バス業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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バス業界のM&Aに関しては、大手企業による組織再編、中小バス会社の大手企業への売却、中小バス会社同士のM&Aという3パターンに大別されます。M&Aは業界全体の競争力を高め、効率的な運営を実現するために重要な戦略の一つです。

本記事では、バス業界の市場規模や動向、M&Aを活用するメリットを詳しく解説します。M&Aの課題と展望についても触れていますので、今後の経営戦略に活かしたい方は、最後までご参照ください。

M&Aの前に押さえておきたいバス業界の情報

バス業界のM&Aを考える前に、基本情報を理解することが重要です。業界の定義から代表的な企業、業界の特色まで、順番に把握しましょう。

バス業界の定義

バス業界は、交通・運輸業に属し、バスに客を乗せて輸送するサービスを提供しています。乗合バス(路線バス)は、地域密着型で一般道路を走行し、貸し切りバスは観光やスクールバスなど特定の乗客を輸送します。

バス運転士の拘束時間や休息時間は法律で厳しく規制されており、2024年4月からは「働き方改革関連法」の施行により、労働環境がさらに改善されました。また、ドライバー不足や過疎化対策として、自動運転技術の導入も進んでいます。

代表的な企業

バス業界で代表的な企業は、以下の4社が挙げられます。

  • ・神奈川中央交通株式会社
  • ・三重交通グループホールディングス株式会社
  • ・富士急行株式会社
  • ・神姫バス株式会社

バス業界の特色

バス運転手に必須の「大型自動車第二種免許」を取得して、運転技術をしっかり身につければ、安定した求人が続く点が特徴です。若手社員の育成や女性社員の獲得を積極的に進めているものの、バス運行の運転手に関しては、男性従業員が担っている傾向があります。

また、輸送に自動車を使用していることから、事業者は環境への取り組みも、他業界以上に求められているのが実情です。

エコドライブの徹底や省資源活動、環境に優しい低公害車の導入など、環境に対して当然必要な対策ですが、事業者にとってはコストアップにつながり、経営を圧迫する一因にもなっています。

バス業界の市場規模・動向

国内旅客輸送量(上図)及び分担率(下図)の推移(人ベース)

引用:「令和5年度交通の動向」及び「令和6年度交通施策」(交通政策白書)について|国土交通省

2022年度の国内旅客輸送における各公共交通機関の割合を見ると、鉄道81.6%、乗合バス14.0%、タクシー3.8%、航空0.4%、旅客船0.2%となっています。

乗合バスは鉄道に次ぐ分担率を占めていますが、その差は大きいです。2000年度から2022年度にかけて、分担率において鉄道が増加しているのに対して、乗合バスは減少傾向にあります。

自動車運送事業等における労働者の平均年齢の推移

引用:「令和5年度交通の動向」及び「令和6年度交通施策」(交通政策白書)について|国土交通省

また、バス業界の従業員層についても、平均年齢は年々上向きに推移しています。労働者の需要が高まっている一方で、就業者数は「ほぼ横ばい」状態が続いており 、各社は収益・従業員の確保ともに課題を抱えているのが現状です。

バス業界のM&A事例

バス業界のM&Aは、業界全体の競争力を高め、効率的な運営を実現するための重要な戦略です。以下に、具体的な事例を紹介します。

関東鉄道と関鉄パープルバス、関鉄グリーンバス

関東鉄道株式会社は、関鉄パープルバス株式会社と関鉄グリーンバス株式会社を消滅会社とする吸収合併を実施しました。

2024年改正の「バス運転者の改善基準告示」によるバス乗務員の不足を解消し、採用活動の強化と管理部門の一本化による事業運営の効率化を目指しています。

名古屋鉄道と名鉄グループバスホールディングス

名古屋鉄道株式会社は、会社分割の手法により、バス事業の中間持株会社「名鉄グループバスホールディングス株式会社」を設立しました。

バスグループ内における運営ノウハウの共有や、効率的なオペレーションの実現に向けた、グループ各社による緊密な連携を図り、バス事業における経営の効率化と競争力強化が目的です。

阪急バスと阪急田園バス

阪急バス株式会社は、子会社の阪急田園バス株式会社に対して吸収合併を実施しました。

阪急バスは経営資源を一元化し、安定的な人材確保と柔軟な人員配置を図るとともに、輸送の安全性とサービス向上を期待しています。

沖縄バスと東陽バス

沖縄バス株式会社は、東陽バス株式会社の全株式を取得し、子会社化を行いました。

沖縄バスと東陽バスは元来、沖縄県の中南部路線において競合運行を行う関係でした。厳しい旅客運輸市場で事業を存続させるために、今回の子会社化により、両社事業のサービスと生産性の向上を目指しています。

小田急箱根高速バスと小田急シティバス

営業所の集約等による経営資源の集中により、経営基盤の強化を図るため、小田急箱根高速バス株式会社と小田急シティバス株式会社が合併しました。

両社は、新商号の「小田急ハイウェイバス株式会社」として、安心安全な輸送サービスを続けていくことになりました。

バス業界でM&Aを活用するメリット

バス業界のM&Aは、新規参入の際に必要な許認可の取得や人材確保など、多くの課題を効率的に解決する手段となります。以下に、具体的なメリットを紹介しますので、一つずつ見ていきましょう。

運転手やバス車両をそのまま活用できる

M&Aを活用することで、バス車両や整備施設を一括で獲得できることがメリットです。

新規にバス事業を始める際は、一から車両を購入し、整備施設を整えるには多大なコストと時間がかかります。一方、既存のバス事業を買収すれば、これらの資産を即座に手に入れることができます。

また、既存のバス運転手をそのまま採用できるため、人材確保や訓練に要する手間も省け、スムーズに事業を開始することが可能です。2024年問題に迫られるバス業界において、人材の確保とコストカットは大きな利点といえます。

バス事業における許認可を承継できる

バス事業に新規参入するには「許認可」が必要であるものの、M&Aを活用することで、迅速にそれらを取得できます。

異業種がバス事業を始める際も、許認可の取得が欠かせません。M&Aによって既存の許認可を承継できるため、短期間での新規参入が可能となります。

バス業界におけるM&A成功のポイント

バス業界でM&Aを実施する際は、相手企業に対する徹底したリサーチが大切です。特に、保有するバスの管理状態の確認は重要といえます。

バスの台数が多くても、管理がずさんで買収後に買い替えや修理の必要が生じた場合は、予想外の出費となり、結果として損を被るリスクがあります。バスに破損は無いか、エンジン等の動作は問題無いかなど、あらかじめリサーチしておくことが肝要です。

また、従業員の労働環境についても確認しておきましょう。バス業界における従業員の働き方に関しては、厳しい規定が設けられているものの、陰で長時間労働や残業手当の未払いなどが発生しているケースもゼロではありません。

2024年4月に働き方改革関連法が施行され、さらに厳重な取締環境にあります。労働環境に問題がある企業を買収してしまった場合には、買い手企業が責務を被るリスクが生じます。従業員の離職だけでなく、訴訟に発展する可能性もあるため、事前に入念な調査を行うことが必要です。

バス業界における今後のM&Aの課題と展望

バス会社の売却・M&Aには、「大手企業による組織再編」「中小バス会社の大手企業への売却」「中小バス会社同士のM&A」の3パターンがあり、今後もM&Aは増加すると見込まれています。

大手企業の組織再編では、合併や会社分割を通じて、コスト削減や競争力強化を図ることが求められます。中小バス会社は、経営難や後継者不足から大手企業の傘下に入ることが多く、隣接業種の大手企業による買収も考えられるでしょう。

2024年問題への対応によって煽りを受けているバス業界では、後継者不足や従業員の雇用維持を目的として、中小企業同士のM&Aも実施されていくと想定されます。こうした動きにより、バス業界全体としてますますM&Aが増加していくことも予測の一つです。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 部長菊池 尚人
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 部長
菊池 尚人

大手証券会社にて未上場企業(大手・中堅)の資産運用や富裕層の資産運用コンサルティングに従事。
当社入社後、M&A案件開発、M&Aアドバイザリー業務に従事。主に、物流・運送業界、飲食・ケータリング業界、建設コンサルタント業界を手掛ける。

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