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グループホーム 業界のM&A動向について
高齢化の進展と共に、グループホーム業界では事業承継や人材不足、経営負担の増大といった課題が顕在化し、M&Aによる事業買収・売却の動きが活発化しています。新規参入や事業拡大を目指す企業にとって、M&Aはノウハウや人材、地域との信頼関係を一括で引継げる有効な手段です。本記事では、最新のM&A動向や実際の事例を交え、グループホーム業界の現状と今後の展望を詳しく解説します。
グループホーム業界の概要
まずは、グループホーム業界の定義や特色、代表的な企業といった、基本的な情報を押さえていきましょう。
グループホーム業界の定義
グループホームとは、認知症高齢者が専門スタッフの支援のもとで集団生活を送ることを目的とした介護福祉施設です。
グループホームでは原則として、施設所在地に住む認知症の方のみを入居対象とし、ユニットごとに共同生活を送りながら認知症の症状の緩和・改善を行います。65歳以上で、要支援2あるいは要介護1以上の方が対象です。
よく似た施設に「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」があり、こちらは自立した生活を送れる方から要支援、要介護の方まで入居できます。
グループホーム業界の特色
グループホーム業界は、地域に暮らす認知症高齢者を対象とした地域密着型サービスを提供します。住民との信頼関係や医療・福祉機関との連携が運営の基盤となる業種です。バリアフリー設計や生活空間の工夫など、利用者が安心して暮らせる環境づくりも重要です。
また、地域包括ケアシステムの一翼を担い、医療機関や他の介護サービス事業者との連携によって、切れ目の無い支援体制の構築が求められています。現場を支える介護人材の確保と育成が施設運営の持続性に直結します。
グループホーム業界の動向・市場規模
高齢化の進展に伴い、要介護認定者数や介護サービス利用者数は引き続き増加傾向にあります。2023年度の介護保険給付費は約11兆5,000億円となり、過去最高を更新しました。65歳以上の人口は2023年10月時点で3,623万人(総人口の29.1%)に達し、今後も高齢者人口の増加と共に介護サービスの需要拡大が見込まれます。
一方で、社会保障給付費も増加を続けており、2022年度の社会保障給付費は134兆9,000億円(国民所得比32.6%)と過去最高を記録しました。生産年齢人口は減少傾向が続いており、2025年以降は減少ペースがさらに加速すると見込まれています。生産年齢人口の減少は医療・介護現場における人材不足にも影響を及ぼします。
このような事情から、グループホーム業界では効果的かつ効率的なサービス提供体制の構築が急務となっているのが現状です。政府は地域包括ケアシステムの深化・推進や介護人材の確保、介護現場の生産性向上など、地域の実情に応じた多様な施策を進めています。
グループホーム業界でM&Aを活用するメリット
グループホーム業界でM&Aを活用する主なメリットとしては、以下が挙げられます。
それぞれ見ていきましょう。
地域との信頼関係・施設運営ノウハウを引き継げる
グループホームは、地域住民や行政、医療・介護機関との信頼関係を基盤に運営される施設です。M&Aを行うことで、こうした関係性や施設独自の運営ノウハウをそのまま引継げます。その結果、新規参入時にかかる立ち上げコストや時間を大幅に削減できるでしょう。
また、既存スタッフや利用者を維持しながら、買い手側の経営資源を活用できることで、現場の安定運営やサービス品質の向上にもつながります。地域に根ざした福祉事業を継続できる点は、社会貢献の観点からも大きなメリットです。
即戦力人材の確保・人材リスクの回避が可能となる
介護人材の慢性的な不足は、グループホームの経営にとって深刻な課題です。M&Aでは、既存の介護スタッフや運営チームをそのまま引継げるため、採用や育成にかかる時間やコストを大幅に抑えられます。
売り手側にとっても、事業閉鎖や人材流出といったリスクを回避し、スタッフの雇用を守ったまま経営を委ねられるのは安心材料です。特に、優秀なスタッフが定着している施設は、人材そのものが資産であるとして、買い手側から高く評価されやすいでしょう。
グループホーム業界のM&A事例
続いて、グループホーム業界におけるM&A事例を紹介します。
医療法人社団共生会とクラレテクノ株式会社
2022年5月、医療法人社団共生会はクラレテクノ株式会社の、介護事業を譲り受けました。共生会はNSGグループのグループ法人であり、クラレテクノは株式会社クラレのグループ会社です。クラレテクノは、福祉領域でもシェアを確立しているNSGグループに譲渡することが介護事業の成長につながると考え、事業譲渡に踏み切りました。
株式会社ニチイ学館と株式会社西日本ヘルスケア
2021年7月、株式会社LeTechは、完全子会社である株式会社西日本ヘルスケアの全株式を、株式会社ニチイ学館に譲渡しました。LeTechはこの事業譲渡について、運営ノウハウと安定した経済基盤を持つニチイ学館への譲渡が、西日本ヘルスケアの中長期的な成長につながるとコメントしています。
株式会社レオパレス21と株式会社アズ・ライフケア
2022年11月、株式会社レオパレスは、シルバー事業のうち、有料老人ホーム22施設を除く40施設に係る事業に関して有する権利義務を、完全子会社である株式会社アズ・ライフケアに承継させる会社分割を行いました。アズ・ライフケアは子会社として設立当時から、レオパレスのシルバー事業の集約先として検討されていた会社です。各事業の安定化の兆しが見えてきたことから、アズ・ライフケアへの事業集約を実施し、効率的な組織構築に取り組むこととなりました。
株式会社ソラストと株式会社日本エルダリーケアサービス
2020年8月、株式会社ソラストは、株式会社日本エルダリーケアサービスの株式を取得し、子会社化しました。訪問介護や老人ホームを運営するソラストは、首都圏を中心に約120の訪問介護等の事業所を展開するエルダリーケアサービスを取り込むことで、サービスの拡充とエリア拡大を目指します。
株式会社ニチイ学館とケアバンク株式会社「グループホームさくら園」
2024年7月、株式会社ニチイ学館が、ケアバンク株式会社運営の認知症対応型共同生活介護「グループホームさくら園」事業を譲り受けました。ニチイ学館は福井県鯖江市に本社を持ち、全国で幅広い介護サービスを展開しています。今回のM&Aにより地域ニーズに応じたサービス体制の強化と、自社の通所介護や訪問介護事業所との連携を図ります。
株式会社リビングプラットフォームケアと有限会社シニアケア
2023年12月、株式会社リビングプラットフォームケアは、兵庫県内の有限会社シニアケアが運営するグループホーム事業を譲受しました。神戸市と阪神南地域を重点出店エリアとし、ドミナント戦略による地域シェア拡大を進めています。
グループホーム業界におけるM&A成功のポイント・注意点
グループホームM&Aの成功には、経営・財務状況の徹底評価、従業員や利用者への丁寧な配慮、許認可や契約の確実な引継ぎが重要です。
経営状態・財務状況を適切に評価する
グループホームでは、公的介護報酬をベースに経営が成り立つため、財務構造の健全性と制度依存リスクの把握が欠かせません。デューデリジェンスでは、過去数年分の財務諸表や修繕履歴、施設投資の履歴を確認し、買収金額が事業価値に見合っているかを十分に検証しましょう。また、行政指導歴や地域の介護需要予測、稼働率、土地建物の所有形態も含めて多面的に評価することも重要です。立地特性や地域包括ケア体制との親和性も、今後の安定収益性を左右します。
従業員の心情に配慮したコミュニケーションをとる
施設運営を支えるのは現場の介護スタッフであるため、人材の引き継ぎ方がM&A成功のポイントです。
買収前には、スタッフの定着率や資格保有率、労働環境に関するヒアリングを行い、人的資源の質を正確に把握しましょう。PMIでは、運営方針や待遇変更に関して丁寧に説明し、不安を抱える職員や利用者への配慮が不可欠になります。
早期に現場の声を吸い上げられる体制づくりが、サービスの質の維持とスタッフ流出防止につながります。
許認可・契約の引継ぎについてあらかじめ確認する
介護事業は、行政による許認可や指導体制に強く影響される規制産業です。そのため、M&Aにあたっては、都道府県等による運営指定の継続可否や補助金返還リスクの有無について、行政機関との間で事前に確認・協議を行っておくことが不可欠です。
また、法人譲渡・事業譲渡それぞれの契約形式に応じて、譲渡契約書の内容や表明保証・競業避止義務の設計も慎重に行うべきです。介護業界に精通した弁護士・会計士・仲介会社のサポートを得ることで、制度上の見落としや契約リスクを未然に防止できます。
グループホーム業界における今後のM&Aの課題と展望
高齢化の進展によりグループホームの需要は今後も増加が見込まれますが、定員には制限があるほか、施設数においては総量規制があるため、供給拡大が難しい状況です。また、人材不足も深刻化しており、特に夜勤スタッフやケアマネジャーの確保が経営の大きな課題となっています。
こうした人材・供給課題の解決や収益性の改善・経営基盤の強化を背景にM&Aは活発化していくことが予想されます。
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よくある質問
- グループホーム業界でM&Aが増えている主な理由は何ですか?
- 高齢化に伴う需要拡大と、経営者の高齢化や人材不足による事業承継課題が重なり、買い手と売り手双方のニーズが高まっているためです。
- 買収側が得られる最大のメリットは何でしょうか?
- 地域との信頼関係や運営ノウハウ、定着した介護スタッフを一括で引き継げるため、立ち上げコストと時間を大幅に削減できます。
- M&A時に最も注意すべきリスクは?
- 行政の許認可継続可否や補助金返還リスクなど、規制面での確認不足が後に大きな負担となる可能性があります。
- デューデリジェンスでは具体的に何を確認しますか?
- 過去の財務諸表、稼働率、修繕履歴、行政指導歴、地域需要予測、土地建物の所有形態など多面的に評価します。

