マイノリティ出資とは? 目的・メリット、出資比率と出資額の考え方などをわかりやすく解説

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マイノリティ出資とは

マイノリティ出資とは、対象会社の議決権の過半数に満たない範囲で株式を取得し、経営の支配権を持たずに資本関係を結ぶことです。資金調達や企業間の連携、将来のM&Aなどを見据えて活用される一方、出資比率や条件によって双方の権利や関係性が変わるため、目的に応じた設計が重要になります。

■この記事を読んで分かること

  • マイノリティ出資を行う目的とメリット・デメリット
  • 出資比率や出資額を考える際のポイント
  • 出資後のリスクと資本提携・M&Aとの関係

他社との協業を深めたい、成長資金を調達したい、しかし会社の経営権までは手放したくない。こうした経営課題に対する選択肢の一つが、マイノリティ出資です。
M&Aというと会社全体の買収・売却を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実務では、株式の一部を取得して資本関係を結び、段階的に関係を深めていくケースも少なくありません。

一方で、マイノリティ出資は「少しだけ株を持ってもらう」という単純な話ではありません。出資比率によって株主としての権利や経営への関与の度合いは大きく変わりますし、出資後に経営方針をめぐって対立したり、将来の株式の扱いをめぐってトラブルになったりすることもあります。

本記事では、マイノリティ出資の基本的な仕組みに加え、出資比率や出資額の考え方、事前に取り決めておくべき事項など、実務上の勘所を解説します。


マイノリティ出資とは

マイノリティ出資とは、対象会社の議決権の過半数に満たない範囲で株式を取得し、経営の支配権を持たずに資本関係を結ぶことをいいます。「少数出資」と呼ばれることもあり、出資を受けた会社は、原則として出資者の子会社にはなりません。

これに対して、議決権の過半数を取得し、対象会社を子会社化することをマジョリティ出資といいます。マジョリティ出資では出資者が取締役の選任などを通じて経営の主導権を握るのに対し、マイノリティ出資では既存の経営陣が引き続き経営の主導権を持ちます。

ただし、議決権の割合が過半数未満であっても、役員の派遣状況や資金面の関係などから実質的に経営を支配していると認められる場合には、会計上は子会社として扱われることがあります。「50%未満だから子会社にはならない」とは言い切れない点に注意が必要です。

マイノリティ出資の2つの方法

マイノリティ出資には、大きく分けて次の2つの方法があります。

第三者割当増資
対象会社が新たに株式を発行し、出資者がそれを引き受ける方法です。出資金は対象会社に払い込まれ、会社の成長資金などに充てられます。
既存株主からの株式の譲受け
オーナーなどの既存株主が保有する株式を、出資者が買い取る方法です。代金は売却した株主に支払われ、対象会社には資金が入りません。

同じ「出資」でも、どちらの方法をとるかによって、資金が誰に入るのか、既存株主の持分がどう変わるのかが異なります。第三者割当増資と既存株主からの株式の譲受けの違いを、比較項目ごとに以下の表にまとめます。

比較項目 第三者割当増資 既存株主からの株式の譲受け
資金の払込先 対象会社 株式を売却した既存株主
発行済株式数 増加する 変わらない
既存株主の持分 全株主の持分が比例的に低下する 売却した株主の持分のみ減少する
主な目的 成長資金の調達、財務基盤の強化 オーナーの資金化、株主構成の整理、段階的な承継
主な手続き(非公開会社の場合) 原則として株主総会の特別決議による募集事項の決定 譲渡制限株式の譲渡承認

目的に合った方法を選ぶことが、スキーム設計の第一歩となります。

マイノリティ出資を行う目的

マイノリティ出資には、出資する側と出資を受ける側の双方に、それぞれ異なる目的があります。業務提携などの協業目的で活用される場合や、将来の株式価値の上昇を期待して活用される場合があります。

出資する側の目的

出資する側の主な目的は、以下のとおりです。

  • 業務提携の実効性を高め、取引関係を安定させる
  • 新たな技術やノウハウ、販路へのアクセスを得る
  • 将来の買収に向けて、対象会社の事業や組織を内側から見極める
  • 成長が見込まれる会社に投資し、将来の株式価値の上昇による利益を得る

出資を受ける側の目的

一方、出資を受ける側の主な目的は、以下のとおりです。

  • 借入に頼らずに成長資金を調達し、財務基盤を強化する
  • 出資者の信用力やブランドを活用し、取引や採用を有利に進める
  • 出資者の販路、技術、人材などの経営資源を活用する
  • オーナーが保有株式の一部を資金化しつつ、経営は継続する

なぜ100%取得や子会社化ではなく一部出資を選ぶのか

会社全体を買収するのではなく、一部出資という形が選ばれる理由は、それぞれの立場によって異なります。

出資する側にとっては、少ない資金で提携関係を築けるうえ、対象会社の事業がうまくいかなかった場合の損失を限定できます。買収した会社をグループの一員として経営していく負担を抑えつつ、将来の関係強化の選択肢を残せる点も大きな理由です。

出資を受ける側にとっては、経営の主導権を維持したまま、他社の資金や経営資源を取り込める点が最大の理由でしょう。創業者の経営理念や企業文化を守りながら、単独では難しい成長を目指すことができます。

また、互いの相性を見極める「お試し期間」としての意味もあります。いきなり100%の買収を行うのではなく、まずは一部出資で協業を始め、関係が良好であれば段階的に出資比率を引き上げていく、という進め方は実務でもよく見られます。

マイノリティ出資のメリット・デメリット

次にマイノリティ出資のメリット・デメリットを、出資する側と出資を受ける側に分けて整理します。

出資する側のメリット

出資する側の主なメリットは、以下の3つが挙げられます。

それぞれについて、詳しく説明していきます。

少ない資金とリスクで提携関係を築ける

会社全体を取得する場合と比べて、必要な資金を少なくでき、対象会社の業績などから受ける経済的な影響の大きさも抑えやすくなります。提携がうまくいかなかった場合でも、損失は原則として出資額の範囲にとどまります。ただし、対象会社で簿外債務が判明した場合や業績が悪化した場合には、保有する株式の価値の低下という形で、出資者にも影響が及びます。

対象会社の経営に一定の発言権を持てる

株主として議決権を行使できるほか、出資比率によっては、会計帳簿の閲覧や重要事項への拒否権など、法律上の権利を持つことができます。株主間契約を結べば、役員の派遣や重要事項の事前承認など、出資比率以上の関与を確保することも可能です。

将来の追加取得やM&Aの選択肢を確保できる

株主として対象会社の事業や組織を内側から理解したうえで、追加取得や買収を判断できます。あらかじめ株主間契約で追加取得の権利を定めておけば、将来のM&Aに向けた道筋をつけることもできます。

出資する側のデメリット

出資する側の主なデメリットは、以下の3つが挙げられます。

それぞれについて、詳しく説明していきます。

経営の主導権を持てない

議決権の過半数を持たないため、取締役の選任や事業方針の決定は、基本的に既存の経営陣や多数派の株主に委ねられます。対象会社の経営方針が自社の期待と異なる方向に進んでも、それを止められない場合があります。

投資を回収しにくい

非上場会社の株式には市場がなく、多くの場合は譲渡制限も付されています。少数株式を買いたいと考える第三者も限られるため、提携を解消したいと考えても、保有株式を売却して資金を回収することは容易ではありません。

出資した株式の価値が下落するおそれがある

対象会社の業績が悪化すれば、出資した株式の価値も下落します。会計上、市場価格のない株式等の実質価額が取得原価に比べて著しく低下した場合には、原則として評価損の計上が必要となります。なお、子会社・関連会社株式等については、実質価額の回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合には、評価損を計上しないこともあります。

出資を受ける側のメリット

出資を受ける側の主なメリットは、以下の3つが挙げられます。

それぞれについて、詳しく説明していきます。

経営権を維持したまま資金を調達できる

第三者割当増資によるマイノリティ出資の場合には、過半数の議決権を維持したまま、成長投資のための資金を調達できます。第三者割当増資による出資は返済の必要がない資金であり、自己資本の増加によって財務基盤の強化にもつながります。

一方、既存株主から株式を譲り受ける場合には、譲渡代金は既存株主に支払われるため、対象会社には直接資金は入りません。

出資者の経営資源や信用力を活用できる

出資者が大手企業や業界の有力企業であれば、販路の拡大、技術やノウハウの提供、人材の派遣などを通じて、単独では難しい成長を実現できる可能性があります。資本関係があることで、取引先や金融機関からの信用が高まることも期待できます。

会社の将来の選択肢が広がる

出資者との関係を通じて、将来的に全株式を譲渡する第三者承継や、株式上場など、会社の将来に向けた選択肢が広がります。

出資を受ける側のデメリット

出資を受ける側の主なデメリットは、以下の3つが挙げられます。

それぞれについて、詳しく説明していきます。

経営の自由度が制約される

株主間契約で重要事項について出資者の事前承認を必要とした場合、事業計画の変更や新たな資金調達、役員の選任などを、自社の判断だけでは決められなくなります。出資者の議決権割合が3分の1を超える場合には、株主総会に出席して反対票を投じることにより、定款変更や合併などの特別決議事項を単独で阻止できる水準となります。

既存株主の持分が希薄化する

第三者割当増資によって新たに株式を発行すると、既存株主の議決権割合は低下します。将来の追加の資金調達や、事業承継に伴う株式の移転を考える際に、支配権の維持に影響が生じることがあります。

出資者との関係が将来の足かせになるおそれがある

出資者が特定の業界の事業会社である場合、その競合先との取引や提携が制約されることがあります。また、将来、会社全体を第三者に売却しようとした際に、少数株主となった出資者の同意が得られず、手続きが進まないといった事態も起こり得ます。

出資比率をどう考えるのか

マイノリティ出資において、出資比率は最も重要な検討事項の一つです。どの比率が正解という絶対的な基準はありませんが、比率によって株主としての権利や経営への関与の度合いが変わるため、それぞれの意味を理解したうえで判断する必要があります。

出資比率によって株主としての立場はどう変わるのか

会社法では、議決権の割合に応じて株主が行使できる権利が定められています。主な基準と権利は次のとおりです。

議決権の割合 主な権利・影響
1議決権以上 株主総会での議決権の行使
一定の株主 株主代表訴訟の提起など
1%以上(または300個以上) 株主提案権(取締役会設置会社の場合)
3%以上 会計帳簿の閲覧請求権、株主総会の招集請求権、役員の解任の訴え
10%以上 会社の解散の訴え
3分の1超 株主総会に出席して反対することにより、特別決議(定款変更、合併など)の成立を単独で阻止できる
過半数 普通決議(取締役の選任・解任など)を単独で可決できる
3分の2以上 特別決議を単独で可決できる

なお、会社法上の公開会社では一部の権利の行使に6か月前からの継続保有が求められるなど、会社の形態や定款の定めによって要件が異なる場合があります。

マイノリティ出資の実務では、特に「3分の1超」が大きな節目といえます。3分の1を超える議決権を持つと、定款変更や組織再編といった会社の根幹に関わる事項について事実上の拒否権を持つことになるため、出資を受ける側にとっては、経営の自由度に大きく影響する水準となります。

会計・税務上の区分との関係

出資比率は、会社法上の権利だけでなく、出資する側の会計や税務上の取扱いにも影響します。税務上は、益金不算入の取扱いも保有割合などによって異なります。

会計上の取り扱い
会計上は、対象会社が子会社に該当しない場合、議決権の20%以上を保有する場合などには、対象会社は原則として関連会社となり、出資する側が連結財務諸表を作成する場合には持分法(出資先の損益のうち出資比率に応じた部分を、投資の額に反映させる会計処理)が適用されます。15%以上20%未満でも、役員の派遣など一定の事実があれば関連会社となります。
税務上の取り扱い
税務上は、出資する側が法人である場合、受け取る配当金の益金不算入の取扱いが、株式の保有割合や保有期間等によって異なります。例えば、保有割合については5%以下、5%超3分の1以下、3分の1超100%未満、100%といった区分があります。

会社法、会計、税務のそれぞれで節目となる比率が異なるため、出資比率を決める際には、これらを横断的に確認することが大切です。

実務では何を基準に比率を考えるのか

実務では、例えば、次のような観点を総合的に考慮して出資比率を決めていきます。

それぞれについて、詳しく説明していきます。

出資の目的と求める関与の度合い

取引関係の強化が主な目的であれば、数%程度の出資でも十分な場合があります。一方、将来の買収を視野に入れ、経営にも一定の影響力を持ちたいのであれば、20%以上や3分の1超といった水準が検討されます。まずは、出資によって何を実現したいのかを明確にすることが出発点です。

出資を受ける側が守りたい支配権の水準

出資を受ける側、特にオーナー経営者にとっては、どの水準の議決権を維持すべきかが重要です。単独で特別決議を可決できる3分の2以上を維持するのか、少なくとも過半数を維持するのかによって、受け入れられる出資比率の上限が変わります。

必要な資金の額と出資前の株式価値(プレマネー・バリュエーション)

第三者割当増資の場合、出資比率は、調達したい資金の額と、出資前の株式価値(プレマネー・バリュエーション)をもとに決める発行価格との関係で決まります。出資前の株式価値が高く評価されれば、同じ金額の出資でも出資比率を低く抑えられます。

株主間契約による補完

出資比率そのものではなく、株主間契約によって権利を調整する方法もあります。例えば、出資比率は20%にとどめつつ、重要事項については出資者の事前承認を必要とする、といった設計です。比率と契約の組み合わせで双方の要望のバランスをとることが、実務上のポイントといえます。

法令上の手続・届出の要否

出資の規模や当事者によっては、法令上の手続や届出が必要となる場合があります。例えば、一定規模以上の会社同士では、株式取得によって企業結合集団の議決権保有割合が新たに20%または50%を超える場合、独占禁止法に基づく公正取引委員会への事前届出が必要となることがあります。

また、出資者が海外の投資家である場合には外国為替及び外国貿易法(外為法)上の届出等が必要となる場合があります。対象会社が上場会社等である場合には、株券等保有割合が5%を超えることによる大量保有報告制度に加え、取得後の株券等所有割合が30%を超える場合などには公開買付規制の適用についても確認する必要があります。

企業価値・出資額をどう考えるのか

マイノリティ出資では、「会社全体の価値をいくらと見るか」と「取得する株式にいくら支払うか」の2つを分けて考える必要があります。

企業価値と取得する株式の価値の関係

出資額を検討する際の出発点は、対象会社の株式価値の評価です。実務上、事業から生み出される価値を基礎として企業価値を評価し、有利子負債や現預金、非事業用資産などを調整することで、株主に帰属する株式価値を算定します。株式価値の算定には、M&Aと同様に、DCF法などのインカム・アプローチ、類似会社比較法などのマーケット・アプローチ、時価純資産法などのコスト・アプローチが用いられます。

ただし、少数株式の価値は、会社全体を支配できる株式と同じとは限りません。会社を支配できる株式には、取締役の選解任や配当方針、事業戦略といった重要事項を自ら決定できるという「支配権の価値」が含まれます。少数株式にはその価値がなく、非上場株式であれば売却も容易ではありません。こうした点を考慮し、少数株式の価値は、株式価値に持分比率を掛けた金額よりも低く評価されることがあります。

一方、事業上のシナジーを強く期待する出資者が、持分比率に応じた金額を上回る対価を支払うケースもあります。最終的な出資額は、こうした要素を踏まえた当事者間の交渉によって決まります。

出資額を決める際の実務上の考え方

第三者割当増資の場合、出資額と出資比率の関係は、出資前の株式価値(プレマネー・バリュエーション)と出資後の株式価値(ポストマネー・バリュエーション)を用いて整理します。ここでは具体的な計算例を用いて解説します。

計算例:出資方法による出資比率の違い

例えば、出資前の株式価値が8億円、発行済株式数が8,000株(1株当たり10万円)の会社に、2億円を出資するケースを考えます。

第三者割当増資により、1株当たり10万円で新株を発行する場合は、次のとおりです。

発行株式数=出資額2億円÷1株当たり10万円=2,000株

出資後の株式価値(ポストマネー)=出資前8億円+出資額2億円=10億円

出資比率=2,000株÷(8,000株+2,000株)=20%

一方、既存株主から1株当たり10万円で株式を買い取る場合は、次のとおりです。

取得株式数=2億円÷1株当たり10万円=2,000株

出資比率=2,000株÷8,000株=25%

同じ2億円を支払っても、第三者割当増資では出資比率が20%にとどまるのに対し、既存株主からの譲受けでは25%となります。第三者割当増資では、払い込まれた2億円がそのまま対象会社の価値に加わるためです。目標とする出資比率が決まっている場合には、どちらの方法を用いるかによって必要な資金の額が変わる点に注意しましょう。

価格設定にあたっての注意点

出資時の株価を低く設定すれば、出資者はより多くの株式を取得できますが、既存株主にとっては持分の希薄化が大きくなります。また、時価と比べて特に有利な価格で株式を発行する場合には、株主総会でその理由を説明する必要があります。税務上も、発行価格が時価と大きく乖離する場合には、出資者や既存株主が法人か個人か、当事者間にどのような関係があるかに応じて、法人税・所得税・贈与税などの課税関係が生じる可能性があります。既存株主からの譲受けでも、時価と大きく乖離した価格で取引すると、同様に課税上の問題が生じることがあります。

価格の妥当性を検討・説明するための資料として、第三者による株価算定書を取得しておくことも実務上有効です。

また、種類株式を発行している会社では、種類株主総会の決議が必要となる場合があります。具体的な決議機関・決議要件は、会社の機関設計、定款の定め、取得方法によって異なるため、実施にあたっては弁護士等の専門家への確認が必要です。

リスク・実務上の注意点

マイノリティ出資は、出資後の関係が長期にわたるため、契約時に想定していなかった問題が後から生じることがあります。ここでは、実務上で出資後に問題となりやすいことと、事前に整理・合意しておくべきことを解説します。

出資後に問題となりやすいこと

マイノリティ出資では、出資後に双方の経営方針や期待する役割が食い違い、重要事項について意見が対立することがあります。また、追加の資金調達による持分の希薄化や、提携関係を解消しようとしても非上場株式の買い手が見つからず、投資を回収できないといった問題も生じ得ます。

特に、経営への関与の範囲や将来の株式の取扱いが曖昧なまま出資すると、関係が悪化した際に解決が難しくなります。そのため、出資後に起こり得る状況を想定し、あらかじめ株主間契約等で対応方法を定めておくことが重要です。

事前に整理・合意しておくべきこと

出資後の問題発生を防ぐため、出資の際には株主間契約(出資者と既存株主・対象会社の間で、株主としての権利や義務を定める契約)を締結し、次のような事項を取り決めておくのが一般的です。

取り決める事項 主な内容
経営への関与 取締役の指名権、取締役会へのオブザーバー参加、重要事項の事前承認・拒否権
情報提供 月次決算や事業計画などの報告義務、会計帳簿の閲覧
株式の譲渡制限 第三者への譲渡の制限、先買権(他の株主が優先して買い取れる権利)
共同売却 タグアロング(多数派の株主が売却する際に、少数株主も同じ条件で売却できる権利)、ドラッグアロング(多数派の株主が売却する際に、少数株主にも売却を求められる権利)
株式の買取り プットオプション(相手方に株式の買取りを求める権利)、コールオプション(相手方から株式を買い取る権利)とその価格の決め方
持分の維持 追加の株式発行時に、持分比率を維持するための引受権
その他 競業避止、デッドロック(意見の対立により意思決定ができない状態)時の解決方法、契約の終了事由

特に重要なのが、出口戦略の設計です。どのような場合に、誰が、どのような価格で株式を買い取るのかを事前に定めておかなければ、関係が悪化したときに解決の手段がなくなってしまいます。買取価格を「その時点の時価」とだけ定めると、時価の算定方法をめぐって争いになることもあるため、算定方法や算定を依頼する第三者についても具体的に定めておくことが望ましいといえます。

なお、株主間契約は原則として契約の当事者間でのみ効力を持つものです。拒否権などの権利により強い効力を持たせたい場合には、定款で定める種類株式(拒否権付株式など)の活用が検討されることもあります。

株主間契約の内容は、双方の利害が直接対立する部分です。弁護士、公認会計士、税理士、M&Aの専門家等の助言を受けながら、将来起こり得る事態を想定して設計することが重要です。

マイノリティ出資と資本提携・資本業務提携、M&Aの関係

マイノリティ出資は、単独の資金調達手段としてだけでなく、企業同士が連携するための手段や、M&Aに向けて段階的に関係を築くための手段としても活用されます。ここでは、業務提携・資本提携・資本業務提携との関係を整理したうえで、M&Aへ進むケースをみていきます。

業務提携・資本提携・資本業務提携との関係

企業同士の連携には、出資を伴わない業務提携と、出資を伴う資本提携があり、この2つを組み合わせたものが資本業務提携です。それぞれの意味は、次のとおりです。

  • 業務提携:資本関係を持たず、契約に基づいて技術・生産・販売などの分野で協力する取組みをいいます。
  • 資本提携:一方が他方に出資する、または互いに株式を持ち合うことで資本関係を持ち、当事者間の結び付きを安定させる取組みをいいます。必ずしも経営権の取得を意味するものではありません。
  • 資本業務提携:資本提携と業務提携を組み合わせ、資本関係を持ちながら、特定の分野での業務協力も契約で定める形態をいいます。

これらを表にまとめると以下のとおりです。

比較項目 業務提携 資本提携 資本業務提携
資本関係 持たない 持つ 持つ
協力内容 契約で具体的に定める 必ずしも定めない 契約で具体的に定める
関係の解消 契約の解除により比較的容易 株式の処分が必要で機動性は下がる 株式の処分が必要で機動性は下がる
マイノリティ出資との関係 出資を伴わないため該当しない 経営権を取得しない範囲の出資であり、代表的な形といえる 業務上の協力を併せて行う場合はこの形態となる

マイノリティ出資は、経営権の取得を目的とせずに資本関係を持つものであるため、資本提携の代表的な形といえます。これに業務上の協力を組み合わせれば、資本業務提携となります。実務では、業務提携から始まった関係が、協業の実績を踏まえて資本業務提携へ発展するケースも少なくありません。

資本関係を持つことの意味と留意点

業務提携だけの関係は契約の解消が比較的容易であるため、双方が本腰を入れて経営資源を投入しにくい面があります。資本関係を持つことで、出資者は対象会社の成長による株式価値の上昇という利益を共有することになり、協業への関与が強まることが期待できます。

一方で、関係を解消するには株式を処分する必要があるため、業務提携と比べて機動性は下がります。どの程度の結び付きが必要なのかを踏まえ、業務提携にとどめるのか、資本関係まで持つのかを検討することが大切です。

なお、互いに株式を持ち合う場合には、一方の会社が他方の会社の総株主の議決権の4分の1以上を保有すると、保有されている側の会社は、相手方の株主総会で議決権を行使できなくなる点に注意が必要です。

一部出資から追加取得・M&Aへ進むケース

一部出資で協業を始め、関係が深まった段階で出資比率を引き上げ、最終的に子会社化するケースもあります。いきなり100%の買収を行う場合と比べ、出資者は対象会社の実態を十分に理解したうえで買収を判断でき、対象会社の経営陣や従業員にとっても、段階的に新しい株主との関係に慣れていくことができます。

この場合は、出資時の株主間契約で、将来の追加取得の条件をどこまで定めておくかが重要です。追加取得の時期、比率、価格の決め方をあらかじめ定めておけば、将来の交渉がスムーズになります。一方で、条件を固定しすぎると、業績が想定と異なった場合に一方が不利益を被ることもあるため、価格を業績に連動させる算定式を用いるなど、柔軟性を持たせた設計が検討されます。

事業承継との関連

マイノリティ出資は、事業承継の場面で活用されることもあります。例えば、後継者が見つからない会社のオーナーが、将来の第三者承継を見据えて、まず一部の株式を事業パートナーに譲渡し、一定期間は自らも経営に関与しながら、段階的に株式を移していくといった進め方です。

オーナーにとっては、一度に経営から退くのではなく、引継ぎの期間を確保しながら承継を進められる点が利点です。一方で、最終的な株式の譲渡価格や時期が明確でないと、オーナーが期待していた承継が実現しないおそれもあります。段階的な承継を検討する場合には、最終的なゴールと、そこに至る条件を出資の段階から明確にしておくことが大切です。

まとめ

マイノリティ出資とは、議決権の過半数に満たない範囲で株式を取得し、経営の支配権を持たずに資本関係を結ぶことをいいます。出資する側は少ない資金とリスクで提携関係を築け、将来のM&Aの選択肢も確保できます。出資を受ける側は、第三者割当増資による場合には経営権を維持したまま資金を調達できるほか、出資者の経営資源を活用できます。

一方で、出資比率によって株主としての権利や経営への関与の度合いは大きく変わります。特に、3分の1超や過半数といった節目の意味を理解したうえで、出資の目的、守りたい支配権の水準、必要な資金の額を踏まえて比率を検討する必要があります。出資額は、株式価値の評価を出発点に、少数株式であることやシナジーへの期待を考慮した交渉によって決まります。

マイノリティ出資を検討する経営者にとって大切なのは、出資そのものを目的とせず、「出資を通じて何を実現したいのか」「関係が変化したときにどう対応するのか」を事前に描いておくことです。経営への関与の範囲や将来の株式の扱いを株主間契約で明確にし、出口まで見据えた設計を行うことが、トラブルを防ぎ、出資の効果を引き出すことにつながります。検討の際は、M&Aの専門家や弁護士、公認会計士等に早い段階から相談することをお勧めします。

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よくある質問

  • マイノリティ出資とは何ですか?
  • 対象会社の議決権の過半数に満たない範囲で株式を取得し、経営の支配権を持たずに資本関係を結ぶことをいいます。第三者割当増資によって新株を引き受ける方法と、既存株主から株式を譲り受ける方法があります。議決権の過半数を取得して子会社化するマジョリティ出資とは異なり、既存の経営陣が引き続き経営の主導権を持つのが一般的です。ただし、議決権が50%以下であっても、実質的な支配関係によって会計上は子会社と判定される場合があります。
  • マイノリティ出資にはどのようなメリットがありますか?
  • 出資する側にとっては、少ない資金とリスクで提携関係を築けること、株主として一定の発言権を持てること、将来の追加取得やM&Aの選択肢を確保できることが主なメリットです。出資を受ける側にとっては、第三者割当増資による場合には、経営権を維持したまま資金を調達できることや、出資者の経営資源や信用力を活用できることが挙げられます。
  • マイノリティ出資のデメリットやリスクは何ですか?
  • 出資する側にとっては、経営の主導権を持てないこと、非上場株式のため投資の回収が難しいこと、対象会社の業績悪化によって株式の価値が下落するおそれがあることが挙げられます。出資を受ける側にとっては、経営の自由度が制約されることや、既存株主の持分が希薄化することがデメリットです。こうしたリスクを抑えるため、株主間契約で経営への関与の範囲や株式の出口を事前に定めておくことが重要です。
  • 資本提携や資本業務提携とは、どのような関係にありますか?
  • 資本提携とは、出資や株式の持ち合いによって資本関係を持ち、当事者間の結び付きを安定させる取組みをいいます。経営権の取得を必ずしも意味しないため、マイノリティ出資は資本提携の代表的な形といえます。これに、技術や販売などの分野での業務上の協力を組み合わせたものが資本業務提携です。出資を伴わず、契約に基づく協力のみを行う場合は業務提携となります。
  • 出資比率は何%にするのが一般的ですか?
  • どの比率が正解という基準はなく、出資の目的や双方の要望によって決まります。ただし、会社法上の権利が変わる節目として、3%以上(会計帳簿の閲覧請求権など)、3分の1超(株主総会に出席して反対することによる特別決議の成立阻止)、過半数(普通決議の単独可決)などがあり、これらを意識して比率が検討されます。出資を受ける側にとっては、3分の1を超える出資を受け入れると、定款変更などについて出資者が拒否権を持つ点に注意が必要です。
  • マイノリティ出資は、どのようなタイミングで検討するとよいですか?
  • 成長投資のための資金が必要になったとき、特定の企業との協業を本格化させたいとき、将来の事業承継やM&Aを見据えて段階的に関係を築きたいときなどが代表的なタイミングです。資金繰りが逼迫してから検討すると、不利な条件を受け入れざるを得なくなるおそれがあるため、余裕のある段階から選択肢の一つとして検討しておくことが望ましいといえます。
  • マイノリティ出資はどのような手順で進めますか?
  • 一般的には、出資の目的の整理、出資先または出資者の選定、株式価値の算定と出資条件の交渉、デューデリジェンス、株主間契約・投資契約の締結、株主総会決議などの会社法上の手続き、払込みまたは株式の譲渡、という流れで進みます。出資の規模や当事者によっては、独占禁止法や外為法上の届出が必要となる場合もあります。
  • 少数株式の価値は、どのように評価されますか?
  • 出発点は会社全体の株式価値の評価ですが、少数株式には経営を支配する権利がなく、非上場株式であれば売却も容易ではないため、株式価値に持分比率を掛けた金額よりも低く評価されることがあります。一方で、出資者が大きなシナジーを見込む場合には、それを上回る対価が支払われることもあります。最終的には、こうした要素を踏まえた当事者間の交渉によって出資額が決まります。
  • マイノリティ出資から子会社化に進むことはできますか?
  • 可能です。一部出資で協業を始め、関係が深まった段階で出資比率を引き上げ、最終的に子会社化するケースは実務でも見られます。スムーズに進めるためには、出資時の株主間契約で、将来の追加取得の時期や比率、価格の決め方をあらかじめ定めておくことが有効です。ただし、条件を固定しすぎると業績の変化に対応できないため、業績に連動した価格の算定方法を用いるなど、柔軟性を持たせた設計が検討されます。

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