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エステサロン業界では、市場規模が縮小傾向にある一方で、優秀なエステティシャンの確保や競争力の向上を目的とした、大手企業による戦略的なM&Aの動きが目立ちます。
本記事では、エステサロン業界のM&A動向や、M&A活用のメリット、具体的な事例、成功のポイントなどについて、詳しく解説します。
エステサロン業界の概要
エステサロン業界は、美容とリラクゼーションを通じて心身の健康をサポートする業界です。ここでは、エステサロン業界の定義と特色について見ていきましょう。
エステサロン業界の定義
エステサロン業界とは、エステティックサービスの提供を主力事業とする業界のことです。
一般社団法人日本エステティック振興協議会は、エステティックの定義について「一人ひとりの異なる肌・身体・心の特徴や状態を踏まえながら、手技・化粧品・栄養補助食品・機器・用具を用いて人の心に満足と心地よさと安らぎを与えると共に、肌や身体を健康的で美しい状態に保持・保護する行為である」と紹介しています。
エステサロン業界の特色
エステ業界の特色の一つが、資格が無くてもエステサロンを開業できる点です。そのため、参入障壁が低く、個人経営や中小企業が多くなっています。
エステサロンでは、スキンケア・プロモーションメイキング・リラクゼーション等、全身を対象とする施術を行いますが、医師免許を持たずに医学的判断や人体に危険を及ぼす行為をしてはなりません。
具体的には、毛のある部位に光をあて、毛根を弱くする手法である「光脱毛」はエステサロンでの施術が可能ですが、レーザーや針で電気刺激を与えることで発毛組織を破壊させる「医療脱毛」は医療行為に該当するため、エステサロンでは認められていません。加えて、「治療」「改善」「使用前・使用後」「効果・効能」などと告知・表現・表示することも禁止事項です。
また、エステ業界は、施術収入が中心となっていますが、個人消費の低迷により収益性も低下傾向にあり、物販収入に力を入れているところも増えています。
業界の状況として、かつては契約トラブルが多かったものの、業界内での基準設置や、ルール作りによって改善が進み、国民生活センターへの相談数も減少しています。
エステサロン業界のM&A動向・市場規模
株式会社矢野経済研究所の調査によりますと、2023年度のエステサロン業界の市場規模は3,095億円となり、2020年度から4年連続でマイナス推移を示しています。一方、メンズエステ市場はプラス推移です。これは、コロナ禍によるオンライン会議の増加や、ジェンダーレスな考え方を持つ若年層の美容への関心の高まりが背景にあると考えられます。
エステサロン業界のM&Aについては、以前は事業救済的な観点が主流でしたが、現在では大手企業によるM&Aが増えてきています。大手企業主導のM&Aにより、エステサロン業界のコンプライアンスの向上や、エステティシャンの地位向上などが期待されているでしょう。これらの動向は、エステサロン業界の将来に大きな影響を与える可能性があります。
エステサロン業界でM&Aを活用するメリット
エステサロン業界におけるM&Aには、主に以下のようなメリットがあります。
優れた技術を持ったエステティシャンを得られる
エステサロン業界でM&Aを実施する大きなメリットの一つは、優秀な人材を確保できることです。
エステサロンでは、人柄や施術の質の高さを判断材料に、特定のエステティシャンを指名して施術を受ける傾向があります。そのため、人材は重要な経営資源です。M&Aを実施すれば、経験の豊富なエステティシャン等、優秀な人材を確保できます。優秀な人材を自社に取り入れることで、サービスの質の向上や、新しい技術の導入が可能になるでしょう。さらに、エステティシャン個人についているファン顧客を取り込むこともでき、収益性向上も期待できます。
市場での競争力を高められる
M&Aによって、経営資源を手に入れられる点もメリットの一つです。相手企業の有する店舗を自社に取り込むことで、その分の市場シェアの確保ができます。
また、エステサロンは開業の敷居が低い反面、競合先が多く廃業率が高い特徴があるため、安定した経営のためには競合他社との差別化が必須です。そこで、優れた施術技術や最新の機器を有するエステサロンとM&Aを実施すれば、自社の弱点の補完によるサービス拡充や、自社の強みとのシナジー強化による新たなサービスの創出につながり、市場での優位性向上を期待できます。
美容業界ならではのシナジー効果が期待できる
既存事業との相乗効果が期待できるのもM&Aのメリットです。エステサロン同士のM&Aは、グループ全体のブランド価値を高め、売上の増加に寄与します。
一方、ヘアサロンや美容室といった隣接する業種とのM&Aでは、一つの窓口で顧客に多様な美容サービスを提供する体制が構築可能です。顧客を相互に紹介し合ったり、関連サービスを追加で提案したりといったクロスセルによって、事業収益の拡大が実現できるでしょう。
エステサロン業界のM&A事例
株式会社AcroX Holdingsと株式会社TACHIAOI
2021年4月、株式会社AcroX Holdingsは、株式譲渡により株式会社TACHIAOIの株式を取得し、グループ会社化を行いました。
AcroX Holdingsは、ホテル向けコンセプトルームのプロデュースを中心に、観光コンサルティング事業、地域創生コンサルティング事業等を展開しています。一方、TACHIAOIは、リラクゼーションをコンセプトにしたエステサロンの運営、オリジナルコスメのEC事業等を展開する企業です。
このM&AにおけるAcroX Holdingsの狙いは、TACHIAOIのサロン・化粧品事業を取り込むことで、ホテル向けアメニティ開発や、観光に照準を合わせたサロン事業の展開など、多様なサービス提供できる体制を作ることです。
MHアドバイザリー株式会社と株式会社エムズメディカル
2020年12月、MHアドバイザリー株式会社は、株式会社エムズメディカルから「B’PRODUCE」のブランド商標とフランチャイズチェーン事業を承継しました。
MHアドバイザリー株式会社は、ヘルスケア、美容、ライフサイエンス等の分野における、生産性向上、成長戦略、フランチャイズ、のれん分け制度構築等に関する経営支援サービスを展開する企業です。一方の株式会社エムズメディカルは、「B’PRODUCE」ブランドの痩身エステ運営と、化粧品、エステ関連商品の製造販売事業を展開しています。
このM&Aによって、MHアドバイザリー株式会社は、付加価値の高いブランドの獲得、フランチャイズ運営体制の展開を目指しています。
株式会社かがやくコスメと株式会社ファイブテイルズ
2020年11月、株式会社かがやくコスメは、株式譲渡により株式会社ファイブテイルズの全株式を取得し、完全子会社化を行いました。
株式会社かがやくコスメは、全国の生活協同組合を主な顧客として、化粧品等の企画提案、販売事業を展開する企業です。一方の株式会社ファイブテイルズは、脱毛サロン運営事業、オリジナルブランド美容、化粧品EC事業等を展開しています。
株式会社かがやくコスメは、株式会社ファイブテイルズの化粧品企画開発やECのノウハウ獲得、販売チャネルの共有から事業成長を目指し、M&Aを行いました。株式会社ファイブテイルズは、株式会社かがやくコスメのリソースを活用し、より組織的な経営による事業成長を目指しています。
新日本ライフデザイン株式会社とシダックスビューティケアマネジメント株式会社
2020年9月、新日本ライフデザイン株式会社は、株式譲渡によりシダックスビューティケアマネジメント株式会社の全株式を取得し、完全子会社化を行いました。
新日本ライフデザイン株式会社は、シダックスビューティケアマネジメント株式会社の幹部社員によって設立された、ホテル業務受託、抗菌・除菌施工、遺品整理等の事業を展開する企業です。一方のシダックスビューティケアマネジメント株式会社は、リゾート向けエステ事業、ホテル・旅館向け業務受託事業等を展開しています。
シダックスビューティケアマネジメント株式会社は、事業の選択と集中によるグループ経営の効率化を図るため、M&Aを行いました。
株式会社ANAPと株式会社アセアンビューティーホールディングス
株式会社ANAPは、株式会社アセアンビューティーホールディングスによる第三者割当増資を引き受け、出資しました。
株式会社ANAPは、「ANAP」ブランドを中心に、女性・キッズ向けのカジュアルアパレルブランドを展開する企業です。一方の株式会社アセアンビューティーホールディングスは、フィリピンでのエステサロン運営のほか、ASEAN地域におけるエステサロン事業、化粧品・美容機器の開発・製造・販売等の事業を展開しています。
株式会社ANAPは、特にフィリピン等のASEAN地域への進出を事業成長の重点戦略とし、ショッピングモール内店舗を中心としたフランチャイズ展開や、ECプラットフォーム開発等の共同事業を目的として株式会社アセアンビューティホールディングスと2020年8月に業務提携を結び、共創体制強化のため同年9月に資本提携を実施しました。
これにより、株式会社ANAPはASEAN地域での事業展開を加速させることが可能となり、新たなビジネスチャンスを探求できます。また、株式会社アセアンビューティホールディングスは、ANAPの豊富なアパレルビジネスのノウハウを活用し、エステサロン事業のさらなる拡大が図れるでしょう。
TBCグループ株式会社とSWPホールディングス株式会社
2021年7月、エステティックや化粧品関連の事業を手がけるTBCグループは、SWPホールディングスの全株式を取得し、完全子会社化しました。
売り手であるSWPホールディングスは、その子会社を通じてエステティックサロンやヘアサロン事業を運営しています。このM&Aは、SWPホールディングスを取り巻く事業環境の変化と、今後の事業戦略を総合的に考慮した結果、実施されたものとされています。
エステサロン業界におけるM&A成功のポイント・注意点
エステサロン業界でM&Aを成功させるには、業界特性を踏まえて、以下のようにいくつかのポイントを押さえる必要があります。
従業員に対する誠意ある対応を心がける
先にも挙げたように、エステサロン業界では、顧客が特定のスタッフについているケースが多くあります。そのため、M&Aの実施によるスタッフの退職リスクに留意することが重要です。
スタッフの退職がサロン全体の減益につながる可能性があることを理解し、残ってもらえる雇用条件を保証する等、誠意ある対応が必要となります。
加えて、M&A後の従業員の待遇や業務体制について明確な方針を示し、評価制度や研修方針などの統合計画を丁寧に設計することが、スタッフの安心感と定着につながります。
取引先・顧客との契約状況について確認する
取引先、顧客との契約まわりについても確認が必要です。例えば、エステサロンで使用される高額機器は、リース契約しているケースがおおくあります。M&A後の責任の所在についてあらかじめ確認しておくことが必要です。
その他、顧客が保有する回数券等の前払金についても留意が求められます。回数券・契約に関する代金は実際に施術を受ける前に支払いが完了しているため、サロンとしてはその前受け金分の施術を行う必要があります。「隠れ債務」とも呼べるこのような前受け金と取引価格の兼ね合いについては、買収側・売却側双方で慎重に相談しておく必要があるでしょう。
このような契約状況や回数券等の前受金は、デューデリジェンスの段階で正確に把握しておくことが不可欠です。特に、顧客に対する未履行サービスの債務性について、譲渡価格とのバランスを意識したすり合わせが求められます。
店舗や設備の状況を確認する
エステサロン業界におけるM&Aでは、店舗や設備そのものが譲渡の主目的となるケースが多いです。そのため、対象となる物件や備品の状況を事前に把握しておくことが欠かせません。
店舗の所在地は集客力に直結します。そのため、顧客層の厚い地域や駅からのアクセスに優れるなど、高い集客が見込める立地であれば、売却の成功確率も高まるでしょう。
また、座席数やシャワー台の数(エステサロンの場合は個室数やベッド数)は、同時に施術できる顧客数を左右します。そのため、これらの設備が充実していることは、買い手側にとって大きな魅力です。
エステサロン業界における今後のM&Aの課題と展望
エステサロン業界では、個人経営や中小規模の事業者が多く、経営基盤の脆弱さや人材の流動性といった課題から、M&Aを活用した事業承継が今後さらに広がる見込みです。一方で、施術スタッフへの顧客の信頼や、前受け金・リース契約といった契約の複雑さはM&A後の経営に影響しかねません。
M&Aを成功させるには、デューデリジェンスでの慎重なリスク確認と、買収後のPMIによる従業員や顧客との関係性の引き継ぎが不可欠です。売却・買収を単なる手段としてではなく、持続的にサロンを発展させる経営戦略として位置づけることが求められるでしょう。
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よくある質問
- エステサロン業界でM&Aが増加している理由は?
- 市場規模の縮小や収益性低下に対し、優秀なエステティシャン確保や市場競争力向上、美容業界内でのシナジー効果を目的とした大手企業による戦略的なM&Aが増えています。
- エステサロン業界のM&Aで重要な注意点は何ですか?
- スタッフの退職リスクに配慮し、従業員に誠意ある対応を行うこと、取引先・顧客との契約状況や前受け金の管理をデューデリジェンスで正確に把握すること、店舗や設備の状況を事前に確認することが重要です。
- エステサロン業界のM&A成功には何が必要ですか?
- 従業員対応の誠意、取引契約の慎重な確認、店舗設備の把握に加え、M&A後のPMI(統合プロセス)を丁寧に実施し、従業員や顧客との関係性を引き継ぐことが成功の鍵です。

