鉱業業界のM&A動向 昨今の事業買収・売却の事情やM&A事例を紹介

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鉱業業界は、エネルギー資源やレアメタルの需要拡大、脱炭素社会に向けた技術革新などを背景に、大きな変革期を迎えています。

国内では事業承継や後継者不足が深刻化し、その対応には一刻の猶予もありません。一方、海外では資源獲得競争が激化し、企業の判断はより難しくなっています。

そこで本記事では、鉱業業界のM&A動向や概要、市場動向、代表的な事例、さらに成功のポイントを示し、今後の展望を探っていきます。

鉱業業界の概要

鉱業業界は、地下資源の採掘や精錬を担う基幹産業であり、企業の活動や社会の発展を支える重要な役割を果たしています。ここではその定義と特色を整理します。

鉱業業界の定義

鉱業とは、鉱物などの地下資源や地表資源を対象に、鉱脈や鉱石を試掘・採掘し、さらに選鉱や製錬といった工程を伴う事業です。日本では「鉱業法」に基づき、鉱業権・租鉱権・鉱区の設定、土地の使用や収用、さらには鉱害賠償に関する規定が整備されており、登録を受けた鉱物に対して試掘・採掘を行うことが可能です。

なお、同法の適用を受ける鉱物は41種類におよび、大きく以下の3区分に分けられます。

  • 金属鉱物:金鉱や銀鉱、銅鉱、鉄など
  • エネルギー系鉱物:ウランや石炭、オイルシェールなど
  • 非金属系鉱物:岩塩、炭酸カリウムなど

鉱業業界の特色

鉱業業界の大きな特色として、有限な鉱物資源と地域社会の調和を図るために制定された鉱業法による、厳格な規律の存在が挙げられます。

同法では、土地所有権とは独立した権利として「鉱業権」が定められており、土地を所有していても鉱業権を持たなければ鉱物の採掘や取得は禁じられています。そのため採掘を行うには、所轄官庁への申請と許可が不可欠です。

鉱業権は未採掘の鉱物そのものを直接所有する権利ではなく、採掘行為によって所有権を得られる支配権として位置づけられています。具体的には「採掘権」と「試掘権」の二種類があり、資源の開発段階に応じて利用されます。

区分 概要
採掘権 登録を受けた一定の区域(鉱区)において登録鉱物を掘採・取得するための権利
試掘権 鉱区において登録鉱物の賦存状況や品質、採掘適否をボーリング等の方法で試掘するための権利

また、鉱物の合理的な開発を進めるため、他者の鉱区の一部で登録鉱物を採掘できる「租鉱権」も規定されており、制度的な特徴を形成しています。

鉱業業界のM&A動向・市場規模

鉱業業界は、資源需要の拡大を背景に世界的な注目が高まっています。特に銅は、鉄や金に並ぶ主要鉱種であり、デジタル化や再生可能エネルギーの普及によって需要が急増しています。

経済産業省の「今後の鉱物資源政策の方向性について」によれば、2035年までに銅需要は現在の2倍に拡大し、最大で約990万トンの供給不足が生じると予測されています。こうした見通しは、世界的な投資競争や企業間の争奪戦が一層激しさを増していることを示しています。

国内の動向を見ると、事業所数が減少しながらも高付加価値化により産業規模は拡大しています。令和3年経済センサス活動調査によれば、事業所数は2016年の1,851から2021年には1,769へと約4.5%減少しました。一方、生産金額は4,985億円(2015年)から5,999億円(2020年)へと約20%増加しています。

今後の鉱物資源政策の方向性について
画像出典:今後の鉱物資源政策の方向性について

また、日本は世界第2位の製錬能力を持つものの、原料購買力や権益確保では海外勢に後れを取っている状況です。銅やリチウム、レアアースの精錬量は、中国やチリ、アルゼンチンなど南米諸国が高いシェアを占め、特にリチウム精錬では一国による寡占化が進む可能性が指摘されています。こうしたなかで国内企業の立場は厳しく、安定供給体制の確立や国際競争力の維持が喫緊の課題です。

そのため、投資や事業再編を通じた体制強化が求められ、M&Aは有効な戦略の一つとして注目されています。特に海外資源の権益確保や国内技術基盤の補完を目的とした動きは、今後さらに加速すると見込まれます。

鉱業業界でM&Aを活用するメリット

鉱業業界でM&Aを活用する主なメリットは以下のとおりです。

需要拡大が見込まれる分野への対応力を強化できる

リチウム、コバルト、ニッケルといったレアメタルは、再生可能エネルギーやEVに不可欠な資源です。これらの需要は、デジタル化やグリーンシフトの進展により今後さらに増加すると予測されています。

M&Aを通じて熟練の採掘技術者や専門知識を持つ人材を確保すれば、生産体制を早期に拡充することが可能です。これにより、需要拡大への迅速な対応や、事業基盤の強化が期待できます。

高度な技術力・環境対応力を得られる

高いテクノロジーや省エネ技術を持つ異業種企業と統合すれば、バイオマス燃料の活用や小規模発電所の運営など、環境負荷の低い操業が実現可能です。これにより、サプライチェーン全体でのCO₂削減が可能となり、企業価値や社会的評価の向上にもつながります。

さらにM&Aを通じてリサイクル技術や環境規制への対応力を獲得すれば、ESG投資の要請にも応えることができるため、長期的な企業成長を後押しすることも望めるでしょう。

鉱業権の承継により迅速な事業参入が可能となる

鉱業権は法律上、譲渡が認められており、鉱業企業を買収することで既存の権利をM&Aを通じて承継できます。新規に鉱業権を取得するには申請や審査に長い時間と多額のコストがかかるため、M&Aによる承継は新規参入や事業拡大の最短ルートといえます。

さらに、鉱業権の有効期限や条件もそのまま引き継がれるため、取得後すぐに事業を稼働させられる点は大きなメリットです。特に成長分野や需要拡大が見込まれる資源を扱う場合、権利承継は機会を逃さず市場に参入するための有効な手段となるでしょう。

鉱業業界のM&A事例

鉱業業界では、資源権益の確保や事業基盤の強化を目的にM&Aが進められています。以下に代表的な事例を紹介します。

日鉄鉱業株式会社とアルケロス鉱山株式会社

2017年、日鉄鉱業株式会社はアルケロス鉱山株式会社の株式を一部追加取得し、特定子会社化しました。チリ共和国にあるアルケロス鉱山株式会社は、「アルケロス鉱区」を保有しており、日鉄鉱業は2016年から探鉱作業を進めて銅鉱床を確認していました。このM&Aにおける日鉄鉱業株式会社の狙いは、アルケロス鉱山を開発し、新たな資源を獲得することです。

日鉄鉱業株式会社と住金鉱業株式会社

2013年、日鉄鉱業株式会社は、石灰石の採掘・販売を手がける住金鉱業株式会社を、親会社の旧新日鉄住金株式会社からM&Aによって取得しました。両者はいずれも石灰石事業を展開する会社であり、このM&Aで事業基盤の強化を図っています。

国際石油開発帝石ホールディングス株式会社と国際石油開発株式会社、帝国石油株式会社

2008年、国際石油開発帝石ホールディングス株式会社と国際石油開発株式会社、そして帝国石油株式会社が合併し、国際石油開発帝石株式会社が発足しました。国際石油開発株式会社はアジア・オセアニア・中東・ユーラシア等に優良な資産と、産油国の石油会社との協力関係を通じて多くの知識と経験を有する会社です。一方の帝国石油株式会社は、国内外でのオペレーターとしての実績とそれらを実践してきた高い能力をもつ技術者を抱えていました。

三井金属鉱業株式会社と日比製煉株式会社

2020年2月、三井金属鉱業株式会社は、JX金属株式会社との共同出資会社であるパンパシフィック・カッパー株式会社から、日比製煉株式会社の株式を取得し、完全子会社化しました。

三井金属鉱業株式会社とJX金属株式会社は、2000年に銅製品の販売会社としてパンパシフィック・カッパー株式会社を設立し、2006年には生産統合を行うなど、長年にわたり銅事業で協力関係を築いてきました。

今回の完全子会社化により、三井金属鉱業株式会社は銅事業をさらに拡充するとともに、鉛・亜鉛・貴金属の製錬ネットワークとのシナジーを追求し、事業の効率化と競争力の強化を図る方針です。さらに、グローバル市場での安定供給体制の確立や、持続可能な資源循環モデルの実現に向けた取り組みを加速させる姿勢も打ち出しています。

三井金属鉱業株式会社と日本イットリウム株式会社

2024年3月、三井金属鉱業株式会社は、完全子会社であった日本イットリウム株式会社を完全子会社化しました。日本イットリウム株式会社は1966年に創業し、レアアース(希土類)を用いた機能性素材を手がけ、電子部品や高性能電池、医療分野など多様な用途に対応する製品を提供してきました。

この子会社化は、三井金属鉱業株式会社が展開する機能性粉体事業と日本イットリウム株式会社の独自技術を一体化させ、表面弾性波フィルター向け高純度タンタルやセリウム系研磨材といった先端材料分野でのシナジーを創出することを目的とするものでした。その後2025年4月、両社の技術をかけ合わせてさらなる価値の創出を目指し、日本イットリウム株式会社を消滅会社とする吸収合併が実施されました。

鉱業業界におけるM&A成功のポイント・注意点

鉱業業界のM&Aを成功させるには、業界特有の留意点を踏まえることが重要です。以下で代表的なポイントを整理します。

鉱業権を適切に引き継ぐ

M&Aによって鉱業権を承継する場合には、鉱業法に基づく正規の手続きを経る必要があります。具体的には、経済産業局長への届出と許可の取得、登録免許税を納付し、鉱業登録を受けなければなりません。

さらに、相手企業が鉱業権者としての義務を果たしているかを確認することも不可欠です。例えば、始業案の適切な作成や報告義務の履行状況が整っているかどうかを精査する必要があります。

加えて、鉱業によって損害が生じている場合は無過失賠償責任が課されるため、デューデリジェンスを通じて法的・財務的リスクを事前に確認し、承継後のトラブルを防ぐことが重要です。

ステークホルダーとの信頼関係構築を重視する

鉱業業界では、国内鉱山の減少や資源系学科の縮小といった背景から人材不足が深刻化しており、優秀な技術者や専門人材の確保が大きな課題となっています。そのため、M&Aを進める際には、貴重な人材が離脱しないよう従業員や取引先など主要なステークホルダーに十分配慮したプロセス設計が欠かせません。

特にPMI(統合プロセス)の段階では、従業員の心情に寄り添いながら丁寧な対話を重ね、安心感と信頼関係を築くことが求められます。これは組織文化の摩擦を和らげ、長期的な事業の安定と発展につながる重要な要素です。

鉱業業界における今後のM&Aの課題と展望

鉱業業界では、再生可能エネルギーの普及やデジタル化の進展により資源需要が拡大し、将来的な供給不足が懸念されています。中国や中東の資本が積極的に投資を進めるなか、日本企業は資源権益の確保で後れを取り、国際競争の環境はますます厳しくなっています。

こうした背景を踏まえると、今後のM&Aには資源権益や技術力の確保だけでなく、人材の維持や地域社会との調和といった課題への対応も欠かせません。さらに、環境規制やESG投資といった社会的要請への対応も重要です。

持続可能な資源開発を進めるためには、戦略的なM&Aの活用が不可欠であり、国際競争力の強化と業界再編の推進は今後ますます重要なテーマとなっていくでしょう。

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よくある質問

  • 鉱業業界でM&Aが活発化している理由は何ですか?
  • 世界的な資源需要の拡大と国内外での権益確保競争の激化により、M&Aが戦略的な資源確保手段として注目されています。
  • 鉱業業界におけるM&Aの主なメリットは何ですか?
  • 技術や人材の確保、鉱業権の迅速な承継、環境対応力の強化など、多角的な効果が期待できます。
  • 鉱業権はM&Aで引き継ぐことが可能ですか?
  • はい、鉱業法に基づいて正式な手続きを踏めば、採掘権や試掘権を含む鉱業権の承継が可能です。
  • 鉱業業界のM&Aで特に注意すべき点は何ですか?
  • 法令遵守の確認、ステークホルダー対応、人材の流出防止など、専門性の高い統合プロセスが重要です。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

2007年、立教大学経済学部経営学科卒業後、国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。
2021年M&Aキャピタルパートナーズ入社後は、広報責任者として、TV番組・CMなどのメディア戦略をはじめ広報業務全体を管掌、2024年より現職。

一般社団法人金融財政事情研究会認定M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者



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