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- #業種別M&A動向
- #リネンサプライ業界 M&A
業界の定義
リネンサプライ会社とは、リネン製品と呼ばれる各種繊維製品の在庫を持ち、契約先企業のニーズに応じてリネン製品の貸し出しを行う会社のことを指す。 具体的にはホテル・旅館等で使用される浴衣、バスローブ、シーツ、タオルなどのホテルリネンやレストラン・宴会場等で使用されるテーブルクロス、ナプキンなどのフードリネン、各種ユニホーム類のユニフォームリネンなどがある。
リネンサプライ会社は使用済みのリネン類を、回収・洗濯仕上げを行い、再度契約先企業に納品することに加え、補修や補充も行う。
業界の特色

一般社団法人「日本リネンサプライ協会」より「リネンサプライ業に係わる洗濯施設及び設備に関する衛生基準」が定められている。これを定めた目的としては、この基準を満たす施設を良質な施設と認定することで、その施設にリネンサプライサービスを提供する事業者に「衛生基準認定証」が交付される。それが業界全体の活性化と健全な成長が図られ、清潔で安全な公衆施設の増加につながると考えられるためである。
リネンサプライ会社は、全国各地にあるが、特に東京、大阪、愛知の3都府県に多くの会社が集中している。集配がスムーズであることがコスト上昇に直結するため、大・中都市の周辺に集中しやすいという背景がある。
リネンサプライ業界の特色は、各分野それぞれ強みがある企業が存在することだ。清掃事業が事業の中心となっている「株式会社ダスキン」や「株式会社サニクリーン」、病院・福祉事業に強みがある「ワタキューセイモア株式会社」などが例に挙げられる。

リネンサプライ企業の代表的な顧客としては宿泊、病院、介護、飲食の事業者が多いが、近年では上記以外の事業者においてもリネンサプライの導入が多くなってきている。
スパなどの温浴施設や健康増進の場であるフィットネスクラブ、またエステサロンや美容室などである。
これらの施設はリネンの耐久期間が短めと言われており、事業者にとってはリネンサプライ会社と契約することで、製品の購入や維持管理の面での優位性があると考えられている。
業界市場の規模
株式会社矢野経済研究所の調査によると、2018年度の国内リネンサプライ市場規模は、前年度比0.3%増の5,178億3,800万円で前年とほぼ同じではあるが、2年連続で増加した。近年の低価格要請の強まりや事業所数や病院数の減少による市場規模の縮小は止まった考えられる。 また同社による調査では、2019年度の国内リネンサプライ市場規模は前年度比0.2%増の5,187億6,200万円になると予測されている。業界内においては、ホテルリネンの需要が拡大している。これは訪日外国人観光客の増加や、オリンピックに伴うホテル施設数の増加により、リネンサプライヤーにとっての顧客の数そのものが増えたことが要因である。

一方で、それ以外の分野の需要は縮小傾向にあるという調査も出ている。業界としては市場規模は少しではあるが大きくなっていると言えるが、それはホテルリネンがホテル業界の好景気により、好調であるためである。ホテルリネン以外の分野の需要が縮小傾向であることに対して、各企業がリーダーシップを発揮し、どのように業界全体の市場規模を大きくしていくのか注目である。
課題と展望
リネンサプライ業界はホテルリネンを中心に需要が増えている一方で課題も抱えている。まずは、深刻な人手不足である。長年、この業界において言われてきたことだが、2019年に実施された働き方改革により、さらに深刻化していると見られる。また燃料費の高騰、さらにリネンサプライヤーの顧客からは値下げ要求が高まり、収益の悪化につながっている。

これらの課題に対して、明るいニュースになったのは、2018年11月に技能実習2号移行対象職種に、リネンサプライ職種が追加されたことだ。この追加により、外国人労働者の労働年数が延長され、業界全体の労働力の増加、確保につながる。収益の悪化に対しては、省人、省力化に焦点があたる。工場の自動化や、新工場の建設による効率化であったり、バックオフィスの自動化など投資すべき箇所に的確に投資できるかが各企業の課題になるであろう。
訪日外国人観光客の増加やオリンピックによる業界全体の活況の中で、オリンピック開催後のホテルリネン分野の市場動向が業界全体に直接影響を及ぼすことは間違いないと考えられる。もちろんホテルリネンだけでなく、他の分野のリネンサプライヤーも含めて、業界全体でこれらの課題に立ち向かう必要があるだろう。
リネンサプライ業界のM&A動向
リネンサプライ業界は人手不足、特に中小企業の後継者不足の解決策としてのM&Aや、事業エリア拡大のためにM&Aを行うケースが多い。またこの業界独特ではあるが、クリーニング会社がクリーニング業法の別分野であるリネンサプライ会社をM&Aで子会社化し、リネンサプライ業界に参入するというケースもある。
―主な事例―
・2018年11月
株式会社トーカイは、株式会社松屋リネンサプライの福祉用具貸与・販売事業と住宅改修事業を会社分割によりM&Aを実現した。株式会社松屋リネンサプライは、愛知県豊橋市及び豊川市を中心に同様の事業を展開してきた。このM&Aにより株式会社トーカイの中部地方における事業規模の拡大が図られた。
・2018年11月
株式会社トーカイは、有限会社ドリームライフの福祉用具貸与事業、福祉用具販売事業、住宅改修事業を会社分割によりM&Aすることを実現した。有限会社ドリームライフは愛媛県北宇和郡を中心にシルバー事業を展開しており、今回のM&Aによって、株式会社トーカイの四国地方における事業規模の拡大が図られた。
・2016年6月
株式会社白洋舍は、北海道リネンサプライ株式会社の株式を、北海道旅客鉄道株式会社の子会社である北海道クリーン・システム株式会社より追加取得し、子会社化した。北海道リネンサプライは、ホテル向けリネンサプライ事業の他に、北海道新幹線をはじめとする旅客車に係る鉄道リネンサプライ事業、法人向けクリーニング事業をしている。このM&Aにより、北海道地区における事業エリア拡大とともに、グループのブランディングの向上が図られる。
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