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ネイルサロン業界のM&A動向について
ネイルサロン業界では、市場の回復基調と競争激化を背景に、M&Aが重要な経営戦略として注目されています。
ネイルサロンは、開業のハードルが低い一方で、人材不足や差別化の難しさといった課題に直面する会社や店舗が少なくありません。そのため、事業承継や規模拡大を目的としたM&Aが活発化している状況です。
本記事では、ネイルサロン業界の特色や市場規模、M&Aの動向などについて詳しく解説します。ネイルサロン業界のM&A事例やM&Aを実施するメリットなどもあわせて解説するので、ぜひ参考にしてください。
ネイルサロン業界の概要
ネイルサロン業界は、1990年代に一般化し、資格制度の整備やジェルネイル技術の普及を背景に発展してきました。現在では、高級店から低価格店まで多様な店舗形態が存在し、美容サービスの一翼を担う産業となっています。
ここでは、ネイルサロン業界の定義や特色について解説します。
ネイルサロン業界の定義
ネイルサロンとは、爪に対する装飾や手入れなどの施術(ネイルアート)を専門的に行う業態のことです。
ネイルアートは1990年代から存在していましたが、当時はブライダルやパーティーに限定されていました。しかし、1997年に「ネイリスト技能検定試験」が開始され、少しずつ資格制度が確立していきます。その後、2000年頃から爪につけるジェル素材を硬化させる技術が広がったことで、ネイルアートが一般的なものとして普及し、ネイルサロンが増えていきました。
現在では、高級店から低価格店までさまざまなネイルサロンが存在し、独立して開業する女性も増えています。
ネイルサロン業界の特色
ネイルサロンは、施術できる場所と施術に必要な道具があればどこでも開業できます。開業資金も少なくて済み、自宅やアパートの一室を店舗とすれば仕事とプライベートとのバランスも取りやすいことから、開業の敷居が低い点が特徴です。
また、自分で開業するほかにフランチャイズとしてサロンを開くことも可能です。開業の際の資格は必須ではありませんが、保有していれば顧客との信頼にもつながります。代表的な資格としては、以下のようなものが挙げられます。
- JNECネイリスト技能検定
- JNAジェルネイル技能検定
- I-NAIL-Aジェルネイル技能検定試験
ネイルサロン業界のM&A動向・市場規模
「美容センサス2025年上期(ネイルサロン編)」によると、ネイルサロン市場はコロナ禍で一時落ち込みましたが、2022年以降は回復傾向にあります。2025年時点では約1,455億円と過去5年で最高水準を記録しています。
業界を牽引するのは、直近3年連続で成長している女性市場です。年間利用回数が増え、高頻度層が拡大したことによって、安定した売上基盤が形成されています。また、物価高の影響から1回あたりの利用単価も上昇傾向にあり、市場全体の拡大に寄与しています。
一方、男性市場は前年比で縮小局面も見られるものの、商品購入意欲が高く、物販強化の余地がある点は注目すべきでしょう。
利用者層の拡大や市場回復を背景に競争は激化しており、今後は差別化やブランド力の強化が課題となります。
ネイルサロン業界でM&Aを活用するメリット
ネイルサロン業界におけるM&Aのメリットは、主に以下のとおりです。
各メリットについて、詳しく見ていきましょう。
経営資産をまとめて引き継げる
ネイルサロンは、特定のネイリストの技術や接客に顧客が付いているケースが多く、スタッフの変更が顧客離れにつながりやすい業態です。M&Aを活用すれば、既存のネイリストやスタッフに付いている固定客をそのまま引き継ぐことができます。
さらに、集客の仕組みやメニュー構成、店舗運営のノウハウも一括で承継できるため、新規開業と比べて短期間で安定した営業を始められます。採用・育成や設備投資にかかる時間・コストも大幅に削減できるでしょう。
同業同士のM&Aであれば、ノウハウ共有によるサービス品質の向上も期待でき、売り手側にとっても雇用の継続やブランドの存続といったメリットがあります。
特に、長年培われた顧客データベースや予約管理システム、SNSマーケティングのノウハウは、金銭では評価しきれない無形資産として事業価値を高める重要な要素です。
多店舗展開・隣接業種との連携でブランドを強化できる
同業種同士がM&Aを行えば、双方の店舗数の分だけネイルサロン市場におけるシェアを拡大できます。複数店舗を展開すれば、知名度や集客力が高まるだけでなく、予約の効率化や材料の一括調達といったスケールメリットも得られます。
また、美容室やエステなど、隣接業種と連携すれば、クロスセルを通じて、トータルビューティーサロンとしての展開が可能です。顧客の利便性が向上すると共に、顧客単価の向上や新規層の開拓が期待できるでしょう。
このような戦略的なM&Aは、ブランド全体の認知度や信頼性を高め、収益の安定化や
競合他社との差別化、長期的な成長基盤の構築につながります。
ネイルサロン業界のM&A事例
ネイルサロン業界では、大手企業による買収から異業種との資本業務提携まで、多様なM&A事例が見られます。
ここでは、近年行われた代表的なネイルサロンのM&A事例を紹介していきます。
株式会社ヤマノホールディングスと有限会社みうら
株式会社ヤマノホールディングスは、2018年7月にネイルサロン「有限会社みうら(以下、みうら)」を子会社化し、美容事業の強化を進めてきました。
みうらは手足のケアに特化したサロンを都内で展開し、グループの美容サービス拡充に寄与してきました。その後、2022年10月にはグループ内の再編により、美容事業を担う株式会社L.B.Gにみうらの営業部門を統合。同社の美容事業の一つであるYHC美容を含む3部門を一体化し、人材育成やマーケティング力の向上を図る体制を整備しました。これにより、ブランド横断の連携強化とサービス創出のスピード化を実現し、ヤマノグループ全体の美容事業の収益力向上を目指しています。
アント・キャピタル・パートナーズ株式会社と株式会社プリアンファ
2024年6月、クレアシオン・キャピタル株式会社(以下、クレアシオン)は、同社ファンドが保有する株式会社プリアンファ(以下、プリアンファ)の全株式を、アント・キャピタル・パートナーズ株式会社のファンドへ譲渡しました。
プリアンファは、「プリジェル」などネイルサロン向けジェルネイルを展開するリーディングカンパニーとして、ネイリストや代理店から高い信頼を得ています。一方のクレアシオンは、2021年の資本参画以降、マーケティングや営業体制の強化、経営管理の効率化を支援し、プリアンファの企業価値向上に寄与してきました。
この株式譲渡により、プリアンファは新たな投資家のもとでさらなる成長を目指す計画です。それぞれのファンドが持つ強みを活かした段階的な成長戦略の実現例として注目されます。
株式会社鉄人化計画とビアンカグループ
2021年12月、「カラオケの達人」で知られる株式会社鉄人化計画(以下、鉄人化計画)は、美容サロン32店舗を展開するビアンカグループ6社の全株式を取得しました。
ビアンカグループは首都圏でネイルサロンを含む美容サロンや美容スクールの運営、さらには化粧品の販売も行なっています。このM&Aにおける鉄人化計画の狙いとしては、美容事業の拡大とカラオケ・飲食事業と共に効率的な事業運営を目指すことが挙げられます。
株式会社シェアリング・ビューティーと株式会社FERIA
2023年7月、株式会社シェアリング・ビューティー(以下、シェアリング・ビューティー)は、株式会社FERIAの全株式を取得しました。
これにより、シェアリング・ビューティーは、関西エリアの美容室・ネイルサロン計10店舗を傘下におさめ、関東と関西を中心に25店舗を展開するグループとなっています。
シェアリング・ビューティーのDXサービスである「HAIR」や「ONCE」を導入することによるシナジー効果や、ブランドの強化も、このM&Aの大きな狙いです。
日本プライベートエクイティ株式会社と株式会社ティ・ケー・エス
2023年4月、日本プライベートエクイティ株式会社(以下、プライベートエクイティ)は、株式会社ティ・ケー・エス(以下、ティー・ケー・エス)とその関連会社の全株式を取得しました。
売り手となったティー・ケー・エスは、美容室、理容室、ネイルサロン、ブライダル事業を展開する会社です。
このM&Aにおけるプライベートエクイティの狙いは、グループ企業の経営効率化に加え、質の高いサービスを提供すること、従業員のキャリア形成や自己実現の場を提供することです。また、新たな世代に事業を託したいというティー・ケー・エス側の思惑もあったとされています。
サロウィン株式会社と株式会社WBP
サロウィン株式会社(以下、サロウィン)は、シェアサロン「SALON VILLAGE」を運営する株式会社WBP(以下、WBP)の全株式を取得し、2025年4月1日付で完全子会社化しました。
WBPは都内を中心に9店舗を展開し、完全個室型のシェアサロンを提供することで、ネイリストやアイリストが少ない初期投資で独立できる環境を整えてきました。
サロウィンは今回の買収を通じて、ネイルやアイラッシュを含むサロン領域での展開を拡大し、美容従事者の多様な働き方を支援する体制を強化します。
株式会社RVHと株式会社G.Pホールディング
2020年2月、株式会社RVH(以下、RVH)は、ネイル事業を含む株式会社不二ビューティー(以下、不二ビューティー)を株式会社G.Pホールディングに事業譲渡しました。
これにより、RVHは美容エステティック業界から撤退しています。撤退理由は美容業界の人材不足と競争激化でした。
不二ビューティーはもともとRVHから株式会社G.PホールディングRVHに売却したものであり、このM&Aはそれを買い戻した形です。
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ネイルサロン業界におけるM&A成功のポイント・注意点
ネイルサロンのM&Aを成功に導くには、業界特有の課題を理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。ここでは、買い手側が特に注意すべきポイントとして、以下の3点を解説します。
それぞれ見ていきましょう。
人材と顧客基盤を確実に引き継ぐ
M&A後も技術水準やサービス品質を維持するためには、引継ぎや体制の整備を丁寧に行うことが重要です。
ネイルサロンの顧客は担当ネイリストへの信頼や愛着が強いため、M&Aを機にスタッフが離職すると顧客離れに直結しかねません。したがって、 買収後も既存スタッフが安心して働けるよう、不安の解消や職場環境の改善に努める必要があります。
成功の鍵となるのは、現場の声を尊重する姿勢です。特に、給与体系や勤務条件の見直しは慎重に進め、優秀な人材の流出を防ぎましょう。
また、ブランドイメージの急な変更は顧客離反を招きやすいため、段階的な統合を意識することが望まれます。
M&A後の集客施策で効果を最大化する
買収によって店舗やブランドがグループに加わった際には、積極的に「新店舗オープン」や「グループ統合」を告知しましょう。M&Aによる経営基盤の強化に加えて、こうした集客施策を展開することで、競争が激化する市場でもシェアを確立しやすくなります。
既存顧客を取りこぼさないよう細やかなフォローを続けつつ、新規顧客の獲得も同時に目指すことが肝心です。単なる事業の承継にとどまらず、ブランド訴求や集客強化を通じてM&A効果を最大限に引き出すことが求められま
SNSマーケティングやインフルエンサーとのコラボレーションといったデジタル施策も積極的に活用し、若年層への訴求力を高めるのも効果的です。また、統合記念キャンペーンや新サービスの導入など、顧客にとってメリットのある施策を打ち出せば、ポジティブなイメージ形成につなげられるでしょう。
専門家を活用してリスクを最小化する
小規模・個人経営が多いネイルサロンには、労務管理や契約関係に思わぬリスクが潜んでいることがあります。参入障壁が低い分、デューデリジェンスで確認すべき項目も多岐にわたり、買い手だけで対応するのは大きな負担となりかねません。
このようなリスクを回避するには、業界事情に詳しい専門家やM&A仲介を活用するのがおすすめです。専門家に依頼すれば、法務・税務・人事面を丁寧に精査でき、安心してスムーズにクロージングまで進められるでしょう。
特に、賃貸借契約の承継可否や、従業員の雇用条件、顧客情報の管理体制などは、事前の確認が欠かせません。簿外債務の有無や、取引先との契約関係も含めて総合的に評価してください。
ネイルサロン業界における今後のM&Aの課題と展望
ネイルサロン業界は、市場回復と利用者層の拡大に伴い、M&Aの機会が増えています。しかし、その一方で業界特有の課題も存在するのが現状です。
ネイルサロンは、小規模・個人経営が多いという特性上、労務管理や契約関係のリスクを見落としがちです。そのため、統合後にトラブルへ発展する可能性があります。また、顧客は特定のネイリストに強いロイヤルティを持つことが多いため、人材の定着とブランドの一貫性を維持することが不可欠です。
今後は、買収後の集客施策やSNSの活用で新規顧客を獲得しつつ、既存顧客を確実に維持する戦略が求められます。さらに、美容室やエステといった隣接領域との連携を通じたサービス多角化や、スケールメリットを生かした多店舗展開も有効な方向性となるでしょう。
M&Aを単なる承継で終わらせず、業界全体の質を底上げする成長戦略として位置付けられるかが、今後の成功を左右する鍵です。
- 成約実績一覧
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よくある質問
- ネイルサロン業界とはどのような業界ですか?
- 爪の装飾やケアを専門とするサービス業で、個人経営から多店舗展開まで幅広い事業形態が存在します。
- なぜネイルサロン業界でM&Aが注目されているのですか?
- 開業のしやすさから競争が激しく、人材確保や収益性の課題を抱える中で、事業承継やブランド強化を目的としたM&Aが増えています。
- M&Aによって得られる主なメリットは何ですか?
- 顧客・人材の一括承継、多店舗展開、ノウハウやブランドの引き継ぎによる経営効率化が図れます。
- ネイルサロンM&Aでの注意点は?
- スタッフの離職防止や顧客ロイヤルティ維持、契約関係や法的リスクのチェックが重要です。

