出版業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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  • #業種別M&A動向
  • #出版業界 M&A

業界の定義

出版業とは販売・頒布する目的で文書や図書を印刷し、これを書籍や雑誌の形態で発行する事業。上梓(じょうし)や板行(はんこう)とも呼ぶ。
また、出版を事業とする企業を出版社と呼ぶ。出版(複製)は一般には印刷によって行われる。新聞も同様の方法で発行されるが、流通経路が異なり出版と呼ばれることはない。ただし、現在のほとんどの新聞社は雑誌・書籍の出版を手がけている。
出版業は、新聞・テレビ・ラジオ・インターネットに比べて情報伝達の速報性は劣るが、情報の正確性・蓄積性で優れているメディアであるといわれることが多い。

業界の特色

出版業界イメージ画像

出版業界では、出版業界特有の取次という業務がある。取次とは書籍や雑誌を出版社から仕入れて、書店に卸している問屋のような役割を担うことである。取次は明治時代に雑誌を配送し始めたのが起源で、大正時代に雑誌配送ルートに書籍も一緒に配送するようになり現在の取次ビジネスに発展している。戦後は取次のおかげで日本の出版業界は、書籍・雑誌・漫画・文庫など安価な出版物を全国に流通させることができ、アメリカに次ぐ世界第2位の市場規模に成長した。

出版社には経営方針により様々な専門がある。ファッション誌・女性誌・芸能誌・コミックなど幅広い雑誌の種類の中からいずれかのみあるいは数種類を出版している出版社や児童書・ライトノベルなど雑誌から書籍なども出版する総合出版社、文芸書・学習参考書・地図など特定の分野に特化して強みを持つ出版社などがある。

出版業界では、取次を通じて各書店へ雑誌や書籍を委託販売されるが、一定期間売れなかった場合は、出版取次を通じて出版社に返品される仕組みになっている。

出版業界では、再販制度(再販売価格維持制度)と呼ばれる、出版社が書店に売価変更を許容せず、定価販売を指示する価格制度が成立している。自由で公正な競争を阻害し、消費者の利益を損なうため独占禁止法で原則禁止されているが、1953年の独占禁止法の改正により、著作物再販制度が認められている。

市場の規模

出版業界の調査・研究機関である公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所が発表した2019年度の出版業界の市場規模は、紙と電子を合算すると1兆5,432億円であった。紙は前年比4.3%減少、電子は前年比23.9%増加であり、電子書籍のシェアは19.9%を占めている。

紙のみの市場規模は、1兆2,360億円で15年連続の減少となっている。内訳は書籍が前年比3.8%減少の6,723億円、雑誌が前年比4.9%減少の5,637億円である。

出典:https://www.ajpea.or.jp/information/20200124/index.html

書籍は縮小が続く文庫本に加え、文芸書・生活実用書・学習参考書などが低調で減少幅が拡大している。一方、ビジネス書・新書・児童書がプラスをキープしている。

雑誌は単行本コミックスが伸びている。雑誌全体では定期発行誌の売上部数は減少しているが、グッズ付録や人気アイドル起用で、単発で売れる傾向が顕著になってきている。

電子出版では電子コミックが30%伸びており市場を大きく牽引している。キャンペーンやバナー広告など宣伝活動にも余念がなく読者層が拡大している。ビジネス書・ライトノベル・写真集の電子書籍化が進んでおり、出版点数の増加とともに今後も堅調に拡大していくと予想される。

企業別にみると、株式会社講談社の売上高が1,180億円、株式会社集英社が1,164億円、株式会社角川グループホールディングスが1,130億円(出版業のみの売上高)、株式会社学研ホールディングス1,122億円、株式会社小学館946億円となっている。

課題と展望

2017年に、Amazonが出版社との直接取引を開始。この流れが拡大すると取次業者の存在が危ぶまれることになる。また業界特有の課題に、返品制度がある。書店が取次業者から仕入れた出版物を出版社に自由に返品できる制度だが、返品率20%を目標としながら実際の返品率は40%前後となっており、このような高い返品率は他の業界ではほとんど見られない。

スマートフォンやタブレット端末の普及により情報が無料で容易に入手することができるようになり、出版業界は市場を縮小し続け、昨今業界全体に活気はあまり見られない。しかしながら各社の平均勤続年数は15〜20年と他の業界に比べて長期となっており、働くという視点で業界人気は続いており、他業界のように人手不足には陥りにくいと思われる。


出版業界のM&A動向

印刷業界の大手企業が、印刷会社の顧客である出版社や、その先の書店をM&Aすることや、取次会社が書店をM&Aすること、出版社が動画制作会社をM&Aすること、書店およびDVD販売店が出版社をM&Aすることなど、同業の再編で規模を追求するのではなく、自社を中心にして川上や川下を取り込むバーティカルインテグレーション型M&Aで業界での立ち位置を明確にするM&Aが多いのがこの業界のM&Aの特色である。

2017年、カルチャー・コンビニエンス・クラブ株式会社は、大日本印刷株式会社から株式会社主婦の友社をM&A。CCCは、徳間書店、美術出版社、ネコ・パブリッシングもM&Aしており、コンテンツ制作から蔦屋書店での販売までの垂直統合を進めている。

2016年、出版取次販売の株式会社トーハンは、株式会社八重洲ブックセンターを鹿島建設株式会社より譲渡されM&A。

2014年、株式会社KADOKAWAは、株式会社ドワンゴをM&A。ニコニコ動画の運営権を取得して出版事業から脱却してクロスメディアコンテンツを強化している。


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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


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