半導体業界のM&A動向 昨今の事業買収・売却の事情やM&A事例を紹介

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半導体業界では、AI、EV、5Gといった技術革新や、グローバル競争の激化、供給網の安定化ニーズの高まりなどを背景に、M&Aが活発化しています。本記事では、半導体業界の最新M&A動向や具体的な事例、成功のポイントについて詳しく解説します。

半導体業界の概要

半導体業界は、家電から自動車まで現代生活に不可欠な技術を支える分野であり、多様な事業形態と急速な市場変化が特徴です。

半導体業界の定義

半導体とは、一定の電気的性質を備えた物質のことを指します。

物質には、金属などのように電気を通す「導体」とゴムなどのように電気を通さない「絶縁体」が存在します。半導体はその2つの中間的な性質を持ち、ある条件によって電子を通すものです。また、半導体を材料に用いたトランジスタやICと呼ばれる集積回路(多数のトランジスタなどを作り込み配線接続した回路)のことを、一般的に半導体と呼びます。

半導体業界には、半導体を材料に用いたトランジスタやICを設計する事業者、製造する事業者、製造装置を製造する事業者、検査装置を製造する事業者、卸業者などが存在しています。

半導体業界の特色

現在、半導体は、パソコンやスマートフォン、冷蔵庫、洗濯機、自動車、電車の運行システム、電気やガスなどの制御など、ありとあらゆるところで使用されています。半導体業界には大きく分けて、半導体メーカーと、エレクトロニクス商社の2種類があります。

半導体メーカーは、半導体を設計から製造、販売までのすべてを自社で行うIDM(垂直統合型デバイスメーカー)や、工場を持たず設計や開発を専業とするファブレス、半導体を生産する工場を持ち、IDMやファブレスから製造を受託するファウンドリーなどです。

エレクトロニクス商社は、IDMなどの半導体メーカーと、家電やスマートフォンなどを製造している製品メーカーをつなぐ役割を担っています。

半導体業界は、トレンドが目まぐるしく移り変わり、市場の変革スピードも速い業界です。これまで、スマートフォンの普及による需要が大きな割合を占めましたが、近年ではIoTの市場規模も拡大しており、今後の半導体業界の主流はIoT市場になる可能性もあります。

半導体業界のM&A動向・市場規模

WSTS(世界半導体市場統計)の「Global Semiconductor Market Continues Strong Growth Through 2026」は、半導体市場は、生成AI(人工知能)やクラウドインフラ、先端電子機器の需要拡大を背景に、2024年から2025年にかけて2年連続で2桁成長を記録していると報告しました。なかでもAI関連の投資が市場を強力に牽引しており、世界的に注目度の高い産業です。

2025年は前年比11.2%増の7,009億ドル(約104兆円)と予測されており、引き続き高い成長が見込まれています。IMARCの調査でも、日本の半導体市場は2024年に404億ドル(約6兆円)に達し、2025年も成長が継続すると見込まれています。2018年以降に一時減少しましたが、コロナ禍以降は世界市場と同様に回復傾向が続いています。

半導体市場はAIやデータセンター、スマートデバイスの普及を背景に、今後も拡大を続けるでしょう。ただし、成長率は2024年までの急拡大と比較するとやや鈍化しており、製品分野や用途によって明暗が分かれる状況です。

半導体でM&Aを活用するメリット

それぞれ見ていきましょう。

製造工程の内製化につながる

M&Aによって、これまで外部委託していた製造工程や部品の内製化が可能となります。サプライチェーンを一元的に管理すれば、コスト削減やリードタイムの短縮、品質の向上が期待できます。また、サプライチェーンの安定化により、需給が逼迫するような状況においても、安定した製品供給が可能です。例えば、部品メーカーや製造装置メーカーを買収すれば、自社の生産体制を強化できるでしょう。こうした施策により、供給不足や外部依存といった業界特有の課題をM&Aによって解消できます。

事業拡大・新規参入のスピードが上がる

M&Aを活用することで、既存事業の拡大や新規分野へのスピーディーな参入が可能になります。買収先の顧客基盤や販路、ブランドを活用することで、短期間で事業の拡大を実現できます。また、ゼロから設備投資や人材確保を行う場合と比べて、リスクやコストを抑えられる点も大きなメリットです。さらに、M&Aは事業の多角化やグローバル展開を進める手段としても有効です。例えば、IoT、車載、産業用途などの成長分野への迅速な参入が可能になります。

技術・人材・ノウハウを獲得できる

M&Aを通じて、先端技術や独自のノウハウ、優秀な技術者を一括で獲得できます。買収企業と売却企業の技術や知見を融合させれば、製品開発力や競争力の強化が可能です。また、研究開発や生産技術の共有を進めることで、新規ビジネスの創出やイノベーションの実現も期待できます。さらに、高額な設備投資や人材育成にかかるコストを抑えつつ、短期間で技術力の底上げを図れる点もメリットです。PMI(経営統合プロセス)を通じて、両社の強みを活かしたシナジー効果の創出も期待できます。

半導体のM&A事例

半導体業界では、技術力の強化や新規市場参入を目的としたM&Aが活発に行われており、多様な成功事例が存在します。

日清紡HD株式会社とディー・クルー・テクノロジーズ株式会社

2022年2月、日清紡ホールディングス株式会社は、ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社の全株式を取得しました。

売り手となったディー・クルー・テクノロジーズは、ソリューション提供に不可欠なミックスドシグナルLSI等の開発に強みを持っており、先端技術の開発経験もある会社です。日清紡ホールディングスはこの株式取得を通して、事業拡大に必要な分野を補完し、アナログソリューションプロバイダーへの変革を目指しています。

オムロン株式会社とミネベアミツミ株式会社

2021年10月、オムロン株式会社は、ミネベアミツミ株式会社に半導体・MEMS工場およびMEMS開発・生産機能を譲渡しました。

売り手となったオムロンは、2022年度からスタートする次期長期ビジョンに向けて、グループ内の再整理を行なっていました。買い手となったミネベアミツミは、オムロンの半導体・MEMS事業が持つ半導体プロセス開発技術や生産技術、さらには関連する資産を得ることで、シナジー効果が生まれると判断し、M&Aを決断しています。

株式会社オキサイドと株式会社UJ-Crystal(UJC)

2021年10月、株式会社オキサイドは、株式会社UJ-Crystal(UJC)と資本業務提携を実施しました。

UJClは、パワー半導体SiC単結晶の開発や製造、販売を目指すスタートアップ企業です。レーザー光源、光部品など光学関連製品を取り扱う株式会社オキサイドは、UJC社と技術的親和性が高いと判断し、SiC単結晶の量産化に向け、資本提携を行うことにより、研究開発を進めることとしました。

ルネサス エレクトロニクス株式会社とDialog Semiconductor Plc

2021年8月、ルネサス エレクトロニクス株式会社は、Dialog Semiconductor Plcの全株式を取得しました。

売り手となったDialog Semiconductor社は、IoTやIndustry 4.0関連のアプリケーションに対して、標準ICおよびカスタムICを提供する会社です。買い手となったルネサスは、社会の発展に向け、IoT化する組み込み技術を提供しています。

このM&Aによって、ルネサスはエンジニアの補強に成功し、市場に向けたより多くの商品提供が可能となりました。また、IoT、産業、自動車分野などでさらなる成長を目指しています。

兼松PWS株式会社とルモニクス株式会社

2020年11月、兼松PWS株式会社がルモニクス株式会社の全株式を取得しました。

兼松PWSは、半導体製造装置や関連機器などの販売、サービス提供をしている会社です。ルモニクス株式会社は、ドイツのInnoLas Semiconductor社の国内販売代理店として、ウェハマーキング装置の販売やサービスを提供しています。

共に半導体製造装置の販売とメンテナンスサービスを行なっていることから、相互にシナジー効果が期待され、この子会社化が実施されました。

ソフトバンクグループ株式会社とAmpere Computing(米国)

2025年3月、ソフトバンクグループ株式会社は、AIやクラウド分野の成長と生成AIなど次世代テクノロジーの普及拡大を見据え、サーバー向け高性能CPUを開発する米Ampere Computing社の買収を決定しました。Ampereは独自のArmアーキテクチャを用いたサーバー用プロセッサで急成長しており、AIやデータセンター分野で需要が拡大しています。このM&Aにより、ソフトバンクは自社のAI・クラウド基盤を強化し、国内外の産業界に高性能な計算リソースを安定供給できる体制を構築することで、AI時代における競争力の向上と新たな事業機会の創出を目指します。

JICC-02株式会社とJSR株式会社

2024年3月、JICキャピタルが運用するファンドを通じて、JICC-02株式会社がJSR株式会社の全株式をTOB(公開買付け)により取得し、JSRを非公開化する取引が行われました。この背景には、米中対立の激化や地政学リスクの高まりを受けて日本の半導体材料産業の競争力強化が求められていることと、サプライチェーンの安定化が求められていることがあります。

JICグループによる支援は、JSRが短期的な業績に左右されず、研究開発や設備投資を中長期的な視点で進められるようにするためのものです。今後は、グローバル市場における競争力の向上と、デジタルソリューション事業を中心とした産業基盤の強化が期待されています。

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半導体におけるM&A成功のポイント・注意点

半導体業界のM&Aを成功させるには、相手企業の技術力や市場環境、法規制への対応を総合的に見極めることが重要です。

相手企業の技術力慎重に見極める

半導体業界では、買収先企業が持つ独自技術や優秀な人材が競争力の源泉となるため、相手企業の技術力や研究開発体制について綿密なリサーチが不可欠です。自社の技術や製品との補完性やシナジー効果を具体的に評価し、統合後の競争力強化につなげることが求められます。あわせて、PMIを見据えた人材の定着策や知的財産の管理体制を構築することも重要な視点です。

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市場環境・業界動向を踏まえて実行タイミングを判断する

半導体業界は市場サイクルや技術トレンドの変化が激しいため、M&Aのタイミングが成否を左右します。市場拡大期や技術転換点でのM&Aは成長を加速させやすい一方で、市況が悪化している時期の統合にはリスクが伴います。そのため、大手企業の動向や業界再編の流れを注視し、最適な時期を見極めることが重要です。

法規制・グローバルリスクへの対応体制を整える

半導体は国家安全保障や経済安全保障の観点から規制が強化されており、クロスボーダーM&Aにおいては各国の法規制や審査への対応が不可欠です。米中対立や輸出規制、独占禁止法といった国際的なリスクを事前に把握し、法務・コンプライアンス体制を強化する必要があります。特に大規模な案件では、競争当局による審査や承認取得の難易度が高まるため、専門家のサポートを活用することが重要です。

半導体における今後のM&Aの課題と展望

半導体業界は、AI、5G/6G、EV化といったメガトレンドに後押しされる形で市場が拡大しており、M&Aを活用した技術・販路・生産拠点の獲得は今後さらに進むと見込まれます。

そのため、経営統合後の迅速な意思決定体制や文化融合、グローバルなガバナンス強化が重要なポイントです。

しかし、M&Aは技術革新のスピードやグローバル競争の激化に対応するための効果的な戦略ですが、統合後の企業文化や意思決定プロセスの違いが障壁となりやすい傾向があります。さらに、膨大な開発投資や生産能力拡張に伴う資金調達、人材や技術の流出リスク、そして経済安全保障や独占禁止法といった法規制への対応も大きな課題です。

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よくある質問

  • 半導体業界でM&Aが活発な理由は何ですか?
  • 技術革新、供給網強化、競争激化を背景に、事業拡大や内製化、技術獲得を目的としたM&Aが進んでいます。
  • 半導体業界におけるM&Aのメリットは?
  • 製造工程の内製化、事業拡大の加速、技術や人材の獲得などが大きなメリットとされています。
  • M&Aを成功させるために重要な視点は?
  • 技術力の見極め、最適な実行タイミング、法規制対応体制の構築が成功のカギとなります。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社広報室 室長齊藤 宗徳
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 広報室 室長
株式会社レコフ リサーチ部 課長
齊藤 宗徳

2007年、立教大学経済学部経営学科卒業後、国内大手調査会社へ入社し、国内法人約1,500社の企業査定を行うとともに国内・海外データベースソリューション営業を経て、Web戦略室、広報部にて責任者として実績を重ねる。2019年大手M&A仲介会社へ入社し、広報責任者として広報業務に従事。
2021年M&Aキャピタルパートナーズ入社後は、広報責任者として、TV番組・CMなどのメディア戦略をはじめ広報業務全体を管掌、2024年より現職。

一般社団法人金融財政事情研究会認定M&Aシニアエキスパート
厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」M&Aアドバイザー担当
MACPグループ「地域共創プロジェクト」責任者



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