EC業界 市場規模や買収・売却事例について解説

EC業界市場規模や買収・売却事例について解説のメインビジュアルイメージ

更新日

  • #業種別M&A動向
  • #EC業界 M&A

変化の激しいEC・通販業界では、企業の大小を問わず、事業拡大を目指したM&Aが積極的に行われています。

そこで本記事では、EC・通販業界の基礎知識を紹介したうえで、M&Aの動向や事例、活用するメリット、成功するためのポイント、今後の課題と展望などについて解説します。

M&Aの前に押さえておきたいEC・通販業界の情報

はじめに、M&Aを検討するまえに知っておくべきEC・通販業界の定義や、代表的な企業、そして業界ならではの特色について解説します。

EC・通販業界の定義

「EC」とは「Electronic Commerce」の略で、日本語に訳すと「電子商取引」を意味する言葉です。したがって、EC・通販業界とは、ネットショップなど、オンライン上で行われる商品やサービスの売買や契約、決済などを行う業界のことを指します。

なお、こうしたオンライン上で決済される商取引にはサブスクリプション型の音楽配信サイトや株の売買も含まれますが、こうした業態のサービスはEC・通販業界には含まれません。

代表的な企業

次に、EC・通販業界を代表する企業として、以下の4社を紹介します。

  • ・楽天グループ株式会社
  • ・Amazon.com, Inc
  • ・LINEヤフー株式会社
  • ・auコマース&ライフ株式会社

EC・通販業界の特色

EC・通販業界の大きな特徴のひとつとしてあげられるのが、対象とする顧客ごとにさまざまなビジネスモデルが展開されていることです。下図をご覧ください。

BtoB EC 企業間で取引を行うEC・通販
例)ASKUL
BtoC EC 企業が消費者向けに商品を販売するEC・通販
例)Amazon
CtoC EC 個人間で取引を行うEC・通販
例)メルカリ
D2C EC 製造者(メーカー)が直接消費者と取引を行うEC・通販
越境EC 国を超えて商品を販売・サービスの取引を行うEC・通販
ギフトEC ギフト商品の販売に特化したEC・通販EC・通販
例)AnyGift

ご覧のように、企業間で取引を行うBtoB ECから、顧客間で行うCtoC EC、また国境をまたぐ越境ECなど、さまざまな形態のサービスが展開されています。これは、EC・通販業界がインターネットを介したサービスであることに起因しています。実店舗を持たなくても商品やサービスの出品や取引が可能なため、開業の敷居が非常に低い点が大きな特徴といえるでしょう。

また、利用者にとっての利便性も、EC・通販業界の特徴です。店舗まで出かける必要が無く、営業時間を気にしなくて良いため、実店舗のように時間の制約が無く、商品提供者と対面する煩わしさもありません。宅配業者が指定の場所まで配送してくれるため、かさ張るものや重量物を運ぶ必要が無い点も、ユーザー側にとって大きなメリットです。

EC・通販業界のM&A動向・市場規模

EC・通販業界の市場規模は拡大傾向にあります。

経済産業省が発表した「令和4年度電子商取引に関する市場調査」によると、2022年の国内BtoC向けEC市場規模は22.7兆円で、前年比9.91%増となりました。

またその内訳を見てみると、物販系ECは13.9兆円、サービス系ECは6.1兆円で、特に旅行や飲食、チケット販売などが大きく伸びていることがわかります。これは、新型コロナウイルスによる外出規制の解除が大きな影響を与えているものと考えられます。

次に物販系ECでは、食品・飲料、生活家電、衣類、生活雑貨が主なカテゴリで、それぞれ2兆円を超える規模にまで拡大しています。また、物販系のEC化率は9.13%で、その中でも食品・飲料・酒類は4.16%とまだ成長の余地があり、今後ますます市場は拡大していくと見込まれます。

BtoC EC 市場規模の経年推移

EC・通販業界のM&A事例

ではここで、EC・通販業界のM&A事例を紹介します。冒頭で述べたように、EC・通販業界ではM&Aが積極的に行われていますが、その中でも特に代表的な5件を見ていきましょう。

オーイズミとバブルスター

2022年3月、株式会社オーイズミは、バブルスター株式会社を買収したことを発表しました。

オーイズミは、連結子会社6社を傘下に企業グループを展開し、遊技場の設備機器や太陽光発電、不動産賃貸業などを手がけています。一方、バブルスターは神奈川県大和市に本社を持ち、バブルスターは健康食品などの製造とEコマースでの販売を展開する会社です。

オーイズミはこの買収により、グループ企業内でのEコマースを活用した販売力を強化すると共に、シナジー効果の創出による企業価値の向上を狙います。

KIYOMIZU DIVEと「BothyThreads 通販専門店」

2023年6月、株式会社KIYOMIZU DIVEは、ECサイト「BothyThreads 通販専門店」の事業を譲り受けたことを発表しました。

2023年に設立したKIYOMIZU DIVEは、WebメディアやECサイトを運営する会社です。創業間もないものの、自社メディアやECのサービス拡充を図る一環として、事業譲受を実施しました。

今後は更なる事業拡大を目指し、積極的にM&A戦略を実施していくとのことです。

ラクスルとエーリンクサービス

2024年6月、ラクスル株式会社は、株式会社エーリンクサービスを買収したことを発表しました。

ラクスルは、インターネットを介して印刷や集客支援を行う会社です。一方のエーリンクサービスは、トートバック・エコバックのプリントに特化した業務を行う「トートバック工房」を運営しています。

このM&Aによってラクスルは、資材の調達や印刷加工等の内製化による競争力を強化し、マーケティングノウハウを活用した顧客基盤の拡大を進めて行く考えです。

イルグルムとボクブロック

2022年4月、株式会社イルグルムは、ボクブロック株式会社の子会社化を実施しました。

イルグルムは、プラットフォーム事業においてEC構築のためのオープンプラットフォームである「EC-CUBE」を中心としたサービスを展開しています。一方のボクブロックは、EC-CUBEの最上位パートナーとしてECサイト構築から運用支援まで幅広くサービスを提供している会社です。この子会社化によって、両社のノウハウを共有させることで新たなソリューションを展開し、事業領域の更なる拡大を目指します。

米BokksuとJAPAN CRATE合同会社

2023年9月、米Bokksu社は、JAPAN CRATE合同会社を買収すると発表しました。

Bokksuは、米国ニューヨークと東京に拠点を置き、日本の菓子のサブスクリプションサービスを展開しています。今回のM&Aは、日本の文化やお菓子をより多くの人々に届けることを目的としたものです。今後はアウトレットを含む5,000店以上の店舗を持つ米国内の小売パートナーとの関係を強化し、また小売店への展開も目指します。

EC・通販業界でM&Aを活用するメリット

EC・通販業界でM&Aを活用する主なメリットとして、以下の2つを紹介します。

  • ・買収後すぐに利益化が見込める
  • ・自社製品をより多くの人に広められる

それぞれ見ていきましょう。

買収後すぐに利益化が見込める

ECや通販業界でM&Aによる買収を活用する1つ目のメリットは、買収後すぐに収益化が見込めることです。

一般的に、事業をゼロから始める場合は、開業したからといってすぐに顧客がつき、黒字化するわけではありません。特に、ビジネスモデルが多種多様に展開しており、開業のための敷居も低いEC・通販業界では、既にサービスが飽和状態にあり、早期に収益化を目指すのは簡単ではありません。

しかし、M&Aによって既に事業が軌道に乗っているECサイトを買収できれば、多くのリピーターや独自商材を自社に取り込むことができるため、事業の利益化が早期に見込めます。

自社製品をより多くの人に広められる

2つ目のメリットは、商品を製造する会社がECサイトをM&Aで買収することで、インターネットを通じて自社商品の販売が可能になることです。

これまで実店舗のみで販売していた製品をECサイトでも展開すれば、より多くの顧客に自社製品を広められるようになります。

また、ECサイトを活用すれば、地域を限定せずにWeb広告やSNSを駆使して認知度を高め、売上高を増やすことが期待できます。

EC・通販業界におけるM&A成功のポイント

次に、ECや通販業界でM&Aを成功させるためのポイントについて解説します。注意すべきポイントのうち、特に重要なのが以下の2つです。

ユーザー層とサービスのマッチングを確認する

EC・通販業界でM&Aを成功させるためには、相手企業のサイトのユーザー層が、自社のサービス・製品のターゲットとマッチングしていることが重要です。

マッチングしていれば自社製品を相手企業のサイトで販売し、収益を上げることが期待できます。逆に、マッチングしていなければユーザーのニーズと商品が合わないため、販売は難しくなるでしょう。

また、自社の製品やサービスが狙いきれていないユーザー層を抱える企業に対するM&Aも有効です。M&Aによって新たな層へのアプローチができれば、これまでに無い層を顧客として取り込むことが可能となります。

仕入れの形態に着目する

相手企業が商品の仕入れをどのように行っているのかを確認することも、成功するための大切なポイントとなります。

例えば、商品の製造元であるメーカーから直接仕入れを行っている場合は、取り引きを継続することで仕入値を下げることが期待できます。

また、卸売業を経由して商品の仕入れを行っている場合は、多種多様な製品を少しずつ仕入れることが可能です。しかし、その分だけ、メーカーから直接仕入れる場合と比較するとコストはどうしても高くなってしまいます。

M&Aによって売り手と買い手の仕入を共通化すると、コストメリットによりシナジー効果が生じやすくなります。しかしそのためには、あらかじめ売り手がどのような仕入方法を行っているのかを知っておかなければなりません。

EC・通販業界における今後のM&Aの課題と展望

EC・通販業界では、長年にわたり多くの企業によって大小さまざまなM&Aが繰り返されています。最近の動向としては、新しい顧客層へのアクセスやイノベーションによる競争力の強化、シナジー効果による業務の効率化とコスト削減を目的とするM&Aが増えています。

また、海外市場の進出やAI、NFT、ビッグデータなどの技術獲得を目的としたM&Aも注目されていることから、巨大企業を中心に積極的にM&Aを行う流れは今後も続くでしょう。

M&Aキャピタルパートナーズは、豊富な経験と実績を持つM&Aアドバイザーとして、お客様の期待する解決・利益の実現のために日々取り組んでおります。
着手金・月額報酬・企業評価レポート作成がすべて無料、秘密厳守にてご対応しております。
以下より、お気軽にお問い合わせください。


ご納得いただくまで費用はいただきません。
まずはお気軽にご相談ください。

監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

立教大学経済学部卒業後、2007年国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。2021年当社入社後は、広報責任者としてグループ広報業務全体を管掌。

一般社団法人金融財政事情研究会認定 M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者


M&A関連記事

M&Aへの疑問

M&Aへの疑問のイメージ

M&Aに関する疑問に市場統計や弊社実績情報から、分かりやすくお答えします。

業種別M&A動向

業種別M&A動向のイメージ

日本国内におけるM&Aの件数は近年増加傾向にあります。その背景には、企業を取り巻く環境の変化があります。

M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由

創業以来、報酬体系の算出に「株価レーマン方式」を採用しております。
また、譲渡企業・譲受企業のお客さまそれぞれから頂戴する報酬率(手数料率)は
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」となっております。