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原則的評価方式とは
原則的評価方式とは、相続税や贈与税の課税価格を算定するため、相続や贈与で取得した非上場株式を一定の基準に基づいて評価する方法です。経営への影響力を持つ株主等が取得する場合に適用され、会社の規模などに応じて評価方法が決まります。
■この記事を読んで分かること
- 原則的評価方式と配当還元方式の適用対象の違い
- 相続・贈与で取得する非上場株式の評価方式を判定する流れ
- 非上場株式の会社規模に応じた評価方法と計算の考え方
事業承継を検討し始めると、「自社株はいくらで評価されるのか」と気になる方も多いでしょう。非上場株式には市場で決まる価格がないため、非上場株式を相続や贈与で取得した場合は、国税庁の財産評価基本通達に定められたルールに沿って評価します。
その中心となるのが、本記事で解説する「原則的評価方式」です。どの評価方式が適用されるかは、株式を取得する人の立場、会社の規模、資産の構成などによって段階的に決まります。同じ会社の株式であっても、誰が取得するかによって評価額が大きく変わることもあります。
本記事では、計算式の細部よりも「自社株にどの評価方式が適用されるのか」を判断する流れに重点を置き、原則的評価方式の仕組みと実務上の注意点などを解説します。
原則的評価方式とは
原則的評価方式とは、相続・贈与などで取得した取引相場のない株式(非上場株式)について、会社の経営に影響力を持つ株主(同族株主等)が取得した場合に適用される評価方式をいいます。
会社の経営を支配できる立場の株主にとって、株式の価値は配当を受け取る権利にとどまりません。会社の財産や利益そのものに対する支配権を意味します。そのため、会社の収益力や純資産の水準を反映した方法で評価することとされています。
何のための評価方式なのか
原則的評価方式は、相続税や贈与税を計算する際の課税価格を算定するための評価方式です。国税庁の財産評価基本通達は、課税の公平を保つために財産の種類ごとに画一的な評価方法を定めており、非上場株式についても一定のルールに従って評価します。
したがって、原則的評価方式による評価額は、M&Aで売り手と買い手が合意する取引価格とは性格が異なる点に留意が必要です。この点は後述します。
特例的評価方式(配当還元方式)との違い
非上場株式の評価方式には、原則的評価方式のほかに特例的評価方式があります。特例的評価方式とは、経営への影響力が小さい少数株主が取得した株式に適用される評価方式で、配当還元方式とも呼ばれます。
少数株主にとって、株式を保有する意味は主に配当を受け取ることにあります。そこで配当還元方式では、その株式から受け取る年間の配当金額を一定の利率(10%)で還元して評価します。一般に、配当還元方式による評価額は、原則的評価方式による評価額よりも大幅に低くなります。それぞれの違いを表にまとめると以下のとおりです。
| 比較項目 | 原則的評価方式 | 特例的評価方式 (配当還元方式) |
|---|---|---|
| 適用される株主 | 同族株主等、経営に影響力を持つ株主 | 同族株主以外の株主など、経営への影響力が小さい株主 |
| 評価の考え方 | 会社の収益力や純資産の水準を反映する | 受け取る配当金額をもとに評価する |
| 主な評価方法 | 類似業種比準方式、純資産価額方式、両者の併用 | 配当還元方式 |
| 評価額の水準 | 相対的に高くなりやすい | 相対的に低くなりやすい |
| 典型的なケース | オーナー一族や後継者が株式を相続・贈与で取得する | 取引先や役員でない従業員など、少数株主が株式を取得する |
計算例:配当還元方式による評価の場合
配当還元方式は、国税庁の財産評価基本通達188-2に定められた算式に基づいて計算します。
例えば、1株当たりの資本金等の額が500円で、直前期末以前2年間の平均配当額が1株当たり40円の会社を考えます。配当還元方式では、1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の配当金額に換算して計算します。
50円換算の年配当金額=40円÷(500円÷50円)=4円
配当還元価額=4円÷10%×(500円÷50円)=400円
この会社の原則的評価方式による評価額が1株当たり数千円であったとしても、配当還元方式が適用される株主であれば、1株当たり400円で評価されることになります。なお、記念配当などの臨時的な配当は計算から除きます。また、50円換算の年配当金額が2円50銭未満の場合や無配の場合は2円50銭として計算し、配当還元方式による評価額が原則的評価方式による評価額を上回る場合には、原則的評価方式による評価額が上限となります。
非上場株式の評価方式はどのように決まるのか
非上場株式にどの評価方式が適用されるかは、次の4つのステップで判断していきます。
それぞれのステップについて、順に解説します。
株式を取得した人の立場(株主区分)を判定する
最初に確認するのは、株式を取得した人が、原則的評価方式と特例的評価方式のどちらの対象となる株主かという点です。判定は、課税時期(相続・贈与により株式を取得した日)の株主構成と議決権割合を基礎に、取得者本人だけでなく、その同族関係者(親族や、親族が支配する会社など)を含めたグループ単位で行います。後述する「5%未満」の要件については、取得者本人が株式を取得した後の議決権割合で確認します。
まず、その会社に同族株主がいるかどうかを確認します。同族株主とは、株主の1人とその同族関係者の議決権の合計が、会社の議決権総数の30%以上である場合の、その株主とその同族関係者をいいます。ただし、最も議決権の多いグループが50%超を保有している場合には、そのグループだけが同族株主となります。
同族株主のいる会社の場合
同族株主のいる会社では、同族株主が取得した株式は原則的評価方式、同族株主以外の株主が取得した株式は特例的評価方式で評価します。
ただし、同族株主であっても、次のすべてに当てはまる場合には特例的評価方式が適用されます。
- 同族株主の中に「中心的な同族株主」がいる
- 取得者本人が中心的な同族株主ではない
- 取得後の議決権割合が5%未満である
- 取得者本人が役員ではなく、法定申告期限までに役員となる予定もない
中心的な同族株主とは、同族株主の1人と、その配偶者、直系血族、兄弟姉妹、1親等の姻族(これらの者が議決権の25%以上を保有する会社を含みます)の議決権の合計が、議決権総数の25%以上となる場合のその株主をいいます。
同族株主のいない会社の場合
同族株主のいない会社では、議決権割合が15%以上のグループに属する株主が取得した株式は原則的評価方式、15%未満のグループに属する株主が取得した株式は特例的評価方式で評価します。
15%以上のグループに属する場合でも、「中心的な株主」(15%以上のグループのうち、単独で10%以上の議決権を有する株主)がいて、取得者本人の取得後の議決権割合が5%未満であり、役員でも役員となる予定の者でもないときは、特例的評価方式が適用されます。
このように、株主区分は取得者ごと・取得の時点ごとに判定します。同じ会社の株式でも、後継者が取得すれば原則的評価方式、議決権割合の小さい親族が取得すれば特例的評価方式というように、取得者によって評価方式が変わる点に注意が必要です。
会社の規模(大会社・中会社・小会社)を判定する
原則的評価方式の対象となる場合は、次に会社の規模を「大会社」、「中会社」、「小会社」のいずれかに区分します。中会社はさらに3段階に分かれ、区分によって評価方法が変わります。判定の具体的な基準は後述します。
会社が「特定の評価会社」に該当するかを確認する
あわせて、会社が資産の保有状況や営業の状態から見て、通常の評価方法がなじまない「特定の評価会社」に該当しないかを確認します。例えば、総資産に占める株式等や土地等の割合が高い会社、開業から3年未満の会社などがこれにあたり、原則として純資産価額方式で評価することになります。詳しくは後述します。
判定結果に応じて評価方式を当てはめる
ここまでの判定結果を当てはめると、評価方式は次のとおり決まります。
| 判定結果 | 適用される評価方式 |
|---|---|
| 同族株主以外の株主などが取得した株式 | 特例的評価方式(配当還元方式) |
| 同族株主等が取得した大会社の株式 | 類似業種比準方式(純資産価額方式も選択可) |
| 同族株主等が取得した中会社の株式 | 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用(純資産価額方式も選択可) |
| 同族株主等が取得した小会社の株式 | 純資産価額方式(併用方式も選択可) |
| 同族株主等が取得した特定の評価会社の株式 | 原則として純資産価額方式(区分に応じて他の方式を選択できる場合あり) |
なお、開業前・休業中の会社や清算中の会社の株式は、同族株主以外の株主が取得した場合でも配当還元方式は適用されません。
原則的評価方式で用いられる主な評価方法
原則的評価方式では、類似業種比準方式と純資産価額方式の2つの評価方法を、会社の規模に応じて単独または組み合わせて用います。それぞれについて、詳しく説明していきます。
類似業種比準方式
類似業種比準方式とは、評価する会社と事業内容が類似する上場会社の株価を基準に、1株当たりの「配当金額」、「利益金額」、「純資産価額(帳簿価額)」の3つの要素を比較して株式を評価する方法をいいます。類似業種の株価や比準要素の数値は、国税庁が業種ごとに公表しています。
類似業種比準方式の概要、算定イメージ、メリット・デメリットをまとめると以下のとおりです。
| 概要 | 事業内容が類似する上場会社の株価をもとに、1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額の3つの要素を比較して評価する方法 |
|---|---|
| 算定イメージ | 類似業種の株価×3要素の比準割合の平均×斟酌率(大会社:0.7、中会社:0.6、小会社:0.5) |
| メリット | 内部留保の厚い会社でも、純資産価額方式に比べて評価額が抑えられることが多い |
| デメリット | 利益や配当の増減、上場株式の相場変動によって評価額が変動しやすい |
上記の3つの要素が、それぞれ類似業種の何倍にあたるかを求めて平均し、類似業種の株価に乗じます。さらに、非上場株式は上場株式に比べて換金性が低いことなどを踏まえ、会社の規模に応じた一定の割合(斟酌率)を掛けて評価額を算定します。
計算例:類似業種比準方式の基本的な考え方
以下は、端数処理などを省略して単純化した設例です。類似業種比準方式では、1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額で計算し、最後に実際の1株当たりの金額に換算します。
- 類似業種の株価
- 300円
- 1株当たりの配当金額
- 類似業種5円、評価会社4円
- 1株当たりの利益金額
- 類似業種30円、評価会社45円
- 1株当たりの純資産価額
- 類似業種300円、評価会社390円
- 会社規模
- 大会社(斟酌率0.7)
- 評価会社の1株当たりの資本金等の額
- 500円(資本金等の額1,000万円、発行済株式数2万株)
まず、3つの要素の比準割合を求めて平均します。
比準割合の平均=(4円÷5円+45円÷30円+390円÷300円)÷3=(0.80+1.50+1.30)÷3=1.20
これを類似業種の株価に乗じ、斟酌率を掛けます。
50円換算の類似業種比準価額=300円×1.20×0.7=252円
最後に、実際の1株当たりの資本金等の額(500円)に換算します。
1株当たりの類似業種比準価額=252円×(500円÷50円)=2,520円
評価会社の利益が類似業種より高ければ評価額は上がり、配当や純資産が類似業種を下回れば評価額は下がります。類似業種比準方式の評価額は、自社の業績だけでなく、類似業種の株価水準によっても変動する点が特徴です。
純資産価額方式
次に純資産価額方式とは、会社が保有する資産と負債を相続税評価額に洗い替え、その差額である純資産をもとに株式を評価する方法をいいます。会社を清算した場合に株主に分配される財産の価値を評価する、という考え方に近い方法です。
純資産価額方式の概要、算定イメージ、メリット・デメリットをまとめると以下のとおりです。
| 概要 | 会社の資産・負債を相続税評価額に洗い替え、純資産の額をもとに評価する方法 |
|---|---|
| 算定イメージ | (相続税評価額による総資産-負債-評価差額に対する法人税額等相当額)÷発行済株式数 |
| メリット | 会社の財産の状況を直接反映するため、計算の考え方が理解しやすい |
| デメリット | 土地の含み益や内部留保が大きい会社では、評価額が高くなりやすい |
資産を相続税評価額に洗い替えると、土地や有価証券の含み益が表面化します。この含み益(評価差額)には、会社を清算した場合に法人税等が課されることを考慮して、評価差額に対する法人税額等相当額を控除します。控除する割合は、2026年4月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した株式については38%です(それより前の取得分は37%)。
なお、中会社・小会社については、株式を取得した人とその同族関係者の議決権割合が50%以下の場合、純資産価額の80%で評価します。
計算例:純資産価額方式の基本的な考え方
前述の類似業種比準方式の設例と同じ会社について、次の前提で計算します。
- 相続税評価額による総資産
- 5億円(帳簿価額3億5,000万円)
- 負債
- 2億円
- 発行済株式数
- 2万株
まず、相続税評価額による純資産と帳簿価額による純資産の差額(評価差額)をもとに、法人税額等相当額を求めます。
相続税評価額による純資産=5億円-2億円=3億円
帳簿価額による純資産=3億5,000万円-2億円=1億5,000万円
評価差額に対する法人税額等相当額=(3億円-1億5,000万円)×38%=5,700万円
相続税評価額による純資産から法人税額等相当額を控除し、発行済株式数で割ります。
1株当たりの純資産価額=(3億円-5,700万円)÷2万株=1万2,150円
類似業種比準方式と純資産価額方式を併用する場合
類似業種比準方式と純資産価額方式を併用する場合の概要、算定イメージ、メリット・デメリットをまとめると以下のとおりです。
| 概要 | 類似業種比準価額と純資産価額を、会社規模に応じた割合(Lの割合)で加重平均して評価する方法 |
|---|---|
| 算定イメージ | 類似業種比準価額×L+純資産価額×(1-L) |
| メリット | 収益力と財産の両面を反映した評価となる |
| デメリット | 純資産価額の比重が大きい区分では、評価額が高くなりやすい |
中会社の株式は、類似業種比準価額と純資産価額を一定の割合で組み合わせる併用方式で評価します。この割合を「Lの割合」といい、会社規模が大きいほど類似業種比準価額の比重が高くなります。なお、中会社は納税者の選択により純資産価額方式で評価することもでき、小会社は納税者の選択によりLの割合を0.50とした併用方式を用いることもできます。
計算例:会社規模の区分によって評価額はどう変わるか
前述の設例の会社について、仮に会社規模の区分だけが異なるとした場合の評価額を比べてみます。類似業種比準価額は斟酌率が会社規模によって異なるため、中会社では2,160円(300円×1.20×0.6×10)、小会社では1,800円(300円×1.20×0.5×10)となります。
| 会社規模 | 評価方法 | 1株当たりの評価額 |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準価額 | 2,520円 |
| 中会社(Lの割合0.75) | 2,160円×0.75+1万2,150円×0.25 | 4,657円 |
| 小会社 | 1,800円×0.50+1万2,150円×0.50(併用方式を選択) | 6,975円 |
同じ財務内容でも、会社規模の区分によって評価額に約2.8倍の差が生じています。内部留保が厚く、純資産価額が類似業種比準価額を大きく上回る会社ほど、会社規模の判定が評価額に与える影響は大きくなります。
会社規模によって評価方法はどう変わるのか
会社規模は、業種の区分と、「従業員数」、「総資産価額(帳簿価額)」、「取引金額(直前期末以前1年間の売上高)」の3つの基準によって判定します。
大会社・中会社・小会社の判定基準
まず、直前期末以前1年間の従業員数が70人以上の会社は、それだけで大会社となります。70人未満の場合は、次の2つの表を用いて判定します。
総資産価額(帳簿価額)と従業員数による区分
| 区分 | 卸売業 | 小売・サービス業 | それ以外の業種 | 従業員数 |
|---|---|---|---|---|
| 大会社 | 20億円以上 | 15億円以上 | 15億円以上 | 35人超 |
| 中会社の大 (L=0.90) |
4億円以上 | 5億円以上 | 5億円以上 | 35人超 |
| 中会社の中 (L=0.75) |
2億円以上 | 2億5,000万円以上 | 2億5,000万円以上 | 20人超 |
| 中会社の小 (L=0.60) |
7,000万円以上 | 4,000万円以上 | 5,000万円以上 | 5人超 |
| 小会社 | 7,000万円未満 | 4,000万円未満 | 5,000万円未満 | 5人以下 |
取引金額による区分
| 区分 | 卸売業 | 小売・サービス業 | それ以外の業種 |
|---|---|---|---|
| 大会社 | 30億円以上 | 20億円以上 | 15億円以上 |
| 中会社の大 (L=0.90) |
7億円以上 | 5億円以上 | 4億円以上 |
| 中会社の中 (L=0.75) |
3億5,000万円以上 | 2億5,000万円以上 | 2億円以上 |
| 中会社の小 (L=0.60) |
2億円以上 | 6,000万円以上 | 8,000万円以上 |
| 小会社 | 2億円未満 | 6,000万円未満 | 8,000万円未満 |
判定の手順は次のとおりです。まず、1つ目の表で「総資産価額による区分」と「従業員数による区分」を求め、いずれか下位の区分をとります。次に、その区分と2つ目の表の「取引金額による区分」を比べ、いずれか上位の区分をその会社の規模とします。
計算例:会社規模の判定
例えば、製造業(それ以外の業種)で、従業員数30人、総資産価額(帳簿価額)6億円、取引金額12億円の会社を考えます。
- 総資産価額6億円は「中会社の大」の水準ですが、従業員数30人は「中会社の中」の水準であるため、下位の「中会社の中」となります。
- 取引金額12億円は「中会社の大」の水準です。
- 両者のうち上位の区分をとるため、この会社は「中会社の大(L=0.90)」と判定されます。
実務上どのように判断していくのか
会社規模の判定は評価額に直結するため、実務では次の点を慎重に確認します。
- 業種の判定
- 日本標準産業分類に基づいて判定し、複数の事業を営む場合は、取引金額が最も多い業種で判定します。
- 従業員数の数え方
- 直前期末以前1年間継続して勤務した従業員(週30時間未満の者を除く)の人数に、それ以外の従業員の年間労働時間の合計を1,800時間で割った数を加えて算定します。社長や専務、常務、監査役など一定の役員は従業員数に含めません。
- 総資産価額
- 相続税評価額ではなく、直前期末の帳簿価額を用います。
- 会社法上の区分との違い
- 会社法上の「大会社」(資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社)とは、基準がまったく異なります。
通常とは異なる評価となる「特定の評価会社」
会社の資産の保有状況や営業の状態によっては、類似業種比準方式を用いた通常の評価がなじまない場合があります。財産評価基本通達では、このような会社を「特定の評価会社」とし、原則として純資産価額方式で評価することとしています。
| 区分 | 主な判定基準 | 主な評価方法(同族株主等が取得した場合) |
|---|---|---|
| 比準要素数1の会社 | 類似業種比準方式の3要素のうち、直前期末で2つがゼロで、かつ直前々期末でも2つ以上がゼロ | 純資産価額方式(類似業種比準価額×0.25+純資産価額×0.75の選択可) |
| 株式等保有特定会社 | 総資産(相続税評価額)に占める株式等の割合が50%以上 | 純資産価額方式(S1+S2方式の選択可) |
| 土地保有特定会社 | 総資産(相続税評価額)に占める土地等の割合が一定以上(大会社は70%以上、中会社は90%以上など) | 純資産価額方式 |
| 開業後3年未満の会社等 | 開業後3年未満、または直前期末の3要素がいずれもゼロ | 純資産価額方式 |
| 開業前・休業中の会社 | 開業前または休業中 | 純資産価額方式 |
| 清算中の会社 | 清算中 | 清算分配見込額による評価 |
複数の区分に該当する場合には、判定の優先順位が定められています。また、同族株主以外の株主が取得した場合には、開業前・休業中の会社と清算中の会社を除き、配当還元方式で評価します。
資産の大部分を子会社株式が占める持株会社などは、株式等保有特定会社に該当することがあります。株式等保有特定会社の判定基準や評価方法、事業承継の場面での注意点については、「株式等保有特定会社」の記事で詳しく解説しています。
原則的評価方式で自社株を評価する際の注意点
原則的評価方式による自社株評価について、経営者が誤解しやすい点や、実務上確認しておくべき主なポイントは、以下の5つが挙げられます。
- 決算書の純資産の額がそのまま評価額になるわけではない
- 評価額は毎年変動する
- 取得者によって評価方式が変わる
- 課税時期前3年以内に取得した土地等・家屋等は通常の取引価額で評価される
- 相続・贈与以外の取引では別の考え方が必要になる
それぞれについて、詳しく説明していきます。
決算書の純資産の額がそのまま評価額になるわけではない
「純資産が1億円だから、株式の評価額も1億円程度だろう」と考えるのは誤りです。純資産価額方式では資産を相続税評価額に洗い替えるため、土地や有価証券に含み益があれば、評価額は決算書の純資産を上回ります。一方、大会社や中会社では類似業種比準方式の比重が高くなるため、評価額が純資産を大きく下回ることもあります。
評価額は毎年変動する
類似業種比準方式は、直前期の配当・利益・純資産と、類似業種の株価をもとに計算します。そのため、自社の業績が同じでも、株式市場の相場が上がれば評価額は上昇します。役員退職金を支給して利益が減少した年など、決算内容によっても評価額は大きく変わります。なお、固定資産の売却益などの非経常的な利益は、類似業種比準方式の利益金額から除外されます。贈与などを行う時期によって用いる決算期が変わるため、評価額の推移を把握しておくことが大切です。
取得者によって評価方式が変わる
株主区分は取得者ごとに判定するため、同じ会社の株式でも、後継者が取得する場合と議決権の少ない親族が取得する場合とで、評価額が大きく異なることがあります。株式を複数の親族に分けて相続・贈与する場合には、取得後の議決権割合や役員への就任予定も踏まえて判定する必要があります。
課税時期前3年以内に取得した土地等・家屋等は通常の取引価額で評価される
純資産価額方式では、課税時期前3年以内に会社が取得・新築した土地や借地権などの土地等、家屋やその附属設備・構築物といった家屋等は、路線価などによらず、原則として通常の取引価額に相当する金額で評価します(帳簿価額が通常の取引価額に相当すると認められる場合は、帳簿価額によることもできます)。評価額を下げる目的で会社が不動産を取得しても、期待した効果が得られないことがある点に注意が必要です。
相続・贈与以外の取引では別の考え方が必要になる
財産評価基本通達は、相続税・贈与税の計算のためのルールです。オーナーが保有する株式を、発行会社や自身が経営する別の会社に売却する場合など、個人と法人の間の取引では、所得税や法人税の取扱いに基づいて時価を検討する必要があります。この場合、財産評価基本通達の方法を一定の条件のもとで修正して用いる取扱いがあり、原則的評価方式による評価額がそのまま適正な時価になるとは限りません。時価と大きく乖離した価格で取引すると、売り手や買い手に想定外の課税が生じるおそれがあります。
自社株の評価は、前提となる判定を1つ誤るだけで評価額が大きく変わります。事業承継を検討する際は、税理士等の専門家に評価を依頼して定期的に評価額を確認するとともに、事業承継税制(一定の要件のもとで、後継者が取得した自社株に係る相続税・贈与税の納税を猶予する制度)など、税負担に関わる制度の活用可否もあわせて検討することをお勧めします。
M&Aにおける株価算定との違い
原則的評価方式による評価額は、相続税や贈与税を計算するための評価額です。M&Aで第三者に会社を譲渡する際の株価は、これとは異なる考え方で決まります。
| 比較項目 | 原則的評価方式 | M&Aにおける株価算定 |
|---|---|---|
| 目的 | 相続税・贈与税の計算 | 取引価格の目安の算定 |
| 拠り所 | 財産評価基本通達 | 当事者間の合意 |
| 主な評価方法 | 類似業種比準方式など | DCF法、類似会社比較法など |
| 将来予測・買い手とのシナジー | 原則として直接反映しない | 反映する |
| 評価額の性質 | 通達に従った計算結果 | 交渉の出発点となる目安 |
例えば、原則的評価方式による評価額が1株当たり3,000円の会社であっても、収益力の高さや買い手とのシナジーが評価されれば、M&Aではそれを大きく上回る価格で譲渡されることがあります。反対に、財務内容に課題がある会社では、M&Aでの価格が税務上の評価額を下回ることもあります。親族内承継を前提に自社株の評価額を把握していた経営者が、第三者承継を検討し始めた際に、両者の違いに戸惑うケースは少なくありません。M&A・第三者承継における株価算定の考え方については、「非上場・中小企業の株価算定」の記事で詳しく解説しています。
まとめ
原則的評価方式は、相続・贈与で取得した非上場株式について、経営に影響力を持つ同族株主等が取得した場合に適用される評価方式です。会社の規模に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式、またはその併用によって評価します。少数株主が取得した場合に適用される特例的評価方式(配当還元方式)と比べ、評価額は高くなりやすい傾向があります。
自社株にどの評価方式が適用されるかは、株主区分、会社規模、特定の評価会社への該当性という段階的な判定によって決まります。同じ会社でも取得者によって評価方式が異なることがあり、会社規模の区分次第で評価額が数倍変わることもあります。
事業承継では、自社株の評価額が相続税・贈与税の負担や、後継者への株式の移転方法に直結します。自社株がどのようなルールで評価されるのかを早い段階で把握し、税理士や公認会計士、M&Aの専門家等に相談しながら、計画的に承継の準備を進めることをお勧めします。
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よくある質問
- 原則的評価方式とは何ですか?
- 相続や贈与で取得した非上場株式の評価方法のうち、会社の経営に影響力を持つ同族株主等が取得した株式に適用される評価方式です。会社の規模に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式、またはその両方を組み合わせた方法で評価します。
- なぜ株主の立場によって評価方式が異なるのですか?
- 株主の立場によって、株式を保有する意味が異なるためです。経営を支配できる株主には収益力や純資産を反映した原則的評価方式を用い、経営への影響力が小さい少数株主には配当金額をもとにした配当還元方式を用います。
- 自社株が原則的評価方式と配当還元方式のどちらで評価されるかは、どのように判定しますか?
- 課税時期の株主構成と議決権割合をもとに、同族関係者を含めたグループ単位で判定します。同族株主が取得した場合は原則的評価方式が基本ですが、一定の要件を満たす場合には配当還元方式が適用されます。
- 原則的評価方式による評価額は、どの程度の水準になりますか?
- 会社の業績、純資産、会社規模の区分、類似業種の株価水準などによって大きく異なるため、一概にはいえません。正確な評価額は専門家に算定を依頼して確認することをお勧めします。
- 自社株の評価はいつ行えばよいですか?
- 事業承継の検討を始めた段階で一度評価し、その後も定期的に確認しておくことをお勧めします。評価額は決算内容や株式市場の相場によって毎年変動します。
- 評価額の計算にはどのような資料が必要ですか?
- 一般的には、直近3期分程度の決算書と法人税申告書、株主名簿、固定資産台帳、土地・建物や有価証券の明細などが必要です。
- 原則的評価方式で評価する際に注意すべき点は何ですか?
- 決算書の純資産の額がそのまま評価額になるわけではないこと、評価額が毎年変動すること、取得者によって評価方式が変わることなどに注意が必要です。
- 原則的評価方式の評価額で、M&Aでの売却価格も決まりますか?
- 決まりません。原則的評価方式は相続税・贈与税を計算するための評価方法であり、M&Aの取引価格とは考え方が異なります。
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