見直しをきっかけに、顧客離れが進むリスクも考えられます。

特に家庭用LPガスは、都市ガスやオール電化への切り替えニーズが強く、料金や対応に不満が生じれば解約に至る可能性も低くはありません。その結果、当初見込んでいた収益効果を得られないリスクが生じるでしょう。

そのため単なる戸数だけでなく、競合動向や市場トレンドも含めた多角的な評価が欠かせません。

事前に設備の管理状況を確認する

LPガス業界のM&Aでは、売り手企業が保有するガス容器や充填所、配送車両といった設備を一括で引き継げる点がメリットの一つです。

しかし、設備の老朽化や保守管理が不十分な場合、引き継ぎ後に多額の修繕費や更新費用が発生する可能性があります。特に、保安体制の不備や法令違反が発覚すれば、事業継続に支障をきたす恐れもあるため、注意しなければなりません。

そのため、M&Aの初期段階で行うデューデリジェンス(DD)では、設備の使用状況や保守記録を含めた綿密な現地調査を実施しましょう。これにより、取得後のリスクの適切な評価が可能です。

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LPガス販売業界における今後のM&Aの課題と展望

国内のLPガス需要は、年々減少傾向にあります。さらに、事業者間の競争激化や人手不足といった課題も相まって、今後も業界再編の動きは加速すると見られます。M&Aを活用して契約戸数や供給エリアを効率的に拡大し、収益基盤や物流網の強化を図る動きは、引き続き重要な戦略となるでしょう。

一方で、買収後の顧客離れや設備老朽化によるコスト増といったリスクも顕在化しています。そのため、企業価値を正しく見極めるための精緻なデューデリジェンスが欠かせません。

また、カーボンニュートラルや地域インフラとしての役割を見据えた脱炭素・DX対応も、今後のM&A検討における新たな評価軸として重要性を増していく見込みです。LPガスが担うエネルギーインフラとしての役割を再定義しつつ、いかにして持続可能な成長を支えるM&A戦略を構築していくかが、自社の将来を左右する鍵となるでしょう。

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よくある質問

  • LPガス販売業界とは何ですか?
  • 液化石油ガスを元売・卸・小売で取り扱い、家庭や事業者にエネルギーを供給する産業です。
  • LPガス販売業界において市場縮小下でM&Aが活発化する背景は?
  • 契約戸数獲得とスケールメリット追求、未進出エリア参入を狙う再編が進んでいるためです。
  • M&Aで契約戸数を取得するメリットは?
  • 短期間で安定収益基盤を構築し、ガス機器や保安サービスのクロスセルで売上拡大が期待できます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

2007年、立教大学経済学部経営学科卒業後、国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。
2021年M&Aキャピタルパートナーズ入社後は、広報責任者として、TV番組・CMなどのメディア戦略をはじめ広報業務全体を管掌、2024年より現職。

一般社団法人金融財政事情研究会認定M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者



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