福祉用具レンタル 業界 市場規模や買収・売却事例について解説

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福祉用具レンタル業界のM&Aは活発化の傾向にあります。その背景にあるのは、高齢者の増加に伴う、福祉用具の需要の拡大です。

福祉用具レンタル業界は、心身の機能が低下した高齢者や障がい者の日常生活を支援するための用具を提供する重要な役割を担います。

本記事では、福祉用具レンタル業界の市場動向や、M&A事例、実施するメリット、成功するためのポイントについて詳しく解説します。福祉用具レンタル業界でM&Aを検討している経営者様や、今後の経営戦略に役立てたい方は、ぜひ参考にしてください。

M&Aの前に押さえておきたい福祉用具レンタル業界の情報

まずは、業界の定義や特色、代表的な企業など、福祉用具レンタル業界の基本的な情報を確認していきましょう。

福祉用具レンタル業界の定義

福祉用具レンタル業とは、心身の機能が低下により日常生活に支障のある高齢者や障がい者に向けて、機能訓練のための用具を貸与する事業です。ただレンタルするだけでなく、用具の選定や設置、調整などのサービスも実施します。対象となる用具の種類は厚生労働省によって定められており、福祉用具貸与事業者として認定されるには、特定の基準を満たす必要があります。

対象種目

出典:介護保険制度における福祉用具、 居宅介護支援について

代表的な企業

福祉用具レンタル業界の代表的な企業としては、以下の3社が挙げられます。

  • ・フランスベッド株式会社
  • ・パラマウントベッド株式会社
  • ・株式会社トーカイ

福祉用具レンタル業界の特色

福祉用具レンタル業を営むには、都道府県または市町村に事業者指定申請を行い「指定福祉用具貸与事業者」の許可を受ける必要があります。

指定福祉用貸与事業者となるためには、人員配置要件や、運営に関する基準を満たさなければなりません。

人員配置基準を満たすためには、福祉用具専門相談員を常勤換算方法で2人以上、管理者が常勤専従で一人以上設置が求められます。運営に関する基準としては、利用者や家族に対する説明および内容提示のための運営規定や、重要事項等の書類の用意、福祉用具貸与提供拒否の禁止などが挙げられます。

福祉用具レンタル業界の市場規模・動向

福祉用具情報システム(TAIS)に登録されている福祉用具について

引用:各種調査研究事業等による数値

公益財団法人テクノエイド協会が運営している「福祉用具情報システム(TAIS)」の登録状況によると、高齢人口の増加にともない、福祉用具レンタル業を行う企業数・商品数共に増加しており、2020年時点の企業数は815社、商品数は14612点となっています。

福祉用具貸与の受給者数

引用:各種調査研究事業等による数値

貸与の受給者数もこの20年間で5倍に増加しており、特に要介護1と要支援者は増加中です。

一方で、深刻化する介護分野の人材不足を支えるためにも、福祉用具レンタル業のニーズは一層高まることが見込まれます。需要の高まりと共に、業界内での競争も激化しており、各企業が事業拡大や経営基盤の強化を目指してM&Aを積極的に活用する動きが見られます。

福祉用具レンタル業界のM&A事例

ここでは、福祉用具レンタル業界におけるM&Aの成功事例を5件紹介します。

幸和ライフゼーションとヤマシタ

2023年10月、株式会社幸和ライフゼーションは、レンタル事業の一部を、株式会社ヤマシタに譲渡しました。ヤマシタは、幸和ライフゼーションから譲り受けた営業所と自社の当該エリアの既存営業所を統合し、事業エリアの拡大と共にシェア確立につなげていくとしています。

フランスベッドHDとホームケアサービス山口

2021年12月、フランスベッドホールディングス株式会社は、連結子会社であるフランスベッド株式会社を通じて、株式会社ホームケアサービス山口の株式を取得し、連結子会社化しました。シルバーサービス領域の拡充と事業の展開を促進し、グループ全体のバリューチェーンの強化を図る狙いがあります。

プロトコーポレーションとベネッセHD

2021年5月、株式会社プロトコーポレーションは、連結子会社である株式会社プロトメディカルケアの全株式を、株式会社ベネッセホールディングスへ譲渡しました。プロトメディカルケアは福祉用具レンタル業を含み、介護・福祉・医療領域でサービス展開を行っていましたが、大きな事業成長につながる成果を挙げるに至らず、株式譲渡に踏み切りました。

元気な介護グループとケアミックス・ジャパン

2022年10月、株式会社元気な介護グループは、株式会社ケアミックス・ジャパンの全株を取得し、子会社化しました。元気な介護グループは、宮城県仙台市でサービス付き高齢者向け住宅やデイサービスなどの福祉支援施設を運営するケアミックス・ジャパンを取り込むことで、高齢者の自立的な暮らしを支援する介護サービスの提供と、地域包括ケアへの貢献を図るとしています。

株式会社ベストケアーと株式会社ワイズ

2024年4月、株式会社ベストケアーは、株式会社ワイズが運営する鍼灸整骨院3店舗と、通所介護事業所3店舗の事業を譲り受けました。居宅介護支援、福祉用具貸与・販売を行うベストケアーは、ワイズからの事業譲受により、介護分野の事業拡大とヘルスケア領域への参入を目指しています。

福祉用具レンタル業界でM&Aを活用するメリット

福祉用具レンタル業界でM&Aを行う主なメリットとしては、以下が挙げられます。

  • ・事業領域拡大が見込める
  • ・人員補強や設備拡大につながる
  • ・他地域への参入が可能となる

それぞれ見ていきましょう。

事業領域拡大が見込める

福祉用具レンタル業界でM&Aを実施するメリットの一つは、事業領域拡大が見込める点です。

現在、高齢人口の増加と共に、自立的に活動を行うアクティブシニアから、支援を必要とする方々まで、高齢者層の幅は大きく広がっており、ニーズも多様化しています。M&Aによる事業領域の拡大は、多様化するニーズに対応していくうえでの有効な施策です。

また、介護報酬改定においては、福祉用具レンタルについての介護保険適用可否について議論が重ねられています。高齢者施設の利用者をターゲットとした家具や家電のレンタルや、サポート用品のサブスクリプション展開など、保険適用外領域の拡大も視野に入れM&Aを実施すれば、事業基盤の強化、シェアの拡大にもつながり、事業の継続性は大きく向上するでしょう。

人員補強や設備拡大につながる

M&Aを実施すれば、売り手企業の人材を自社に取り込むことができます。人材不足が叫ばれる介護業界において、人材の確保は大きなメリットです。既存スタッフのノウハウも獲得できるため、新規に福祉用具レンタル事業に参入する場合であっても、スムーズな事業展開も可能です。さらに、設備も合わせて獲得できるため、利用者数の増加に対応できるでしょう。

他地域への参入が可能となる

M&Aを活用すれば、他地域へのスムーズな参入が可能です。福祉用具レンタルは、利用者に合わせた用具の選定や、設置のサポートが求められるため、地域住民からの信頼を得ることが重要です。M&Aで事業展開を狙う地域の売り手企業とマッチングできれば、既に構築された販路を活用し、早期に事業安定を狙えます。

福祉用具レンタル業界におけるM&A成功のポイント

福祉用具レンタル業界でM&Aを成功させるためのポイントを紹介します。

利用者や従業員に不安感を与えない

福祉用具レンタル会社のM&Aを成功させるためには、利用者や従業員に不安を与えないことを最優先に考える必要があります。情報が漏れたり、誠意の無い説明を行ってしまうと、利用者が離れたり、従業員の離職につながるリスクがあるためです。

また、M&Aの実施を説明、公開する際には、利用者や従業員の心情に配慮しつつ、実施の目的と今後の流れを明確に伝えることが大切です。

福祉用具専門相談員を確保する

福祉用具貸与事業者を確保できるかどうかも、福祉用具レンタル業界のM&Aにおける重要なポイントといえるでしょう。前述のとおり、福祉用具レンタル業を営むには人員基準を満たす必要があるためです。

「買収したものの人員基準を満たすことができない」といった事態を避けるためにも、福祉用具専門相談員を確保できることを条件に加えて、相手企業を探すことがポイントです。

福祉用具レンタル業界における今後のM&Aの課題と展望

福祉用具レンタル業の需要は、高齢化を背景に増加傾向にあります。一方、需要増加を受けて参入する企業の数も増えてきているため、今後は市場競争が激しくなり、規模で勝負できない小規模事業者は勝ち残れないリスクもあるでしょう。

今後一層激化が予想される福祉用具レンタル業界で生き残る策として、経営基盤の強化を目的としたM&Aが、ますます活発になる見込みです。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社企業情報部 部長本山 拓哉
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 部長
本山 拓哉

大手証券会社にて、上場・未上場企業オーナーの資産運用及び事業承継・M&A支援に従事。
2016年から当社に参画し、現在ヘルスケア業界を中心に多数のM&A成約実績を有する。

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